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第7話 残酷すぎると かえって笑えるよね

「ではアクション!!」


 夜の公園、都内にある佐菱公園でロケが行われていた。監督の河井実雄がカチンコを鳴らせる。

 リバスの衣装を着た如月湊きさらぎ みなとと、天使ハジケルの衣装を着たフェニックス大の対決である。

 傍には川田美晴かわだ みはる役の綺羅めくると、悪魔アスモデウス役の綺羅めくれないこと、加藤豊海かとう とよみ、そして刑事である榎本健美えのもと たけみ役の倉木理亜奈が待機していた。

 豊海は悪魔の格好をしている。銀髪にヤギのような角が生えていた。金色の瞳に、皮膚は褐色になり、身体がぴっちりした黒いレオタードを着ている。背中には蝙蝠のつばさと黒い細長いしっぽが生えていた。一応一般人には見えない設定だが、日常で着用するのは勇気がいる。


「なんか気持ち悪いデザインだね」


「まったくですね。とても子供向けヒーローには見えません」


「実際は子供向けではないですけどね」


 三人は好き勝手に語っていた。それはそうだろう。リバスは人体模型のような不気味な造形なのだ。天使の方ものっぺりした不気味なデザインであり、どちらが正義の味方かわからない。


「でも如月君や大さんも大変だよね。スーツアクターじゃなくて、自分で演じる羽目になったから」


 普通はスーツアクターが演じるものだが、河井監督が湊に入れと命じたのである。やったことがないと文句を言うと、大丈夫だからと無理やり承諾させたのだ。

 フェニックスまさるは特に文句を言わずに、着替えた。


 ハジケルはクレーンに吊るされている。それを一気に引き上げたのだ。


 『まさか、悪魔もいたとはな!! だが生まれたてなら、楽に殺せるに決まっている!!』


 大はセリフをしゃべりながら、急降下するように下がっていく。実際に急降下させるわけにはいかないので、こちらはCGで処理する予定だ。

  リバスはかわそうとせず、逆にハジケルに抱き着いた。そして足で挟み、両手で頬を優しくなでる。


 ハジケルはリバスに抱き着かれたまま、クレーンで引き上げられた。


「はいオッケー!! 次は二人を降ろしてくれ!!」


 河井監督の号令で二人は下ろされる。一応天使とリバスは衝突してリバスは大の字になるのだ。


「はい大ちゃん。このマスクをつけてちょうだい」


 ハジケルのマスクを外され、新しいマスクをつける。それは頭部と下あごに赤い鉱石が突き出たものだった。


「あれってなんでしょうか?」


 理亜奈が訊ねた。


「これが優しく殺す効果キル・ミー・テンダー・エフェクトだよ。リバスに優しくなでられたことで、頭部の血液が凍結膨張したのさ」


 河井監督が説明するが、理亜奈はさっぱりわからない。


「疑問を持つのは当然だね。でもありえない死に方だからいいんだよ。間違って子供が見ても絶対にまねできないからね。暗殺時代劇でも荒唐無稽な殺しをしているだろ? あれと同じだよ」


 そう言われると確かにそうかもしれなかった。


「というかキルミーテンダーって、なんですか? もしかしてエルヴィス・プレスリーのラブミーテンダーのもじりですか?」


 めくるが尋ねると、河井監督は同意した。ラブミーテンダーは優しく愛してという意味がある。


「正解だよ!! 脚本家から聞いたけど、他にも荒〇飛〇彦先生のバ〇ー来〇者も意識しているそうだよ」


「ああ、なんとくわかります。ゲームの動画見ましたが大〇透さんのナレーションが合いそうですね」


 豊海も納得した。


「では大ちゃん、人間の姿に戻って死体の姿をさらしてちょうだい!!」


 大は衣装を脱ぐと、メイク班がマスクを渡した。それは大の頭で頭部と下あごから赤い結晶が突き出たものだ。死人のような顔色で不気味である。


「凍結膨張するシーンはスタジオで撮るよ。空気を入れて一瞬で膨らませることで、凍結したように見せるのさ」


「こんな撮影がこれからも続くのですか?」


 スーツを脱いだ港が訊ねた。初めてのスーツ演技は大変だったが貴重な体験であった。


「そうだよぉ。ネジレルにツブセル、モヤセルにワスレルのバトルでいったん区切るけどね」


「どうでもいいけど、天使の名前が適当すぎですよね」


「俺の名乗りはなかったけどいいのかな?」


 めくるの言葉に大が割り込んだ。確かに役名は天使ハジケルだが、作中ではそれがなかった。あと名前は或串太蔵あるくし たいぞうである。死刑囚の死体に乗り移った設定だが、安直すぎる名前だ。これは現実ではありえない名前にしないと、いじめが起きることを懸念したためだそうだ。


「ああ、君の名前は第3話のネジレル役の九尾津利男くびつ としおくんが説明してくれるから安心してくれ。悪魔はあんまり天使の名前を知らない設定なんだ」


「まあ、別にいいですけど」


 河井監督の説明に一応大は納得する。


「DROPOUTとはまた違った撮影になりそうですね」


「でもリバスってDROPOUTと設定が似てるんですよ。私が喫茶店勤務するし、設定が人外だし」


「あちらは私が店員で、リバスだと刑事なんですよね。それにこちらはシリアスで、あちらはスラップスティックですからあまり似てないと思いますよ」


 めくるの言葉に理亜奈が答えた。DROPOUTではフェニックス大が店長で理亜奈は店員だ。

 如月湊も喫茶店勤務だが、リバスでは主役である。


「特撮ヒーロー物だと喫茶店が付き物だよね」


 湊が答えた。世代は違うが、ヒーローはなぜか行きつけの喫茶店に通うことが多いことを、彼は知っていた。今はSNSがあり、ちょっと検索をすればすぐに情報を調べられる時代だ。


「一応、この作品も伊達賢治さんがプロデューサーを務めているからね。あの人が関わると、作品にも影響が出ると思うな」


 湊の言葉にその場にいた全員は納得するのであった。

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― 新着の感想 ―
荒〇飛〇彦先生のバ〇ー来〇者か。 何気に好きな作品です。 個人的にバオーやJOJO2部の時の 荒○先生のセンスが好きだったりします。 異色のヒーロー・リバスの再現も上手く描かれてますね!
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