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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第一章:リーオ、王都へ赴く
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【真夜中の出会い。懐かしい記憶】

最近、めっきり寒くなってしまって、炬燵がないと生活が厳しくなってきました。

こちらはさほどではないんですが、大雪も多くなってきています。皆さんも気を付けてください。


さて、今回からはリーオの過去編を書いていきたいと思います。

リーオとヴァールの契約、どんどん強くなっていく幼いリーオの成長にご期待ください。

武具の整備を始めて数時間、城はすっかり静まり返り、春先の虫の声が外から聞こえてくる。


途中、大きな肉の塊をメイドが運んできたり、村出の勇者候補ウェント=クリザ君が剣を教えてくれと頼み込んできたりしたが、肉は受け取り、ウェントは無視して整備を続けている。



今は最後の、ヴァールの手入れをしているところだ。




「...どうだ?ヴァール。気持ちいいか?」


”はい...凄く心地いいです...。”


「...そうか、それはよかった。......そろそろ聖水もなくなってきたな...『アイツ』のところに行ってくるか?」


”...また『彼女』のところに行くんですか?”


「なんだ?ヴァールはアイツのことが嫌いなのか?」


”......そういうわけでは...ないです...。”


「...まぁ、いい。さて、これで終わりだ。」




ヴァールを拭き終わり、もらった肉も食い切った俺は落ち着かない部屋で手持無沙汰になってしまった。これからどうするかと思ったとき、ピンッとどこからか電波を受信した気がした。




「...そうだ、風呂に入ろう。」


”え、お風呂に行くんですか?”


「あぁ、ここ(王国)に来るまでずっと水浴びだけだったし、久しぶりに温かい湯に浸かるのもいいだろう?」


”そうですね。身体も休まりますし、いいと思いますよ?”


「だな。ならさっさと入りに行くか。」


”行ってらっしゃ~い。”




ヴァールに送り出され、暗くなった城の廊下を進む。暫く進んだところでようやく大事なことに気づいた。




「......そうだ、俺風呂の場所知らなかった。」




あー...どうするか...誰かに聞くか。




そう思った俺はスキル『魔力感知』で近くにいる人の気配を探る。お、早速見つけたぞ。ここから少し先に誰かいるな?男?執事か。



面白そうだったので気配を消しながら廊下を進むと、案の定初老の執事が立っていた。




「おぉっと!?勇者候補様?こんな時間にどうかしましたか?」


「あぁ、少し汗をかいてな、風呂の場所を聞きたいんだが、あとその勇者候補様ってのやめてくれ。リーオでいい。」


「それはすみませんでした。では、リーオ様。大浴場の場所へ案内いたします。こちらへどうぞ。」


「おう。」




老執事に案内され、廊下を進む。改めて見るが、すげぇ豪華な場所だよなここ。流石大陸最大国の城って感じだ。廊下まで豪華絢爛だぜ。



老執事の後についていきながら、今後のことを考える。この国を出てどこに行くか、何をしようか、行き当たりばったりで来たこの旅だが、特に目的もあるわけではない。さて、何をしようか......そうだ、聖水とか回復薬等も切れてきたし、アイツのところに寄るのもいいな。うん、そうしよう。




「____ま、リーオ様、リーオ様。」


「ん?どうした?」


「浴場へ到着いたしました。ここでございます。




そうこう考えている間に、これでもかと意匠が施された西洋風の浴場へ到着した。このユーフェルト大陸の、それも『精霊の森』という場所にのみ生えている『精霊樹の木材』を基調とした建築は、城を守る兵士たちに癒しと寛ぎを与えるというものだろう。



脱衣所の扉を開けて入り、着ていた衣類を空間に放り込み棚に入った籠の中に着替え用の服を入れ、タオルを腰に巻きながら浴場の扉を開ける。中に入ると、白い湯気が立ち込める広大な露天風呂が目に入った。




「おぉ...!城の風呂はスゲェもんだなぁ...。でけぇ...!」




初めて見る大きな露天風呂に心が躍るが、まずは身体を洗ってからと思い、洗い場へ移動して椅子に座り早速身体を洗い始める。備え付けの石鹸を泡立て、身体を洗う。



漂う香りがささくれた心を癒してくれる。まぁ、癒されないんだが。身体を洗い終え、次は髪を洗うためシャンプーを手に出し、泡立てて洗う。髪をシャンプーで洗うのは久しぶりだ。最近はずっと川とかで水浴びくらいしかしていなかったから、おかげで髪が痛みまくりだ。


お湯で髪を流し、全身を洗い終えた俺は、ようやく待ちに待ったお湯に浸かる。




「......あぁ...スゲェ温けぇ...。」


「____ふふ、お気に召しましたか?」


「......ッ!?」




ビックリしたぁ!まさか俺以外に人がいるとは思っていなかった。湯気で隠れて見えないが、声的に女性か?こんな時間に風呂に入っているなんて、メイドかなんかか?



「アナタが、新しく王国ここに来たという勇者候補様ですか?」


「あぁ...その勇者候補っての止めてくれ。俺はリーオ、リーオ=クシィだ。」


「_____!」


「...?」




?なんかハッとした顔したけど、なんかあったのか?俺の名前でも聞いたことがあったとか?悪評?俺なんかやったっけ?




「___ぁ、すみません...。リーオ様は勇者候補と呼ばれることが嫌なようですね?」


「...俺は、勇者候補が嫌いだ。勇者候補そのものが大嫌いなんだ。」


「...何か事情が御有りのようですね?」


「あぁ、色々な。」




メイドは気になっているようだが、こんなところで話すことではない。それに誰かわからない奴に俺の身の上なんて話せるわけなんてない。さっさと上がって寝るか...。




「...じゃあ、俺はそろそろ上がるよ。アンタも早く上がれよ。」


「あ、待ってください!」


「あぁ?」




早く上がろうと立ち上がった俺に、慌てて立ち上がったメイドが足を滑らせ俺の身体を湯船に押し倒す。




「きゃっ!?」


「っぉ!」




覆いかぶさったメイドの柔肌の感触に心臓が嫌な鼓動をする。目を開くと、目の前いっぱいに広がったのはメイドの綺麗な瞳だった。宝石のように真紅の瞳に、正直魅了されてしまった。


綺麗なブロンドの髪と可愛らしい少女の顔。暫く見つめていると、恥ずかしそうに顔が赤く染まってくる。




「......ぁ///」


「......ッ!」




見つめてしまっていたことに気づき、慌てて体を起こす。その時に、俺の胸に、とても柔らかい『何か』が当たり、思考が一瞬止まる。が、直ぐに立て直してメイドの身体を退け、後ろを向く。




「す、すみませんっ///」


「い、いや、大丈夫だ!そっちは、大丈夫か?」


「え、えぇ、お気遣い感謝します...///」




...なんだこの空気!付き合い始めたばかりのガキか俺は!ハニートラップの訓練はさせられたから、この程度でどうとならなくてすむ。しかし、どうするこの状況!?初めてだぞこんなの!かくなる上は...逃げるか。




「すまん、謝ってどうにもならないと思うが、俺はもう行く。」


「あ、待ってください!」


「...なんだ。」


「あ、いえ...アナタの名前だけ聞いて、答えないわけにはいかなかったので...


私は『シエル=ベレッタ』、ベレッタ家の長女です。」




......貴族の令嬢だったのか...銃殺刑かな?俺はどうすれば償えるんだろうこの罪を。年若い少女の身体に触れてしまうなんて......




「き、貴族のご令嬢がどうしてこんな時間に風呂へ?」


「...私今花嫁修業の真っ最中で、リアナ姫の、お付きのメイドとして住み込みで働いているんです。メイドがお風呂にはいれる時間は限られていますから、誰もいない時間にゆっくり入っているんです。」


「そ、そうか...では俺はここでっ!」


「待ってください!まだ...!」


「.......。」




なるべく顔しか見ないように振り返り、お湯に浸かる。流石にずっと立っているのは寒い。




「...何だ?」


「......アナタ、ですよね?私を助けてくれた旅人さんて...?」


「...?」




助けてくれた?俺が?この少女?...何時だ?旅の中でか?それしかないよな?でも俺貴族の令嬢なんて助けたか?記憶にないぞ...。




「...気のせいじゃないか?」


「気のせいなんかじゃありませんっ!あの時、病気の私を助けてくれたのはアナタですっ!」


「...病気?......あっ!」




そうだ思い出した!確か2年前、どっかの村で女の子を助けたことがあった。



確か...そうだな。あれは......





______2年前、とある郊外の村に立ち寄った時のことだ。その時俺は『賢竜』と対峙したばかりで物凄い疲れていた。流石にこのまま旅を続けるのは無理だと判断し、ちょうど立ち寄ったこの村に暫く滞在することになったのだ。


しかし、到着したのは月が空の頂点にいる真夜中。宿屋はおろか民家にすら明かりはなかった。今日は野宿か...そう思った俺の視界に、一軒の民家が映り込んだ。そこの一室からは明かりが漏れていて、人が動いている影が見えた。



これを幸運と思った俺は、悪いとは思ったが一晩泊めてもらえないかと出てきたおじさんに尋ねたところ、了承をもらえたので、一晩屋根のあるところで寝ることができた。




「______ぉ、朝か...。」




次の朝、夜明け前に目を覚ました俺はいつも通りトレーニングから始めることにした。


泊めてくれた家の人が目を覚まさないように外に出てから素振りと筋トレ、技の修練と体の動きの確認。それと、『ヴァール』との対話。




”......朝ですか?”


「あぁ、起きたか?」


”私は常に起きてますよ?貴方の体を守るために『加護』をかける必要がありますからね。”


「......そうか。」




相変わらず、こいつはやりづらいな。どこか抑えているものが見え隠れしている。


この時俺は、ヴァールと正式には『契約』していなかった。仮契約みたいなもんか?まだ引き抜いてそこまで時間が経っていないのもあってか、このような微妙な関係性が続いていた。




”あ、家の人が起きてきたみたいですよ。”


「そうか...。」




家の中から聞こえてくる音が近づいてくる。おそらく家の脇にあった薪を割るんだろう。


まぁ、やっておいたが。斧を振るのは久々だったから、いい訓練になったな。



少し、休憩をしようと朝の清々しい風に当たっていたところに、家のドアを開けて壮年の男性が眠そうな声を漏らしながら出てきた。




「ふぅ...ん?君、起きていたのか?おはよう。」


「えぇ、おはようございます。改めて、泊めていただき本当にありがとうございました。」


「いきなりでビックリしたが、君のような少年を野宿させるわけにはいかないからな。だが、悪かったな、ソファーくらいしか用意できなくて。」


「いえ、泊めてもらえただけすごく有難いですし、毛布まで貸していただいたんですから、文句はおろか、どうお礼を申し上げたらいいか...」


「ハハハ、君は本当にいい子だな。お礼なんていいんだよ。それに...」




男性は家の脇の、既に割り終えた薪を見ながら笑顔でこういった。




「...むしろ、私が礼を言いたいくらいさ。」




朝日に照らされた男性の笑顔が、やけに眩しかった。俺は、こういう人の笑顔を絶やさないために、もっと強くならなければならない。その為なら、俺は...




目つきが段々鋭くなっていく俺を見て、男性は努めて明るい声でこう言った。



「そういえば、まだ自己紹介をしていなかったな。私は『マークス=ベレッタ』、ただの農夫だ。」


「...俺は、リーオです。」


「...ではリーオ君、一緒に朝食にしようか?」


「...いただきます...。」




...温かいな。優しい男性の声に、胸があたかかるなるのを感じながら、俺は男性の後を追った。




家の中に入ると、マークスさんの奥さんらしい綺麗な女性と娘だと思われる幼い少女がいた。


女性は作り終えた朝食をテーブルの上に並べており、少女はテーブルに並べられていく料理を楽し気な目で見ていた。




「あら、早かったのね。その子があなたが言っていた子?」


「あぁ、紹介しようリーオ君、私の妻の『レイア=ベレッタ』と娘の『シエル=ベレッタ』だ。」


「初めまして、リーオ君。」


「はじめまして~!」


「...どうも。」


「ふふ、ようこそ。ほら、早く食べちゃって。」


「あぁ。」


「...はい。」




マークスさんが案内してくれた席に座り、レイアさんが作った朝食を食べ始める。


久しぶりの人が作った温かい料理に、涙が出そうになる。まぁ、出るわけないんだが。


しかしうまい。誰かに作ってもらった飯は特別うまい。




それにしてもいい家族だな。食べている間も和気藹々としてて、楽しそうだな。みんな笑顔だし......だが、何かおかしいな。




「んく、んく...こほっ、こほっ」


「大丈夫か?シエル、風邪か?」


「今日、お薬もらって来ましょうか?」


「そうするか...。」




あの『咳』、確かアイツから聞いたことがある。あれは確かただの風邪じゃなかったような...?



朝食を食べ終え、ベレッタさん一家と別れた俺は、村の宿屋に行きこれから数日分の宿泊費と部屋を用意してもらった。それから、さっきシの娘さんがしていた咳についてヴァールに聞くことにした。




「...ヴァール、少し聞きたいことがある。」


”...何ですか?”


「...さっきマークスさんのところで聞いた咳って、確か...」


”えぇ、『病魔』ですね。恐らく数日前の地震で封印していたツボが割れたのでしょう。”




病魔とは、アムネスティの体系の邪神『病と浸食の神パンデモニウム』が創り出した『死病』の種を撒き散らす魔族のこと。その体は霧のようになっていて、物理的な攻撃は一切効かず、魔法攻撃も半減する身体になっている。4000年前の神々の戦争時に、ハーモニクスの大系の神『封印と儀式の女神オリアレス』が刻印した壺に封印されていた筈だったが、数日前に起こった大地震でその壺にヒビでも入ったのだろうか。



早々に手を打たなければ、死病がこの辺りに蔓延する可能性が高い。




「...この辺にその洞窟があるのか?」


”はい、ここから数キロ程に...ですが...。”


「...分かってる。いくら病魔を封印しても、誰かの中に入った死病の種は消えない...だが...!」


”......アナタがそういう人だということは分かっています。行きましょう。”




速攻で準備を終わらせ、一路病魔が封印されている洞窟へ急ぐ。これ以上種を撒かれる前に、何とか封印しなければならない。これ以上、犠牲者を増やすわけにはいかない。



魔力を足元で爆発させ、スピードを上げる。これなら日が沈む前に洞窟に着きそうだ。




「ヴァール、後どれくらいだ?」


”山一つ分くらいですかね?”


「くらいってなんだ?ちゃんとした距離を教えろ。」


”私はそんなに万能ではないんですよ。契約と制約の女神ですから。”


「チッ、仕方ない。」




魔力感知を使って、周囲の強い魔力を探す。...ここから山を超えて、赤い岩があるところ、おそらくそこに洞窟があるのだろう。そこの最奥、地下に強い魔力反応がある。




「......見つけた。」


”急ぎましょう。”


「あぁ、行くぞ...っ!」




足に込める魔力を増やし、さらにスピードを上げる。ヴァールからうるさい小言が聞こえてくるが、それを無視しながら洞窟へ向かう。



......死病のタイムリミットは1週間、それまでに何とかして治す方法を考えなければ...。



次回は2月15日までに投稿いたします。


次回もお楽しみに。

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