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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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42/84

ストレス発散の方法は人それぞれ

 夢の中にて。


「ううぅ…」

「よしよし…」


 僕はひたすらひうりを撫でていた。ひうりに抱き着かれていて、正直夢の中だというのに少し苦しいくらいなのだけど、事情が事情なので撫でるのはやめない。


 前にひうりが風邪をひいたときは、両親ともに家にいなかった。そのおかげで僕は家に入れたわけだし、あのふにゃふにゃなひうりを見ることができたのだが、今日はそうではなかった。

 ほとんど家にいないはずの母親が家にいたのである。ひうりのストレスが溜まるのも無理はない。


「あ、そうよ。あの人が冷たくしたみたいじゃない。一樹くんの方こそ大丈夫だった?」

「僕は大丈夫だよ。ひうりは?」

「…私ももう大丈夫よ。ありがとう、ぎゅってさせてくれて」


 姿勢を正したひうり。

 因みに、その手には僕が出現させたソーダがある。


「はぁ…なんでこういう日に限って帰ってるのかしら」

「何か言われたの?」

「いえ。私の部屋には一切入らなかったわ。食事も一人でとったみたいだし、私が夜起きたときにはいなくなってたわ」


 ひうりの母親はほとんど家に帰らない。なんせ、日常的にどこかの男性の家で寝ているような人なのだ。家に帰る必要がない。

 しかしながら、すべてを放棄すると非難されることをわかっているのか、親の確認が必要な書類などは書くらしい。それがあって、ひうりの風邪と日が被ってしまったのだろう。


「まあ、あの人がいるときは私はそもそも部屋から出ないからあまり変わらないわ」

「でも息苦しいんでしょ?」

「まあね…」


 尚父親は更に帰ってこない。ひうりに必要なお金だけ渡して、仕事に戻っていくのだ。

 それが家族愛によるものなのか、育児放棄によるものなのかは不明である。


「明日になったら回復してるはずだから…」

「風邪の影響もあって大変そうだけど、大丈夫?」


 そもそも風邪のときはふにゃふにゃになってしまうのだ。ストレスもあって、病み上がり即日登校は辛いのではないかと思って尋ねたのだけど…


「学校には引っ張らないから大丈夫よ。ただ、しばらくは毎晩ああして抱き着かせて」

「それは勿論」


 ひうりはお姫様扱いが好きで、甘いものが好きなので、これだけ聞くとひたすら甘やかすのがストレス発散になりそうなものだが、実際のところは少し違う。

 正解は、普通に静かに甘えさせる、である。どうやらハグは相当なストレス軽減になっているらしく、家で何かあった時は確実に抱き着いてくる。正直恥ずかしさが天元突破するのだけど、拒否する理由がないので、されるがままになっている。


「あーでも、こうして全力で甘えた次の日は、現実の私が妙に一樹くんのことを意識しちゃうのよね…」

「それは仕方ないんじゃないかな」

「まあそうでしょうけど…明日は一樹くんに会わないようにすればいいのかしら」


 夢の中では恋人な僕たちではあるけど、学校では未だに友達の域を出ない。

 そのため、隣のクラスであるという事情も考えると、一度も会わない日があっても何もおかしくはない。実際に一度も会わない日は何度かあった。


 とはいえ、それを狙うというのは難しいところがあり…


「ドキドキするような意識じゃなくて、甘えたくなるような意識の仕方をするのよね…避けながらも近づこうとする、初恋の女の子みたいな行動になっちゃうのはよくないと思うのよ」

「僕は見てて面白いけどね。ちょっと顔を赤らめながら近寄ろうとするひうり、かわいいし」


 距離を置いた方がいいという結論になるくせに、現実のひうりの方から近づいてくるのだ。どうやら夢の中で甘えまくった影響が、変な風に現実に出てしまっているらしい。

 尚、そんな初心なひうりを見ると、学校の男子は揃って意識を失う。いや、実際に気を失うわけではないけど、直視できないらしい。ひうりがかわいすぎて、僕にまで意識が来ないという意味では楽ではある。


「明後日くらいに自覚して恥ずかしくなるのよっ!」


 顔を赤らめながらそう叫ぶひうり。

 でもあのめちゃめちゃ女の子なひうり、本当にかわいいよ。


「ひうりって、結構自爆多いよね」

「…それは言わないでちょうだい。一樹くんのことになると、どうしても変になっちゃうのよ」


 うーん、僕の恋人が可愛すぎる。


「そうだわ。こうしましょう」

「ん?」


 突然ひうりが良いアイデアを思い付いたらしい。


「逆手に取るのよ。現実でも、欲望のままに私が一樹くんに甘えればいいの!」


 …やっぱりまだ風邪の影響が残っているのだろうか。ひうりが馬鹿になってしまった。


「何が逆手なのそれ?」

「恥じらうから、結局恥ずかしくなるのよ。だから、恥じらいを捨てて行くの!」


 多分明後日にどのみち恥ずかしくなって爆発すると思うんだけど。現実で羞恥心いっぱいになると、夢の中でもそのまま来ちゃうからあまり爆発力を上げないでほしいな…


「そもそも学校じゃできないでしょそれ」

「…どこかで隠れて…」

「本気で実行しようとしないで!」


 冗談かと思ったら、本気の本気だった。なんとか甘えようとしてくる姿はかわいいけど、顔がガチだ。

 ひうりのことを抑えるのに苦労した。

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