第十二話:交錯する思惑
レガシー号の格納庫は、無言の緊張感に包まれていた。カイルは、クロエから受け取ったデータチップを前に、ジェットと向き合っていた。カイルは、データチップの情報をジェットに見せ、この仕事を請け負うことを提案した。ジェットは、その言葉に、何も言わなかった。ただ、静かに、カイルの顔を見つめるだけだった。
「…ジェット…」
カイルは、ジェットの瞳に、深い失望の色が宿っているのを見た。ジェットは、カイルがクロエと再び手を組むことに、深い懸念を抱いていた。クロエは、ジェットにとって、カイルを裏切り、彼を危険に晒した、憎むべき存在だった。
「…カイル、俺は、あの女を信用できない。あいつは、お前を危険に晒す」
ジェットは、静かにそう言った。その声は、怒りに満ちていた。
「わかっている。だが、この仕事を請け負わなければ、アークエンジェルの真実にはたどり着けない」
カイルは、そう言って、ジェットを説得しようとした。
「…だが、アークエンジェルを追うのは、俺の仕事だ。お前は…」
ジェットは、そう言って、カイルの言葉を遮った。
「…ジェット、お前は…」
カイルは、ジェットの言葉に、何も言い返すことができなかった。ジェットは、カイルが自分を信じ、アークエンジェルを追っていることを知っている。しかし、カイルの行動は、ジェットの過去のトラウマを呼び起こし、彼を苦しめていた。
その時、レガシー号のメインシステムに、警報が鳴り響いた。
「警告、警告。不明な機体が、本船に接近中。コード:アークエンジェル。コード:アークエンジェル」
システムの声が、格納庫に響き渡る。カイルとジェットは、同時に顔を見合わせた。
「…くそっ、奴ら、もう来たのか…!」
カイルは、そう呟くと、SIG P226を構えた。ジェットもまた、HK P7を構え、迎撃態勢に入った。
その時、格納庫のハッチが開き、一人の男が現れた。
「…よう、カウボーイ。また会ったな」
それは、ライナス・リードだった。彼は、ジェットのHK P7を手に、カイルに向かって、銃口を向けた。
「どうして…!」
カイルは、驚きに目を見開いた。
「…簡単なことさ。俺は、お前が俺を憎んでいることを知っていた。だから、お前は、俺を尋問するだろうと思った。そして、俺は、お前が来るのを待っていた」
ライナスは、そう言って、ニヤリと笑った。
カイルは、ライナスの言葉に、絶望的な表情を浮かべた。彼は、ライナスが、すべてを予測し、彼を罠にかけていたことを悟った。
「…ジェット…!」
カイルは、ジェットに助けを求めた。しかし、ジェットの声は、聞こえてこない。ジェットは、まだ意識を失っている。
「諦めろ、カウボーイ。お前は、俺に勝てない」
ライナスはそう言って、引き金を引こうとした。
その時、ライナスの背後から、一人の男が現れた。
「…ライナス、貴様…!」
それは、ジェットだった。彼は、血を流しながら、ライナスに向かって、HK P7を構えていた。
「ジェット、貴様、まだ生きていたのか!」
ライナスは、ジェットの姿を見て、驚きに目を見開いた。
パン!
ジェットが発砲した。非殺傷弾が、ライナスの頭部に命中した。ライナスは、その場に倒れ込んだ。
「くそっ…!」
ライナスは、悔しそうにそう呟くと、その場で意識を失った。
ジェットは、その場で膝をついた。カイルは、ジェットに駆け寄り、彼の体を支えた。
「大丈夫か、ジェット!しっかりしろ!」
カイルの声は、焦りに満ちていた。
「ああ…大丈夫だ…」
ジェットは、そう言って、苦笑いを浮かべた。
「俺は、お前を信じている。だが、俺は、お前を信じない」
ジェットは、そう言って、カイルの腕の中で、意識を失った。
「…ジェット…!」
カイルは、ジェットの体を抱きかかえ、そう呟いた。彼の目には、悔しさと、そして深い悲しみが宿っていた。




