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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
30/84

友達に好きな人の話をすると、大方誰かにばらされる

 文化祭の準備も随分と進行した。


 忠の指揮が、僕が思っていた何倍も正確で、中谷さんのサポートも優秀だった。そのおかげで、僕たちのクラスは喧嘩もなく、すんなりと準備をすることができていた。


「予算ってあとどんくらい?」

「このまま行けば問題ないわ。気にしないで」


 文化祭リーダーと副リーダーがそんな会話をしている。


 このカフェは、飲食店ということになっているので、売り上げによっては元手よりも多く稼ぐことができる可能性がある。

 もしそうなったら、二次会みたいなのをすると言っていたけど…この様子だと、大きな失敗さえなければ開催することになりそうだ。


「衣装はこんな感じで出来てるから、接客担当の人は集まってー」


 裁縫をしていた人たちが、最終チェックをしている。


 最終的に、『市街地から少し離れた場所の落ち着いたカフェ』という、なんだかアバウトなコンセプトになった。

 ひうりのために色々歩いたから、僕はなんとなくイメージができているのだけど、果たしてこのコンセプトはクラス全体に共有されているのだろうか。


「中野、買い出し行くぞー」

「あ、了解」


 僕は僕で、自分の担当業務をしっかりする。


 あと数日で文化祭だ。


……


 ある日の昼休み。

 僕はひうりと会っていた。


「えっと、ひうり、どうしたの?」


 僕が連れてこられたのは、人気のない化学教室の前。昼休みなので、先生も通ることはなく、ここには僕とひうりだけだ。


「うーん、何かしらね」

「え?」


 僕を連れてきたときは、真剣そうな顔をしていて、そのせいもあってか周囲の人に呼び止められることもなく、ここまで来ることができたのだけど…

 ここに来ると、途端にひうりはいつもの表情に戻り、なんだか自分自身に困惑しているようにも見える。


「なんか言わなきゃって思ってたんだけど…ここに来る途中で忘れちゃったわ」


 その急な強迫観念は、多分夢の中のひうりによるものだと思うけど…一体夢の中のひうりが、現実の自分に何をさせたかったのかわからない。


「うーん…一樹くん、何かわかる?」

「えぇ…僕はわからないよ。そもそも、今日は朝にも会ってないし」


 文化祭の準備を朝にもやるクラスがあるからか、最近は学校に来てすぐの時間帯も忙しいことが多い。

 忠がやる気なので、僕のクラスは朝から準備を進めるクラスであり、あまり教室に僕がいないのだ。


「そうよね…何かしら」


 僕もひうりも困惑。連れてきた本人が困惑しているのでは、話は進みようがない。


 と、ここで誰も通らないはずのこの廊下に、人影が。


「ひうと彼氏くん、やっほー」

「りんりん?」

「林さん。なんでここに?」


 現れたのは、ひうりの友達である、隣のクラスの林鈴さん。

 こっちに来るなんて、化学の実験でもない限りないから普通はここに昼休みにいるなんておかしいのだけど…


「ひうがさ、急に行っちゃうんだもん。気になるにきまってるじゃん!」


 どうやらひうりのことを追ってきたらしい。

 いつものひうりであれば、林さんの尾行くらい気づけそうなものだけど、それだけ真剣だったということなのだろうか。既に目的は忘れてしまっているけど。


「ひう、ここまで来たのにビビってるのー?」

「ビビってるっていうか…何のために来たのかわからなくて」


 確かに、何も言わずに向かい合ってるこの状況は、旗から見たら怖気づいているようにも見えるのかもしれない。


「んー?てっきり彼氏くんを文化祭デートに誘うのかと思ったんだけど、違うの?」

「デーっ!?何を言ってるのよ!そんなこと…んー…」


 林さんにそう言われて、最初は強く否定したひうりだけど、少しずつ尻すぼみに声が小さくなっていく。

 もしかして、本当に誘いに来てくれたのだろうか。


「…中野くん、文化祭、一緒に回ってくれるかしら?」

「え?は、はい!」


 そして、急にそう告げられた。

 僕は条件反射的に返答してしまう。まあ冷静に返答しても、了承する誘いなので何も問題はないけど。


「あと、りんりんはこのことは秘密ね」

「んー、話したほうが楽しいと思うけど?」

「そもそも二人になるためにここに来たのに、りんりんがいたら意味ないじゃない」

「分かりやすくこっちに来たひうが悪いよー」


……


「無事、現実の私は一樹くんを文化祭に誘えたわけね」

「やっぱりこっちのひうりのせいなんだ」


 夢の世界のひうりのに、そんなことを言われた。


「本当はもうちょっとスムーズにいく予定だったんだけど…忘れちゃったのよ。夢のことを思い出そうとしても、段々忘れていくじゃない?あれが起きちゃって」

「まあ夢だからね」


 そもそもとして、夢の中のひうりによる思考誘導はそこまで強くない。

 今回は僕のことを連れ出すまでは行ったみたいだけど、それ以上は誘導ができなかったらしい。


「あれ、もしかして最近言おうとしてたのってこれのこと?」

「ええ。やっぱり現実で誘ったほうがいいじゃない?前の体育祭の時みたいに、一樹くんと一緒にいようっていう意識にさせれば一緒に回れるけど、やっぱりちゃんと約束したかったのよね」


 …二学期になって、イベントが始まってから現実の僕とひうりの関係にも少しずつ変化しているような気がする。

 もしかしたら、前に比べて思考誘導も強くなっているのかもしれない。


「私は現実でも彼女になる気満々だからね」

「僕もだ。望むところだよ」

面白いと思ったら評価や感想をお願いします。作者は最近肩が凝りがちです

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