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第十八話:ジェットの苦悩


ジェットが復讐の念に駆られて以来、レガシー号の空気は以前にも増して重苦しいものになっていた。あの銃撃戦以来、ジェットは自室に引きこもりがちになり、カイルとも目を合わせようとしなかった。彼は、自分の行動を深く後悔し、カイルとの信頼関係にヒビが入ったことを誰よりも感じていた。


「…俺は、約束を破った」


ある日、カイルがジェットの部屋のドアをノックすると、中からジェットの声が聞こえてきた。その声には、深い絶望と、そして自責の念が滲み出ている。


「…約束を破ったのは、俺の方だ。お前は、俺を信じてくれたのに…俺は、お前を裏切った…」


ジェットは、そう言って、扉を開けた。彼の顔は、やつれており、その瞳には、深い闇が宿っていた。


「ジェット…」


カイルは、何も言えなかった。ジェットの苦しみが、痛いほど伝わってきた。ジェットは、床に座り込み、愛銃のHK P7を手に取った。P7は、独特なスクイーズコッキング方式で、グリップを握りしめることで発射準備が整う。そのグリップを、ジェットは震える手で握りしめ、そしてゆっくりと引き金を引いた。しかし、弾は出なかった。彼のP7は、弾倉からすべての弾を抜かれていた。


「…俺は、もう撃てない…」


ジェットは、そう言って、P7を床に投げ捨てた。その音は、まるで彼の心が砕ける音のように、カイルの耳に響いた。


「…大丈夫だ、ジェット。俺たちが、やり直せばいい」


カイルは、ジェットの肩に手を置いた。その言葉に、ジェットは、顔を上げ、カイルを見つめた。その瞳に、わずかに光が戻ったように感じられた。


新たな仕事は、カイルが以前から追っていた、違法な武器密売組織のボスを捕らえることだった。しかし、今回の任務は、以前とは全く異なるものだった。ボスは、海上都市の地下にある、巨大な武器工場を拠点としており、その工場は、組織の私設兵士たちによって厳重に警備されていた。


「…工場内部のデータを入手した。兵士たちは、最新鋭のアーマーと、Steyr AUGを装備している」


ジェットは、端末を操作しながら、カイルに言った。Steyr AUGは、オーストリア製のブルパップ式アサルトライフル。そのコンパクトな設計と、高い命中精度、そして独特な外観は、軍事マニアの間で広く知られている。


「…今回は、俺も行く。この銃で…」


ジェットは、床に落ちていたP7を拾い上げ、カイルに言った。カイルは、ジェットの瞳に、もう迷いの色がないことを確認し、静かに頷いた。ジェットは、P7の弾倉に、非殺傷弾を装填した。彼の指は、以前のように震えていなかった。


海上都市の地下。コンクリートの通路を、カイルとジェットは、慎重に進んでいく。カイルは、SIG P226を構え、ジェットは、P7を構える。二人の間には、以前のような信頼関係が戻っていた。


「…ジェット、右だ。二人のバイタルサインを感知」


ジェットが、耳元のイヤホンでカイルに指示を出す。カイルは、無言で頷き、通路の角を曲がった。そこに、二人の兵士が立っていた。彼らは、 Steyr AUGを構え、警戒にあたっていた。


カイルは、即座にP226から非殺傷弾を撃ち込んだ。「プシュッ!プシュッ!」。非殺傷弾は、兵士のアーマーに命中するが、彼らはびくともしない。兵士たちは、一瞬の戸惑いの後、AUGの銃口をカイルに向けた。**「バババババン!」**と、轟音が響き渡り、5.56mmNATO弾が、カイルの頭上をかすめていく。


カイルは、近くの鉄骨の陰に身を隠した。ジェットは、別の通路から、兵士たちに銃口を向けた。


「…ジェット、やめろ!」


カイルは、叫んだ。ジェットは、カイルの言葉を聞かずに、P7のトリガーを引いた。**「パンッ!」**という、乾いた発射音。弾は、兵士の一人のヘルメットに命中し、火花を散らした。ヘルメットに弾が当たった衝撃で、兵士はよろめき、その隙を突き、ジェットは、別の非殺傷弾を撃ち込んだ。


非殺傷弾は、兵士のアーマーの隙間に入り込み、彼を気絶させた。もう一人の兵士は、ジェットの行動に戸惑い、その隙にカイルが、その兵士を制圧した。


「…ジェット、どうしたんだ?」


カイルは、ジェットに駆け寄り、尋ねた。ジェットは、何も言わずに、P7の弾倉を抜き、弾の残量を確認した。その表情は、以前よりも冷静だった。


「…今回は、非殺傷弾だ。人を傷つける必要はない」


ジェットは、そう言って、カイルに微笑んだ。その笑顔は、以前のように、明るく、そして信頼に満ちていた。カイルは、安堵の息を吐いた。ジェットは、自分の過ちを乗り越え、再び、カイルと共に、前に進もうとしている。


二人は、工場内部へとさらに深く進んでいった。道中、何度か兵士たちと遭遇したが、カイルは、非殺傷弾と合気道を駆使して、彼らを次々と無力化していった。ジェットは、カイルの動きを冷静に分析し、的確な指示を出す。二人の連携は、以前よりも、さらに強固なものになっていた。


そして、ついに二人は、工場の奥にあるボスのアジトに辿り着いた。ボスの周りには、数人の兵士が警備にあたっていた。カイルは、ジェットにアイコンタクトを送り、突入の準備を始めた。


「…行くぞ、ジェット」


カイルは、そう言って、P226を構え、アジトへと突入した。銃声が、再び、響き渡る。しかし、それは、人を傷つけるための銃声ではなかった。それは、真実を追い求める、二人の男たちの旅の音だった。

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