VSラージスライム
見た目こそプチスライムがただデカくなっただけだが、強さは明らかに増している。群れとラージスライムが少し近いため、距離を離す必要がある。
「『マジックアロー』、大きい魔物はこっちに来てください!」
愚者の能力値アップによって威力が増している魔法が的中するが、大きくはHPは削れてなさそうだ。しかしその攻撃で彼女にヘイトが向いた。
ラージスライムは転がるように近寄り、その体躯を持って押し潰そうと襲いかかる。今の彼女の敏捷では逃げ切るのは少し厳しいかもしれない。
「潰されちゃうのは嫌だから……『魔泥の銅杯』、それから『マジックアロー』!」
泥はかなりの量がかかり、ラージスライムの動きがかなり鈍くなる。彼女は確認を忘れているが、鑑定を使った場合の銅杯の詳細はこれだ。
【特殊武器】魔術師の銅杯
攻撃力:10
耐久力:∞
装備効果:無し
装備条件:【職業】アルカナ使いが必要
説明:魔術師が旅を始めるために作った道具の一つ。今はまだ未熟な力。
武器魔法:魔泥の銅杯
コスト:3MP
射程:10m
効果時間:8秒
効果:魔泥を浴びる量と知力値によって行動力が遅くなる。ありとあらゆる動きが遅くさせることが出来るが、本来の効果には至っていない。
このことを知るのはこの戦闘の後になるだろう。それはさておき彼女はその隙に距離を取り、ついでにマジックアローも放つ。
「……!」
「もしかして怒ってる……?」
「!!!」
「怒ってる……のかな? 『マジッククリエイト・石』」
体をプルプルと震わせて少し平べったくなり、不思議に思いつつも魔法を撃って様子見しようとした矢先ことだった。ラージスライムは高く跳び、彼女を今後こそ押し潰さんとしてきたのだ。
「すまねえ! そっちにニードルラビットが行った!」
泥の効果はちょうど切れてしまっている。そして運が悪くニードルラビットの一匹が、彼女を狙ってしまっていた。
ニードルラビットは今にも串刺しにする勢いで突進してきている。ラージスライムも迫って来てピンチに陥ってしまう。
彼女の敏捷値では下手に押し潰しを避けようとしても突進には対応出来ず、その逆もそうだろう。そのまま痛手を負うかと思われたが……。
「どうすれば……あ! 『愚者の逃亡』!」
戦闘中一度のみの強力なスキルがまだ残っていた。移動力も含めた行動速度が2倍になる。
「お願いしますっ!」
彼女はそうお祈りしながら転がるように回避行動を取る。敏捷値が低くても、2倍の効果は高くすんでの所でどちらからも難を流れる。
しかもニードルラビットは押し潰されそのままHPが無くなり、ラージスライムも合体する前に戻っていたのだ。
「危なかったです……!」
「マジかあの押し潰し避けれるのか!」
「驚いてないでまた合体するかもしれないから前にミノさんの援護を早く!」
「分かったよ!」
ロックンはプチスライムたちを戦鎚で潰し、ミノも石で纏めてプチスライムを倒していった。合体するためのプチスライムはもう居らず、一旦安心出来るだろう。
「後は油断しなきゃ楽勝だな!」
「本当に油断するなよ! ミノさんももうひと頑張りお願いします!」
「はい! 『マジックアロー』!」
彼女たちはその後危なげなく群れを倒しきった。こうしてアクシデントが起こった群れの討伐のクエストは、無事に達成したのだった。
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