校長の話は要約すると、大抵一行に収まる
誤字報告感謝です
『夏休みと言って本校の生徒だという自覚をもって…』
現在、終業式。
テストが終わっての数日も過ぎ、とうとう学校が終わったのだ。人によってはここから補習があるが、僕には関係ないことである。平均をとれていれば補習は受けずに済む。
校長先生の話は長い。校長先生はみんな、要約の問題が苦手だったのだろうか。
要点をまとめると、気を付けて学習を怠らずに生活しましょう、で終わる。夏休みだからと、たまに髪を染めたりタバコなどに手を出そうとしたりする人がいるらしいので、そんなことをするなという注意喚起だ。
まあ僕はする気がない。ひうりは、チャラい人が嫌いだからだ。
見た目で判断することはしてはいけないかもしれないが、髪染めやピアスなどはやはりそういった印象を与えやすい。まあそもそもそういう類のものには興味ないけど。
『夏休み、楽しんでください』
そう言って校長先生の話は締めくくられた。最初からそれで済ませればいいのに…
……
終業式の日は、昼までで帰宅することができる。その時間は、課題を消化することに費やそうと思う。
今日から、海水浴の日程までには時間がある。その日までに、課題のほとんど…可能ならばすべてを終わらせようと考えている。後腐れなく海を楽しみたいのである。
忠も呼んで、早めに一緒に終わらせようとも考えたのだが、忠は企画の準備があるらしい。おめでたいやつだよ本当に。
「ただいまー」
もちろん家には誰もいない。
課題をする前にご飯を作る。インスタントラーメンでいいか。制服を着替える前に、鍋に水を入れて湯沸かしを始めておく。こうした方が効率的だ。
僕が私服に着替えて、キッチンに戻ってくると、スマホが振動した。
『このあと図書館集合』
…僕、課題しようと思ってたんだけど。
メッセージの送り主は忠。海企画のグループではなく、個人での連絡なので、僕の名指しで集合号令をかけたことになる。となると無視はできない。
『課題するから無理』
そんでもって、僕には拒否権がある。集合と言われても、用も分からないのにこんな炎天下の外に出る気力はない。
お湯が沸いたので麺をいれる。箸で麺を解しつつ、最後に粉末スープをいれれば完成だ。器に移し替えるのも面倒なので、僕はそのまま鍋から食べる。
どうせ洗うのも僕なのだ。出来る限り仕事を減らそうとするのは、生活をしていくうえで必要な技能である。
『いや、来いよ』
またもやスマホが振動して、忠から連絡が来た。
『要件は?』
『来れば分かる』
こういう人嫌いだ。要件を言えばいいのに、この場で言わずに僕をおびき出そうとする魂胆が見えるのが嫌だ。もし行けば、どんな要件であっても何事もなく回避することは難しくなる。
どうしようかと考えながら麵を啜る。うん、美味い。
『行かないとだめ?』
『来た方がいいと思うぞー』
どうにも忠は、僕を行かせたいみたいだ。
『何時?』
『お、来る気になったか。二時だ』
行くとは言ってない。それに、二時って一番暑くなる時間帯ではないか。
猶更僕は行くのが億劫になる。元より僕は、ひうりのことがなければ完全インドア派なのだ。夢の中で遊ぶものを増やすために情報収集しないのならば、僕は本当に外に出ることはない。
お小遣いは貰っているけど、使うことがなさすぎて貯金されていく一方である。
『じゃ、待ってるからな!』
ああ、時間を聞かなきゃよかった。これで僕が行かなければ、僕は忠を炎天下に放置したくそ野郎となってしまう。
向こうが勝手に待っているだけなので、僕の責任ではないはずだけど、忠はきっと後日叱ってくるだろう。
いつの間にか食べ終えていたラーメンを見てため息をつく。仕方ない、行くか。
鍋と箸を洗って置いておく。火が消えていることを確認し、財布・スマホ・鍵の確認をして家を出る。
もしかしたら可能性として僅かながらに、課題をするかもしれないので一応数学を持っていく。まあ、忠に限ってそんなことはないだろうけど。
「お、来たな!」
家から歩いて十数分のところにある図書館にやってきたら、既にそこに忠がいた。現在時刻は一時五十分。
しかもなぜか、忠の後ろにひうりの姿もあった。え、何で?
「準備があるんじゃなかったのか。何の用だよ。それに、なんで佐倉さんが?」
「まあまあ、聞きたまえ」
僕の言葉を手で制して、忠は説明を始めた。
「まず、呼んだのは一樹にお使いを頼みたいからだ。準備段階で必要なものがあるからな。費用は渡しておく」
忠から三千円と買い物リストを受け取る。書かれているのはありふれたものだ。
僕が何かを言う前に、更に忠は言葉を続けた。
「そんで、買い物には黒棘…佐倉さんも同行する」
「はぁ!?」
なぜ、そんなことに。
「うん、お前の驚く顔が見たいからお前を呼んだんだ。本来は佐倉さんだけだったんだが、せっかくならお前も呼んでやろうと思ってな」
それはまあ、いいけど。でも、現実のひうりの私服なんて初めて見るからドキドキしてしまう。それに何を話せと…
「あれだ。友からのサプライズというわけだ。そんじゃいってらー」
忠は、ひうりとの関係を求めている割に僕とひうりの仲を応援しているような素振りがある。流石に、夢の世界のことは分からないだろうけど、僕とひうりの間に特殊な関係があることを察している節があるのだ。
要件を伝えると、忠は図書館の中に入っていった。そこで会議してたのかよ…
ひうりが僕のことを見つめている。
「えっと…」
「中野くん、行きましょ」
なぜか突然、ひうりと二人きりで買い物することになった。
どうしてこうなった!
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