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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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理性が飛ぶというのは、避けなければいけない事象である

「えっと…佐倉さん?」

「いつもみたいに名前で呼んでよぉ」


 僕はひうりの家のリビングで、借りてきた猫のように固まっていた。

 夢の中で聞いていたので、家の状態を見たことは会ったけど、こうやって実際に入るのとはわけが違うということを僕は実感しているところである。


 なぜかひうりは、夢のことを覚えているようだった。

 ただ、ひうり自身の目が虚ろであり、体温を計ってみるとやたらと高かったので、正常な状態ではないのは確かだ。夢の中のことを覚えていられるようになったのかと思ったけど、残念ながらそうはいかないらしい。


「ひうり、風邪ひいてるんだから眠ってなよ」

「なによー、せっかく家に来たのにー」


 喋り方に違和感がある。いつものひうりに比べて、随分と間延びしているし、声色も甘えたような感じだ。

 フワフワしているのはいいのだけど、いつものひうりとのギャップがすごい。現実と夢の中とは、態度に違いがあるけれど、風邪をひいたフワフワひうりは猶更違う。

 もしかしてこれが素…?


「プリントはここに置いておくから、ひうりは寝ること!」

「えぇ~」


 ごねるひうりの腕を引っ張って、僕はひうりの部屋まで連れて行った。

 ひうりの親は、いない。こういう日くらいは家にいると思ったけど、そうでもなかったらしい。さて、この時間はどこにいるんだろうかね。


 夢の中で得た知識を元に、ひうりの部屋まで難なく辿り着いたので、僕はひうりをベッドに寝かせた。

 夢の中でも、ひうりの部屋には入ったことがあったけど、やはり実際に来てみると緊張してしまう。ちょっとした小物とか、可愛らしいものに目が行ってしまうのだ。

 それに…あそこに置いてあるのはひうりの私服と…危ない。青少年としての正常が保てなくなるところだった。


「さ、ひうり、おやすみ」

「んー…待ってよ…」


 僕はさっさとこの部屋から出たくなって、すぐにベッドに眠るように言ったが、ひうりが腕を掴んできて放してくれない。

 優しい掴みではあるけど、無理やり引きはがすことはできないので、僕はひうりの目をのぞき込んで言った。


「大丈夫。また、夢の中でね」


 僕はひうりの頭を撫でて、優しく引きはがした。

 それでも、随分と唸っていたが、僕はもう一度頭を撫でて部屋を出た。彼女がかわいいけど、それ以上に、家にいると緊張してしまうのでね…

 あまりこういう紳士的な行動は、現実でしないようにしているけど、甘えたひうりには多分一番効くはずだ。


 僕はひうりの家を出た。ひうりの家はオートロックなので、僕が出るだけで鍵がかかる。


「ふぅ…」


 詰まっていた息を吐きだす。

 夢の中で予習をしていたとはいえ、彼女の家は中々ハードルが高いことを思い知ったよ。ひうりの親がいなかったことは、ある意味助かったのかもしれない。風邪のひうりを放置しているのは、あまり許せないけどね。


 僕は家に帰って、今までで最速に夢の中へ行った。ひうりが寂しそうだったから。


……


「一樹くん、こんばんは」

「ひうり、大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ」


 夢の中のひうりは、現実のひうりと違ってフワフワしていなかった。あのひうりも可愛かったんだけどなぁ…

 ただし、その顔は赤い。口調や態度はいつも通りだが、顔色の悪さが体調不良を如実に訴えている。


「その…現実の私が失礼したわ」

「気にしないよ。というか、やっぱり夢のことを覚えてたの?」

「そうね…ちょっと説明しづらいんだけど…」


 ひうりの口から、説明を聞く。体感のことだけど、夢のことは謎が多いので、一つでも知っていることは増やした方が良い。

 どうやら、白昼夢みたいな状態だったらしい。僕が会ったひうりは、現実にいながらも夢の中にいるような感覚だったという。熱が高いからこそ起きた現象ってことかな。


「あ、あと…その…」

「ん?」

「あの私は、忘れなさい!あれは、その、私じゃないから…」


 どうやら、あのフワフワひうりは、本人からすると恥ずかしいものらしい。僕はとても可愛らしいものとして見てるし、なんならもっと見せてくれとも思ってるけど、それはできなさそうだ。


 あのひうりは、言うなれば甘えモードらしい。いつもの凛とした性格とは真逆すぎて、ギャップで恥ずかしくなってしまうのだとか。ああいうオンオフ、僕はいいと思うんだけどなぁ。


「甘えるのは、ここだけでいいのよ…」

「ならここでああいう姿を見せてくれても…」

「だめよ!あれは、その、だめよ」


 だめらしい。残念。


 現実のひうりは風邪薬を飲んでいるので、明日には元気になると本人は言っている。だから、夢の中でやりたいことをするのだと。

 明日になって、今日のことを覚えているのかは定かではないけど、多分覚えていないので僕は平然を保たないといけない。


「さて、シュークリームが食べたいわ」

「…いいよ」


 僕はプチシュークリームを出現させた。こういう時に断れないのは、僕の悪いところだ。

 でも、夢の中で好きなものを食べるくらいは大丈夫だろう。プラシーボ効果が発生する可能性もあるけど、ひうり本人が大丈夫と言っているうちはそれも発生しないだろうし。


「うーん、甘くて美味しいわね。一樹くんも食べなさいよ」

「病人と同じものを食べるのは…」

「酷いわね。夢の中なんだから、病原菌なんて無いに決まってるでしょ」


 それは分かっているけど。

 これで僕が風邪をひいてひうりが家に来るならば、まだ風邪もいいかなと思える。しかし、何も覚えていない現実のひうりは僕の家の場所を知らないのでどうしようもない。


「じゃあ食べるよ」

「そんなに緊張することないじゃない」


 ひうりのツッコミを聞きつつ、僕はシュークリームを一つ食べた。僕が想像した通りの甘い味が口に広がる。


「美味しいね」

「ええ。今日は、朝まで、一緒よ?」

「いつもそうじゃないか」


 と、言いつつ僕は少し嬉しくなる。

 毅然とした態度ではあるけども、夢の中のひうりも現実のひうりと同じように若干の甘えモードに入っているようだ。風邪をひいて、一人ぼっちの家にいたのだから無理もないだろう。

 風邪はメンタル面でのダメージもあるので、そこはケアしていかなければならない。


「んー…」


 ふと気が付くと、ひうりは僕のことをじっと見つめていた。

 昨日のように、目が潤んでいるわけではないけど、何かを求めているようには見える。なんだろうか。


「…ん」


 ひうりは腕を広げた。

 これは…


「おいで」

「んー!」


 僕も腕を広げて、飛び込んできたひうりを受け止める。

 やばい。今日のひうりが可愛すぎて理性が飛びそう。夢の中だから何でもしていいとはいえ、僕たちはまだ高校生なのだから、限度がある。

 僕は理性をなんとか保ちながら、朝までイチャイチャするのであった。

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