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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
31/84

人気者は辛いよ

 文化祭の前日。


 今日は、一日のスケジュールすべてが文化祭の準備に充てられている。本番に向けた準備が多いのもそうだが、文化祭の前日は生徒たちも授業に身が入らないだろうという、教師側の考えもありそうだ。


「小道具班、備品を全部確認しろー」

「衣装は最後のチェックをお願いね」


 僕たちは、カフェを営む予定である場所で、最後のチェックを行っていた。


「材料は明日届く。ついでに俺たちの飲み物も来るから、受取役はしっかり受け取ってくれ」


 天気予報によると、明日の天気は一日晴れ。曇ることすらない、快晴らしい。日が経ち、ある程度暑さも和らいだところではあるものの、未だに残暑といった感じで湿り気が残っている。

 水分補給や、休憩をきちんとしなければ本番で体調が悪くなることもあるかもしれない。

 そういう事情も鑑みて、少しだけ余った資金は飲み物代に消えることになった。水筒なりなんなりを用意すれば済む話ではあるけど、折角なら買おうという忠の一言によって決定した。


「中野、皿足りてる?」

「うん。買ってきた分は全部あるよ。シールとかは剝がしてあるから、明日になったらすぐ使える」


 同じ小道具班の人と協力しながら、最終チェックを行う。

 皿などは、最悪一枚足りなくても問題ないのだけど、調理器具などは必要な分がないと困るので、そちらのほうを重点的にチェックしている。


「フライパンは当日調理室から持ってくるんだよな?」

「うん。調理室のものは、当日ってことになってるね」


 今ここで準備しているけど、動かせるものは、一度校舎内に戻す予定だ。セキュリティ的に、校舎内に置いておいたほうが安全だという判断である。

 動かすのも大変なものは、無くなってもすぐに気が付くし、そもそも持っていくのが大変だろうという前提で、ここに置きっぱなしとなる。もし誰かが持っていったら…ある意味賞賛に値するかもしれない。


「一樹、小道具はどうだ?」

「大丈夫かな。というか、僕じゃなくて班リーダーに聞きなよ」


 僕はリーダーではなく、普通の小道具の人だ。当日、料理班に入る可能性があるので、リーダーにはなれなかったのである。まあ、なるつもりもなかったけど。


「小道具班のリーダーは所用で別のところだ」

「いいけどさ…小道具はいいよ」

「了解。元康ー!大道具はー!?」

「問題なーし!」


 ちょっと遠くにいる神田くんが大声で返事をした。大道具班のリーダーだ。

 大道具班というのは、テントを含めた火器などの大型設備班のことである。道具、というには少々扱っているものが大きすぎる。

 そのため、ちょっと離れたところで準備をしているのであった。


「うん、ばっちりだ。中谷さん、そっちは?」

「こっちも大丈夫よ」


 中谷さんの向こう側で、メイド服を着た女子と、スーツを着た男子が最終チェックをしていた。

 どういうわけか、いつの間にか衣装はメイド服と執事服になっていたらしい。ただ、執事服はぱっと見スーツにしか見えない。


 また、裁縫班が本気を出したらしく、必要数よりも衣装ができたらしい。そのため、余った分は来た人が着れるようにするらしい。

 急にそんなことになったので、大道具班は急遽更衣室も用意することになったらしい。


 それだけ多く作ったのに、使った資金はそこまで多くなかったらしい。なんとなく、裁縫班の中に職人がいるような気がする。


「うん、準備はよさそうだな。小道具は教室まで持ってけー」

「はーい」


……


「ひうりのとこは、問題なく終わった?」

「ええ。ただ、当日は私は忙しくなりそう」

「あれ、そうなの?」


 夢の中で、文化祭についての最後の情報交換をしていた。


 今日のひうりはMがトレードマークのファストフード店のシェイクを飲んでいる。


「自分で言うのもあれだけど、私ってそれなりに知名度があるじゃない?」

「うん。学年問わず告白されているからね」

「そのせいで、客引きするなら私ってことになって…」


 ひうりのクラスの出し物は、景品ありのゲームルームだ。

 それだけで、小さい子供などは集まりそうなものだけど、客層を広げるためにはひうりの力が必要だったのだろう。


「多分明日、現実の私からも同じ話があると思うけど…」

「そうだろうね。でもまあ、休憩なしってことはないだろうし、その時に呼びに来てよ。料理班になってなければ、僕はそれなりに融通が利くから」


 というか、なぜか忠から休憩は自由にとっていいと言われたんだよね。中谷さんの意見は、と聞いたら大丈夫とのこと。

 どうにも、忠はイベント毎に僕とひうりを見て楽しんでいる節がある。


「私から誘ったのにごめんなさい…」

「正直な話、ひうりだからこうなるとは思ってたよ。ひうり、かわいいし」

「…ありがと。でも、今はあまり嬉しくないかも」


 まあ、そうだろうね。その顔のおかげで、忙しくなりそうなのだから。

 それに、告白してきた男子に対しては冷たくあしらうけども、初対面の人や仲のいい人に対しては朗らかに対応してくれるのがひうりだ。それを知っている人からすれば、客引きに最適だと思ってしまうのも当然だろう。


 ひうりには悪いけど、同じクラスだったとしてもひうりが客引きになると思う。というか、どのクラスでもそうなると思う。


「人気者ってことだね」

「全くよ…」


 少し疲れたような顔をするひうり。

 あまり媚びを売るような行為は苦手らしいので、明日が終わったら夢の中の労ってあげないといけないだろう。


「僕はあまり知らないんだけど、男子にもひうりみたいな人気者っていないの?」

「私たちの一個上のクラスにいるらしいわよ。バレンタインには、チョコがすごいことになるって話よ」


 やっぱり男子にもいるんだな。そういう人…


 誰かは知らないけど、ひうりと共に客引きをさせられているであろうその先輩に、心の中で労っておいた。



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