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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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学校の外で友達に会うと気まずい

遅れました!いつもの二倍くらいあるのでご容赦ください…

 日曜日。

 学校にいる間は、ずっと忠が質問攻めをしてきたせいでとても疲弊したが、やっと日曜日がやってきた。夢の中で何度もひうりと練習をしているので、ばっちりだ。

 なんせ、告白練習を本人でやっているのだ。告白予行練習でもここまで充実している練習はないだろう。


 昨日のやり取りなんかは特に面白いことになっていて、


『ちゃんとひうりに告白してくる』

『ええ、期待してるわ』


 謎である。

 夢での事情などを知らない人からすると、何の会話なのかもわからないだろう。


「よし、行くぞ」


 自分に喝を入れて家を出る。

 たまたま家にいた母親に怪訝な顔をされたけど、僕は今から大事なところだから気にしない。


……


 集合は朝九時ということにしている。

 とはいえ、集合時間ギリギリに到着するのはだめだとひうりに言われたので、少し前くらいに着くように家を出ている。創作物でよくある、「待った?」「今来たとこ」をするチャンスであるというわけだ。


 そういうわけで、僕は十五分くらい前に駅前に来たのだけど…


「あら、一樹くん、こんにちは」

「ひうり…早いね?」

「さっき来たとこよ」


 負けた…何分前に来るのが正解だったのだろう。


「もしかして、私よりも先に来るつもりだったのかしら」

「そうだよ…」

「残念ね。次はもっと頑張りなさい」


 悔しい。


「かわいい服だね」

「ありがとう。お出かけって言うから、少しだけ気にしてみたのだけど」


 淡い水色のスカートがかわいらしい。白い服とも相性がいい。


 そういえば、今日のひうりは普通だな。今週は、学校で出会うと必ず赤面して逃げちゃうんだけど…いつも通り楽しむことができるのは、僕にとってはよかった。ひうりが赤面したままだと、僕も恥ずかしくなってしまうから。


「それで、急に呼び出してどうしたのよ?」

「ひうりとあまり遊んでないなって思って」


 これは事実だ。ひうりとは夢の中で遊んでいるので、あまり現実で遊ぼうとしてこなかったのである。

 勿論、現実のひうりを誘うのには相応の勇気が必要ということも加味してほしい。


「確かにそうね。私はそれなりに暇なのに」

「ひうりを誘うには勇気がいるんだよ」

「なら今日は勇気が出たってこと?」


 勇気が出たというか、色んな人に急かされたというか…


「まあいいわ。今日はどこに連れて行ってくれるの?」

「取り敢えず街に行こうか」


 この田舎町ではできることも限られる。電車で街まで移動することにした。

 九時少し過ぎくらいに電車が来る(それに合わせた集合時間にした)ので、少しだけ空き時間がある。


 駅には、日曜日だというのにあまり人がいない。

 僕は思い切って、さっき思ったことを伝えてみた。


「今日はひうり、逃げたりしないんだね」

「っ~…あれは、学校だからよ。二人きりなら、恥ずかしくなんてならないわ」


 少しだけ赤みがかった顔で、そう言うひうり。やはり学校だから、逃げていたらしい。


「一樹くんと一緒なだけなら、羞恥よりも落ち着く方が大きいわ」

「それは光栄だよ」


 あまりひうりは騒がしいのが好きではないし、人が多いところは何もなくても居心地が悪いのだろう。

 ひうりの性格も、この半年で結構理解している。特に好き嫌いに関してはひうりから聞いているので、何を避ければいいのか分かっているつもりだ。


「…落ち着くってのは、本当よ?」

「…そっか」


 なんだか、夢の中でひうりと話しているときの空気に似ている気がする。居心地が悪くない沈黙といった感じ。


 そんなことを考えていたら、電車がやってきた。


「もうちょっと電車の本数が増えたりしないかしら」

「利用者が増えないと難しいかな」


 電車の中はスカスカだ。流石に、誰もいないというわけではないのだけど、座席は多く空いている。

 日曜日のこの時間でこれなのだから、もう少し人数が増えない限り電車の本数が増えることはないだろう。


 僕たちは並んで座席に座り、電車が動き出す。


「私、楽しみだわ。一樹くんから誘ってくれて嬉しいわ」

「一応プランを用意してるよ」


 夏休みにたまたま出会ったあの時とは違い、遊びに行くことを前提としてプランを作っている。ひうりを楽しませることはできればいいんだけど…


「…」


 ひうりが無言で、少しだけこちらに近づいた。

 なんだか既に恋人みたいな空気だけど、まだ違う。夢の中のひうりが、いい空気になるように念じておくって言っていたし、その効果かな。


 電車の中ではあまり喋らず、そのまま街まで到着した。


「久しぶりの街ね」

「あまり街には来ないの?」

「そんなにお金持ってないもの」


 バイトができない学校なので、ひうりのお金はもらった分しかない。

 お小遣いも含めた生活費をひうりは親から貰うので、あまり自由に使えるお金は少ないのだ。


「買い物とかしたいんじゃない?」

「そうねぇ…連れてってくれるの?」

「今日は最初にショッピングモールに行くよ」

「ならお言葉に甘えちゃおうかしら」


 なぜモールなのかと言うと、甘いものが食べられるからだ。

 ひうりとお出かけをするのであれば、食べ物系を増やした方がいい。もちろん、夢ではなく現実なので、食べ過ぎないように気を付ける必要はあるが、それさえ気を付けていれば、ひうりにとって満足度の高いルート設定のはずだ。


「もしかして、甘いものも食べさせてくれるわけ?」

「そっちの方がひうりは嬉しいでしょ」


 甘いものだけなら街を歩いていても見つけられるが、ひうりの需要を満たすのであれば、やはりショッピングモール以上に適した場所はない。

 いつかケーキバイキングみたいなところに連れて行ってあげたいな…


「それじゃ、行きましょ」


……


 街とはいえ、中心都市から離れているこの街のショッピングモールは少しばかり小さい。

 だが、大型ショッピングセンターがここだけということもあり、その小さい建物の中に多くの客が押し寄せるのだ。


「人が多くて…少し疲れそうね」

「そうだね…」


 今は、先ほど買ったクレープをベンチに座って食べているところだ。

 モールに来るなり、入り口付近のクレープ屋にひうりが引き寄せられたために、他のどれよりも先にクレープを買ったのである。


「こんな朝早くからクレープって大丈夫なの?」

「今日はいっぱい歩くから大丈夫よ」


 以前ひうりが言っていたが、僕といると甘いものが特に食べたくなるらしい。夢の中で無意識の慣れがあるからだと思うけど、僕がある程度制限してあげないとあとで辛いことになりそうだ。


 それに、あまりお金がないというのも事実なのである。僕はまともにお小遣いを使うタイミングがないので、必要であれば僕が払うことは吝かではないのだけど、ひうりがあまりそれを好まないからなぁ…

 そういう意味でも、あまり食べ物にお金をかけすぎないように僕が制御する必要があるだろう。


「やっぱりいちごとクリームのシンプルなクレープは美味しいわね」

「僕にはやっぱり生チョコは甘すぎるかな」


 クレープを食べながら、次の予定を決める。

 人数が多いので、ちゃんと順番を決めないと時間が足りないことになるだろう。


「ならちょっと文房具を見ていい?」


 ひうりのその一言で、僕たちは文房具屋へ行くことに。


 クレープを食べ終わり立ち上がる。僕は躊躇いながらも、手を差し出した。


「はぐれないように、ね」

「…ふふ、ええ」


 人混みの中を縫って進む。はぐれないように、手を繋ぎながら。


 ほどなくして、文房具屋へとたどり着いた。日曜日ということもあって、学生の姿が多い。


「一樹くんも何か見る?」

「そういえばシャー芯がなかった気がするな」


 ひうりはボールペンを見ているので、その間に僕はシャー芯のコーナーを見る。

 太さとか濃さとか色々あるので、いつも使ってる材質と間違えないように…


「中野くん?」

「佐々くん、こんなところで奇遇だね」


 シャー芯のコーナーには、見知った顔がいた。同じクラスの佐々くんだ。


「中野くんもこういうところに来るんだね」

「まあ、学生だからね」


 佐々くんはひうりのことには気が付いていないらしい。このまま流れるように解散しよう。


「僕はシャー芯を買いに来ただけだから」

「そっか。僕は紙とペンとシャー芯と…色々買いに来たんだ」


 佐々くんの手元には、既に紙束とボールペンがあった。ノートならまだしも、そんなに紙束を使うんだ。

 家で何をしているのか気になるけれど、今はそこを気にしているわけにはいかない。


「それじゃあね」

「うん、またね」


 外で学校の友達に会うと違和感がすごいな。

 ひうりとは夢の中で何度も会っているので、こういうところに一緒に来ても違和感はないんだけど、佐々くんは外で会うことがないので不思議な感覚だ。


「あ、中野くん」

「え?」

「デート頑張ってね」


 ばれてた。


……


「どうしたの一樹くん、顔が赤いわよ」

「一方的な優位性なんてないんだなって思っただけだよ…」


 文房具屋を後にして、今はブティックに移動中。ひうりが「新しい服が欲しい」と言ったのでその要望に応えるためだ。

 文房具屋で佐々くんと出会ったことはひうりに話していない。佐々くんとひうりは面識がないと思うけど、同級生がいると知ればひうりも気になってしまうだろうから。


 しばらく歩いてブティックに到着。先ほどよりも、大人の人が多い。


「荷物増えそうだけど…」

「そんなに買わないわよ」


 服装は重いし嵩張る。できる限り多くは買わないように…


「そうだ。私の服もそうだけど、一樹くんの服も買いましょ」

「え、僕はいいよ」

「私がコーディネートしてあげるから」


 ちょっと強引なひうりに連れられ、紳士服のコーナーへ。僕はそこまで身長が高くないけど、オシャレになるかな。


「一樹くんはカジュアルな服装が似合うと思うのよね。というわけで、これを着て」


 ひうりがささっと取ってきた服装を渡され、試着室に押し込まれる。

 あまりこういうの着ないんだけど…


「やっぱり、シャツだけよりも、アウターを合わせた方がいいわよ」

「僕そういうのわからないんだけど…」

「私が保証するわ」


 もう肌寒い季節なので、こういう上から羽織る服っていうのはいいとは思うけど、こういうファッションをしてこなかったので着せられてる感がすごい。

 ひうりは更に追加で服を渡してきたので、色々組み合わせを変えながら着替える。着替えが多くて疲れてしまったのだけど…


「こっちの方が…かっこいいわよ」


 少し顔を赤らめながらそんなことを言うひうりに、途中でなんでもよくなった。


「うん、やっぱりこれがいいわね」


 そして最終的に一着のアウターを買うことになった。このまま今日は着なさいというひうりのお達し付きだ。


 僕の服を買ったら、次はひうりの服装を買う。とはいえ、僕はファッションがわからないので、ひうりが選んだ服に感想を言う係だ。


 服を持ち込んで、ひうりが試着室に入った。僕はその外で待っている。

 中からひうりの服の擦れる音が聞こえてきて…すっごい気になる。このカーテンの向こうでひうりが着替えていると考えると…いや、不純な考えはしない!


『キュウウウウン!』


 夢宇の鳴き声が頭の中に響いて、体がびくっとする。その代わり、夢宇のおかげで変な思考を追いだすことに成功した。

 ありがとう夢宇、夜におやつあげるからね。


「一樹くん、どう?」


 脳内の夢宇に感謝しながら待っていると、ひうりが出てきた。先ほどまでとは違い、薄い赤のスカートだ。


「ひうりはそっちの色の方が似合うかも」

「あらそう?」


 ひうりは気が強いから、優しい色よりも力強い色の方がイメージ通りの印象というか、でもその中にある優しさも感じられるというか…なんか僕きもいな。


「そういえば一樹くんはスカートとズボンのどっちが好きかしら」

「えっと………スカートかな」

「随分悩んだわね…」


 ズボンのひうりを想像して、意外と似合うなと思いつつも、やはりひうりにはスカートの方が似合うという結論に至った。

 

「上も合わせてあるの」


 そう言うと、ひうりは試着室の中に戻っていった。

 夢宇の鳴き声に感謝しながら待っていると、上の服も変えたひうりが出てきた。


「かわいい」

「っ…私が何か言う前に言うのはズルよ」

「ごめん、つい…」


 ひうりが着たのはグレーの服。なんていう服なのかは知らないけど、とてもかわいい。

 更に上からカーディガンを着ているので、この季節でも大丈夫そうだ。


 顔を赤らめたひうりが試着室の中に戻り、しばらくすれば元の服装に戻った。


「一樹くんの反応がよかったから、これにするわ」


 ひうりが先程見せてくれた服を一式購入した。それなりに大きめのバッグになってしまったが、大変になるほどの量ではない。


「一樹くんのコーディネートをしたらお腹がすいたわね」

「さっきクレープ食べたでしょ。お昼時ではあるけど…」

「フードコートに行きましょ」


 現在時刻は十二時半。ちょうど、昼食を食べるのに適した時間だ。

 とはいえ、先ほどクレープを食べたからか僕の腹はまったく空いていない。ひうりって健啖家なのかなぁ…


 ここのフードコートには、うどんやバーガーショップなど有名なチェーン店が多く並んでいる。秋だからか、温かいうどんを食べている人が少し多いかな。


「一樹くんは何にする?」

「僕はうどんにしようかな」

「なら私もそうしようかしら」


 荷物を置いて、二人でうどん屋の列に並ぶ。

 僕は普通のかけうどんで、ひうりはきつねうどんを選んだ。かき揚げを入れるか悩んだけれど、多分そんなにお腹に入らないから、何もなしが一番ちょうどいい。


「「いただきます」」


 うどんは提供が早い。二人で並べば、二人で同時に食べられるくらいにはすぐに出てくる。


「久しぶりにうどんを食べたわ」

「そうなの?」

「家じゃあまり食べないし、店にも行かないし…」


 一応僕たちの住んでいる町にも食堂みたいな店があり、そこにうどんが置いてある。

 とはいえ、そこはご年配の人や仕事帰りの会社員などが多く、学生の僕たちが学生だけで行くのは少し気まずいのだ。


 ジャンクフードを食べるには、こっちの街まで来る必要があるし、町にもっと飲食店が増えてくれたら僕たちも集まりやすいんだけど…


「ひうりは家で何を食べてるの?」

「適当に作って食べてるわ。インスタントはお金がかかるから自炊をしてるけど、そこまでバラエティはないわよ」


 夢の中のひうり曰く、たまに食べるインスタントラーメンは罪の味がして美味しいらしい。お金がかかるとはいえ、いくつか家に備え置きしているものはあるらしい。


「それで…この後はどういう予定?」

「モールで買うものがないなら、街を歩こうかなって」

「楽しみだわ」


 午後、こっからが本番だ。

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