高嶺の花との秘密の関係
連載版を始めることにしました。よろしくお願いします
一話目は、短編のやつを加筆修正したものですので、既にお読みの方は二話からどうぞ
僕の名前は中野一樹。名前も見た目も一般的な男子高校生だ。
運動神経が良いわけでも、成績がめちゃくちゃ良いわけでもない僕には他の人よりも少しだけ上回っていると自負している部分がある。
「一樹くん、今日はパフェが食べたいのだけど」
「はいはい、どうぞ」
「えへへ、ありがとう」
彼女がいるのである!この時点で既に多くの男子高校生よりも優れていると言っても過言ではない!日夜彼女が欲しいと嘆いている男子たちにマウントを取ることができる僕の、唯一の優れた点だ。
彼女の名前は佐倉ひうり。僕とは違ってとてもかわいらしく運動神経が良い長い黒髪が特徴の女の子だ。とても頭がいいとはいかなくとも、僕よりも成績が良い、いわゆる高嶺の花である。
隣のクラスだからよく話すようになるまで下の名前は知らないかったのだけど、どうやら漢字はなく平仮名なのだと言う。ちょっと特殊な名前ではあるけど、無理に当て字をされてキラキラネームになるよりはマシだなと僕は思っている。
「ふぅ、そういえば今日お母さんから…」
パフェを一瞬で食べきってしまった彼女は、僕に今日起きたことを教えてくれる。内容は専ら学校から帰ったあとに家で親から言われたことばかりだ。中々に親が厳しいらしい。
家に帰ったあとのことを話しているなら、じゃあ今は何時なのかって?僕はこの家具のない部屋に時計を出して時間を確認する。
その針が指しているのは深夜の二時。多分外は真っ暗だろう時間だ。高校生が逢瀬をするには流石に遅すぎる時間にどうやってこうしてパフェを食べているのか。その答えはこの場所にある。
僕とひうりしかいない扉のない白い空間。ここは、俗に言うと夢の中の部屋である。
ここで勘違いしないでほしいのは、ひうりは僕の想像上のものではなく本人であるということだ。僕が知るはずのない、ひうりの家での出来事を話している時点で、僕の空想上のものではないことは明確だ。ここでひうりが言ったことが、実際に起きたことであることは過去に確認済みである。
「ただなぁ…」
「どうしたの一樹くん」
不思議な顔をして僕の顔を見るひうり。実は彼女、ここで起きたことや話したことを覚えていないのだ。正確に言うと現実で覚えていないのだ。
ここに来て話すときは、昨日の夢のことも一昨日の夢のことも覚えているのに、現実だとすべてきれいさっぱり忘れているのだ。夢の内容だから、と言ってしまうとそれまでなのだけど、中々不思議な状況である。
「ちょっとここに来た日を、ね…」
「懐かしいわね、あの時は私もパニックだったし」
……
僕と佐倉さんがここで会ったのは三カ月前、ちょうど二年生に上がった四月の始業式の日だった。
いじめられているわけでも、友達ゼロ人というわけでもない僕は、例年通りに始業式を終えて家に帰ってきた。特筆するようなことをしたわけでもなく、いつも通り僕は夜に寝たのだ。
寝る時というのは、正確にいつ自分が眠ったのかというのは自己認識できないのが普通だ。しかし、その日の僕は確実に目を閉じたタイミングで眠ったことを認識した。そしてこの白い空間にいつの間にか立っていたのだ。
変な感覚だと思いながら、漠然とそれが夢だということを認識した僕は適当にリンゴを手の上に出してみた。すると確かに僕の思った通りの赤いリンゴが出たのだ。認識が甘かったのか造形が変だったことも、それが夢だということを印象付けることになった。
そして目を覚まそうと思うとすぐに目が覚める。目を閉じるとまたここに戻ってくる。正直言ってそれ自体が夢なのかとも思った。でも現実ではちゃんと痛みを感じて、夢の中では痛みを感じようと思わない限りは痛くないのだ。
僕は夜の十時くらいに寝ることを習慣にしていたので、朝までたっぷり夢で遊ぶことにした。中二病みたいな恰好をしてみたり、ソファを出してみたり…知らないものまでは出すことはできなかった。
そんなことをして二時間くらいしたとき、急に背後に違和感を覚えて振り返った。するとそこに佐倉さんがいたのだ。ただ僕がここに来た時と違って妙にぼんやりしていたのを覚えている。
「えっと…佐倉さん、ですよね?」
「えー…?あー…そうねー…」
一年生の頃に僕も佐倉さんの噂は聞いていた。学校で一番美人だとか、気が強いだとか、振られた男は数知れないとか…それを聞いて僕は佐倉さんを恐怖の対象として見ていた。
しかし、目の前にいるのはそんな噂とは裏腹に、ふわふわした雰囲気を出している女の子。
「大丈夫ですか?」
僕が無意識に作り出してしまったのかと思って、消そうと念じたけど佐倉さんは消えなかった。なので僕は取り敢えず佐倉さんを揺すって起こしてみることにしたのだ。
しばらくすれば佐倉さんの目も覚めてきて、僕のことをはっきりと認識するようになった。
「あなた誰かしら?それにここどこよ…もしかして誘拐!?た、助けてー!」
「ええ!?ち、違いますって!同じ学校の中野一樹です!」
「同じ学校…?とうとう私を誘拐するような男が…ひぃっ!」
狂乱状態に陥った佐倉さんを宥めること、十数分。どうしてここまで僕とここに来た時の反応が違うのかと疑問に思いながらも落ち着いて対話することに成功した。
「つまりここは夢の中ってこと?」
「そ、そうです。ほら、こうやって好きなものを出せますよ」
そう言って僕は手の上にサッカーボールを出した。何もないところから物が現れるっていうのも変な感覚だが、二時間の遊びのおかげですっかり慣れてしまっていた。
それに対して佐倉さんは驚きながら自分も手を出してから首を傾げた。
「何も出ないけど」
「え?そんなはずないですよ、こうして…」
僕はサッカーボールを消して風船を出した。しかし佐倉さんには物を消すことも出すこともできないようだった。
「…変な場所ね」
「…そうですね」
まあ変な場所だということは、ここに来た時点で分かり切っていたことだけど。
その後も、色々と佐倉さんと一緒に実験を繰り返して分かったことがいくつかある。
一つは、佐倉さんは僕ができるようなことはほとんどできないと言うことだった。痛みを感じなかったり、僕が出した物を食べたりすることはできるようだけど、物を出現させることはできないみたいだった。
二つ目としては、この場所自体が僕主体ということだった。僕が一度起きたあとにここに来ると佐倉さんはいなくなっていて、数秒後にまた佐倉さんが現れた。僕が起きている間は普通の夢を佐倉さんは見ているらしい。ただ再出現した佐倉さんは先ほどのようにふわふわはしていなかった。
最後に、ここに来ることができるのは佐倉さんだけということだった。僕が他の人、例えば友達の一人を呼び出そうとしても、人形みたいなのが出てくるだけで、佐倉さんみたいに意識はなかったのだ。
「ずるくない?」
「そう言われましても…」
睨んでくる佐倉さんにビクビクする僕。
そんなこんなしながら時間を過ごしていると、不意に佐倉さんが消えた。時間を確認すると朝の六時半。どうやら佐倉さんが起きたらしいことが分かった。
仕方なく僕は学校で話そうと考えて起きていつも通り登校した。そしてそこでさらに分かったことは、佐倉さんは夢のことを覚えていないということだった。話しかけたら「誰?」って言われた時のショックと恥ずかしさというのは人生で一番だっただろう。
……
「今は一樹くんに欲しいものは出してもらって、好きなだけ話せるからいいじゃない?」
「でも結局これも夢のことなんだよね…」
「仕方ないじゃない。現実まで持っていけるのはなんとなくの思考誘導だけなんだから」
しばらくして更に気が付いたことは、ひうりはここで強く思ったことは現実で漠然とした無意識として残るということだ。
例えばここでひうりが「起きたらパフェを食べる」と思ったら、起きたときにパフェを食べたくなっているということだ。でも記憶はどうしても引き継げないらしく、現実の僕とひうりの関係は友達で止まっている。
むしろどうやって現実で接点のなかった僕とひうりが友達になったのかと言うと、ここで強く思わなくても、何度も繰り返すと現実では正夢みたいな感覚になるらしく、夢で何度も会った僕に現実のひうりが話しかけてきたのがきっかけだ。なぜ話しかけたのか本人もあまり分かっていないみたいだったけど、まともに初めて現実で話したと当時は嬉しくなったものだ。
「ずっと夢にいたいわ…」
「そう思ってくれて嬉しいよ」
何度も何度もこの白い空間で話していると、ただの友達以上にお互いのことを知ることになる。最初ここで話したときはひうりを恐怖の対象と認識していた僕も、家のこととか聞いているうちに普通に話せるようになっていた。そしてある日、どちらからともなく付き合わないかという話になったのだ。
夢だけの関係、現実には引き継がれない記憶、それでも互いに互いのことを知り尽くしている。何気に気が合ったということも加算されて、僕はひうりとカップルとなったのが一カ月前。
出会ってから二か月で付き合うなんて、スピードカップル過ぎないかとも思うけど、僕が寝てひうりも寝るという状況になると否が応でもここに来てしまうのだ。毎晩ここで喋っていれば一般のカップルの二か月以上に話すことになる。過ごした時間はそれなりにあるのだ。
「そういえば一樹くん」
「どうしたの?」
「現実で私が一樹くん以外の人と付き合ったらどうするの?」
一応ひうりは思考誘導で現実で男性と付き合わないようにしているらしいけど、万が一ということもある。
「距離を置く…と思っても僕が意識しなくてもひうりはここに来ちゃうからなぁ…」
「そうね。一樹くんにもできないなら私にもできないし…」
「まあなんとかするよ」
そもそも夢の中で会う前にも、ひうりは様々な男性に告白されて断ってきたのだ。思考誘導もあるので多分大丈夫だろう。
「もしくは、ここで頑張って私が現実でその男と別れるように意識するわよ?」
「うーん、思考誘導もあるのに付き合ったということはその人に相当惹かれる何かあったというわけでしょ?ならその人を大切にすべきじゃないかなぁ」
「ここの私は一樹くんを大切にしたいのよ」
嬉しいことを言ってくれるかわいい彼女。でもここはあくまで夢の世界なのだ。思考誘導ができると言っても限界はあるし、見た目とかは僕って平凡だからひうりが一目惚れするような人がいたら勝ち目はないだろう。
「もう、何をしょぼくれてるのよ。私の彼氏なんだからしっかりしなさい」
「分かりましたよお嬢様」
「うっ、ええ、そうしてちょうだい」
噂通り現実のひうりは気が強い。睨みだけで、男子を後ずさりさせているところを見たこともある。
しかし本質はかわいいものが好きな、ただの女の子なのだ。メルヘン思考とも言えるような考えがあるらしく、お姫様だとかお嬢様扱いされると目に見えて嬉しそうに照れるのがかわいい。
「あら、もう朝ね」
「もうそんな時間か」
さっき出したあとに放置したままの時計を見て時間を確認する。
実はあの時計の時間の進み方はしっかりとしていない。示している時間は正しいみたいなのだけど、針の進み方が時によって変わるのだ。なので実際の一時間よりも長かったり短かったりする。今日はいつもよりも短く感じたな。
「それじゃあまた、学校で」
「うん。あと、また夜に」
現実のひうりとは学校で話せる。でもこの僕の彼女のひうりはここでしか会えないのだ。
なんとも寂しく感じてしまうものの、それも仕方ないと割り切って目を覚ます。
「さて、学校に行くか…」
現実のひうりに夢の中で聞いたことを話されることもあるけど、総じてひうりとの会話は楽しいのだ。彼女ではないひうりとの会話も僕の楽しみの一つとなっている。それを羨む男子たちの目線に恐々しないといけないのは現実での弊害だ。
僕は朝ごはんを食べて、そしていつも通り家を出たのだった。
……
「よお一樹!」
「うん、おはよう忠」
教室に到着するとすぐに僕の友達の一人である進藤忠が話しかけてくる。親が共に考古学研究者というちょっと面白いやつで、僕とは違って友達が多いと呼べる部類だ。
「今日は黒棘姫はいないぞ」
「そうか、ありがとう」
僕は誰も座っていない自分の席に座る。たまにひうりがここで待ち構えていることがあるのだ。大抵その時は家で深刻なことがあったときである。そしてそういう時は前もって夢の中で内容を聞いていることが多い。
夢でもひうりが困っている様子はなかったので問題なかったのだろう。
「にしてもお前と話させてくれっていう男が多いこと多いこと」
「僕と?」
「お前経由で黒棘姫に話したい人がいるってことだよ」
さっきから忠が言っている黒棘姫というのは、勿論ひうりのことである。どんな男であっても問答無用で断られることから付けられた渾名である。本人も知っている渾名であり、夢の中で好きなように呼べばいいと言っていたので気にしていないみたいだ。
忠は僕の机に座る。行儀が悪いと一応注意はするけど、それを聞いてもらえたことは一度もない。
「皆不思議なんだよ。お前があの人と仲がいいことが」
「まあ、そうだろうね」
僕だって夢の中で会わなければひうりと話すことはなかっただろう。今思えば他の人に勝る点は彼女がいることよりも、特殊な夢を見れる点なのかもしれない。
そんなことを思いながら忠と話していると教室の空気が変わった。僕が扉の方を見ると、そこにはひうりが立っていた。そしてこちらに歩いてくる。
「おはよう中野くん」
「おはよう佐倉さん」
夢の中では名前で呼び合うのに現実では苗字だなんて少し寂しく感じてしまう。だがここで名前で呼べば教室どころか学校中の男子から袋叩きにされるうえにひうりにも怪訝な目を向けられることになるだろう。
もしかしたら正夢感覚でひうりには許されるかもしれないけど、今のところ試したことはない。僕だって死因:男子による袋叩きにはなりたくない。
既にひうりと話している僕には教室の男子の目線が鋭く刺さっている。そして友達の忠はいつの間にか離脱していた。あの裏切り者!
ひうりは僕に近付いて耳元に近付く。男子の目線が更に鋭くなって背筋を凍らせる。しかしそれを気にすることなくひうりは声を小さくして言う。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「あ、うん、何?」
「やっぱり学校以外でもあなたと会ったわよね?」
何度目かになる質問に僕は「そんなことない」と言う。夢の中で付き合い始めたくらいからひうりは現実でこういう質問をするようになった。多分これも無意識の思考から来るものなのだろう。夢の中で会ってると言えればいいが、既にそれは試したあとだ。その時はちょっとひうりに引かれた。
その後は普通の会話をしてから朝のショートホームルームが始まる。ひうりは隣のクラスなのでここでお別れである。昼は基本的に喋ることはないので次に話すのは帰り際もしくは夢の中ということになる。
夢で会うなんてキザすぎるとは僕も思うけど事実なのでどうしようもないのが辛いところ。
いつも通り授業を受けて、いつも通りの時間を過ごしていつも通りに帰る。それが僕の現在の一日の過ごし方だ。いや、過ごし方は以前と変わってないな。夜の楽しみが増えただけで、他にすることが増えたわけでもないのでいつも通りなのは変わらない。
帰宅部の特権を生かして学校を終えるとすぐに帰る。そして校門のところまで来たとき、誰かが僕の前に立ちはだかった。
「君が中野一樹くんだね?」
「はいそうですけど、どちらですか?」
「僕は三年の加賀龍人だ」
僕の一個上の学年らしい。僕と一人称が被るとキャラ被りになるので変えてほしい。
「単刀直入に言おう。佐倉ひうりとの仲を取り持ってくれ」
「嫌です」
なぜ僕の彼女との仲を取り持たなければいけないのか。
「待て待て。別に君はあの子の彼氏というわけではないんだろう?」
彼氏です、と言えたら楽なんだが。本人にはともかく、関係ない人に対して夢のことを言っても仕方ないので肯定しておく。そして首を縦に振りながら僕は加賀先輩の横を通り抜けた。
しかしそこに待ったをかけたのが先輩だ。僕の肩を掴んでいる。
「もちろん無条件とは言わない。僕のできる範囲でできることなら何か一つ叶えてあげるよ」
夢の中ならどんなことでも叶うのでどうでもいいです。あの白い部屋だって僕が考えれば写真だけで見たリゾート地とか自分の部屋にできるのだ。ひうりに聞けば彼女の部屋を再現することだってできる。
いつもは必要がないのでしていないだけだ。
「結構です。失礼します」
「もしかして君もあの子を狙っているのかい?まあ気持ちはわかる」
「そういうわけでもないんですけど」
だって既に彼女だし。
「じゃあいいじゃないか!まあ君が狙っていたとしても僕が告白するけどね」
「なら勝手に告白すればいいじゃないですか先輩。僕が関わる必要はないですよね」
「君がいてくれるだけであの子は楽しそうにするんだ。分かってくれ」
楽しそうにしている…かはちょっと分からないけど、どのみち僕は必要ないだろう。まさか僕がいる場でひうりに告白するわけではないだろうし。
「…分かったもういい。僕があの子を彼女にしても怒らないでくれよ」
「ああはい」
そもそもさっきから「あの子」とばかり。どうせ他の男子にアピールするために彼女にするとかそういう類だろう。どこかのお嬢様だとか家がお金持ちだとかいうわけではないが、ひうりが彼女だというとそれだけで他の人に自慢できるのは分かる。
だがそういう空気というのはひうりは敏感に気が付く。
「それではさらばだ」
先輩はそのまま校内に戻っていった。ひうりは運動部に所属しているわけではないけど、助っ人などをたまに頼まれているのでまだ校内にいるだろう。先輩は今日告白するつもりなのだ。
それにしても随分とキザな喋り方をする先輩だったな。ひうりはどちらかと言えば静かな人の方が好きだと聞いているので無理だろう。
僕は何も心配することなく家に帰った。
……
「こんばんは一樹くん」
「こんばんはひうり」
いつもと変わらない様子で夢の中で合流する。
「もしかしなくても加賀先輩って人に告白されたと思うけど」
「されたわね。見た目は普通だったけど、喋り方がうざいし私のことを下に見てるから容赦なく断ったわ」
昨日の夜も言ったけど、ひうりはお嬢様扱いされる方が喜ぶ。人にマウントを取るためだけの道具として見られるとそれだけでひうりにはアウトなのだ。
「というか告白されるって知ってたら止めてよ!彼氏でしょ!?」
「ひうりが受けるとは全く思わなかったからね。ひうりを信頼したんだよ」
「そうは言ったって…現実の私は一樹くんと付き合ってないんだから…」
ひうりは現実で僕と付き合っていないことを事あるごとに気にする。夢の中の意思では僕と付き合うことに前向きなのに、現実では僕のことを友達としか認識していないのが不満らしい。
「なんで私は現実で動けないのよ!」
「さあ?」
そもそも僕の夢とひうりの夢が繋がっている時点でおかしいのだ。多分原因はそのあたりにあると思われる。
「もうっ…何か甘いもの」
「はいはい」
僕が出せるのは僕かひうりが経験したことのあるものだけ。それでも頑張って日々現実で色んなことを経験しようとしているのは僕にとっても進展なのだろう。
ひうりのためにシュークリームを出してあげる。夢の中ではどれだけ食べても太らないので、ここで好きなだけ食べるというのはひうりのルーティーンだ。そのおかげか現実で間食することが減ったらしいので良いことだろう。
シュークリームを食べながらひうりはこちらにすり寄ってきた。僕は彼女の頭を撫でる。それにひうりは嬉しそうにする。
これはまさに夢のような体験なのだろうと、僕は毎晩思うのだった。
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