第2話 異世界交流
第2話です。
書いてて表現が多過ぎて物語の進行が遅い様な気がしています。
いずれもっとコンパクトに出来たら良いな……。
努力します。
厳ついおっさんは、俺の方に向かって歩いてくる。
俺は咄嗟にタバコの火を消して握り込み、立ち上がって厳ついおっさんの方を見た。
顔は口角を少し上げ営業スマイル。
いつでも動ける様に右足を半歩後退りする。
気付けば1mほどに迫る厳ついおっさん。
さっきは大声で呼びかけたのに、口は一文字に締め、マジマジと俺の顔を見る。
見られてる恐怖に口角がヒクつく。
厳ついおっさんは、今度は小声で
「あぁにゅああんしん」
と言った様に聞こえた。
俺は少し首を傾げると、
「ちきゅうじん? 」
と若干外国人の様なニュアンスで野太い声で問いかけられる。
戸惑いながらも俺は、
「ーーはい」
それしか言えなかった。
厳ついおっさんは少し首をもたげつつ、腕を組んで少し考え、
「こい」
とまた外国人の様なイントネーションで俺を促した。
行く宛も状況も何も分からない俺は取り敢えずは少し距離をとりつつもおっさんの後を着いていく。
道は相変わらず暗くてよく見えないが、おっさんの松明の明かりに照らされて見える建物は、どれも木で出来ているがどれも同じ形では無いことくらいはわかった。
中には畑っぽいところの脇も通った。
もちろん松明の明かりじゃそれが庭なのか畑なのかは分からない。
カーブも無く、おっさんはまっすぐに道を進む。
10分ほど歩いただろうか。
おっさんは立ち止まり右を指差す。
そこには今までの木の家と違い、石の様な物で出来た建物がそびえ立っている。
玄関は相変わらず木の板っぽいが。
おっさんは俺がその建物の方を見たのを確認して、また歩き出しその建物のドアをノックする。
少し待つとドアが開き、中からは白く整った短い髭を蓄えた初老の男が出てきておっさんと何か話している。
聞こえる距離にはいるが、いかんせん聞きなれない発音過ぎて言葉が全く頭に入ってこない。
少し話すと、初老の男は頷き、おっさんは俺の方に目を向け
「こい」
と手招きする。
相変わらず恐怖で震えるが、殺されたり暴力を振るわれるならもうとっくに振るわれてるだろうと自分を言い聞かせて言う通りにドアへ向かう。
おっさんは俺の背中へ手を回しながら、初老の男に何かを告げ、俺の背中を押して中へと押し出す。
初老の男は笑顔で頷き、おっさんは踵を返して暗闇へと消えて行く。
初老の男は俺をテーブルへと案内し、椅子を引いて指し示す。
俺は指示に従って大人しく座ることにした。
初老の男は何も言わずに俺の顔の前で手のひらを見せ、まるで「待て」と言わんばかりのポーズをして、俺を置いて二階へと上がって行く。
1人残された居間の様な場所は、映画で見た様な暖炉のある煉瓦作りの家に近い西洋風の部屋だった。
正確には煉瓦らしきものは、暖炉だけで他は石の様なグレー色した壁が辺りを囲っている。
壁には布やら剣が飾ってあり、素人目にも高そうな装飾品に見える。
部屋を見回していると初老の男が茶色く古臭い紙束を持って俺の方へと向かってくる。
初老の男は正面に座り、その紙束を俺に差し出す。
渡された紙には何か英語で
『To you who got lost in this world』
とタイトルが書かれている。
あんまり英語の成績が良くなかった俺には意味はあまり分からない。
2枚目をめくると、同じ様なレイアウトで
『致搬到这个世界的你』
中国語?
どっちにしろ分からない。
2枚目、3枚目とめくって行くと、どれも同じレイアウトでロシア語っぽいものや、アラビア語っぽいもので書かれた文章が出てくる。
『この世界に迷い込んだあなたへ』
何枚かめくると見慣れた文字の1枚があった。
あまり綺麗とは言えない小さな字でここにはこう書かれている。
『ここは地球とは異なる『異世界』と呼ばれる場所になる。
あなたがこの世界へ迷い込んでしまった理由は分からない。
この手紙を書いている私の他にも地球から迷い込んでしまう人間は多くいる。
住んでいる国や人種も関係無く迷い込むことがあるらしい。
幸いにも迷い込んだ時は、皆必ずこの街"エルムウッド"の街外れに来るらしい。
その為、この街の住人は見かけない人は一度この町長の家へ連れてきて貰い、この手紙を読んで貰うことにした。
地球へ戻る方法は今の所判明していない。
判明するまでは大変だと思うが、この世界の生活をするしかない。
この世界では、魔法の様な現象が存在する。
この世界の言語は統一されており、町長にはその言語を習得させる知識を与える魔法を使うことが出来る。
より魔法の効果を高める為に、町長に手紙を返した後、町長が頭に手をかざすので目を閉じて新しい言語を覚えることを強く念じて欲しい。
この手紙を読んだ人は裏面に年月と名前を書いて欲しい。
もし他の紙に無い言語を知っているなら、同じ内容の手紙を他の言語でも書いて町長に渡して欲しい。
あなたのこの世界での生活が健やかであることを祈っている。
平成17年8月12日 田中 翔平』
裏面を見ると、年月と名前が2名ほど書いてある。
『平成25年3月20日 中山 順子
平成30年9月16日 塚本 康』
目の前を見ると町長が黒い炭の棒の様な物を僕の方に向かって差し出している。
僕はそれを受け取り、
『令和5年5月15日 柳沢 涼太』
そうか書き記し、紙束と炭の棒を町長に渡す。
町長はそれを受け取ると、おもむろに俺の頭に向かって手をかざす。
俺は下を向き目を閉じて、ここの言葉が習得できる様に……と祈る。
ぶつぶつと何か町長が唱えると、目を閉じてても分かるくらいまばゆい光が当たりを照らし、町長が手をかざしている頭の部分が熱を帯びてくる。
やがて光は収束し、町長に頭をポンと叩かれる。
「これで私の言葉がわかるはずだよ」
町長は優しい口調で俺にそう話しかける。
日本語にしか聞こえない。
自動変換されているのか、俺にはそう感じる。
耳には音としてよく分からない発音が聞こえるが頭では日本語で言った様に感じている。
何とも変な感じだ。
例えるなら風邪の音が聞こえているが、頭の中では誰かが喋っている様に感じると言った風に近いかもしれない。
「ありがとうございます」
一先ず礼を言う。
それに町長は笑顔で頷き、
「君の様なこの世界に迷い込む人は数年に一度訪れる。
この世界で生きて行くのは君達にとっては簡単では無いかもしれない。
ーー今日はもう遅い。
不安はたくさんあるだろうが、今日はもう休みなさい。
2階の客室を使うと良い」
そう笑顔で俺に問いかける。
「一先ず君の名前を聞かせて貰えるかな? 」
「"りょうた"と申します」
特に意図は無かったが苗字は言わず名前のみ答えた。
「この世界では聞きなれない音だね。
魔法で変換されても伝わらない音があるから、これからこの世界で名乗る時は"りょう"と名乗った方が伝わりやすいよ」
そうアドバイスされた。
まあ、この世界にいる間だけ偽名を作って名乗っても良いのかもしれない。
「取り敢えず一晩休んで、今後のことは朝起きてから考えなさい。
私ももう休むから、2階の手前の部屋を使いなさい。
トイレはこの部屋の奥にあるから自由にね」
そう丁寧に説明され町長に頭を下げ「ありがとうございます」と告げ、俺は2階の手前の部屋へと向かった。
部屋は木張の床にベッドだけ。
一先ず俺はずっと持っていたジャケットを枕の脇に置いてベッドに座り込んだ。
情報が少な過ぎて、考えても何も良く分からない。
本当にここに危険は無いか?
さっきの手紙は何か誘い込む為の罠じゃないか?
手紙と町長は信用して良いのか?
考えれば考えるほど答えは分からないので頭がグルグルと回る。
廊下からは町長らしき足音が聞こえ奥の部屋に入って行ったのが分かる。
そのまま耳を澄ませていたが、その内物音がしなくなったので多分寝たのだろう。
色々と可能性を考えてみるが、考えても埒が明かないので、俺は一先ずベッドに入ることにした。
靴と靴下、それにスラックスを脱ぐ。
スラックスとジャケットだけ、離れた場所に置く気になれず布団に潜り込ませ、俺もベッドに入った。
疲れ切っていたのか、目を閉じて色々と考えている内に眠りについてしまった。
今回も見て頂きありがとうございました。
誤字脱字、変な表現などあれば遠慮なくコメントお待ちしております!