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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の僕らの話

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冬休み前の期待ってあまり大きくない

「なあ一樹、また勉強会しようぜ」

「いいよ」


 寒さも増した二学期の後半。忠から勉強会に誘われた。


 前回の勉強会は忠にとっても効果的だったようで、しっかりとした結果が出ていたので、勉強会に前向きだ。

 僕もそう思うので了承すると、一転して悩むような顔つきになる忠。


「いや、でもお前は姫と二人っきりで勉強したいよなぁ…俺たちは邪魔かもしれないなぁ…」

「大丈夫だから。気にしなくていいよ」


 そもそもひうりとは夢の中でいくらでも二人っきりになれる。今回もいつも通りテスト前の勉強をする予定だ。


 とはいえ、あれは夢の中のひうりとの勉強会なので、現実のひうりが二人っきりで勉強したいかどうかは分からない。

 要望があれば自分から言うだろうから大丈夫だとは思うんだけど…


「どうしたって、姫からの言葉があれば俺は引くからな。遠慮はするなよ」

「遠慮はしないけど…なんか忠の性格変わった?」

「何も変わってない。俺はそれで考えがあるだけだ」


 前の忠に比べて、ひうりに対する考え方が違うというか、接し方が違うというか…ともかく、何かがおかしい。


「まあ、姫に訊いといてくれ。可能なら、林さんたちにもな」

「了解」


 そして時間は進…ちょっと待って?


「忠もひうりたちの連絡先持ってるんじゃないの?」

「持ってるが…俺が連絡できるはずがないだろ?」


 さもありなん。


……


 放課後、姫と一緒に帰ることが多いので、帰り道でひうりに勉強会について話す。


「忠がもう一度勉強会をするのはどうかって」

「ふーん、いいんじゃないの?」


 いつも通り、特に不満もなさそうな返答だ。この様子だと林さんたちも大丈夫だと思うけど…と考えていると、更なる言葉がひうりから飛んできた。


「でも、私との勉強会もしない?」


 こちらを向いて、何かをねだるようにこちらを見るひうり。

 忠の予想が当たったというのだろうか。ひうりは僕との二人っきりでの勉強会を求めているかのようにも見えるけれど…


「二人っきりってこと?」

「当たり前じゃない。折角こんな関係になったんだから、二人っきりで会ってもおかしくないでしょ?」


 甘えるように僕に近づいて来るひうり。


 あざといな。どこでそんな技術覚えたんだろう?少なくとも日々の学校生活の中で覚えられる技能ではないのは間違いないんだけど…


「どうしたの、一樹くん」

「いや…なんでも…」


 まさか無自覚…!?


 ずっとひうりは誰かに甘えずに生きてきた。そのため誰もその才能に気が付かなかっただけで、実はひうりはあざとさの才能があったというのだろうか。


 ひうりは僕の方を見て確かめるようにさらに聞いてきた。


「それで、私との勉強もするってことでいいわね?」

「うん」

「分かった。ならりんりんたちにも話を聞いておくわ」


 あのひうりを見て、首を横に振るというのはとても難しい。どのみち、僕がひうりの願いを断るのはほとんどないのだけど。

 どうやら忠の願いは叶えられることになりそうだ。


……


「そんじゃ、本日もよろしくお願いします!」

「ええ、集中してやりましょう」

「よろしくー」


 前と同じ場所で、前と同じように勉強をする。

 最初は下心もありで、忠が開催したこの勉強会は、奇しくもこうして第二回が開催されることとなった。


 本日の目標は、期末テストの対策である。前回のテストでちゃんと点数が上がった忠は、ひうりたちがいるという条件はあるものの、こうして真面目に勉強するようになったのだ。


「期末って数学の範囲が広いんだよねー」

「なぜか一学期の範囲も入ってるのよね」


 一学期に比べると、今期のテストはどの教科も少し大変だ。特に数学と化学に関しては一学期と範囲が被っている部分があり、勉強量が増している。


「むしろ幸運ではないですか。復習するだけで点数が取れるのは、りんりんにとってはいいことなのでは?」

「えー?私もう忘れちゃったよー」


 林さんが文句を言うが、問答無用で勉強を始める神無月さん。

 それを見て、仕方なく勉強を始める林さん。ことあるごとにひうりに尋ねる勉強方法は変わらずだ。


 ひうりは僕の隣に座ろうとしたのだけど、林さんがひうりを求めたため、ひうりは林さんの隣に座ることになったのだ。

 ひうりは少し寂しそうにしてたけど、まあ今日は皆で勉強する日だから我慢してね。


「一樹、これはなんだ?」

「えっと、これはこの方程式に…」


 前回の林さんを見たからか、忠が質問してくることも増えた。最初はひうりに質問することも多かったのだけど、林さんが質問をしまくるので結局僕に質問するようになった。

 最初は忠も渋々ではあったが、今では普通に質問してくる。なんだか子供が成長してるところを見てるみたいで、親の気分になる。


「じゃあこっちは?」

「えっと…んー、これ僕も分からなくて飛ばしたやつだ」

「そうか…神無月さん、いいですか?」

「これですか…これは前にやった公式を利用すると解説されてますが、実はこっちの公式を使った方が…」


 僕でも分からないものは、神無月さんやひうりに質問する。僕は別に成績優秀というわけではないから、どうしてもそういう勉強の仕方になってしまうのだ。

 とはいえ、忠的にも神無月さんと話す機会が得られるのはいいことだろう。


 三時間ほど集中していたら、林さんが机に突っ伏した。


「もう無理ー…範囲広すぎー…」

「もうっ、毎日やってれば問題ないのにやってないりんりんが悪いんだからね」


 林さんが疲れた宣言をしたことで、休憩時間を取ることになった。


 これまた前と同じように飲み物を買うのは僕たちの役目。忠が全員に要望を聞く。


「果物系のジュースがいいー」

「お茶で」


 林さんはオレンジジュースとかでいいのかな。神無月さんは普通にお茶。

 ひうりは何にするかしばらく悩んでいたが、ふと僕の方を見て言った。


「一樹くんのおすすめで」

「…はい」


 忠と一緒にレンタルスペースを出て買いに行く。

 僕のおすすめか…まあひうりだから甘いジュースでいいのは間違いないと思うんだけど、何にしようかな。


 自販機に着いたので、先に忠が三本購入。


「えっと、林さんが…りんごジュースがあるな。んで神無月さんがお茶。俺は…サイダーにしよう」


 ペットボトルって一人で持つと最大でも四本くらいが限界な気がする。そりゃ持ち方を工夫すれば何本も運べるとは思うけど、そこまで行くと業者だ。


 忠が三本を抱えると、次に僕に代わってくれた。


「姫の機嫌を損ねるような選択はすんなよー」

「分かってるよ」


 今更飲み物程度でひうりの機嫌を損ねるようなことはしないけれど…どれにしようかな。

 甘い飲み物という意味では結構色んな種類がある。りんごジュースだって甘い飲み物だし、サイダーも言うなれば甘い飲み物だ。


 どうやら前回ひうりに買ったあのめちゃ甘ドリンクはなくなっている。ひうりくらいしか飲む人がいなかったからだろう。人気のない飲み物は往々にしてこのように市場から消えるのだ。

 結局僕はひうりのためにイチゴミルクを、僕のために水を買った。


「お前、水でよかったのか?」

「水が一番飲み物を飲んでる感じがするでしょ」

「そうか?」


 レンタルスペースに戻る最中、気になったことを忠に訊いた。


「前は一時間も集中できてなかったよね。何があったの?」


 今日の忠の集中はおかしい。

 前は一時間も保てなかった集中を、今日は三時間も保ったのだ。集中力の向上にしては著しい。


「単純な話だ。俺にも目標ができたってわけ」

「目標?そのために勉強?」

「そうだ。俺は打ち込むタイプだからな」


 忠は何が目標になったのかを教えてはくれなかったが、目標ができるのはいいことだ。

 忠は一度決めたことは中々曲げないので、勉強に関して目標ができたのならとてもいいことである。この勉強会も、目標のために頑張っている証拠なのかな。


「一樹は目標はないのか?」

「ないかな…今のところは」

「ま、お前は既に優秀なパートナーを手に入れてるからゆっくりでいいだろ」


 ひうりのことを言っているのだろうか。確かにひうりは優秀だけど、ひうりに頼りっきりになることはないよ。


 僕たちは駄弁りながらレンタルスペースに戻った。


……


「一樹くんは夢の中でも勉強するのね」

「いい点は取りたいし…二人っきりの勉強は夢の君もしたいでしょ」

「よくわかってるじゃない」


 勉強会はすんなりと終わり、僕は夢の中でも勉強をしていた。自分の部屋で勉強するよりも効率がいいから夢に来ているので、自主学習となんら変わらない。

 それに、ここならひうりが先生として見てくれるしね。


「ここで私が勉強しても身にならないから、一樹くんに集中できていいわよね」

「睡眠学習法とかにならないのかな」

「ならないと思うわよ。もしかしたらうろ覚え程度には効果があるかもしれないけど、それだけね」


 夢の中の勉強は気楽に行われる。現実でひうりと勉強する約束もしているし、あまり張り詰めすぎるとよくないとひうりから言われたのだ。


 それに、ひうりにはパフェを渡しているので、こんな状況で集中なんてできそうもない。


「このパフェとても美味しいわね。どこの?」

「街の方に最近できたカフェのパフェだよ。なぜか忠に連れられて行ったんだけど、思いのほか美味しかったから」


 いつもはカフェなんか行かないのに、急に忠から誘われてカフェに行ったのだ。目的はよくわからないかったけど、美味しいパフェを見つけられたので満足である。


 しばらくもぐもぐしていたひうりだが、僕の手が止まっていることに気が付くと少し目を吊り上げて…


「ほら、テスト頑張るわよ!」

「クリーム付いてるよ」


 なんだか締まらないひうりの言葉に苦笑する僕だった。

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