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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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告白の参考書なんて存在しない

 ひうりに告白を急かされてから数日。修学旅行の終わりから土日を挟んだ月曜日。

 忠がよく絡んでくるようになった。


「絶対に何かあったんだろ?なあなあ」

「何もないってずっと言ってるじゃん」

「いーや、あったね。俺にはわかる」


 ずっとこれだ。朝はなんとなくって感じだったのに、今は確信を持って何があったのかを聞いてくる。しかも、ひうり関連だってことすらもばれている。


 忠は探偵か?実家は考古学者だから、探偵の才能があるだけか?


「佐々もそう思うよな」

「えっと…」


 僕が佐々くんのところに逃げても、忠はついてくる。


「忠、しつこいよ」

「お前こそ、言えよ。楽になるぞ。姫との間に何かあったんだろ?」


 なんでこんなに…


「だって、修学旅行終わりにお前と同じバス停で姫が降りたらしいじゃないか」

「待ってなんでそれを」

「林さんから聞いた。何かあったと思うに決まってるだろー?」


 林さんェ…


 ひうりがバス停に降りたとき、林さんからメッセージが来ていたし、バス内がざわついていたのも覚えている。どうやら、ひうりが変なところで降りたことは分かっているらしい。

 ひうりの家はばれていないが、バスを降りる様子から妙なことになっているということはバレているということだ。


「そういえば姫といえば…」


 しかし、そこでチャイムが鳴る。忠が余計なことを言う前に自分の座席に戻る。

 忠は不満そうな顔をしながら自席に戻った。


……


 昼休み。忠に絡まれると面倒なので、一人で弁当を食べようとしたところ、教室の外から声をかけられた。


「彼氏くーん!」

「…林さん、大声でその呼び方をするのはやめてほしいな」


 僕は食事を諦めて、教室の外に出る。

 話が逸れるが、最近僕が林さんと話したりしてても視線が集まらなくなってきた。いや、集まってはいるのだけど、男子からの敵対心的なのが薄くなったのだ。どうやら、林さんの彼氏にはならなさそうだというのが男子たちの共通認識になったらしい。


 閑話休題。


「やっほー」

「林さん、弁当は食べさせてほしかったな」

「ごめんごめん。すぐ終わるから」


 昼休みが始まってすぐなので、林さんも弁当は食べていないのだろう。内容は一つ、たった一個の質問だけだった。


「今日ひうちゃんと話した?」

「今日は会ってないよ」


 今日は朝から来なかったし、昼休みに至るまでの間で教室に来なかったので、一度もひうりと話していない。一度も話さない日もたまにあるので、これは特に珍しいことでもない。


「そっかー。わかった!」


 それだけ言うと、林さんは自分のクラスに戻っていった。

 ひうりに何かあったんだろうか。


「どうしたんだ一樹」

「ん?いや、なんでもないよ」


 わざわざ忠に言うようなことでもない。

 あとでひうりと話すこともあるだろうし、そのときに確認しよう。


「何かあっただろ」

「だからなんでもないって!」


……


 放課後になるまで、ひうりが僕の教室に訪れることはなかった。

 そのため、少し様子を見るために、放課後のひうりの教室を覗いてみた。注目を集めないために、人がいなくなるのを待ったので、多くの人は部活のためにいなくなっているだろう。


 僕が教室を覗くと、そこにはひうり、林さん、神無月さんの三人がいた。ひうりは机に突っ伏している。


「ん?あ、彼氏くーん。ちょうどいいや」


 僕のことに気が付いた林さんが手招きする。ひうりはこちらを見ず、机に突っ伏したままであり、体調不良かと心配になる。


「ひうー、彼氏くんが来たよー」


 僕が近づいても、ひうりは顔を上げない。

 しかし、なんだから顔が少しずつ赤くなっていっているような…


「…こんばんは、中野くん」


 しばらくして、やっとひうりが顔を上げた。だが、こちらを見ようとせず、顔は真っ赤だ。


「真っ赤なひうちゃんかわいいー」

「りんりん、うるさいわよ」

「かわいいー!」


 真っ赤なひうりを茶化す林さん。

 もしかしてひうり、照れているのだろうか。


「りんりん、茶化すのはやめなさい」

「コノちゃんだってかわいいと思うでしょ?」

「それは…そうですが…」


 ああ、神無月さん、流されないで。ひうりが謎にダウンしている今は、林さんを止められるのは神無月さんだけなんだ。

 しかし、その思いも空しく神無月さんは押し黙ってしまった。


「いやー、ごめんね彼氏くん。ひう、冷静になっちゃったみたいで」

「なっちゃったっていうのは?」

「修学旅行のあとに何かあったんでしょ?ひうが教えてくれないからわからないけど、ひう的に大変なことに…」

「りんりん!」


 バッとひうりがこちらを向いた。その瞬間、林さんが視線を避けて、僕とひうりの目が合う。

 さっきまでも赤かったひうりだが、目が合った瞬間さらに赤くなった。


 たしかに、顔が赤いひうりは新鮮でかわいいね。


「っ~//」


 謎の音を発したあと、ひうりは立ち上がって教室の外に逃げて行った。それを神無月さんが追いかけていく。


 その様子を眺めていた林さんに話しかける。多分、今のひうりを追いかけるのは僕じゃない方がいい。


「林さん、あんな揶揄って…」

「あははー。人間ってあんな一気に赤くなれるんだねぇ…」

「笑ってる場合じゃないでしょ」


 まああれでひうりの機嫌が悪くなるってことはないだろうけど、少し気まずくなってしまう。

 僕が林さんに詰め寄っても、林さんは飄々としたままだ。


「だってさ、あれ完全にべた惚れじゃーん。単身赴任の夫を想う妻が我慢できなくなったあげく羞恥心が天元突破するやつじゃん?」

「その例えはよくわからないけど…」

「ともかく、あそこまでひうが惚れてるなら、私たちから何か言うことはないわけ。ならもう揶揄う方が楽しいでしょ?ひう、かわいいし」


 かわいいのは同意するけど、揶揄うのはどうだかなぁ…


「彼氏くん、早くひうに告白して安心させてあげてよ?」

「え?」

「だって、ひうの家ってあれじゃん。だから、少しでも精神の支えになってくれたら私もコノちゃんも安心するってわけ」


 なんか林さんって、ひうりのお母さんみたいだなぁ…娘を嫁に出すお母さんのような思考だ。


「告白、告白かぁ…」

「自信ないの?」

「どうすればいいかわからないよ」


 そもそも、真面目な告白なんてしたことないのだ。夢の中でもまともに告白していないので、現実で告白しろと言われても、少々困ってしまう。

 だが、そんな僕を呆れるような表情で見る林さん。


「そんなのなんでもいいよ。彼氏くんから、ちゃんとひうに好きって伝えてあげて?」


 呆れたような声から、優しい声に変って僕にそんなことを言う林さん。

 林さんって楽しさを求めて揶揄ったり、悪乗りしたりする割にはしっかりとした芯があるんだよね。


「というか今すぐゴー!」

「ええ!?」

「時間は待ってくれないよ!」


 突然そんなことを言う林さんに背中を押されて、ひうりの元に向かう僕たち。


 え、この流れで告白するの僕。

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