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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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たまには彼女のことを忘れてみる

 修学旅行初日。僕たちは街の方にあるバスターミナルまで来ていた。このまま、バスで京都まで行き博物館を見た後にホテルに入るのが今日のスケジュール。

 そういえば言ってなかったけど、修学旅行先は京都です。


「つまり、修学旅行の間はお前らはイチャイチャしないと」

「別に日頃イチャイチャしてないでしょ」


 バスの車内は、班ごとに席が決まっている。時間が足りなくて自由時間などの予定を決められなかった班がいるので、車内で相談できるようにするための措置だ。


 僕らの班は、概ね予定が決まっているので自由に過ごしている。スマホの利用も自由なので、中谷さんはスマホをいじっており、森本さんと佐々くんは本を読んでいる。


「まあ普通に過ごしてたら会話する機会もそんなにないだろう。隣のクラスだしな」

「まあね」


 僕は忠に、修学旅行中はひうりとできる限り話さないことを伝えた。夢で言われたからとは言えなかったので、気兼ねなく楽しめるようにということにしておいた。


「でもやるなら徹底的にやらないとな」

「どういうこと?」

「もし姫がお前に話しかけてきたら、俺が妨害してやろう!」


 それってひうりに嫌われるのでは…?それにそこまでする必要はないんだけど…


「まああれだ。倦怠期回避術だ」

「倦怠期って…」

「聞いた話だと、いつも一緒にいるよりたまには距離を置いたほうが長続きするらしいぞ」


 それどこ情報なのさ。それに、現実ではいうてそこまでひうりと一緒にいるわけではない。

 夢の中だと距離を置く方法がないので、どうしても一緒にいるけれどあれは仕方がないので割り切るしかない。


「つうわけで、姫には悪いけど、一樹離れをしてもらおう」

「なにその親離れみたいなの」


 妙に忠が乗り気なので、僕は止めることができない。

 そこまでしなくてもいいとは言ったけれど、完全遮断でもいいと言えばいいのだ。ひうりには無視しないでと言われているが、忠が邪魔をするのなら無視でもないし。


「なんか面白いこと話してるわね」

「中谷さん」

「それ私も混ぜて。ひうりちゃんの困った顔見てみたいし」


 なぜか中谷さんも悪乗りしてきた。女性版忠と以前説明したけど…中谷さんの方が性格が悪いかもしれない。


「あわよくば姫が一樹に飽きて、乗り換えてくれたらよし!」


 …やはり忠も性格が悪いかもしれない。


……


 博物館に到着した。ここでは古い文献や文化の他に、庭園での展示を楽しむことができる。


「修学旅行で一番つまらんイベントだ」

「忠、ここでそんなことを言わない」


 忠は古いものに興味がなく、勉強しようという気概もないため、博物館でのテンションは低い。修学旅行の中で一番低いのかもしれない。


「博物館なんてどうでもいいだろー」

「修学だからね、これ」


 あくまで学ぶ旅なのだ。遊びだけに重点を置くわけにもいかない。


「進藤くん、早く並んでください」

「へーい…」


 森本さんに怒られた。まるでテスト前のようなテンションである。


 僕はというと、それなりに楽しみである。知るのが楽しいのもそうだが、夢の中に再現する参考になればとも思っている。

 まあ古いものを再現して、ひうりが喜んでくれるのかはわからないけど。


「皆さん、これから一時間、自由に見て回ってください。一般の方もいるので、配慮を忘れずに」


 先生の号令で、自由時間になった。とはいえ、博物館は見てて愉快なものがあまりないので、どことなくどの班も動きがゆっくりだ。

 僕らの班は、忠の足が遅いせいでゆっくりである。忠以外は博物館に対する忌避感がないみたいだ。


「ほら、行くよ忠」

「うぇーい」


 返事はするけど、動きは遅い。


「俺はここで待ってるから、みんなで行ってきていいぞー…」

「班行動だと言っているでしょ。ほら、早く行きますよ」


 委員長がいるので、ルール破りみたいなことは許されない。


「ぐええぇ」


 忠を引きずって博物館の中に連れていく。


 中に入っても、忠はやる気のないままだった。一応話題を振ってはみるものの、まともな返事がない。博物館に入る前に魂でも抜かれたのだろうか。


 しばらく歩いていると、隣のクラスの班が集まっているところに来た。その中にはひうりもいて、こちらに近づいて…


「あの、中野く…」

「一樹、あの巻物気になるなー!行こうぜ!」

「ちょっ」


 反応はっや。ひうりが話しかけてきた瞬間に、僕の腕は忠に引っ張られた。魂を返してもらったのかな。


「ふぅ、なんか楽しいなこれ」

「忠が楽しまないでよ」


 ばれないようにひうりの方を見てみる。なんだか寂しそうな目でこちらを見てきており、とても心苦しい。

 忠はというと、一気に元気になった。やっぱり忠は性格が悪いのかもしれない。


「この調子で、姫の会話は避けような」

「既に心苦しいんだけど」

「我慢しろ」


 そんな理不尽な…


「修学旅行の間は恋人のことは忘れろ」

「…恋人じゃないよ」

「同じようなもんだろ。林さんもお前のこと彼氏くんって呼んでるじゃん」


 ひうりとの関係について、噂が加速したのは確実に林さんのせいだ。先日も、林さんが教室に来たから二つの派閥に殺されかけたし…

 ちなみに、この二つの派閥は、僕に何かする前に鎮火したらしい。林さんが何か言ったらしいんだけど…果たして何を言ったのか。今の僕にとって爆弾みたいなものだから、ちょっと怖い。


「急に走らないでよ…」

「私が思ったより強引に振り切ったわね」


 三人が追いついた。ひうりはいないので、多分いい感じに宥めてくれたのだろう。


「進藤くん、佐倉さんがちょっと怒ってました」

「おお怖い。でもな、たまにはいいだろ」

「まったく…」


 森本さんの威圧は、忠には効かないみたいだ。

 楽しんでいるときの忠は、いわゆる無敵状態に近い。楽しんでいる間は、罵詈雑言も笑って受け流せる心構えが身につくのである。


「よし、今のうちに姫から離れよう」

「佐倉さんがかわいそうだけど…」


 佐々くん、僕もそう思うよ。


……


「逃げられちゃったね」

「大丈夫、ひう」

「逃げなくてもいいじゃない…」


 寂しい。

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