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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の僕らの話
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準備期間で期待値を上げすぎるとがっかり感が増す

クリスマスまで行くつもりだったのですが、やはりクリスマスに投稿しようと思い、その間のつなぎとして閑話を投げます

 ひうりがクリスマスに家に来るかと言って準備が必要なことがあるかと言えば…結構ある。


 まず、クリスマスの日に僕の家でひうりが生活できるように持ってきておかないといけない荷物が色々ある。僕はあまり詳しくないけれど、女子には必要なものがいっぱいあるらしい。

 ただ、これに関しては僕はあまり詳しくないので、直接ひうりに訊くことにした。


「僕の家に持っていくものとかある?」

「まず着替え、それにスキンケアの色々と、それにアクセサリーとか…」


 ひうりが必要なものは、まとめて一つのキャリーケースに入れて持ってくるらしい。そのため、僕が手伝うものはあまりないという。

 じゃあ僕にできることは何もないのかというと、そういう意味ではないみたいだ。


「一樹くん、私の家の事情をあなたの家族に説明しないといけないわ」

「大丈夫なの?」

「将来のお義父さんとお義母さんだから、話さないと不誠実だわ」


 ひうりの両親は半ば育児放棄となっているので、きっと僕の両親の方がひうりに愛は注いでくれるだろうけど…


「でも、流石に一人で説明する勇気はないから…付き添ってくれる?」

「勿論。ひうりにだけ負担をさせないよ」


 ひうりにとっては、家族の事情というのはとても強いストレスとなる。そんなものを、ひうり一人に説明させるわけにはいかない。

 それに、夢の中のひうりから現実のひうり以上に深いことを聞いているので、僕もひうりと同等の説明ができるはずだ。


「次の日曜日に一樹くんの家に行っても大丈夫かしら」

「うん。その日は母親しかないけど、それでもいいなら…」

「分かった。じゃあ次の日曜日に」


 共働きの家庭であり、さらにどちらも少々忙しいので、日曜日だからといって両親が揃っているわけではない。

 母親に説明したら父親にも説明してもらえるだろうし、一先ず母親に説明することに決めた。


……


 日曜日。クリスマスまでもうちょっとしかないけれど、ひうりが家に来た。


「前に来た時は、私が我慢できなくなったときよね…ちょっと恥ずかしくなってきたわ」

「あれ、結局ひうりが原因じゃん。それはフォローしないよ」

「むしろ触れないでくれると助かるわ…」


 とはいえ、あの時はひうりは家の玄関までしか入っていない。こうしてちゃんと中に入れるのは初めてである。

 リビングには母親が既に待機しているので、なんだかひうりは緊張した面持ち。


「緊張しなくていいよ。結構フランクは母だから」

「そ、そうね。一樹くんのお母さまだものね」


 ひうりがここまで緊張するなんて珍しい。授業の中で発表とかをするときは、いつも緊張を一切せずにしているというのに。

 どうやら、僕の親に会うというのが今までで一番の緊張感を生み出しているらしい。ひうりにとってはそこまで重要なことなのだろう。


「あなたがひうりちゃんね。まあ取り敢えず座って」

「し、失礼します」


 母はいつも通りの余所行きの雰囲気でひうりのことを見ている。

 だが、ひうりは見られているというだけでやたらと緊張してしまっていて、その影響で足を机にぶつけた。かわいい。


「むー」

「ごめんごめん」


 睨まれた。なおかわいい。


「一樹はお茶でも用意しなさいよ」

「母さんがやっておいてよ。事前に言っておいたじゃん」

「ついでにお菓子もよろしくー」


 僕に向かっては、いつも通りの家族に接する雰囲気で会話をする母。

 周囲の人に対しては普通のお母さんといった感じで見せているのだけど、家族に対してはこうして雑用を押し付けたりするのだ。


 その雰囲気の違いにひうりがパチクリしていると、母がひうりに話しかけた。


「気にしなくていいわよ。うちはいつもこうだから」

「そ、そうですか…」


 雰囲気がガラッと変わる母に驚くひうり。だが、母が僕をぞんざいに扱ったのを見て、それなりに緊張が解けたようだ。

 ひうりの母もひうりのことを雑に扱うものの、その雑さと僕の母の雑さには違いがある。その違いを、ひうりは感じ取ったみたいだ。


「よろしくお願いしますね、お母さま」

「お母さまなんてそんな仰々しく呼ばなくていいわよ」


 お茶とお菓子を用意した僕も席につく。お菓子はひうりが好きなチョコレート。


「お茶とチョコって合わなくない?」

「ひうりが好きだから…」

「あら、ならいいわ」


 たしかに緑茶とチョコレートの組み合わせってあまり見ないよなと思いつつも、ひうりはチョコを食べて満足そうにしているので、判断は間違っていなかったと安堵。

 ひうりの方が断然緊張しているので、今日は全力でひうりをバックアップする。


「それで?一樹に彼女がいることを聞いたのもつい最近なんだけど、話って何かしら?」

「それは勿論、ひうりのことについてだよ。ひうりがどうしても話したいって」

「ええ、少し聞いてほしい話があるんです」


 ひうりはそう切り出してから、自分の家族の事情について話し出した。

 母が、いつも色んな男を相手にしていて育児をしていないこと。父は仕事をずっとしていて帰ってこないこと。そして、ひうり自身は家でほぼ一人暮らしの状態であること。


 因みに、僕とひうりが夢の中でつながっている話はしない。言ったところで、母に理解してもらえるとは思えないし。


 ひうりが一通り話終えて、母の表情を見る。母は…まるでドキュメンタリーを見たあとみたいな顔になっていた。


「ひうりちゃん!うちの子になりなさい!」

「えぇ!?」

「ああ、うちの子にしたら一樹が困るわね。ひうりちゃん!早く嫁に来なさい!」

「よ、嫁っ…」


 母の言葉に僕は声を出して驚き、ひうりは顔を真っ赤にしてしまった。


 どうやら、母はひうりの話を聞いて、庇護欲が湧き立ってしまったようだ。ひうりを家に迎え入れる気満々で、今すぐにでも行動を起こしそうな勢い。

 そういえば、母は昔から感受性が豊かというか、すぐに共感するんだよなぁ…


「ちょっと、ひうりが困ってるから」

「おっと、ごめんなさい。先に役所で手続きが先よね」

「違う待てそうじゃない」


 母が暴走しているせいで、口調を乱しながら母にツッコむ。

 結局、無理やり母の口にチョコを投げ入れることで母を落ち着かせた。この技は、夢の中でひうりの口にお菓子をよく投げ込んでいたので習得した技だ。


「確かに高校生だから大変よね。ここまで来たら大学生になるまで待って結婚してもらった方が早いわね」

「け、結婚…私が…一樹くんと…」


 ひうりの顔が真っ赤だ。僕とよくイチャイチャしている割に、結婚とかそういう先の話には弱いひうり。反応がとてもかわいいけれど、こうなったひうりはしばらく反応しなくなるからやめてあげて。


「ひうり、ひうり」

「結婚…お嫁さん…」

「だめだ…」


 僕にはよく分からないのだけど、先日の夢の中で話してた内容は結構普通に話すくせに、結婚とかの話は恥ずかしがるんだよね。

 女性の下ネタは過激って聞いたことがあるような気がするけど、それでいて結婚で恥ずかしがる理由も良く分からない。


「結婚するときは資金援助するから任せなさい」


 まあここまで言ってるから気が変わることもなさそうだし、その時は頼らせてもらおう。ひうりも、きっと本物のお姫様みたいな結婚式がしたいだろうし。


「はっ!何かしら、一樹くん」

「随分とラグがあったね…大丈夫?」

「大丈夫よ。ごめんなさい、少しトリップしてたわ」


 うん知ってる。揺すっても起きなかったし。


「そういえば二人の話を聞いてないわね。今までのイチャラブエピソードを聞かせなさいよ」

「親にそのエピソード話す辛さが分からない?」

「親としては聞きたいものよ」


 僕は恥ずかしいので話したくない。

 だが、ここで先ほどまでトリップしていたひうりが反応した。


「一樹くん、少し席を外してくれる?」

「え」

「ちょっと話したいことがあるの」


 ひうりにそう制され、嫌な予感がしつつも僕は自分の部屋に戻った。

 これは今後一生ネタにされるような気がするなぁ…僕の母親はそういう話が大好きだし、そういう話で弄るのも好きなのだ。


……


 僕の部屋でしばらくスマホを触って待っていたら、扉が開いてひうりが入ってきた。


「これが一樹くんの部屋なのね。初めて見たけど、なんだか見覚えあるわ」

「一応夢の中で見せたからね」

「やっぱり」


 ひうりはそのまま僕の隣に座った。僕はベッドに座っているのだが、ひうりは僕に密着するように座っている。


「母さんとどんな話をしてきたの」

「そんな怖がらなくていいわよ。ただ、私は一樹くんを離すつもりはないってことを話しただけよ」


 その話を親にされるの、結構恥ずかしいんだけど…でも、この手の話をひうりは恥ずかしがらない。なんでそのメンタルがあって結婚の話をすると恥ずかしがるんだろう。


「ひうり?」

「んー?」

「近くない?」


 ひうりは座っている僕の腕にもたれ掛かるように座っている。夢の中ではまだしも、現実でここまで近づいて来ることは珍しい。

 どうしたのだろうかと思っていたら、ひうりが顔を近づけて呟いた。


「色々聞かれて、色々話して、自分の気持ちを再確認しちゃった」


 そのまま流れるように僕の頬にキスをするひうり。動きが艶やかで、僕もドキドキしてしまう。


「今日夜ご飯食べてっていいみたいだから、時間まで一緒にいましょ」

「分かったよ。おっと」


 そう言うとひうりは更に僕に体重をかけて落ち着いた。

 一体何を話したのかは分からないけど、現実のひうりがここまで甘えるようになるなんて相当だ。


「甘えん坊だね」

「いいでしょ、別に」


 ひうりは更に倒れてきて、僕の太ももの上に頭を乗せた。

 僕はそのひうりの頭を優しく撫でる。


 気づいたらひうりは眠っていて、僕はそのひうりを眺めながら過ごしたのだった。

面白いと思ったら評価や感想をお願いします。一樹くんは勘違いしてますが、ひうりさんは結婚の話を恥ずかしがっているのではなく、妄想しちゃってるだけです

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