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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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38/84

たまに誰が飲むのか分からないほど甘いものが売ってる

 来る日曜日。僕と忠、そしてひうり。更には林さんと神無月さんも一緒に広めのレンタルスペースに来ていた。


 最初は普通に図書館でいいのではとなったのだけど、それではひうりが集中できないということになって、僕と忠の割り勘でレンタルスペースを借りることになった。ひうりは視線を集めるからねぇ…

 机と椅子さえあればいいということで、五人が入れるだけの普通の部屋を借りた。なので、二人で割り勘したこともあって出費はそこまで痛くない。


「忠、ちゃんと勉強しなよ」

「おうよ。姫…佐倉さんを前にだらけたところは見せねえ」


 その気力と気概、いつも出してくれたらわざわざ来なくてもいいのに。


 忠はひうりを勉強会に誘ったあと、学校の男子たちにボコボコにされたらしい。特にメンタルの部分を。

 忠は今までもリーダーシップを発揮して交友関係を築いていたので、暴力を振るってくるような輩はいなかったらしい。その分を秘密とかを知っている人が多いので、忠の隠し事をほとんどすべてばらされたらしい。

 帰り道の忠は、それはもう心が粉々になった顔をしていた。


「こうやって集まるの久しぶりだねー」

「そうね」

「勉強をしに来たのを忘れないでください。りんりん」


 そして林さんと神無月さんは、その場のノリで来ることになったのだ。正確には、林さんが来たいと言い出し、林さんが神無月さんを誘ってこうなったのである。

 そのせいでひうりのファンじゃなくとも、林さんや神無月さんのファンだった人も忠を許さない隊の一員として、忠のメンタル破壊行為を行ったらしい。


「んじゃ始めるか」

「ええ。一応わからないところがあれば聞いてちょうだい。りんりんたちもね」

「りょうかーい」


 カラオケとかではないので、注文とかもないのですんなり勉強を始めた。


 いつもはだらけて滅多に自学なんてしない忠が、ひうりたち三人の前だからとても真剣に勉強をしている。でも忠、そこは今回のテストの範囲じゃないよ。


「ひう、ここはー?」

「えっとここは…」

「じゃあこっちはー?」

「これは…」


 そして、忠は真剣に勉強をしている横で(範囲は僕が教えてあげた)、林さんはひうりに質問しまくっている。

 もしかして林さんってあまり成績がよくない?


 僕が林さんを気にしていることに気づいて神無月さんが教えてくれた。


「りんりんが少しうるさくてすみません。ただ、中野さんはりんりんが頭が悪いと思っているかもしれませんが、成績はよいのです。授業での飲み込みが悪く、毎回ひうに聞きまくってるのです」

「なるほど…」


 確かに、ひうりの教え方はうまい。夢の中でもひうりに何度も助けられている。

 多分林さんにとっては、授業という形態は合っていないのだろう。ひうりみたいな人に、一対一で教えてもらった方が身につくタイプは多い。


「え、えっと、佐倉さん、俺にも教えてもらえませんか…?」

「いいわよ。見せてみなさい」


 そんな林さんを見て、忠もひうりに質問をした。林さんがガンガン質問したおかげで忠も質問しやすかったかもしれない。

 そういう意味では、林さんの行動も邪魔とはならないな。


「中野くんは質問はないのかしら?」

「え?うーん、今は大丈夫かな。ありがとう」

「そ、そう…」


……


 四十五分。それが、この状況で忠が集中できた時間だった。

 三十分くらいで限界だって言っていたので、頑張ったほうだと思う。


「飲み物買ってくるわ」

「あ待った。一樹、行くぞ」

「ええ?」

「三人に行かせるわけにはいかないだろ」


 ひうりが立ちあがった瞬間に忠がそんなことを言った。

 忠はこれを機に三人に良いイメージを与えたいようだ。まあ、忠は男子相手でも率先してこういうことするから素かもしれないけど。


「俺と一樹が買うので、何がいいですかね」

「…じゃあ私は……コーヒーにするわ」

「ひう?あ、えっと、私はコーラ!」

「私はお茶で結構です」


 ひうりがコーヒー…?そこに林さんも違和感を覚えたようだけど…


「よし行くぞ」

「あ、うん」


 忠は三人の要望を聞いたらさっさと行ってしまった。僕が行かなかったら色々言われるだろうから、僕もついていくしかない。


「コーヒーとコーラとお茶だな」

「うん…コーヒーでいいのかな」

「何言ってんだよ。むしろコーヒーしかねえだろ。あそこまでコーヒーが似合う人もいないぜ?」


 もしかして、ひうりは忠の印象に合わせてコーヒーにしたのだろうか。

 夢の中のひうりは欲望をそのまま見せてくれるけど、現実だと抑制してるって言ってたしな。文化祭のときは色々食べてたけど、忠はリーダーをしててそれを見てないし。


「まあお礼ってことで一樹の分も奢ってやるよ。何がいい?」

「じゃあ…このストロベリーミルクで」

「えぇ、こんな甘そうなもの飲むのか?まあいいけどよ」


 忠はサイダーを買って、三人のところへ戻った。


「注文の品です」

「…ありがとう」

「ありがとー」

「ありがとうございます」


 ひうりはコーヒーを見て怯んでいる。ひうりもコーヒーくらい飲めるけど、やっぱり甘いほうが好きだ。

 僕と同じような結論に至ったらしい林さんも、そんなひうりの姿を見て苦笑いしている。神無月さんはため息をついている。


「僕はあまり喉乾いてないし、僕の分はあげるよ」

「お!私はいらないし、ひうにあげるねー」


 一瞬で僕の意図を理解した林さんが僕からストロベリーミルクを受け取り、ひうりに渡した。

 ひうりは僕を恩人かのような目で見ている。流石にコーヒーを飲まないということはできないだろうけど、まあ口直しとして飲んでくれたらいい。


「一樹、佐倉さんにこんな甘いものを…」

「まあまあ」


 ひうりの一般的なイメージは、凛としている気が強いクールな人なのだ。甘いものを食べたり飲んだりしているところをイメージできないのはそうだろうが…


「さあ、飲み物も来たし、勉強を再開しましょう」


 神無月さんの一言で勉強が再開した。

 ひうりは僕の渡した飲み物を見て、ホットとしていた。

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