第1章 12話 星の力 コロシアムスタジオ編
コロシアムスタジオの会場内、最終戦を迎えようとしていた。
「アス。」
「あ!おとーさん!ティスもスコットも大丈夫だって!」
「そうか。」
「うん!ちゃんと看病してるからおとーさんも頑張ってね!」
「ありがとうな。」
ボロボロになったティスとスコットは医務室で治療を受けていた。アスは看病という見張りとして椅子に座っていた。
アルトは、医務室をでて最後の戦いであるために移動をしていた。
「よぉ。占星術師アルト。」
「…」
「おれの部下を可愛がってくれてありがとなぁ?次はおれがお前を地獄におとしてやる。仕返しだ。」
「…お前がこっちに、戻ってこれたのメビウスのせいだろ。」
「あぁ?あのクソ女の名前だしてんじゃねぇよ?つぅか話そらすなよ。」
「その無駄な殺気は試合始まるまで残しとくんだな。」
アルトは鼻で笑い、武神ヘラグルスは鬼のような形相で睨みつけていた。
武神ヘラグルス対占星術師アルト。
コロシアムスタジオの頂点に君臨する神と半端者が戦うことが、どれ程見ものなのかと外野が前回の試合より集まっていた。それと同時に圧倒的武神派が多い。
「占星術師ぃ?覚悟はできてんだよなぁ?」
「その言葉そのままかえすよ。」
武神と半端者の戦いが始まった。先行をとったのは武神ヘラグルスだった。4本の腕でアルトに掴みかかる。その腕をヒラリとかわし、ヘラグルスの頭上を通り、後ろに回った。
「相変わらずうぜぇ身のこなしだなぁ?」
「ほめてるのか?ありがとうな。」
「ほめてねぇよ!」
叫びながらアルトに殴りかかる。しかしそれを全てかわしていく。4つの拳は綺麗に避けられて、武神のプライドはついにキレる。
「てめぇ!1発はあたれ!そんなクソみたいな涼しい顔でよけてんじゃねぇ!!」
「分かりやすい攻撃だから避けるの簡単だろ。あ。やっぱあん時より弱くなったか?」
ニタリと笑うアルトは本心から相手を煽っていた。武神は距離をとり、4本の腕を正面にあげた。そこから真っ赤な炎が燃え上がりだした。
「武神のくせに魔術かよ。」
「神様だからなぁ?使えるもん使っていかなきゃ勿体ねぇだろ?」
腕に炎をまとったまま再び距離をつめる武神ヘラグルス。アルトは瞬時に飛び、武神ヘラグルスの頭を掴み前方によろけさせ転がした。そのまま空中で回転し背面にとるアルト。武神ヘラグルスはそのまま倒れた。炎を纏っていた腕を無理矢理動かし、炎ごと地面に突き刺し爆風とともに起き上がった。瞬間地面が大きく揺れだした。
「なめてんじゃねーぞ。くそがきゃ!!!」
そういうと地面から炎の柱が無数に飛び出してきた。
「!?」
「もらったぁあぁ!!!」
炎の柱など気にせず突っ込んでくる武神は全身炎に包まれながらアルトを殴った。
「おい。まだ生きてんだろ?立てよ。」
「いってぇな。急に突っ込んでくんなよ。」
アルトは焼かれながら立ち上がり、笑いながら武神ヘラグルスを挑発しはじめる。
赤くそびえ立つ炎の柱は、ユラユラと蠢いている。その中に4本腕の武神ヘラグルスと、占星術師と名乗る半端者のアルトが睨み合っていた。
「こいよ。占星術師!てめぇを叩き潰す!」
「いいよ。お前からこいよ。俺は逃げないよ。」
武神はアルトに掴みかかり、殴られ続けていた。そしてそのまま頭をつかみ地面に叩きつけ、赤い炎と共に燃やし尽くした。
「やる気あんのか…てめぇは…はっ!はは!」
燃え上がるその遺体に、武神ヘラグルスは背を向け笑いながら、その場を去ろうとした。ズッと背後から赤い炎を纏った者が起き上がり、次第に炎は消えて少し頬が腫れているがほとんど無傷のアルトが立っていた。
「な…おま…」
「言ったろ。逃げない。って。弱いな。あーあ。服がボロボロ。」
「お前今もえてたろ…」
「さぁ?俺燃えてた?あー飽きた。やめやめ。終わらす。」
「んだよ!てめぇ!舐めてんじゃねぇ!!」
武神ヘラグルスは再び構え直し、突進した。アルトは向かってくる相手を睨みつけた。瞬間武神はピタっと立ち止まる。観客はざわざわとし始める。
アルトは星のように小さく輝く青い炎を身にまとい辺り一面あっという間に夜の世界のように暗くなった。武神ヘラグルスは唐突に吹き飛んだ。
「!?」
声にならない叫びをあげ、その場に蹲った。
「まずは喉を焼き払わないとな。」
「…!!!」
「喋れないのって可哀想だよな。今楽にしてやるよ。」
アルトは手をかざし、青い炎は小さくより濃く凝縮し、武神ヘラグルスの頭で爆発した。
爆発後、その場に光が戻り、見ていた観客の外野は何が起きた?とざわざわしはじめた。不思議と辺りに星のように輝く物がフワフワと煌めいていた。
神が消え加護の消えたコロシアムでは、いままでのなんの変わらない生活を送っていた。武神が堕ちたことによりその従者も知らずと居なくなっていた。ありきたりな平凡の、とある部屋の一室に訪れていた一人の女性の姿があった。
「こんにちは。調子はどう。」
「あ?タウちゃんじゃないっすか!!元気っすよ!」
そう答えたのは身体中包帯だらけの男、スコットであった。
「元気そうね。そっちの坊やは大丈夫なの?」
「おん?ティスのことすか?ティスはちと俺より重症なんで、まだ寝てるっす!」
「そう。生きてるのなら安心ね。ところでスコちゃん。主まだ戻ってきてない?」
「出掛けるっつてアスと行ったきりまだっすね。」
「外で会った時はもう戻る。って感じだったのに。まだだったのね。スコちゃん、ありがとう。」
「おう!いいっす…よ!…てかさりげなくスコちゃん言うのやめてもらえます!?」
ニコニコとしていスコットは真顔になり叫んだ。しかさその叫びに返してくれる者はいなかった。
「で、タウ。用件は。」
部屋に戻ってきたアルトとアスは先にきていた牡牛座の席に座るタウラスこと、タウに話しかけた。
「結構重要なのだけど、大丈夫かしら。王都関係なんだけど。」
「ティスも起きてた方がいいか?」
「どちらかと言えば神王様関連」
「神王か…いいぞ。ここで話せ。」
タウはスコットが寝ていたベッドに腰掛け真っ直ぐアルトに向けて話し出した。