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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
22/84

男子は女子に囲まれると直立不動になる

「中野くん、ちょっといいかしら」

「ひ…佐倉さん、どうしたの?」


 練習中、突然ひうりに話しかけられた。


 現在は、グラウンドで学年区切りでの練習中である。ひうりのクラスの他にも、もっと奥のクラスの別の組も同じ場所で練習している。

 目的は、学年対抗リレーなどの練習だ。本番と同じ条件を作り出すために、こうして学年全体合同で練習しているのである。


「ちょっと来てもらってもいい?」

「ええっと…まあ、いいけど…」


 綱引きは学年を越えたチームなので、この時間では練習らしい練習はできないし、借り物競争も何度も練習するような競技ではない。

 僕がこの時間にすることはほとんどないのだ。


 現在グラウンドを広くとっているのは、男子の長距離走で、ひうりは休憩中のようだ。


 ひうりに連れてこられたのは、何人かの女子がいる場所。その中から、二人がこちらに気が付いて近寄ってきた。

 確か隣のクラスの、ひうりと仲がいい人たちだったはず。


「君が中野くんかぁ」

「ふーん…」


 二人の女子の視線に晒される。まるで値踏みをされているかのような視線で、非常に居心地が悪い。


「えっと、佐倉さん、これはどういう…?」

「ごめんなさい。三人が、どうしても中野くんと話してみたいって言うから…」


 いたたまれない視線を感じること一分ほど、三人はやっと口を開いた。


「私は林鈴(はやしすず)だよ。よろしくね、中野くん」

「私は神無月呼埜(かんなづきこの)。よろしくお願いします」


 神無月って珍しい苗字だなぁ…じゃなくて。


「えっと、こんにちは。何の用だったの?」

「ん?ちょっとひうちゃんの彼氏くんを見たかっただけだよー」

「りんりんが見たいというので来ただけです。特に他意はありません」


 林さんはなんだか無邪気って感じで、神無月さんは落ち着いてる感じ。

 ひうりはどちらかと言えば、神無月さんのタイプだから、林さんがこの三人の中でどういう役回りなのか気になるところ。


 それとひうりのことを「ひうちゃん」って…いいなぁ、その呼び方。でも僕が呼んだら怒るかなぁ。


「ひうちゃんが、珍しく夏休み中にデートしたって言うからー」

「え、佐倉さんあれ言ったの!?」

「別に疚しいことはないんだからいいじゃない!」


 ちょっと顔を赤らめながら言うひうり。

 

 うーん、僕の秘密の一日って感じだったんだけど…まあでも、忠みたいなやつに知られなければ問題ないのかな。

 ひうりと仲良くしてる二人のことだし、そういう噂が広がった時の迷惑は、二人も理解していることだろう。


「ひうが最近話題に出すから、実際どうなのかと思って見てみたら…案外普通ですね」

「そうだねー。もっとイケメンとか元気とか、そういう特徴的な子かと思ったよ」


 ごめんね、普通で。


「ああ!落ち込まないで中野くん。こういう子なら、ひうちゃんが騙されることもないだろうって思っただけだから!」

「ひうが男性と仲良くしているのは、あなたが初めてなのですから気を付けてくださいね」

「え…うん、それは勿論だよ」


 ひうりは男性からの告白をすべて断ってる。現在も、事あるごとに告白されて、それを断り続けているらしい。

 呼び出しを無視すればいいのではないかとも思うけど、それだと負けた気がするみたいでそれはしない。行ってほしくないなら、僕が声をかけろとのこと…ひうりに告白しようとしてる男子を止めるのは、忠でも無理だよ…


「ちょっと、本人の前でそういう話はやめてくれる?」

「いいじゃん!ひうちゃんの彼氏くんなんだし」

「りんりん、彼氏じゃないから。中野くんは友達よ」


 ひうりの口からはっきりと言われてちょっと凹む僕。

 そういえばひうりから直接関係性を言われたのは、初めてかもしれないなぁ…


「彼氏くんも彼氏候補くんも一緒だよ。告白を断っているのは中野くんがいるからじゃないのー?」

「あれは…本当に嫌だから…」


 ひうりが告白を断る理由は、付き合う理由がない他にも、本当に嫌だからという理由もある。

 ひうりは丁寧に扱ってもらいながらも、対等な立場の恋人になりたいのだ。一方的に告白した、されたという関係では成り立たないのである。


 僕?付き合ったのは、どちらからともなくだったよ。


「まあ、ひうを安心させてあげられてる内は問題ないでしょう」

「そうだねー、私もコノちゃんも安心だー!」

「二人が介入話じゃないでしょう…ごめんね、中野くん。こんな要件で」

「暇だったから大丈夫だよ」


 グラウンドにいる現場監督みたいな先生に呼ばれて、女子たちが移動を始めた。

 次は女子の短距離走の練習をするらしい。


 ひうりはともかく、林さんも神無月さんも短距離走に出場するらしい。


「それじゃ、また面白い話があったらよろしくー」

「りんりん、あまり邪魔しないように」

「中野くんも頑張ってちょうだいね」


 なるほど、林さんが引っ張って二人が振り回される的な関係なのかな。


 三人の関係性について再考したうえで、僕はひうりへの呼び方にも少し考えを巡らせたのだった。


……


「ひうって呼ぶのはだめ?」

「一樹くんにはひうりって呼んでほしいわ」


 だめだった。

面白いと思ったら評価や感想をお願いします。作者は嘔吐下痢でしばらく寝込んでました(´・ω・`)

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