loiter
「初めまして。道哉です」
確か、彼はそう言った。母は、これでもかと言うほどの笑顔で、
「千草の、新しい、お兄ちゃんよ。――来年ぐらいには、入籍、したいと思ってるの」
と、言った。そこに、有無を言わせる隙間はなく、ただ、こ洒落たレストランという場に似つかわしくないちぐはぐな空気が、いっぱいにふくらんでいた。
耳の聞こえない少女・千草と義兄・道哉の春休みの出来事。
確か、彼はそう言った。母は、これでもかと言うほどの笑顔で、
「千草の、新しい、お兄ちゃんよ。――来年ぐらいには、入籍、したいと思ってるの」
と、言った。そこに、有無を言わせる隙間はなく、ただ、こ洒落たレストランという場に似つかわしくないちぐはぐな空気が、いっぱいにふくらんでいた。
耳の聞こえない少女・千草と義兄・道哉の春休みの出来事。