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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第一章:リーオ、王都へ赴く
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【旅の記憶。病魔の脅威】

冬も深まり、季節はリア充の祭典バレンタインデーですね。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

私は相も変わらずコタツムリと化しています。ですが、節分を超えたのでこれからは温かくなることを切に願っています。


さて、今回は前回の続きでリーオの過去編を書いていきます。病魔という魔族との戦いと、ヴァールとの契約、勇者候補との戦いを書いていく予定ですので、楽しんでいただければと思います。


死病の種を撒き散らす魔族、病魔を封印しようと村を出発して数時間、あんなに高かった太陽もすっかり沈んでしまい、辺りは夜に向けての準備をし始めていた。




「...流石に、一日で山を越えるのは無理があったか...。」


”当たり前です。どんな超人でも不可能ですよ。”


「...仕方がない。今日はここで一泊するか。」


”村の宿屋はどうするんですか?”


「予約しかしていない。今日は野宿の予定だったからな。」


”...まさか、初めからこのつもりで...!?”


「当たり前だ。」


”......。”




なぜか静かになったヴァールは放っておき、さっさと野営の準備に取り掛かるとするか。


まずは場所を探さないとな。開けた場所が一番いいんだが、そんなに調子よくあるわけない。仕方ない、あの大きな木の下を陣取って、そこで野営の準備を始めるか。



背中に背負った革袋から野営道具一式と夕食にパンとスープ用の具材を取り出す。集めた枝に蛍火のライターで火をつけ、その上に水で満たした鍋を置き、中に具材を入れ、煮込む。




「...少し冷えるな...。」




季節はもう秋、そこら辺で採った食べられるキノコも一緒に鍋へ放り込み、キノコスープにして食べる。温かいものでも食べないと、寒くて仕方ない。初秋といえど、夏との温度差が激しいため、体調を崩さないように努めなければいけないな。



吐く息が薄白く見えるくらいの寒さ、空間から火竜の外套を取り出し身体を包む。程よい暖かさがあるそれに包まりながら、明日のために武器の手入れをする。




「......ヴァール、お前の手入れは...」


”結構です。そのための道具も揃っていませんし。無理にされても、こちらが困るだけですよ。”


「...そうか、わかった。」



現在俺は、ヴァールの手入れに必要な刻印布と聖水を持っていない。だから手入れをしようにもできないのだ。




「......仕方ない。今回も此奴を使うしかないか...。」




空間の中から旅先の洞窟内で見つけた古びた箱の中に入っていた『魔剣レムレース』を引き抜き、ヴァールとは反対側の腰に差す。此奴を使うのは大変不服だが、戦えないよりはマシだ。ヴァールの手入れ用品が手に入ったら空間に入れっぱ確定だがな。



”......また魔剣ですか...。好きですね、それ。”


「あ?んなわけねぇだろ。お前がまだ使えないから仕方なく使ってんだ。ただでさえ魔剣を使うには魔力が足んねぇのに、これしかねぇから使ってんの。わかった?」


”......そう、でしたか...私の代わりに、仕方なく...そうですか...。”


「...?」




様子のおかしいヴァールは放っておき、武具の手入れに戻る。少しの不備が死に直結するのが戦いというもの。それも今回の相手は魔族の中でも上位の部類、ほんの少しの不備や油断が命取りだ。真剣にやらんとな。



解説が遅れたが、この世界には数種類の特殊な剣がある。



まずはヴァールなどの神が宿った、または神が剣の形をとっている『神剣』と呼ばれるもの。これが一番少なく、希少価値が高い。


次は三代目勇者イレアス=モンドの『聖剣エルシオン』や俺の持っている『聖剣ベガ=ルタ』などの聖なる力が宿った『聖剣』と呼ばれるもの。これは結構多い。


三番目は四代目勇者レラオ=クーフィの『霊剣アロンダイト』などの精霊が宿ったあるいは精霊が作った『霊剣』と呼ばれるもの。これも希少。


四番目がこのレムレースや俺の持っている『魔剣モラ=ルタ』などの特殊な魔法が宿っている『魔剣』と呼ばれるもの。魔剣はこれらの中でも特殊で、使うために使い手の魔力や気力、体力などを吸い取るという呪いというかそういうものがある。だから俺は魔剣はあまり使いたくないんだ。


最後が二代目勇者ヴェイア=ダレクスの『王剣ヴァル=ロード』などの『王』としての権能が具現化した所謂『力の鍵』と同列のもの(本人でないと能力を発揮しないユニークアイテム。剣かと言われればそうとは言えない。)。



この5種類が、この世界にある特殊な剣だ。まぁ、大体が希少価値が高くて手に入るものではないんだが。この旅の中でそういう場所に行くことが多かったからか、そういう希少なアイテムを見つけることがある。レムレースや、モラ=ルタ、ベガ=ルタ等の希少アイテムは、空間の中に保存してある。




「....スープもできたな。さっさと食べて寝るか。」


”...本当にスープ好きですね。いつも食べてるんじゃないですか。”


「もう秋だ。身体を冷やさないようにしないと、風邪なんてひいたら堪ったもんじゃない。」


”......そういう場合は、私を頼ってくれても...。”


「あ?なんか言ったか?」


”...なんでもありませんっ!”


「はぁ?なんなんだよ...。」




さっきからヴァールの様子がおかしいが、どうしたんだ一体?分かんねぇんだけど...。


まぁ、いいや。さっさと夕飯食べて寝るか。早々にパンとスープを流し込み、食器を水で洗う。それを空間に投げ込み、代わりに火竜の外套を引っ張り出し、包まって木に背中を預けながら目を瞑る。眠れなくても目を瞑っていれば、休むことはできる。まぁ、寝不足にはなるがな。



たまに焚火に枝をくべたりしながら、その日の夜は深まっていった。



次の朝、夜明けと同時に出立の準備を整え、早々に洞窟までの道に戻り先に進む。道の雰囲気も昨日より一層禍々しいものへと移り変わってきた。




「...風も変わってきたな。周りの雰囲気もすっかり禍々しくなってきて、邪悪な魔力が漂ってやがる...。」


”浄化しますか?”


「いや、まず先に病魔を殺さないといくら浄化しても意味がない。お前はここで障壁(プロテクション)張って見張っててくれ。」


”......私はお留守番ですか?”


「ヤバい時は呼ぶ、それまで待ってろ。」




何故かしょぼんとしているヴァールを洞窟前の地面に突き刺し、自分は洞窟の中に入る。中は真っ暗で何も見えないほどだったので、空間の中からライターとランプを取り出し、ライターでランプに火をつけ、中を照らす。


洞窟内の様子は、陰鬱以外の何物でもなかった。病原菌の苗床になった人や動物の死体が散乱し、キノコのような化け物が跋扈している。中には半分人間の病原菌に操られたゾンビのようなものまでいた。




「......酷いなこれ...さっさと片付けないと...!」




腰のレムレースに手をかけ、縮地と一閃で目の前にいた化け物を横一文字に切り裂く。そのままの勢いで横にいたゾンビを逆袈裟切りにする。化け物どもはすぐに再生しようと結合を始めるが、何かに邪魔されるようにして霧散した。



これが、このレムレースの『不死殺し』の能力。これが俺が持っている多くの剣の中からレムレースを選んだ理由だ。


不死殺しは、切ったものの再生能力、または不死性を打ち消せるというもの。この能力により先ほどの化け物どもは、再生することもできず消えたという事だ。本当なら細胞も残らないくらいに切り裂けばいいんだが、この頃の俺はそこまで強くはなかった。


筋力C、耐久C、敏捷B、魔力C、器用B、対魔力D+がこの頃のステータス。


ギリギリ剣術(技)が使えるくらいで、そのほかのスキル、スペルもそんなに多くはない。使える戦闘スペルは習ったばかりの一閃と縮地、魔力撃の三つくらいで、戦闘経験もそこまで多いとは言えない。出来て短期決戦、一撃必殺でないと神をも退けた病魔を殺すことはできない。


もしもその一撃を外せば、一貫の終わりだ。




「...しかし、空気が悪すぎる。死病の病原菌が蔓延してるぞ...。」




口元に『対魔の布』を巻いている為俺は死病にかからずに済むが、普通生物はここに近づくだけで死病どころか存在自体が邪転してしまう可能性がある。



強い邪なる魔力を持つものに対魔力が低い生物が近づくだけで存在を邪転させてしまうという力がある。魔物が絶えなく増えるのはこれが原因だ。




「...呼吸がキツイな...!早く終わらせないと俺がヤバい...。」




布を口に巻いているからか、如何せん呼吸が苦しい。それにそもそも洞窟の空気も薄いため、呼吸すること自体が難しい。本当に早く終わらせないと、戦う前に窒息死してしまう。



そんな馬鹿な死に様は嫌だな。縮地でも使って行くか。



縮地を使って地を這う蛇のような速さで奥まで進んでいく。途中、何匹か化け物に遭うが一閃を使って細切れにしながら進む。




「......ハァ、ハァ...あ?そろそろ奥に着くか...?」




息も絶え絶えに進んでいたところに、奥から強く禍々しい魔力が漂ってくる。おそらく、病魔がいる最奥まで着いたのだろう。漂ってきていた死病の風がより濃くなってきている。



奥に進んでいくと、奥の部屋への入り口のようなものを発見する。中にいるであろう病魔に見つからないように岩陰に隠れながら中の様子を確認すると...




「......見つけた...!」




岩陰に隠れながら、黒い霧の塊のような病魔の姿を見つけた。剣の柄に手をかけ、いつでも引き抜けるようにしながら、縮地で部屋の中に駆け込む。勢いそのまま居合の要領で引き抜き様に切りつける。しかし...




「ゼァッ!!」




まるで煙を切るようにして病魔の姿が掻き消える。その瞬間、物凄い衝撃が俺の身体を襲う。




「グァッ!?」




吹っ飛ばされ、洞窟の壁に背中を思いっきり叩きつけられながら、状況を整理する。




「クソッ(アイツどこに行きやがった!?どこにも居ねぇっつうかさっきの攻撃なんだ?どういう原理で俺はこうして吹き飛ばされたんだ!?まぁ、いいや...呆けてる場合じゃねぇ...!)...。」




魔力感知で、周囲の魔力反応を探る。姿が見えなくても、魔力は感じられる。もともと魔力の塊みたいなやつなんだ。魔力には魔力で勝負だ!




「...魔力撃(龍)、風...!」




数か月前、『風魔竜ヴラドルス』から受け取った腕輪から緑色の風が吹き出し、剣を覆いつくし一つの大きな風の刃を創り出す。吹き荒れる嵐のような風に、たまらなくなったのか黒い煙が姿を現した。




「ッ!そこだぁぁぁっ!!」




現れた黒い影に向かって巨大な風の刃を放つ。それと同時に縮地を使って風の後ろに隠れるようにして距離を詰める。しかし、風の刃に当たって霧散した病魔が膨れ上がり、部屋全体に広がるほど大きくなっていく。




「...おいおい、どういうことだよこれ!」




部屋の地面を漆黒の霧が満たし、天井にまで広がっていく。このまま落下すれば病魔に飲み込まれることになる。それは勘弁だ。




「仕方ない。魔力消費がキツイがやるしかないか。」




腕輪から噴き出す風を操作し、足場を作るように空中で停滞させる。それを感じ取ったのか病魔が黒い触手のようになった煙をこちらへ飛ばしてくる。




「...邪魔だよっ!」




風を操り、触手を吹き飛ばす。だが、魔力消費が激しい。魔力の使い過ぎで血を吐きそうになるが、歯を食いしばって耐える。




「っ...一気に吹き飛ばしてやる...『激昂の風(インセンス・ウィンド)』ッ!!」




周囲の風をまるで嵐のように操り、病魔を巻き込みズタズタに引き裂きながら一か所に収束させていく。そのまま剣を構えてゆっくりと近づいていく。魔力の激しい消費で口からでなく目からも血が流れだす。




「ガハッ......魔力がない...『竜力』も残り少ない...久方ぶりに死にかけだ...。」




荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと剣を振りかぶりながら病魔に近づいていく。病魔も荒ぶる風から何とか抜け出そうともがくが、『激昂の嵐』はそんなに甘くはない。もがけばもがくほどにより強く絡みついていく。風の檻の中で足掻く病魔に、残った魔力と竜力を剣に込めた今出せる最大の一撃を叩き込む。




「......これで...終わりだぁーーーーーッ!!」




今残る力を全て注ぎ込んだ全力の一撃。この一撃でこの戦いの終止符にする。そうする、筈だった。



......この時、俺は知らなかった。上位魔族、病魔の真の恐ろしさを...。



......キケッ、キケケケケケケッ!



「ハ、ハハハ...マジかよ、お前...!」





次回は2月25日までに投稿いたします。


次回もお楽しみに。

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