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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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敬う気持ちがなくとも、存在するなら神は現れる

 足元は薄い霧のようなものが立ち込めており、果てのない白い空間に僕は立っていた。

 まさか立ったまま寝たわけではないだろう…いつもの感覚で創造しようとしても、何も生まれないので夢の中ではないようだ。


 財布はある。スマホもある…が、電源はつかない。どうやら連絡をする方法は存在しないみたいだ。


 そこでふと、物音がすることに気が付いた。

 足音がする方を見てみると、そこにはなぜか茂みがあり、その手前に狐がいた。本物を狐を見るのは初めてだなぁ、なんて益もないことを考えてしまう。


 狐は僕の足元にすり寄ってきた。


「えっと、ごめんね、何も持ってないんだ」


 狐って何を食べるんだろう。肉食って聞いたし、生肉でも持ってたら食べたのだろうか。夢の中ならいくらでも生み出してあげたんだけど…

 ただ、狐は僕が話しかけても逃げたりせず、足元に座り込んだ。かわいいけど、この子どうすればいいんだろう。


「ここがどこか知ってる?」


 応えるはずもないのに、狐に話しかける僕。狐は大きく欠伸をするだけで、何も返事はしてくれない。

 帰り方もわからないので、取り敢えず狐を撫でていると、突然狐はキューンと鳴いて、茂みの方に走って行ってしまった。


 狐ってコンじゃないんだ…


 何も空間なのに、なんで茂みがあるのか不明だ。でも、調べられるのもここしかない。僕が茂みをガサガサすると、また狐が茂みの中から出てきた。


「え、どこから出てきたの?」


 茂みは、公園の植木のように小さくポツンと生えているのだ。ガサガサしても何もないように思えるのに、キツネが隠れる隙間はあるらしい。


「んー?」


 僕が狐と同じ高さで茂みを覗き込んでみると…


「神社…?」


 茂みの奥には、先ほど僕が参拝した伏見稲荷神社の本殿が見えた。しかし、立ち上がって見てみても、茂みの向こう側に神社など存在しない。

 どうやら、この茂みを介さないと見えないらしい。


「通れるかな…」


 狐でもギリギリの大きさなので、僕では通るのも難しいかもしれない。でも、何かあるなら行ってみるしかあるまい。

 僕が匍匐前進で進みだすと、後ろから狐がお尻を押してきた。手伝ってくれているのだろうか。

 茂みの枝に何度も刺さりながら進むと、やっと茂みを越えることができた。神社があること以外は、先ほどと変わっていないが、まあこんな謎の空間なので理論を求めてはいけないだろう。


 僕の足元では狐が座っている。なんなんだろう、この子。


「参拝してみればいいのかな…」


 僕が本殿に近づくと、狐もついてくる。なんだかゲームのパーティメンバーみたいだ。

 財布の中身は…まだ百円があるな。ガラガラする鈴はないけど、参拝しておこう。


 …帰らせてください。


「ぬおっ!誰かおる!」

「え?」


 顔を上げると、そこには少女が立っていた。狐耳と狐尻尾を付けた和服の少女。


「どうやって入ってきた!」

「僕も知りたいです」


 僕の足元にずっといた狐が、少女の方に走っていく。そして、僕にしたのと同じように少女の足元にすり寄っている。


「これ、お主が連れてきよったのか。ダメじゃろ」


 狐をひょいと持ち上げて、狐を叱る少女。確かに狐にお尻を押されたけれど…


「ふむ、まあよい。お主は特別じゃ」

「えっと…あなたは…」

「わしは宇迦之御霊神。宇迦って呼んでくれていいぞ」


 宇迦之御霊…ってお稲荷様!?確か、稲荷神社で祀られているのがそんな名前の神様だったような気がする。

 うーむ、まあ夢の世界が存在するなら神様もいるか…


「宇迦さん、僕ってちゃんと帰れるんですか?」

「おおう、やけに落ち着いておるなお主。ちゃんと帰れる、安心せい。ついでに言うと、ここは時空が歪んでおるから時間の進み方を気にする心配もないぞ」


 よくわからないけど、大丈夫らしい。神様って荘厳なイメージがあったんだけど…


「こんな姿で悪かったの」

「心を読まないでください」

「ここはわしの神域じゃぞ。心の声なんて何もしなくても聞こえてくるわ」


 神域…となると、ここは宇迦さんが生活している場所ってことだろうか。家、みたいな。


「そうじゃ。まあ家なんてなんでもよいのじゃが…人間たちが作ってくれたから、こんな風に本殿を模しておる」


 それを知ったら神社の人たちは喜ぶだろうなぁ…いや、本殿を建てた宮大工の人たちの方が喜ぶだろうか。まあ、なんにせよ神様のために作ったものがちゃんと認識してくれていることは嬉しいだろう。


「因みにその姿は…」

「これか?よいじゃろ、狐耳。最近の若い子のブームらしいの」


 確かに動物の耳をつけて写真を撮る人もいるけれど…神様がそんな姿でいいのだろうか。


「姿なんぞいくらでも変えれるのじゃ。ただの、どうも最近の人間にはわしがこのような姿であると思っている者が多いらしいからの。何も意識しないのなら、そのイメージ通りの姿になるのじゃ」


 僕の夢の世界と同じ感じかな。イメージ通りに形が変わるのとか、それっぽい。


「そうそう、わしが聞きたいのはその夢の世界のことなのじゃ」

「何か知ってるんですか?」

「むしろ、何も知らないからこそ聞きたいのじゃ」


 神様でも知らないことあるんだ…それに、僕も把握していることはそんなに多くないんだけど…


「海外には全知に近い神もいるらしいがの。日本の神は担当ごとに区分けされておるから、全知の神なんかおらんの」

「なにその神様事情…」

「あ、そうそう。お主を帰すのはわしじゃなくて別の神だからの」


 区分けってすごいな…まるで会社みたいだ。そういえば神様にも親とかあると言うし、上下関係があってもおかしくないか…


「というか、そんなこと僕に言ってもいいんですか?」

「なに、一人の人間に伝えたところで影響はあるまい。それに、お主は精神だけがこちらに来ているみたいだから、目が覚めたら夢のように記憶が曖昧になる」


 おお、久しぶりに記憶が曖昧な夢が見れるのか。それはちょっと楽しみだ。最近は夢を見てもはっきりと記憶が残ってしまうから、眠った感覚がなかったのだ。

 と思ったら…


「なに、お主、夢の記憶を保持できるのか」

「あれ、問題が?」

「まあ別に覚えてもらってもいいのじゃがな。夢の記憶を保持できるなら、目が覚めても曖昧にはならん。すまんの」


 …残念。

 まあ神様に会うなんて貴重な体験、中々できるようなものじゃないし、覚えていて損じゃないか。


「そうじゃ。わしがわかる範囲で、お主の力を解説してやってもいいぞ」

「何も知らないんじゃ…」

「こうも近くにいて会話しておけば、ある程度分かる」


 おお、神様ってすごい。


「そうじゃのぉ…お主のそれは、精神だけを飛ばす力じゃ」

「精神だけを?」

「いわゆる幽体離脱ってやつじゃな。お主と、あと共にいるおなごは幽体離脱しているようなものじゃ。もっとも、完全な幽体離脱はお主だけのようじゃがの」


 ひうりの記憶が保持されない理由は、幽体離脱が完全ではないかららしい。よくわからないけど、精神の半分だけが飛んでるとかそんなものだろうか。


「そうじゃの。深層心理の部分だけが分離しているせいで、記憶が保持されないようじゃ。じゃが、だからこそ意思決定や感情に影響を及ぼしているともいえる」


 うーん、いまいちよくわからない。そもそも、精神とか魂の分野って未だに解明されていない分野じゃなかったっけ?


「あとはそうじゃなぁ…幽体離脱したあとは、神域モドキを作っておるらしい。そのせいでここにも迷い込んだようじゃな…まあ、この神社まで来たのはこやつが連れてきたからじゃがの」


 未だに宇迦さんに抱っこされている狐。もしかして、その狐って使者とか言われている神聖な子なのだろうか。


「そうじゃぞ。まあ生まれは普通の子なんじゃがな。わしを見れたから使者にしたのじゃ」

「君はすごいなぁ」


 特別な狐ということだろう。確かに知能は高そうに見えるし、神様らしい気配も…それはしないけれど、何か特別な力があるような気もする。

 ただ見た目は普通の狐と変わらない。


「まあ使者と言っても強い力があるわけではないからのう…」


 あくまでも使者、といったところだろうか。


「それはともかくじゃ。お主の夢の世界と呼ばれるものは、不安定ということでもある。今はなぜか安定しておるが…いつなくなってもいいように構えておくんじゃな」


 …そうか。まあ、いつかはなくなると思っていたからそれは問題ない。

 そもそも、この学年になったタイミングで突然発生した現象なのだ。突然消失したところで驚くようなことではない。


「なんじゃ、思ったよりも冷静じゃなお主」

「まあこんな世界に飛ばされてるし」


 神域とは言ったものの、現実味のないような場所は慣れている。そんなところで超常現象に言われたことを受け入れるくらいしかできない。

 夢の世界の検証も結構やっているし、不思議現象には慣れてしまっている。つまり、ここで何を言われても驚く要素はない。


「面白い人間じゃなぁ」

「そうかな」

「うむ、わしの加護をあげたいくらいじゃ」


 宇迦さんの加護ってどんなのかなぁ…狐に好かれるとかあるのかな。


「いや、わしは農業とか色々な神じゃから、動物に好かれるとかないのじゃが…あ、そうじゃ」


 そんなことを呟いた宇迦さんは、抱いていた狐を放した。狐はそのまま地面を飛び降り、キュンと一度鳴いた。

 すると狐は僕の足元まで走ってきた。そのまま僕の足にすり寄ってくれる。


「その子をお主の世界にやろう」

「え、いいんですか?」

「うむ。その子も懐いておるようじゃしな。わしの使者は一匹じゃないからの」


 僕は狐を抱き上げて、目の前に持ってくる。

 神様の狐だからエキノコックスとかも持ってないだろうし、ひうりが可愛がるかもしれない。僕とひうり以外の生き物が夢の世界に増えるのは嬉しいことだ。


「別にそやつにできることはそこまでないんじゃが…お主の世界の安定に少しだけ役立つかもしれん」

「ありがとうございます」

「使者だから何も食わんでもよいんじゃが…よければ具現化したごはんを分けてやってくれ。食べちゃいけないものとかはないからの」


 夢の世界のものでいいのかと思ったが、そもそも何も食べなくてもいいのであればデザートとかでいいのか。ひうりのデザートを出すときに一緒に出してあげればいいのかな。


「さてと…ミキ!見ておるのじゃろう!」


 虚空に向かって叫んだ宇迦さん。

 すると、突如空間が歪んで一人の男性が現れた。


「ほいほい。こいつを運んでやろうね」

「えっと…」

「宇迦の上位の神だよ」


 見た目は普通の人間。宇迦さんに比べても、明らかにこちらの方が神様っぽさはない。


「ほら、おかえりの時間だ」


 男性が腕を軽く振ると同時に、そんなことを言った。

 その瞬間僕は意識を失った。


……


「一樹、いつまで祈ってんだ」

「…え?」


 顔を上げると、そこは元の場所。隣には忠たちが立っている。


「ほら、そろそろ移動しようぜ」

「う、うん」


 やっぱりあそこの記憶ははっきり残っているんだなぁ…

 今日の夢で話せる内容が増えたな。

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