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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
21/84

炎天下での運動、それ即ち日射病となる

体育祭の練習が始まった。


 と言っても、集団演技や応援合戦などはこの高校にはないので、練習が必要な競技は自分が出る競技だけだ。

 その理由もあってか、この高校での体育祭に対する練習時間はそこまで多くない。


「早く外でてぇ…」


 つまり、今の忠みたいな運動したい系男子が発生するというわけだ。


「僕はあまり出たくないかな。暑いし」

「一緒に海に行っただろー?お前も運動好きになっただろー?」

「なってないよ」


 確かに、海で遊んだのはとても楽しかった思い出だ。

 それ以外にも、ひうりと一緒に外で遊んだりもしたので、外に出ること自体はそこまで嫌いでもない。


 しかし、この暑さは別だ。

 未だに太陽は肌を焼くし、空気はジメジメしている。そんな中で、運動なんてしていられないのだ。僕は運動しないタイプの人間なので、練習だけでも体力は削れる。


「ほら、次数学だよ」

「うぇーい…」


 元気のない忠の声が返ってくる。

 運動していないときの方が元気がないとは…僕には考えられないコンディションである。


……


「ひうりはどう?」

「まあまあね。夏休み中も少し運動してたから、そこまで体力は衰えてないわ」

「それはすごいなぁ…」


 ところ変わって夢の中。

 僕とひうりは近況報告をしていた。この頃の話題は、専ら体育祭の練習についてだ。


 運動というのは注意していても、怪我を負うことがある。そういう時にすぐ気が付けるように、こうして出来についての報告をするのだ。足を怪我した状態で運動したら、悪化しちゃうからね。


 自分では大丈夫だと思っていても、客観的に見て体調が悪いということも多々ある。報連相は大切なのだ。


「一樹くんも練習してるんでしょ?」

「僕は走らないからね。綱引きでは他の人とのコミュニケーションを取る必要があるけど、練習らしい練習もしてないよ」


 そもそも、綱引きは赤組全体で一チームなのだ。他の学年との練習時間の兼ね合いもあるので、中々まとまって練習することはできない。


 僕の赤組、ひうりの所属している青組の他に、黄組と緑組が存在する。

 この四つの色が、それぞれ場所を取って練習するので、大きなグラウンドで練習する機会はどうしても減ってしまうのだ。


「借り物は?走らないの?」

「ちょっとは練習したけどそれくらいだなぁ。カードを拾って、内容を読み取って、条件を探して走るから、練習したところで本番には活きないんだよ」


 練習で簡単なお題が出たところで、本番で同じものが出るとは限らない。

 借り物競争の練習は、走る順番とかレーンのミスがないかを確認するだけで終わる。それ以上練習したところで意味がないのだ。


 そういう練習する必要がない競技よりも、リレーとか短距離・長距離走の練習に回した方が、結果的にいい試合を作り出してくれるだろう。


「ひうりは走るのばかりだから、頑張ってね」

「敵同士だけどね」


 僕がひうりと走るのであれば、負けたくない気持ちもあるけれど、そうでないなら彼女を応援してもいいだろう。


「それで…ひうりは、家族は来るの?」

「…来ないわ」


 ひうりの家族仲は、お世辞にも良いとは言えない。暴力こそないけど、会話もない。


「一樹くんのところは?」

「僕のところも来ないって。どうしても仕事抜けられないみたい」


 可能なら来るとは言ってたけど、いつ来るかも分からないし、期待しない方がいいだろう。


 ひうりの家とは違って、僕の家族はそれなりに仲がいい。

 それでも、共働きということもあってか、こうした学校のイベントに必ず来てくれるという保証はないのだ。入学式などの大切な行事のときは必ず来るけど、そうでもないなら五分五分といったところだ。


「じゃあ、一緒にお昼食べない?体育祭のときは、自由に外でご飯食べてもいいみたいだし」

「僕はいいけど…ひうりはいいの?何か言われたりしない?」

「気にしないでいいわ。私が一樹くんと仲良くしていることは、それなりに周知の事実だもの」


 そうなのか…そうだろうなぁ…


 ひうりはあまり男性と話したがらない。なのに、僕にはああやって積極的に話しかけてくるのだから、話題にならないわけがない。

 それで、ひうりに不利益がなければいいけど、今のところは問題ないらしい。


「じゃあ、当日はとっておきの場所に連れて行ってあげるわ」

「とっておき?」

「ええ。少なくとも、他の家族が来ることはないから安心してちょうだい」


 そう言ってふわっと笑うひうり。


 最近のひうりは、こうした柔らかい笑みを浮かべるようになった。かわいい。


「楽しみにしててね」

「うん。練習も頑張れる気がするよ」


 体育祭の目標は、現時点をもって勝つことから、ひうりと一緒に昼を過ごすことに変更された。


「そろそろ朝ね。頑張りましょ」

「うん。怪我しないようにね」


……


 朝、起きる。


 顔を洗って、髪を梳かす。


「なんだか今日は、やる気があるわね」

面白いと思ったら評価や感想をお願いします。作者の学校では五色の組み分けでした

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