占い少女の誕生(?)
「あっ……MPが0になるとダメだから気をつけないと」
銅杯による行動速度の低下とレベルに見合わない威力の石によるコンボを何回もしていると、MPが三割を切ろうとしていた。
初期に使える魔法と比べ、銅杯の方は然程だがマジッククリエイトは燃費が悪いようだ。
「なんだか体が軽くなってきてるから、ステータスアップ?のおかげかな」
戦闘開始から少し経っていたため、愚者の効果である時間経過によるステータスアップが体感しやすくなってきたのだ。
「これが終わったらちゃんと確認しないと、『魔泥の銅杯』『マジックアロー』」
動きを鈍らしてから、ここで初めて初期魔法で使えるものを発動させる。
「グギャッ…グギッ…!」
白色に光る矢の形をしたものがゴブリンへと突き刺さり、大きく仰け反る。だがギリギリ瀕死状態で生きていた。
またマジックアローを彼女は放とうとしたが、MPが勿体無いことに気づく。少し躊躇ったが、瀕死のゴブリンに近寄って手に持った銅杯を振り上げる。
「グギ………ギ……」
「ご、ごめんなさいっ!」
「グギャッ?!」
それは謝罪と共に脳天に振り下ろされ、無事にトドメをさしたのだった。
「ここで私が負けるよりは良い、のかな……」
まだ少し申し訳なさそうだが、振り下ろす時は全力だった。やる時はやる子なのだろう。そこからはマジックアローと泥を使い、数分程逃げ回ったら戦ったりした。
そしてMPが残り僅かになった時にゴブリンたちは逃げ出して、クエスト達成の表示が出たのだ。
「あ、危なかった……って噴水の前に戻ってる?」
胸を手に添えてほっとしていると、次の瞬間には最初の噴水の前へと戻っていたのだ。
「これもあのお婆さんの力かな……今度会ったら文句の一つくらいは許されるよね」
普段は温厚で明るい彼女も、これには流石に少し怒っているようだ。頬を膨らませジト目だか、気迫は一切ない。
「っとそうだ、忘れる前に色々確認しないと!」
慌ててステータス画面などを開き始める。
「わっ……色々変わってるのと増えてる、能力ポイントって言うのも振り分けないと」
一通り見て、振り分けた後のステータス画面を彼女は眺める。
【名前】ミノ
【種族】人間 【職業】魔道士→旅人 LV1→5
【最大HP】100 【最大MP】50→75(+5→8)
【筋力】5
【知力】10→15
【耐久】5
【器用】5
【敏捷】5→7(+1)
【精神】10→13
【幸運】10
【能力ポイント】10→0
【所持スキル】〈初級魔法LV1→2〉〈最大MP小上昇〉〈鑑定〉〈敏捷力小上昇〉
【エクストラスキル】〈アルカナ魔法LV1〉〈愚者の逃亡〉
【装備】武器〈木の杖〉〈旅路の木箱〉頭〈無し〉胴〈布の服〉足〈布のズボン〉靴〈革の靴〉手〈無し〉装飾品〈無し〉〈無し〉〈無し〉
「大体わかったけど……旅人は敏捷寄りの魔道士って認識で良さそうかな。アルカナ魔法はアルカナドローでタロットカードを引いて、そのあと魔法陣の数だけ対応したタロットカードの力を得れるんだよね。その代わりに木箱を装備しないと行けなかったり、MPを沢山使っちゃうのかな。あと小増上の効果はどっちも今の能力値に対して10%増えるみたい」
頷きつつ、愚者の逃亡と言うスキルを確認する。
「エクストラスキルはすごく特別なスキルって感じかな教えてくれる人が居たら良いけど……愚者の逃亡の効果はえっと……色々多くて忘れちゃう……」
スキルの詳細画面を開き、もう一度確認した。
【エクストラスキル】愚者の逃亡
コスト:無し
使用不可時間:戦闘中一度のみ
効果:行動速度が10秒間2倍になる
説明:死にたくなければ何としてでも早く動け、そうすれば愚者のようになりながらも生き残れるだろう。
「移動速度じゃなくて行動速度だから、色々早く動けるのかな。そう言えばあの泥も行動速度だったような気がする……とりあえず人を探さないと」
周りを見渡すも、複数人で居るプレイヤーが大半で声が少しかけづらい。少しの合間どうしようかキョロキョロしていると、彼女の後ろから二人の青年アバターのプレイヤーが歩いてくる。
装備はどちらも初期装備のようだ。
「魔法職が一人欲しいけど中々見つからないなぁ……どうするよ?」
「俺らもたまたま出会っただけだしな、どっかに良さそうな……あのプレイヤー、魔法職じゃ?」
「ちょっと声かけてくるわ」
すると片方が彼女を見つけ、声をかけに行った。
「すみません、ちょっと良いですか?」
「は、はいっ?」
「魔法職のプレイヤー探してて、もしそうならパーティーに入ってくれませんか?」
「魔法職……よ、喜んで!」
「ありがとうございます! おい、入ってくれたぞ!」
「マジか! 助かります!」
彼女の元にパーティーに入るかどうかの通知が来る。当然YESのボタンを押して、全員がお互いのプレイヤーネームを確認できるようになった。
「自分はゴロー、コイツはロックンです」
「私はミノです、よろしくお願いします!」
「こ、こっちこそよろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
「とりあえず冒険者ギルドに行きましょうか」
ゴローとロックンは何故か彼女に対して緊張していたが、彼女は特に気にせず彼らに着いていくのだった。
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