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気が強い高嶺の花は夢の中では僕の恋人  作者: nite
夢と現実の彼女の話
12/84

炎天下の集合は精神的なダメージが大きい

 とうとう海水浴の日がやってきた。

 当初の目的だった、課題の終了は果たせなかったものの、九割がた終わらせることができたので良しとしよう。あとは夏休みの残りでこの一割を終わらせればいいだけなので、とても楽なのだ。


 昨晩のひうりから、楽しみにするように念押しされたので期待している。

 こういう企画でもなければ、海に来ることもなかっただろうから、そういう点では忠に感謝だね。


「さて、行くか」


 今日は現地集合。電車に揺られて数十分というところに海はある。

 近辺の人々は大体その海水浴場に行くことになるから、この時期は人が多いことだろう。電車の駅が海水浴場の近くにあることも、人を増やしている原因の一つだろう。


「…」


 電車に揺られていると、奥の方に隣のクラスの人がいるのを見つけた。あちらも、僕と同じように現地で友達と会うからか、一人で乗っている。

 とはいえ、僕は関わりのない人に自分から話しかけるほど陽キャじゃないので、僕と相手は沈黙を貫いた。多分向こうも、僕のことには気が付いているだろうけど、話しかけてくる様子はない。


 そのまま、微妙に気まずい空気のまま、海水浴場に到着した。

 忠は運もあるのか、今日の天気は快晴。絶好の海水浴日和であると同時に、海にいなければ体は多量の汗を分泌することになる。


 取り敢えず、僕は集合場所に移動した。駐車場の近くに広場があるのだけど、そこに集合することになっている。集合時間までまだあと二十分近くあるので、結構余裕がある到着になった。


「おう、来たな一樹!」

「うん…忠は暑いのに熱いね」

「お前は気分が上がらないのかー?」


 僕はバッグから水筒を取り出し、お茶を口に含む。長い電車のせいか、ちょっとぬるくなってしまっているのは残念だ。

 ふと、周囲を見渡しても、ひうりは来ていなかった。


「お、黒棘姫探しかー?」

「ああ…うん、まあ」

「まだ来てないな。休む連絡はないから、時間までには来ると思うぞー」


 忠は、僕にそれだけ言うと、別に来たクラスメイトに話しかけに行った。その行動力、見習いたいなぁ。

 時間まで日差しの下にいるわけにもいかないので、僕を含めて早く来たクラスメイトは木陰や施設の屋根の下に移動していた。忠から、今日の参加人数は大体三十人くらいだと聞いているので、ギリギリ他者に迷惑にならないだろう。


 たまにお茶を飲みながら、数少ない忠以外の話せる友達と駄弁りながら待っていると、集合時間五分前くらいになったときに、ひうりがやってきた。

 ひうりはこちらをチラリと見た後に、忠に話しかけに行った。


 忠はボードを手に、出席確認をしている。いつも適当に生きている割に、こういうときは真面目にリーダーするのだから人も見た目によらないってことだね。


 忠に挨拶したあとは、ひうりは僕のところにやってきた。


「おはよう中野くん」

「おはよう佐倉さん」


 そういえば、前に夢のひうりが僕に水着を見せるように現実のひうりに念じておくと言っていたけど、それは上手くいったのだろうか。

 別に絶対に見たいというわけではないけど、いや、しかし…見れたら、いいなぁ。


……


 水着に着替えて、僕たちはパラソルの準備などをした。一応団体で行動することになっているので、荷物はここにまとめて置いておくつもりだ。誰かがいれば、問題が起きてもすぐに対応できるだろう。


「女子の水着、楽しみだな!」

「ゲスイよ忠…」


 今回の参加者の男女比は、ほとんど1:1で構成されているので、ここには十五人くらいの男子が準備をしている。残りの十五人の女子はまだ着替えている。


「今日の企画は、女子の水着を拝むためだけに存在すると言ってもいい!高校じゃ水泳の授業もないしな!」

「本当にゲスイよ」


 高校でも水泳の授業が存在するところもあるらしいけど、うちの高校にはカリキュラムに入っていない。なので、確かに女子の水着を見るならば、こういう企画を立てるしかない。

 陽キャとして、こういうすぐに企画できるのは素晴らしいと思う。


「お、期待の水着女子がやってきたぞ!」


 忠の声で、他の男子たちの視線も忠の指の先に向く。

 僕もゆっくりと後ろを向いた。女子の水着に期待するのは、まあ僕も男子だから当然と言えるのだけど、言うてひうりの水着にしか興味がないので焦る理由はない。


「「「おおぉ…」」」


 男子たちから声が漏れている。

 確かに、日々生活しているだけでは見ることができない光景がそこにはあった。水着の間から見える地肌が、いつもは見えないこともあってか、煽情的になっている。

 

 さて、ひうりの水着はと言うと…フリルのついた、ビキニタイプの白い水着だった。

 ひうりの黒髪に白い水着がとても映える。


 基本的にひうりは、あまり過度な露出を好まないので、セパレートタイプの水着を着るかと思っていたのだけど、ビキニだとは思わなかった。

 お腹とか肩が、惜しみなく見えるので、なんというか、うん、僕の彼女かわいい。


「おい一樹、見とれてんじゃねえ」

「忠に言われたくないよ」


 というか男子陣は大抵見とれている。この学年は美人が多いから、どうしても注目してしまう。

 周囲を見てみると、近くで遊んでいた大学生らしき男性陣も女子たちを見ていた。あ、連れらしき女性に叩かれてる。


「さて、じゃあ準備も整ったことだし、泳ぐか!こっちで何個かイベントっぽいの準備してるから、時間になったら集まれよー」


 現在の時刻は大体十時。まずは一時間後に企画があるらしい。

 つまりそれまでは自由に泳げるということだ。折角海に来たので、砂浜で休んでいるのももったいないし、なにより暑いので早く海に入りたい。


 男子たちも女子たちも、我先に海へと走っていく。早く入りたいとはいえ、走るほどの元気もない僕はゆっくり歩いて海へと移動する。

 その時、後ろから声をかけられた。


「中野くん」

「佐倉さん?」


 ひうりも海に走っていかずに立っていた。

 僕は振り返るけど、ひうりは何も言わない。それどころか、何かを待っているかのようにも見える。


 え、まさか。でも、現実じゃまだ恋人でもないんだし、夢の中のひうりが念じているとはいえこんな積極的な行動をとるとは思えないけど、でも待っているということは…


「えっと…とても可愛らしくて、似合ってると思うよ」

「…ふふっ、ありがと」


 それだけ言うと、ひうりも海に走っていった。

 対する僕は、お礼を言った時のひうりの表情が可愛すぎて、しばらく呆けていたのだった。

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