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第1章11話 蠍座スコーピオ コロシアムスタジオ編

コロシアムスタジオの地面は割れていたが、武神の従者のおかげで修正されていた。中堅組が始まるゴングが鳴り響く。


「おれ…いきなり決勝戦からなんすね…」

「物好きしかやらないからな。中堅て。」

「そっすよねぇ…」

「ティスが見せたんだ。今度は俺が見せる番すね!あるじぃ〜みててくださいね!!」

「おう」

スコットはアルトにデレデレの顔をしながら言うが、当の本人は興味なさそうに本に目を落としていた。


決勝戦が始まった。スコットはやる気をだしてフィールドに足を踏み入れた。しかしそこにはかつてスコットを虐げていた細身の男が待ち構えていた。

「会いたかった。あいたかったよ!パピー!元気だったかい?君がいなくて暇だったよ。」

「お前…まだくだらない事してんのか?」

「歯向かうなよ。反吐が出る。いいぜ。これはデスマッチ。死ぬまで戦う。いいな?楽しいよな!」

「はっ。変わって無さすぎてこっちが反吐がでる。かかってこいよ…ダラグ!」

「はっ!あの時のように、一方的に!いじめてやる!」

戦いの合図とともに2人は殴り合い始めた。避けては攻撃避けては攻撃の繰り返しだ。

「おいおい。ご自慢の尻尾はどうした?切られたか?」

「はっ!おめーこそなんだ?その弱っちぃパンチはよぉ?」

お互いがお互いを貶しあいながら攻防を繰り返している。

「半端者が半端者に拾われたお前に何が出来る?答え何も出来ずに後悔して死ぬだけだ!」

「神で生まれたくせに誰かのケツ追いかけてるだけの神に言われたくねぇーな下級の神様よぉ!」

「あぁ?神にも人にもなれなかった雑種にとやかく言われたくねぇ!!クソがぁ!」

「あぐっ!」

ダラグの一撃がスコットの顔面にはいる。地面に這い蹲るスコットは顔を抑えて睨んだ。

「あぁーいってぇなぁ…」

ゆらりと立ち上がると前のめりになり背中から尾骶骨あたりからメキメキとサソリの尻尾のようなものが生えてきた。

「これ見た目悪いからあんまだしたくねぇんだわ…」

「確かに相変わらず気持ち悪いな。キモすぎて吐きそうだ」

距離をつめてくるダラグに尻尾を使って正面から突き刺す。速さは互角にみえたがダラグが交わして手のひらに砂をまとった。

「お飾りのその尻尾ちゃん、壊されてもいいよな?」

その瞬間、スコットはダラグの手のひらに作られた砂に飲み込まれそれは次第に激しさを増し砂嵐がその場で出来上がった。

「ふはは!ミンチだ!ミンチ!」

砂嵐の中でスコットは逃げ道を探すが動けば動くほど砂が体に刺さり体力を奪っていく。

「くそ。なんだよ。この砂。刃物かよ!」

「人類の頂点に君臨する神をバカにしたからな。ゆっくりじっくりいたぶってから殺してやるよ。」

高笑いしながら砂嵐を操り少しずつ追い詰めていく。



俺は昔、この砂漠地帯で育った。詳しくは覚えてはないけど、半端者として前武神に強制的に従者にさせられていた。屈辱を味わされ、皆が半端者だ!異端者!と俺を嘲笑った。教育だとかなんとか言って雑用をやり、生意気だと決めつけサンドバッグにされ、パピーとあだ名をつけられた。

そんなある日、酒場でダラグ筆頭に数名の神を従え酒に溺れてる連中を見ていた。

「おい!パピー!酒が切れた!注文取ってこいよ!あと飯もな!」

「俺は肉な!」

「わたし、葡萄酒」

次々と言われる中従って机に持っていく。絶望しかなかった。このまま時がくれば処分されて楽になると思った。

床に頭を押さえつけられこいつらが零した残飯を掃除しろ!と罵声をあびせゲラゲラと笑っていた。

ガンっ!と音がした方を見た。そこに青い青年が座っていた。この砂漠地帯とは似つかわいぐらい聡明で綺麗な髪と服をきていた。

「うるさい。」

そう呟く青い青年は立ち上がり、俺含め武神の従者共を睨みつけ、

「他所でやれよ。迷惑なんだよ。」

と言い、見たことも無い額の金を置いて出ていってしまった。始めてみたそいつの目は透き通るように綺麗で吸い飲まれるような濁った瞳だった。

「チッ。醒めた!帰んぞ!」

その一言で武神の従者は店を出ていく。俺はその場で座り込んで乾いた笑いが出た。


今日も今日とて路地裏で俺はサンドバッグにされている。もう慣れた。昨晩の怒りを俺にぶつけるダラグは暴言を吐きながら俺を楽しそうに蹴る。

「おい。お前、武神の従者だろ。いいのか。こんなとこに居て。死ぬぞ?」

と声がした。昨晩の青い青年がこちらを冷めた目でみながらそう言った。俺はもうその後の会話は聞こえなかったが、慌てた様子のダラグが消えていったのは覚えてる。

次に俺が目を覚ましたのは路地裏だ。先程と同じ場所。しかし隣にはあの青い青年が座っていた。

「あ…あの…」

恐る恐る声をかける。

「お前は行かなくていいのか。一応はあいつの下っ端なんだろ。」

「!?何が…起きた…」

「武神ヘラグルスの魂をちとおとしてきた。」

イタズラが成功したように笑うこいつをみて、俺は少しほっとした。

「お前はこれからもこんな生活してくのか。大変だな。」

「…なら、なんで俺をたすけた…」

「…」

無言で青年は立ち上がりその場から立ち去ろうとしたが、足を止めてこちらを見て、

「お前の絶望の顔がまた見たかったから。」と。

俺は今しかないと思い、立ち上がりその青い奴を追いかけた。そんな言葉を言われてムカつく奴のが多い。なのになんであんな優しそうな顔で声で言うんだ、それが知りたい、そんな気持ちで必死に追いかけた。

「待ってください…」

「まだ俺に何か用か?」

「あなたの、あなたの名前は…!俺は半端者なんで、名前はないんすけど!」

「…そうだな…占星術師アルト。」

「せん…せ…?」

「俺は、神を裏切った半端者、アルト。空と星に愛された旅人だよ。」

ニコリと笑うアルトと、それを見て目を輝かせてる俺は、一目惚れをした。

「あ、あのアルトさん!おれ、おれを!俺を!連れて行って下さい!」

「お前は、何が出来る。メリットは?」

「…あなたを、お守りします!」

「ぶっふふははは…俺は強いからお守りはいらねーよ。どうしてもっていうなら、そうだな。蠍座。」

「え?」

「新黄道十二門を作ってるんだ。蠍座が空いていたからそこに、お前が座れ。名はスコーピオ。うん。決まり。さっさと12人集めないと、クェイスがうるさいからな。」

「あ。えっと。」

「俺が主でお前が従者。いいな。文句あんならその辺での垂れ死ね。じゃ。」

「え。あ。待ってくださいよ!アルトさん!」

俺はこの日名前をもらった。蠍座のスコーピオ。不思議な人でまだ会って2日なのに、すごく居心地がよかった。多分俺はこの人をもっと昔から知っている気がするがそれはきっとまた別の話だ。



「だから、俺は、アルトさんのために、負ける訳にはいかねぇ…」

砂嵐から銃弾が飛び出した。

「何してるのかしらねぇが、この砂嵐からは出られねぇぞ!」

スコットは隠し持っていた二丁の銃を構え、砂と砂の隙間から僅かに見えるダラグを好機の目で伺って見ていた。その間も砂の刃はスコットを痛めつける。パンッ!と音が響き、ダラグの腕に命中した。その瞬間砂嵐が弱まった。

「しま…だが、まだ!!」

体勢を立てなおし砂嵐を再び起こす。しかし背面から首元に目掛けて蹴りが入った。

「がっ!」

ダラグは膝をつき頭を抑えながら後ろを見やる。

「お前にただ蹴られてただけの人生だと思うなよ。」

「てんめぇ…」

ギラギラと獲物を捉える目をしながら銃口をダラグに向けて、蠍の尾を上にあげる。

「俺はアルトさんに拾われてから幸せしかねぇよ。俺はなんて言われようがどうでもいい。でもよぉ、お前だって主人の悪口言われたら嫌だよなぁ?俺も嫌なんだよ。デスマッチっつたよな。その頭。吹っ飛ばしてやんよ。」

「ひいぃい…あが…げ…」

「さっき蹴り入れた時にちとこの針でチクッとしといたわ。毒が体に回るの気付かなくて可哀想だな。

二丁の銃口をダラグにむけて引き金をひいた。

「あぁ、そうだ、俺はスコーピオ。名乗るの遅れたな。」


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