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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
43/84

周囲からの目を気にしないというのは思ったよりも難しい

 次の日。


「じゃあ一樹はさっさと追い返されたってことか」

「そうだね」


 忠に聞かれたので、僕は昨日あったことを話していた。

 ひうりの家を知っていることを、忠だけは知っている。忠なら、僕に嫉妬の目を向けてくることも実力行使に出てくることもないからね。


 ひうりの親については、忠は何も知らない。忠以外の人だって、ひうりの親がどんな人物だなんて知る由もない。多分、普通の親か、もしくはむしろ優秀な人だと思われているかもしれない。


 僕が追い返された話も、特に違和感のない話として聞いている。病気の人がいる家で追い返されるのは、それなりによくある話であるからだ。


「にしても、なんで姫の家を知ってるんだ?」

「まあ、色々あってね」


 あの林さんと神無月さんも知らない情報なのだ。説明することはできない。

 そもそも、現実のひうりだって僕が家を知っていることを知らないのだ。風邪のときは記憶が曖昧になるみたいだから助かるけど、何かの拍子で知られたら気味悪がられるかもしれない。


「僕は知らないのだけど、今日は来てるの?」

「姫はちゃんと来てるぜ。つか、姫がいるときといないときじゃ学校の男子のやる気が段違いだから、男子見とけばわかるぞ」


 現金な人たちだ。ひうりが卒業したら、下級生とかどうなるのだろうか。上級生も、大学でちゃんとやる気を出せていたらいいのだけど…

 ひうりの影響力は、学校中の男子にまで広がっている。多分、クラスの男子を見るだけでもひうりがいるかどうかわかるのだろう。


 いや、でもそれって男子たちが全員朝のうちにひうりを見てなければ成立しないのでは?もしかしてずっとひうりのことを探している人でもいるのだろうか。

 もしそうなら、流石にストレスだろうし何とかしたほうがいいと思うんだけど…


「心配するな。変なことはない」

「何も言ってないよ」

「顔に書いてた。こいつらは第六感で感じているだけだ」


 むしろ変だよ。気持ち悪いよ。

 僕だってひうりを第六感で感じることはない。関わりがなかった去年だって、僕はひうりのことを感じることはなかった。この学校の男子はどこかおかしい。


「お、一樹。来たぞ」


 忠が教室の出入口を指さす。そちらを見てみると、ひょこっと顔を出してこちらを見ているひうり。

 会いに来ないようにするという作戦はどうしたのだろうか。しかも、ちゃんと乙女モードが発動しているせいで、男子たちがいつにも増してひうりに注目している。


 普通の状態でもひうりは周囲の視線を集める。それだけ美人だということなのだけど、そんな人がちょっと顔を赤らめて恥じらっているともなれば、男子は視線を外すことができなくなるのだろう。

 散れ。僕の彼女だぞ。


「姫ってたまーに、ああいう風になるよな。一樹、何か知ってるか?」

「知らないよ」


 ひうりが甘えまくっているだなんて、誰にも言えるはずがない。そもそも夢の出来事なのだから、誰かに言うという選択肢は存在しない。


「あ、戻ってった」

「戻ったね」

「ああいう姫は破壊力がえぐいな。お前と話してなければ気絶してるところだった」


 ひたすら甘えるひうりを昨晩見ているので、僕には耐性がある。いやまあ、かわいいけど。


 こうなったひうりは、一日は元に戻らない。林さんたちに先に話をしておいて、ひうりを止めておくようにお願いしたほうがいいかもしれない。あのひうり、暴走しがちだし。


「それにしても、いつもよりも教室に来るのが遅かったな。もっと早くから来てるはずなんだが」

「それは…」


 それは、行くかどうかをずっと考えていたからだと思う。変な気分になると昨日も言っていたし、今日のひうりはいつもよりも頭がごちゃごちゃになっているのだと思われる。

 そのため、すぐに決めることができずに、今になって顔を出したということだろう。僕と目が合ったらすぐに戻ってしまったのも、それが原因だ。


「それは?」

「いや、なんでもない」

「…まあいいけどよ。朝のHRが始まるぞ」


……


 とある午前の小休憩にて。

 先日のテスト勉強会の影響で、僕は連絡手段を手に入れている。僕は、林さんにちょっとだけ事情を話して、ひうりのことを制止してもらうように頼んだ。


『でも今のひう見てて面白いよ』

『あとになって絶対に後悔するだろうから止めてあげてください』

『やだー』


 だめだった。林さんは、こういうときに楽観視するとともに楽しむタイプのようだった。

 というわけで、神無月さんに連絡してみる。こういうときに動いてくれるタイプとは思えないけど、伝えておいたら何か気を利かせてくれるかもしれない。


『りんりんから色々言われているのですが』

『さっき林さんには断られたからね』

『…わかりました』


 取り敢えずこれでなんとかなるはず。


……


 そう思っていたのだけど、今僕の隣にはひうりがいます。

 周囲には人がおらず、僕のスマホにはこんなメッセージが残っている。


『私にできることは、誰にも邪魔されない場所に誘導することでした。頑張ってください』

『彼氏候補くんが彼氏くんになれるかも!』


 どうやら神無月さんは、林さんに負けたらしい。僕とひうりが会うこと自体を止めてもらいたかったのだけど…まあ、頑張った方かもしれない。

 なんせ、今の時間は放課後なのだ。昼休みはひうりたちと会わなかったことを考えると、神無月さんもちゃんと制止してくれていたのだろう。


「…」

「…」


 神無月さんに言われた場所に行くと、ひうりが一人でやってきた。そして、体育祭のときに来た誰もいない裏庭まで誘導された。

 並んで座っているけど、ひうりは何も言おうとしない。


「…」

「…」


 特に気まずいとは思わない。こんな雰囲気は夢の中でも、何度も過ごしたことがある。僕もひうりも、この空気に対して抵抗感はない。


「ねえ」

「なに、ひうり」


 ひうりから話しかけてきた。


「そっち寄りかかっていい?」

「…いいよ」


 ひうりは僕の肩に頭を乗せた。夢では何度もしたことあるけど、現実では初めてだ。そのため、少しドキドキしてしまう。


「撫でなさい」

「え?」

「頭を、撫でなさい」


 ひうりの方を見ると、顔が真っ赤に染まっていた。恥ずかしくなるぐらいなら言わなければいいのに。


「よしよし」

「えへ…」


 ひうりが満足するまで、撫でることにした。


……


「あれで付き合ってないって嘘でしょ?」

「覗き見はよくないですよ」

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