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第十九話:ノヴァの影


武器工場での銃撃戦から一週間、レガシー号は再び静かな航海を続けていた。ジェットは、あの時、自分の非殺傷弾が通用したことに安堵し、少しずつではあるが、以前の冷静さを取り戻しつつあった。しかし、彼の心には、まだ深い傷跡が残っている。カイルもまた、ジェットの苦しみを理解し、彼に寄り添うように、静かに見守っていた。


「…今回の報酬だ」


ジェットが、静かにカイルにデータチップを渡した。カイルは、チップを受け取ると、端末に挿入する。データチップには、ボスを捕らえた報酬の他に、一つの情報が隠されていた。それは、ノヴァという天才ハッカーが、組織の内部情報を盗み出し、それを闇市場で取引しているという情報だった。


「…ノヴァ…」


カイルは、以前クロエから聞いた名前を思い出した。ノヴァは、武器を持たず、情報戦に特化したキャラクターだと、クロエは言っていた。彼女が、組織の情報を闇市場で取引している。それは、組織にとって、致命的な裏切り行為に他ならない。


「…クロエの言っていた通りだ」


ジェットが、静かに呟いた。カイルは、ジェットの顔を見る。その瞳には、もう怒りや失望の色はなかった。そこには、ただ、真実を追い求める、賞金稼ぎとしてのプロの眼差しがあった。


「…どうする、カイル。行くか?」


ジェットが、問いかける。カイルは、無言で頷いた。ノヴァは、組織の内部情報を知りすぎている。彼女を捕らえれば、すべての真実が明らかになるかもしれない。彼らは、ノヴァを追うことを決意した。


ノヴァは、組織の目を欺くために、あらゆる場所に自身の存在の痕跡を残していた。まるで、鬼ごっこを楽しむ子供のように。しかし、ジェットの天才的なハッキング技術の前には、その痕跡は、すべて意味をなさなかった。ジェットは、ノヴァの残したデジタルな足跡を辿り、ついに彼女の居場所を特定した。


「…彼女は、北の海域にある、放棄された研究施設にいる」


ジェットは、端末の画面を指差しながら言った。その場所は、かつて遺伝子工学の研究が行われていたが、失敗により放棄された場所だった。ノヴァは、その場所を、自分のアジトにしているらしい。


「…行くぞ、カイル」


ジェットは、そう言って、スティングレイに乗り込んだ。カイルもまた、愛銃のSIG P226を手に取り、非殺傷弾のマガジンを再確認した。今回は、銃撃戦になる可能性は低い。ノヴァは、武器を持たないハッカーだ。しかし、彼女が、何らかの罠を仕掛けている可能性も否定できない。カイルは、慎重にスティングレイのコクピットに座った。


放棄された研究施設は、荒涼とした景色の中に、まるで廃墟の城のようにそびえ立っていた。カイルは、スティングレイを施設の影に着陸させ、ジェットと共に、内部へと潜入を開始した。


内部は、薄暗く、錆びた金属とカビの匂いが混じり合っていた。二人は、慎重に通路を進んでいく。すると、突然、通路の奥から、複数のドローンが現れた。ドローンは、小型の機関銃を装備しており、その銃口が、二人に向けられた。


「…ジェット、下がれ!」


カイルは、叫び、P226を構えた。ジェットもまた、愛銃のHK P7を構える。ドローンは、機関銃から弾丸を放ち始めた。**「ダダダダダッ!」**と、銃声が、通路に反響する。5.56mm口径の弾丸が、壁を砕き、火花を散らす。


カイルは、即座に近くの柱の陰に身を隠した。ジェットもまた、別の柱の陰に身を隠す。カイルは、P226から非殺傷弾を撃ち込んだ。「プシュッ!」。非殺傷弾は、ドローンの本体に命中するが、ドローンはびくともしない。ドローンは、人間を無力化するための非殺傷弾には、全く効果がない。


「…どうする、カイル!非殺傷弾が通用しない!」


ジェットが、焦った声で叫んだ。


カイルは、冷静に状況を分析した。ドローンは、銃撃戦に特化しており、カイルの非殺傷弾は通用しない。しかし、彼は、ノヴァが武器を持たないハッカーであることを知っていた。彼女は、直接、人を傷つけることはしない。


「…ジェット!システムをハッキングしろ!」


カイルは、ジェットに叫んだ。ジェットは、カイルの言葉に、ハッとした表情を浮かべた。彼は、ドローンを破壊するのではなく、そのシステムをハッキングし、無力化するという、カイルの作戦を理解した。


ジェットは、即座に端末を取り出し、ハッキングを開始した。カイルは、ジェットがハッキングを終えるまでの時間を稼ぐため、ドローンと対峙する。


「…こっちだ、ドローン!」


カイルは、柱の陰から飛び出し、通路の奥へと走り出した。ドローンは、カイルを追い、機関銃から弾丸を放ち続ける。**「ダダダダダッ!」**と、銃声が響き渡る。カイルは、ジグザグに走りながら、ドローンの弾丸を避けていく。


そして、その時が来た。


「…やったぞ、カイル!システムをハッキングした!」


ジェットの声が、イヤホンを通して届く。その瞬間、ドローンは、動きを止め、静かに床に墜落した。カイルは、安堵の息を吐き、ジェットの元へと駆け寄った。


「…ナイス、ジェット」


カイルは、ジェットの肩を叩いた。ジェットは、少し照れくさそうに笑った。


「…まだまだだな。俺たちも」


二人は、再び、通路の奥へと進んでいった。そして、彼らは、ノヴァのアジトに辿り着いた。そこには、無数のモニターと、キーボードを叩く、一人の女性がいた。彼女こそが、天才ハッカー、ノヴァだった。


彼女は、二人の姿に気づくと、キーボードから手を離し、静かに振り返った。彼女の瞳は、まるで星空のように、輝いていた。


「…ようこそ、カイル…そして、ジェット」


彼女は、そう言って、静かに微笑んだ。その笑顔は、どこまでも無邪気で、そして、何かを企んでいるかのように、カイルには感じられた。

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