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第十七話:報復の弾丸


ファントムを捕らえてから数日後、レガシー号は再び平穏を取り戻しつつあった。ファントムのデータチップから得られた情報をもとに、ジェットは組織の動きをさらに深く掘り下げていた。そこには、過去にジェットが追っていた事件の真相が、断片的に隠されていた。それは、ジェットが警察官を辞めるきっかけとなった、仲間の死にまつわるものだった。


「…このデータは、俺の仲間を殺した奴らの、違法な武器取引の記録だ」


ジェットは、端末の画面を指差しながら、カイルに言った。その声は、怒りと、そして深い悲しみに満ちていた。カイルは何も言わず、ただ静かにジェットの隣に立ち、画面に映し出されたデータを見つめた。そこには、ジェットの仲間の死体写真と、謎の人物が取引している武器の写真が映っていた。その武器は、ファントムが使用していたものと同じ、FN SCAR-Lだった。


「…奴らは、この武器を使い、俺の仲間を襲った。そして、その証拠をすべて消し去ったんだ」


ジェットは、拳を強く握りしめた。彼の瞳には、復讐の炎が燃え上がっていた。


「…奴らの取引場所を特定した。奴らは、深海にある廃墟のコンビナートにいる。行くぞ、カイル」


ジェットは、いつもの冷静さを失い、即座にスティングレイの準備を始めた。その姿に、カイルは一抹の不安を覚える。


「待て、ジェット。落ち着け。罠かもしれない」


カイルは、ジェットの肩に手を置いた。しかし、ジェットは、カイルの手を払い除けた。


「罠でも構わない!俺は、あいつらを許さない!俺は…俺は、あいつらを殺してやる!」


その言葉に、カイルは息をのんだ。ジェットは、これまで殺生を嫌い、カイルの非殺傷主義を最も理解していた人物だ。その彼が、復讐のために殺意を剥き出しにしている。カイルは、彼の胸に沸き起こる感情を抑え、冷静に言った。


「…分かった。一緒に行く。だが、俺たちのやり方でだ。殺す必要はない」


「カイル…!」


ジェットは、なおも反論しようとしたが、カイルの真剣な眼差しに、言葉を詰まらせた。そして、彼は、静かにうなずいた。


廃墟のコンビナートは、錆びたパイプや巨大なタンクが林立し、まるで異世界のような光景だった。カイルは、スティングレイをコンビナートの影に着陸させ、ジェットはレガシー号から支援する。今回は、ジェットもカイルと共に潜入するつもりだった。


「…ジェット、お前はここで待て。俺一人で十分だ」


カイルが言うが、ジェットは首を横に振った。


「いや、俺も行く。これは、俺の戦いだ」


ジェットの腰には、愛銃のHK P7が握られている。そのグリップを握る彼の指は、微かに震えていた。カイルは、ジェットの決意を悟り、何も言わなかった。二人で、廃墟のコンビナートの内部へと潜入を開始した。


内部は、薄暗く、金属の反響音が響き渡っていた。カイルは、SIG P226を構え、非殺傷弾のマガジンを再確認した。ジェットは、P7を構え、そのスライドを引いて弾をチャンバーに装填した。**「カチャリ」**という、乾いた金属音が響く。彼の手は、以前よりも硬く、冷たい。


二人は、慎重にコンビナートの内部を進んでいった。そして、巨大なタンクの陰で、取引を行っている男たちを発見した。彼らは、強化スーツを身につけ、ファントムと同じFN SCAR-Lを構えていた。その銃口は、冷たい殺気を放っている。


「…あいつらだ…!」


ジェットは、怒りに満ちた声で呟いた。その声に、男たちが気づいた。


「見つけたぞ!賞金稼ぎだ!」


一人が叫び、同時に銃口が火を噴いた。**「バババババン!」**と、SCAR-Lの轟音が響き渡り、5.56mmNATO弾が、二人の頭上をかすめていく。


カイルは、即座に近くのパイプの陰に身を隠した。ジェットもまた、別のタンクの陰に身を隠す。カイルは、P226から非殺傷弾を撃ち返した。**「プシュッ!プシュッ!」**という、空気を圧縮するような発射音。非殺傷弾は、男たちの強化スーツに命中するが、彼らはびくともしない。


「無駄だ!非殺傷弾じゃ、俺たちを倒せない!」


男たちが、嘲るように叫んだ。


カイルは、ジェットに目を向けた。ジェットは、P7を構え、男たちに狙いを定めている。彼の瞳は、復讐の炎で燃え上がっていた。


「…チッ…!」


ジェットは、舌打ちをし、P7のトリガーに指をかけた。その瞬間、カイルは、ジェットの銃口が、非殺傷弾ではなく、実弾を放とうとしていることを悟った。ジェットのP7は、もともと警察官時代の愛銃であり、実弾が装填されているはずだった。


「ジェット、やめろ!」


カイルは、叫んだ。しかし、ジェットは、カイルの言葉を聞かずに、トリガーを引いた。**「パンッ!」**という、乾いた発射音。銃弾は、男の一人の肩に命中し、鮮血が飛び散った。男は、激しい痛みに顔を歪ませ、そのまま倒れた。


「…やった…!」


ジェットは、復讐を遂げた喜びに、顔を歪ませる。しかし、その顔には、深い悲しみと、そして後悔の色も浮かんでいた。彼は、自分の手で、人を傷つけてしまった。


その隙に、別の男が、ジェットに銃口を向けた。カイルは、即座にP226を構え、男の腕に非殺傷弾を撃ち込んだ。「プシュッ!」。非殺傷弾は、男の腕を砕き、銃を落とさせた。カイルは、その隙に男の懐に入り込み、合気道で制圧した。


「ジェット!大丈夫か!」


カイルは、ジェットに駆け寄った。ジェットは、自分の手を見つめ、震えていた。その手には、愛銃のP7が握られている。彼の瞳は、虚ろで、まるで夢の中にいるかのようだった。


「…俺は…俺は…」


ジェットは、言葉を失った。


カイルは、ジェットを連れて、コンビナートから脱出した。男たちは、非殺傷弾と合気道で無力化し、警察に引き渡した。しかし、彼らの心は、勝利の喜びに満ちていなかった。特に、ジェットは、深い傷を負っていた。彼は、カイルとの約束を破り、人を撃ってしまった。そして、復讐を遂げたという達成感は、彼に残っていなかった。


レガシー号に戻った後も、ジェットは、自室に引きこもったままだった。カイルは、彼の部屋のドアをノックするが、返事はない。カイルは、ただ静かに、ジェットの部屋の前で立ち尽くすしかなかった。


今回の事件は、カイルとジェットの関係に、より深い影を落とした。ジェットは、自分の行動を後悔し、カイルとの間に、以前よりも大きな溝を感じていた。カイルもまた、ジェットが抱える苦しみを理解し、彼にどう接すればよいのか分からずにいた。

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