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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
41/84

これ前に見たことあるぞ

「…」

「ひうり?」

「…」

「ひうり!」

「え!?なに、どうしたの?」


 夢の中にて、ひうりがボーっとしていたので呼びかけると、いつもよりも反応が緩慢だった。


「大丈夫?」

「何が?大丈夫よ」


 ここが夢であっても、いつものひうりは凛としている。そのため、呼びかけに反応しないのは何かしらの異常なのだけど…


「家で何かあった?」

「だから大丈夫よ。私そんなに変に見えるかしら」


 親に関することで問題が起きると、ひうりはすぐに相談してくる。

 それがひうりなりのストレス発散方法であることを、夢の中の僕は知っている。実際、夢で相談するようになってからは現実は充実しているのだと前に言われたことがある。


 今更隠すようなことはないだろうし、ということは本当に何もないのか。


「呼びかけてもすぐに反応しなかったから…」

「…」

「ひうり?」

「え?ああ、そうね。何でもないわ」


 うーん、なんだか支離滅裂だ。会話のキャッチボールがうまくいっていないような…


「ひうり、もしかして体調が悪い?」

「大丈夫よ。問題ないわ」


 僕が何を言っても、問題ないの一点張り。というか、やっぱり会話がうまくいっていないような気がする。


 白い空間のままで話していたが、僕はそこに布団と枕を出現させた。


「ひうり、寝て」

「…大丈夫よ」

「僕それでひうりの家に行った気がするんだけど?」


 数か月前、ひうりが風邪をひいてしまい、家の場所を知る僕が隣のクラスだというのにひうりの家に行った話。

 あの日の前日の夜も、ひうりは変だった。あの時はまるで酔っぱらっているかのような動きだったけど、そう考えると今日のこれも酔っぱらっているように見えなくもない。


 酒を飲んだ時の反応は人によって違うと言うが、ひうりの場合は日によって違うのかもしれない。


「ほら、眠るよ」

「うーん、大丈夫だってば…」


 勿論実際に眠るわけではない。だが、夢の中で活動をしなければそれだけ脳に負担がかからないのも事実なのだ。

 僕がここで薬を出しても、プラシーボ効果を期待するしかないが、ここでひうりを眠らせるのはしっかりとした理由があるのである。


「ほら、おやすみ…」

「仕方ないわね…じゃあ、今日は一樹くんが膝枕してちょうだい」

「…わかった」


 出現させた枕を消して、僕は正座をした。

 膝の上にひうりが頭を乗せてくる。寝巻のせいで半ズボンなので、ひうりの髪が少しくすぐったい。


 更に子守歌を要求されたけど、それはやんわりと断りつつ、一晩を過ごした。


……


「聞いたか一樹、黒棘姫は今日は休みらしい」

「そっか…」


 夢の中で眠ったものの、ひうりは復活することはできなかったようだ。


「姫が休みなんて珍しいな…なあ一樹、俺これ前にも話さなかったか?」

「うん。数か月前に」


 忠の会話にデジャブを覚える。話した内容も、ほとんど同じだったはずだ。


「あれ、そんときって一樹が姫の家に行ったとかなんとかを風の噂で聞いたんだが」

「え、どこから仕入れたのその情報」

「お前の知らない情報網ってのはいくらでもあるもんだぜ?」


 学校こわぁ。壁に耳あり障子に目ありってレベルじゃないと思う。

 森本さんが要件を言いに来たとき、確かに僕の目の届く範囲に人はいなかったはずだ。そもそも、いたとしても何を話したのかは聞こえないはず。

 森本さんは自分からそういうことを言うタイプじゃないので、確実に誰か別の第三者がいると思うんだけど…うーん、わからん。


「それで、今回は行くの?」

「それはないんじゃないかな?」


 あの時はどうしてもの用事があったから、僕が代わりに行ったわけで。


「ふーん?」

「なんだよその顔」

「俺はそうは思わないけどなって顔だ」


……


 忠、正解。一ポイント。


 僕はなぜか今日もひうりの家の前にいた。しかも、あの時と同じように明後日提出のプリントをもって。そんなに重要なプリントならもっと前に配っとけ!


 あの時は隣のクラスに誰も家を知っている人がいないと聞いたから受けたけど、今思えば林さんや神無月さんは知っているのではないかと。

 そう思って聞いたのだけど、二人も家の詳細は知らないのだという。どこらへんに住んでいるのかは知っているようだったけど。


 僕が家を知っていることを知ると、二人とも驚いていた。いつも冷静な神無月さんですら、少し驚きが顔に出ていたくらいに。どうやらひうりは、親友の二人にも家の場所を教えていないようだ。


「ひうりー」


 僕は二度目ということもあって、すぐにインターホンを押した。

 そういえば風邪の時のひうりって、ポワポワしてるうえに夢の中での記憶があるんだよなぁ…かわいいけど、ひうりに負荷がかかるからあまり見れない貴重なやつだ。


 しばらくしたら扉が開いた。


「男子が届けに来るなんて下心が見え見えね。はい、ありがとうございました」


 ん?何が起きた?

 気がついたら、僕の手に合ったプリントの入った封筒はなくなっていて、扉も閉まっていた。


 あれはもしや…よし、今日は帰って寝よう!そうしよう。

 多分、今までで一番酷くひうりは憔悴しているはずだから。

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