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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
9/84

頭がいいヒロイン、普通な主人公、バカな男友達という構図はベタである

「大丈夫、また頑張ればいいわ。元気出して一樹くん」

「…ひうりに申し訳ないよ…」


 テストの結果は、いつも通りだった。

 あれだけ自信があると豪語した数学だが、いつもより僅かに高い程度の点数だった。僕の予想以上に応用問題が出たのである。


「でも、私との勉強がなかったらもっと悪い点数だったでしょ?」

「そうだけど…」


 応用問題が多かったということは、去年までの勉強だとほとんど解けなかったということになる。

 それを言えば、ひうりとの勉強にもちゃんと意味があったし、僕の糧にもなっているのだろうけど、いつもよりも高い点数が取れるだろうと思ったテストだったので、その部分で落ち込んでいるのだ。


「ほら、もうこのあとは夏休みじゃない。一緒に海に行くでしょ?」

「…うん、そうだね…」


 夏には、忠たちが企画した海水浴イベントがあるし、それ以外にもほとんどこの夢の中でひうりと過ごすつもりだ。去年までの夏休みに比べて、随分と充実しているように思える。


 去年の夏休みは、特にすることがなかったので、夏休みが始まって数日で課題を終わらせ、残りは適当に過ごしていたと思う。親が忙しい人なので、旅行に行くようなこともなくほとんどを家で過ごしていた。


「今年は私がいる、でしょ?」

「あはは、そうだね」


 茶目っ気ながらに上目遣いでそう言ってくるひうり。かわいい。


 ただ、日中ずっと眠ることでひうりの生活リズムが崩れてしまうのではないかと不安ではある。僕は夢を見るために寝るわけだが、現実のひうりは何度も眠気で寝ることになるからだ。

 現実のひうりは夢の中で楽しんでることを知らないので、もしかしたら過眠症に間違えられる可能性もある。


 この夢の世界には、僕だけでも大丈夫ではあるのだけど、やはりひうりがいてくれた方が断然楽しい。そもそも僕は、そこまで一人遊びが上手じゃない。


「数日もすれば夏休みだから、頑張りましょ」

「うん」


 ひうりに励まされながら、一学期の期末試験は終わったのだった。


……


 次の日。


「さあ、夏休みだうぇえええい!」

「「「うぇーい!」」」


 学校に来たら、忠と他数名の男子が騒いでいた。それを女子たちが冷ややかな目で見ている。

 

 因みに、忠の成績はいつも通り平均以下の悪いものだった。忠はあまり気にしていないようだけど。補習とかを回避できればそれでいいらしい。


「お、来たな一樹。ちょっと来い」


 忠に手招きされる…けど、行きたくないなぁ。あまりバカ騒ぎするタイプじゃないから、やたらとテンションが高い人たちについていくのは無理だ。


「ビビるな。別に取って食ったりしねえよ」

「えぇ…」

「ただの連絡だって」


 忠から、夏の企画についての説明を受けた。どうやら日時も既に決まったらしく、あとは当日を待つばかりなのだとか。

 あと、帰ったらSNSのグループに参加しておくように言われた。何か急な変更や、当日の欠席連絡はそこでするらしい。


「一樹も夏を楽しもうぜー!」

「ウンソウダネ」


 僕は足早に自分の座席に戻った。


 ただ、淡泊に見えるけど、これでも僕は結構楽しみにしている。理由は勿論、ひうりがいるからだ。

 ひうりと現実で出かけたことはなかったので、忠たちがいるとはいえ、一緒に出掛けるというのは初めてなのだ。ワクワクしても仕方ないと言えるだろう。


 水着が見たいという青少年的な欲もあるけど、それ以上に一緒に出掛けられることが嬉しいのである。


「あ、そうだ一樹」

「うん?」


 僕が外を眺めていたら、騒いでいた忠が話しかけてきた。沢山はしゃいだので、先ほどよりは落ち着いているように見える。


「海とは別に遊ぼうぜ」

「ああ、いいよ」


 去年も忠とは遊んだのだ。適当に家で過ごすことが多かった去年の夏休みだが、忠と遊んだので一応学生らしい夏休みを過ごせたとも言えるだろう。


「ああでも、黒棘姫との先約があるかな??」


 ニヤニヤしがら揶揄ってくる忠。残念ながらひうりとは、現実での約束は何もない。


「ないよ。夏休みに会う間柄でもないし」

「そうかぁ?いやまあ、妙な距離感だとは思うけどよ。むしろ、こういう時こそ距離を詰めるときじゃないのか?」


 と言われても、僕にはどうしようもないのだ。

 夢の中でひうりと約束したとて、現実のひうりは無意識的な行動を引き出すことしかできないので、僕とデートするとかいうイベントは起こしようがないのである。


 現実のひうりと僕は、未だに友達の域を出ない。

 フワフワひうり状態なら、現実でもデートができるかもしれないということが分かったが、それはつまりひうりにまた風邪をひいてもらうということなので却下である。


「ま、もし黒棘姫との約束ができたら俺のことは無視していいからな」

「そんなことにはならないから大丈夫だよ」

「何が起こるか分からないって言うだろ。ワンチャンに賭けようぜ!」


 やっぱハイテンションだな忠。

 忠は、親に連れられて夏休み中に遺跡巡りなんかもするらしい。夏休みを満喫しすぎである。


 今までの話から推察できる通り、忠は課題を夏休み最終日付近に急いで消化するタイプだ。去年もそれでヒイヒイ言っていたと思うのだけど、考えを改めるつもりはないらしい。

 課題を後回しにしている自覚はあるらしく、本人曰く「終わるならいいだろ」とのこと。それ絶対どこかでミスして怒られるやつだと思うんだけど…


「さあ、楽しい夏休みの始まりだー!」


 尚、終業式までまだ数日ある。

面白いと思ったら評価や感想をお願いします。作者は夏休みに特に友達と遊んだ覚えはありません

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