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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話

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14/84

夕焼けに染まる二人の影

昨日の夜に一話投稿しているので注意してください

 三時、お約束の時間にお約束のイベントがある。


「右!右!」

「そこまっすぐ!」


 スイカ割りである。


 これは別に勝ち負けとかなく、純粋にスイカ割りを楽しもうというイベントである。そのため、やってる人も、指示を出す人も気楽に参加できるところが良いポイントだ。

 スイカを割る人は一人、そして指示を出す人が残りの全員。そんなアンバランスな配役のため、指示がやたらと色々と出る。矛盾した指示が出たときには、動いている方はたまったもんじゃない。


 多分、面白がって嘘の指示を出している人がいると思われる。割れなかったら、次の人に交代というシステムなので、スイカ割りをしたい人が交代させるために嘘をついているという可能性も考えられる。


 あ、スイカの右側を叩いた。掠ることもなく、スイカは健在。

 次の人に交代する。


「よし、次一樹!」

「え?僕?」

「おうよ」


 なぜか忠に木のバットを渡され、目隠しをされる。

 順番待ちがいたような気がするけど、僕が適当に過ごしている内に全員の番が終わってしまったようだ。そのため、残っていた僕に回ってきたということである。


 目隠しされている状態って不安しかないな…もしこのバットを落としたら、拾うこともできないだろう。


「んじゃ十回グルグル」


 僕はバットを支えにしながら十回グルグルする。

 でも、目隠ししているため本当に十回回っているかどうかは分からない。まあ方向感覚を鈍らせることが重要なので、何回グルグルしたかは然程重要ではない。


「まっすぐ!まっすぐ!」

「そこ右!」

「ひだりー!」


 僕が構えると、周囲から指示及び野次が飛び始める。既に矛盾した指示があるので、何を信用すればいいかは分からない。

 取り敢えず一歩。僕がグルグルしたところから、スイカまでの距離は大体十歩くらいだったので、少なくとも今「叩け!」って言ってるやつは今後信用しない。


 とはいえ、嘘をつく人よりも真面目な指示の方が多いので、大多数の指示に従っておけばある程度は大丈夫のはずだ。

 少しずつ、一歩ずつ進んでいく。目隠ししているせいで、砂浜に足を取られて転んでしまいそうだ。目隠ししている状態で転ぶのは嫌だなぁ…


「そこ!」

「ちょっと右!」

「右!」


 うーん、少し右かな。平行移動で右なのか、回転で右なのかは分からないけど、右側にあることは間違いないだろう。

 一応掠っても、当たれば成功ということにしてある。そもそもとして、カットしたスイカは別途用意してあるので、僕がきれいに割る必要はないのだ。


 とはいえ、出来ることならまっすぐ割りたいところ。少し欠けた程度で終わらせるのは、興ざめというものだろう。


「叩いて!」

「右!」

「行き過ぎー!」


 ぐぐ、ちょっと分からなくなってきた。


 スイカに近付くまでは、大体指示は同じだ。

 しかし、スイカを叩けるような距離まで来ると、見ている人によって微妙に見え方が違うせいで、指示がバラバラになりやすい。しかも、三十人近くが指示しているせいで、誰がどこから叫んでいるのか分からない。


 どうしようか…僕が割らないといけないというわけではないし、ここで試してみてもいいんだけど…


「中野くん!左!」


 その時、声が聞こえた。ひうりの声だ。

 いつも聞いているからか、とてもよく耳まで通った。


 ひうりはこういうときに嘘をつかないので、僕はひうりを信じてちょっと移動。

 すると、ひうりはそこを叩けという指示を出したので、全力で叩く。躊躇うと、反動で腕を痛めてしまうので、叩くときは一気に…!


「おりゃっ!」


 鈍いあたり。それと同時に沸き立つ周囲。


 目隠しを取った。そこには、ちゃんと大きく割れた、スイカの姿があった。


……


 割れたスイカの大きい部分は、僕が貰えることになった。割った景品…みたいなものだろう。


「いやぁ、流石一樹だな!」

「ありがとう」


 最後はひうりに助けられたけど、なんとかスイカを割ることができた僕。

 今までは忠以外の友達はあまりいなかったのだけど、今日だけで何かと関わりが増えたような気がする。今後教室で、ひうりと話しているだけで、目線で殺されるという事態にはならないことを祈る。


「さて、スイカを食べたら帰るかー」

「だなー」

「疲れたー」

「ねるー」


 スイカを食べたら解散という流れになりそうだ。


 食べたスイカはちゃんとゴミ袋に入れて、それ以外にも汚してないかのチェック。忘れ物の確認も怠らない。

 砂浜のゴミ問題は、結構深刻なので、こういったところで規範的な行動をしないとね。


 それも終われば、あとは着替えるだけだ。

 この海水浴場のシャワーは、十円入れると二分間使えるタイプ。場所によっては、無料だったりもっと高かったりするらしいので、標準的な値段だと言えるだろう。


 着替え。

 シャワーをしたとはいっても、やはり海水のせいでベタベタする。家に帰ったら、念入りに全身を洗う必要があるな。このままだと寝るのにも苦労しそうだ。


「おつかれさーん。各自帰宅なー」


 忠が朝の集合場所で声をかけている。


 僕はここから電車で帰るが、親の送迎がある者や、ここから歩いて帰れる距離の者などもいるので、解散場所は海水浴場なのだ。


「一樹またなー。夏休み中にまた連絡するわー」


……


 ところ変わって、夢の中。


「一樹くん、どうだった?私の水着」

「とってもかわいかったよ」


 僕とひうりは、今日行った海水浴場の中で海辺に座っていた。尚二人とも私服のままだ。


 こうして改めて見ると、ひうりはちょっと焼けたように見える。いつもは白い肌なのだけど、少しだけ赤くなっているようだ。というか、夢の中に反映されるのか…


「一樹くんだって焼けてるわよ。体洗うときに痛くなかった?」

「え?自分じゃ気が付かなかった」


 僕は、焼けてもあまり痛くならない体質なのかもしれない。人によって焼け方に違いがあると言うし、そういったところで違いが出てもおかしくはない。


「それにしても、ちゃんと一樹くんに水着を見せれて満足だわー」

「うん、僕も嬉しいよ。でも、思ったよりも直接来たからびっくりしちゃった」

「私もよ。どうやって見せるかは現実の私次第だから…一樹くんに見せる方法は、私が指定したものじゃないわよ」


 ひうりにとっても、あそこまで大胆に動くのは予想外だったらしい。

 夢の中での積み重ねの結果だと思ったけど…本当にそうなのかもしれない。それとも、現実でひうりの考えに変化があったとか?


「ここだと水着を見せてくれないんだね」

「だって一樹くんが作った水着、ちゃんと着れるか不安なんだもの。女子の水着なんて触ったことないのに、ちゃんと生み出せるの?」


 それは…ちょっと分からないな。


 一応夢の中補正ということで、僕が想像したら勝手にひうりのサイズに合わせて服が変わるけど、水着の場合はミスがあると大変なことになるので、確かにあまり不用意には試せないか…


「まあ、その…いや、なんでもないわ」

「ん?まあいいけど。そういえば…」


 僕とひうりは、夕焼けの砂浜で語り合った。今日の海の出来事と、その続きを。

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