【国王からの挨拶。勇者候補との戦い】
明けまして、おめでとうございます。
前回は挨拶をし忘れてたので、ここでしておきます。
今回は物語の進行です。
前回、近衛兵に連れられて国王へ挨拶をしに行ったはずが、何故か質問の嵐に晒された俺は現在、少し落ち着いた様子の国王と王妃に謝罪を受けていた。
「いやぁ、すまなかった旅人の勇者候補よ。些か興奮しすぎたようだ。」
「い、いえ…まぁ…。」
テンションの高い王様だったな。いろんな国を見てきたが、こんな王様は初めてだ。
まるでマシンガンの様な質問の嵐だった。これまでの旅のことや、旅に出ることになった理由。
腰に差していたヴァールのことなど、様々な質問をマシンガンのようにされた。
「…勇者候補様、すみません。この人、興味があると根掘り葉掘り聞く性分で…。」
「ハハハ、申し訳ない…。」
呆れた様子の王妃と、謝ってはいるが懲りている気がしない国王、それを笑顔で見ている姫。
三人がそれぞれの反応を見せている中、後ろで待機していた近衛兵が困った様子で国王に注意をしていた。
「へ、陛下!勇者候補様もあまり時間があるわけでは…」
「おぉ、それもそうだな!」
では、と玉座から立ち上がった国王は俺の前まで移動し、近衛兵が持っていた紙束を受け取ってそれを開き、書いてあった内容を読み上げ始めた。
「オッホン……改めて、新たな勇者候補、リーオ=クシィ殿、旅の最中我が国に立ち寄っていただけたこと、誠に感謝する。村出の勇者候補は我が国でも貴殿の他に1人しかおらぬ、とても希少な存在だ。本当のことを言えば、貴殿には我が国に残っていただきたいものだが…それは、叶わぬことだな…。しかし、貴殿を勇者候補と認める折、やってもらわなくてはならないことが一つ、あるのだ。それは…」
「…国王陛下殿、少し宜しいか。」
途中から手に持った紙を無視して話している国王へ遮って申し訳ないが、少し聞きたいことがあった。俺の他の村出の勇者候補のことだ。村出の勇者候補は、別段特筆した能力がない分、基本的なステータスが高い傾向があった。前に立ち寄った国で知り合った村出の勇者候補も特別加護が強いわけではなかったが、基礎的な能力が高く、剣技においては俺に引けを取らぬほどの実力があった。
まぁ、そいつはもうこの世界にはいないのだがな。
「…どうかしたのか?」
「あぁ、少し、国王陛下殿に聞きたいことがあってな。」
「…すまない、勇者候補様。質問は後にしてもらえると有難い。少し、やってもらわなくてはならないことがあるのです。」
「…そうか、なら後でもいい。」
おっと、近衛兵殿に注意されてしまった。まぁ、別に急ぎの質問ではないからいいのだが…それより、やってもらわなくてはいけない事とはなんだ?何か儀式でもやんのか?
「…すまない、話を遮って。」
「いや、別に良い。では、再開するぞ……貴殿にやってもらわなくてはならないことが一つある。それは、『勇者選定の剣』を引き抜いて欲しいのだ。」
「……勇者選定の剣?あぁ、カバルが言ってた歴代勇者が使っていた剣のことか。」
「あぁ、勇者候補という手前、やってもらわなくてはならない。通過儀礼のようなものだ。」
国王が指さした先を見ると、城壁に突き刺さる白銀に輝く一振りの剣があった。恐らくあれが四代目勇者『レラオ=クーフィ』が使っていた剣『霊剣アロンダイト』だろう。
妖精の森にあると言われる『妖精の湖』に住む妖精がレラオに授けたと言われる妖精が作った剣。つるの様な装飾の施された鍔、そこから伸びるスラッとした翡翠色のグリップ、柄には竜の様な模様が彫られている。突き立っている壁から覗く眩い白銀の刃が、新たに勇者となるものを祝福しているように感じられる。
「勇者候補様、こちらに。」
「あぁ…。」
近衛兵に案内され、剣の前まで移動する。改めて近くで見ると、凄まじいオーラが放たれているのが見える。少し、嬉しそうな声でヴァールがアロンダイトに話しかける。
“お久しぶりですねアロンダイト。また会えて嬉しいです。”
声は聞こえないが、壁に突き立っているアロンダイト本体が少し動いたように感じた。よく分からないが、剣同士通じ合うものがあるのだろう。
まぁ、何を話しているか分からないがさっさと終わらせてしまわないとな。国王を待たせてしまうし、早くやるか。
「…よしっと…」
アロンダイトの持ち手を握って、少し力を入れて引っ張る。お、結構固いじゃん…!
実際、何の力も込めずにやったら引き抜けるわけない。この勇者選定の儀は加護の力をちゃんと把握している本当の勇者にしかこの剣を抜くことは出来ないようにできている。
まぁ、俺の場合引き抜いたら引き抜いたで一大事になるので、ただ引っ張るだけだが。
暫く、健闘するふりをして、そして疲れたように剣から手を離す。その様子を見ていた近衛兵や国王たちもその様子に少し残念そうにしていた。
国王たちには悪いが、俺にもやるべきことがある。こんなところで足踏みしている時間は無い。この場はさっさと切り抜けて、カバルの様子を見に行かないと。
「……やはり引き抜けなかったか…。」
「…すまない…。」
「いや、いいのだ。この儀式は、勇者候補が出てくるたびにやってもらっているもので、私の父の代から引き抜いたものはいない。…私は、貴殿なら引き抜けると思っていたのだが…」
「すまないな。俺には荷が重すぎたようだ。」
実際、引き抜くことなら至極簡単だ。自らの加護を込めればいい。だが、ここで俺がアロンダイトを引き抜けば、本物の勇者としてインテグラル王国に束縛されて、旅が続けられなくなってしまうだろう。
それだけは、避けなければならない。王様には悪いが、ここは勘弁してもらおう。
「…では、国王陛下、私は勇者候補様に城内を案内してきます。」
「あぁ、よろしく頼むぞ。」
「ハッ!」
少し、気合が入った様子の近衛兵殿に先導され、王の間から退出する。そういえば、村出の勇者候補について聞きたかったが、まぁ、いい。直接見た方が手っ取り早いだろう。
暫く、近衛兵に城内を案内され、様々なことを教えてもらった。特に、貴族出の勇者候補のことだ。今現在、この国で貴族出の勇者候補が強い権力を握っていること、それによって上位貴族が政治に口を出してきていること、さらには王の側近である近衛兵隊にも何の実績のないぽっと出の貴族が多く編成されていることなど、この国の根幹に近い部分を色々話してくれた。
こんな話をただの旅人にしていいのかと尋ねたら、
「貴方様なら信用できます。それに、その立ち振る舞いから垣間見える力量から、貴方様がそこら辺の貴族出より強いことは分かりますから。」
と、兜越しで籠っているが嬉しそうな声で言われてしまった。そんな風に言われてはこちらも反論できない。なんか可愛いなこいつ。兜で男か女か分からないけどさ。
「…そういやアンタ、ただの近衛兵にしては国王から随分信頼されているようだが…何かあるのか?」
「?あぁ、私が王国騎士団の団長だからですよ。騎士団の団長は近衛騎士団の団長でもあるんです。」
「……ん?アンタ、カバルの上司なのか?それに団長とは…結構な実力者らしいな。」
「えぇ、もちろんカバル殿にも負けませんよ?手合わせも10戦10勝ですから、未だ負け知らずです!」
鎧越しで分からないが、胸を張りながら誇らしげに話す騎士団団長殿に少し微笑ましく思っていると、何処からか誰かの叫ぶ声と、慌ただしい兵士の足音、そして、『カバル』という名前。
「ッ!」
「?勇者候補様!?」
団長さんの声を無視し、騒ぎが起きているらしい場所へ縮地を使って駆け抜ける。
城の廊下を飛び越え、兵士たちが集まってきている訓練場らしき場所へ到着する。群がる兵士を掻き分け、中の様子を確認する。
そこには、地面に手をついている地味目な少年と、それに剣を向けている派手な鎧を身に着けた青年、その二人の間で少年を護るように立っているカバルの姿が見えた。
少し遠いせいで聞き取りづらいが、なんとか三人の会話を口の動きで読むことが出来た。
「貴様…!そこを退けッ!」
「退かねぇよ。」
「ッ…!貴様ァ…騎士の分際で勇者候補であるこの『ザイア=ハールゼン』に逆らうのかッ!?」
「アンタが勇者候補だからって、なんで俺がアンタのいう事を聞く必要があるんだ?」
「……貴様、今ここで死ねッ!!」
そこまで言った青年が、それまで少年に向けていた剣を構え、カバルに突撃してくる。それを軽く躱したカバルが、力を込めた蹴りで、青年を後ろへ大きく蹴り飛ばす。
背中から地面に叩きつけられたザイアとやらが、またキンキンとする声で吠える。
口調や、態度などからアイツは貴族出の勇者候補なのだろうと思える。
まぁ、それくらい見れば分かるな。
「ぐッ!……貴様ァッ!!!ただの王国騎士の分際でぇッ!」
「…いい加減、うるせぇんだよ…デカい声出しやがって、頭痛ぇ…。」
「何だとォ!?」
「それに、これはお前が吹っ掛けてきた喧嘩だろ?それに騎士やら勇者候補やら、そんなの関係ねぇだろ?」
呆れた様子のカバルが言葉を続ける。少しイラついてきたんだろう、口調が刺々しくなってきた。
「第一、俺はそこにいる勇者候補の『ウェント=クリザ』を護っただけだ。それをお前にとやかく言われる筋合いはねぇ。」
「カ、カバルさん…!」
…『ウェント=クリザ』、恐らくあれがこの国で新たに生まれた村出の勇者候補なのだろう。鑑定眼で見てみると、やはり村出の特徴の通り特殊な力はない…わけではないが基本ステータスが全体的に高いのが確認できる。
反対にあの貴族出を見てみると、高いステータスに魔法Cに剣術(剛)B、さらに『加護B』まで持っている。まさに貴族出のテンプレートみたいなステータスだ。
俺が鑑定眼に集中しているうちに、あっちも進展したようだ。貴族出がカバルに向けて剣を振る、それを躱そうとカバルが身体を逸らした時、貴族出の手から放たれた魔力弾がカバルの胴体を捉え、その身体を大きく後方へ吹き飛ばす。
「ッァ!」
まともな装備を着ていなかったカバルの魔力弾でつけられた傷口から血が溢れ出す。先程の魔法は魔力を弾丸として放出する『放出』という初級魔法だが、この魔法は込めた魔力の分だけ威力を増すという性質がある。さらにザイアの魔力ステータスはC+、鎧の効果で上乗せされている分、さらに威力がブーストされている。カバルでなければ恐らく殺していた可能性があるほどだ。
…少し、あれは看過できないな。腰に下げたヴァールに手をかけ、縮地でカバルとザイアの間に入る。
倒れるカバルに追い打ちしようと剣を振りかぶっているザイアの、剣を振り下ろすタイミングに合わせて一閃、居合、心眼(真)を組み合わせた攻撃を、ザイアの剣に当て剣を腹から真っ二つに叩き斬る。
さらに身体を回転させ反動をつけた、多少強めに力を込めた回し蹴りを鳩尾に思いっ切り叩きつけ、壁まで吹き飛ばす。ザイアの身体が吹き飛ぶ力に魔力撃(龍)を少し込めて勢いを増加させる。
ザイアは、俺の放った蹴りで吹き飛び、背中を訓練場の壁に思いっ切り叩きつけ、「ぐぇッ」というカエルの様な悲鳴を上げ、気を失う。
その他の兵士たちは、何故か壁まで吹っ飛ばされ気を失っているザイアといきなり現れた俺に困惑している様子だった。
カバルは、俺が来ることを予想していたんだろう、辛そうな顔でニカっと笑い、そのまま意識を失う。しょうがないと、腰から鞘に納めたヴァール外し、気を失ったカバルの手の上に置く。これで多少は楽になるだろう。
さて、ついカッとなってあの貴族出を思いっ切り蹴飛ばしてしまったが、どうしよう。まぁ悪いのは貴族出だし、カバルがケガさせられたんだ、しゃあなしだろ。
だが、そうもいかないのがこの貴族社会なんだよなぁ…。なんて考えている所に、ようやく団長が到着した。少し疲れた様子だったが、困惑気味の兵士から事情を聴き、俺の元へやってくる。
「ハァ、ハァ…一体これはどういうことだ、勇者候補様…?」
「…さぁ、俺はただあそこで気を失っている貴族出が、そこで血ぃ流しているカバルに向かって剣を振り下ろしているのが見えたから、止めただけだ。」
「カバル殿!?胸から血が…!大丈夫なのですか!?」
「あぁ、命に別状はない。今はヴァールで治療している。」
「ヴァ、ヴァール?よ、よくわかりませんが、命に別状がないのなら良かったです。」
未だ頭に疑問符が浮かんでいる様子の団長さんだったが、何とか飲み込んだようで、冷静な声に戻り、この現状について聞いてきた。
「…では、少し質問してもよろしいですか?」
「あぁ、別に構わん。」
「…一体どういった経緯で、こんなことになったのですか?」
「さぁ、俺も知らない。俺はただ、傷ついたカバルを助けるためにあの貴族出の持っていた剣を叩き折っただけだ。」
「……では何故ザイア様はあそこで気を失っているのですか?」
「アイツは酷く興奮していた。もしあのまま何もしなければ、今度はこちらが攻撃されかねん。だから、状況判断でアイツを気絶させた。以上。」
俺は、自分のやったことをそのまま告げた。団長さんは、近くにいた兵士に、俺が言った内容を逐一確認しながら聞いていた。俺が全て言い終えたと同じくらいに、先程まで地べたに座っていた村出の勇者候補君が俺に話しかけてきた。
「あ、あの!」
「ん?あぁ、君がカバルの言っていた村出の勇者候補か…名前は、たs」
「ウェント!ウェント=クリザです!」
「お、おう、ウェント君か…で?ウェント君が俺に用事でも?」
「い、いえ、あの…」
何かハッキリしない奴だな。まぁ、そんなことどうでもいいが、俺も暇じゃない。カバルの治療も終わっただろうし、さっさとこの場を離れよう。
「…何もないなら俺は行くぞ。」
「あ!ま、待ってください!」
「…なんだ?」
「あの、その…先程使っていた技、僕に教えていただけませんか?」
…技?一閃や居合のことか?しかし、この技は剣術(技)を扱える人間でないと習得すらできない、取得難易度A以上の技だ。一応、鬼門であるステータスの俊敏と器用はBあるが…
「……この技を使うには、お前は未熟すぎる。俺の使う剣は技の剣と言われる特殊な剣術だ。これをマスターするのに最低でも3年はかかる。諦めて他の剣を習った方が…」
「いえっ!教えて下さい!お願いしますっ!」
そんなこと言われても、3年もこの国に滞在するわけにもいかない。俺は一刻も早く旅に出たいのだ。ウェントには悪いが、諦めてもらおう。
「…無理だ。第一、俺がお前に技の剣を教えたとして、俺に何の得があるんだ?俺は旅人、一つの国に長くいる訳にはいかない身なんだ。諦めろ。」
そこを何とか、と食らいついてくるウェントを引き剥がして、ヴァールの力で傷が治ったカバルの元へ向かう。普通、ヴァールの治癒能力を使うには俺がヴァールに触れて魔力を注ぐ必要があるのだが、俺の持っているスキル『魔力操作』は魔力の流れを操り、触れていなくてもヴァールの元まで魔力を流すことが出来るため、俺が触れている必要はないのだ。
傷も治り、意識が戻ったカバルと凄く心配そうな団長さんが話している。あれ、団長さんが兜を脱いでる。綺麗な顔立ちで、ブロンド色の長い髪、女だったのかあの人。
「カ、カバル殿、本当に大丈夫なのですか?」
「あぁ、大丈夫だ。リーオの御蔭で傷も治ったし、あそこで気ぃ失ってる馬鹿を地下牢へ放り込んで置かないと。」
そういって立ち上がるカバルだったが、先程の負傷で血を流し過ぎたのか直ぐにふらりと身体が揺れ、倒れそうになる身体を団長さんが抱き留める。
「あれ…?」
「危ない!ほら、言ったではないですか!無理はなさらないで下さい!」
「あ、あぁ…すまん。」
…なんかイチャついてんな、あの二人。まぁ、別にどうでもいいんだが、さっさとヴァールを回収して帰ろう。今から帰って準備をすれば明日には…あれ?なんか空が朱いんだけど…?
そういえば、城に入ってから外を確認していなかった。城門を通って王の間まで行くのに結構時間がかかってたし、それから王様の話や質問の嵐、アロンダイトの引き抜きとか、今の事態とか諸々換算すると、もう夕暮れか…なんとも、出来ないな…。
……ヴァール、そろそろ帰るぞ。
“はい。わかりました。”
魔力操作で剣を掴み、俺の手まで引き寄せる。最初から魔力で繋いでいたから引き寄せるのは容易だ。近くにいたカバルと団長さんが、いきなり吸い寄せられるように動き出したヴァールに驚いていたが、気にせずその場を後にしようと踵を返した時、
「あ、おいリーオ!ちょっと待て!」
…カバルに引き留められた。
「……なんだ?」
「いや、お前、今日も宿取ってないだろ?」
「…あぁ、それがどうした?」
「城にお前の部屋が用意してある。今日はそこに泊まれ。」
「…いいのか?」
「今のお前は勇者候補だ。それを王都郊外の森で野宿させたとなっては国が廃る。」
むしろ、こっちからお願いしたいほどだ。流石に二日連続で野営をするのは肉体的にも精神的にもキツイ。
それに城に泊めてもらえるなんて思ってもみないことだ。今まで旅をしてきて城に泊まるなんてことはなかったし、いい経験にもなるだろう。
「...そうか、なら、お言葉に甘えよう。」
「...はぁ、良かったぁ、断られたらどうしようかと思いました...。」
「...リーオは人お厚意を無下にできるような人間じゃねぇよ。」
「...泊まる場所を用意してもらえるのは有り難い。流石に二日連続で野宿するわけにもいかないしな。」
「...よし、そうと決まればさっさと案内しないとな。」
「あ、それは私がやっておくのでカバル殿は早く休んでてください。後処理は貴方達でやっておいて下さい。この決闘を止められなかったことを咎めはしませんが、責任は取ってくださいね?」
団長殿の一声でわらわらしていた兵士たちが一斉に動き始めた。やはり団長というのはすごいもんだ。あの一言だけであれだけの兵を動かせるなんてな。
「では勇者候補様、お部屋へ案内いたします。」
「あぁ...その前に、その『勇者候補様』ってのやめてくれないか?そう呼ばれるのは好きじゃない。」
「...わかりました。では、なんと?」
「...リーオ=クシィ、リーオでいい。」
「...はい、ではリーオ様、私のことも『アリシア=ガブリエール』、アリシアとお呼びください。」
「わかった。じゃあアリシア、部屋へ案内してくれ。」
「えぇ、では行きましょう。」
団長さん改めアリシアに先導され、俺は国王が準備してくれた部屋へ向かう。案内された部屋の前まで着くと、扉の豪華さに舌を巻いた。赤クジャクの羽を使った扉に、黄金の装飾が施されたドアノブに手をかけて扉を開ける。
「......また、ずいぶんと豪華なもんだな...。」
...正直、こんなところで寝れる気がしないんだが...。しかし、部屋を用意してもらえただけ有難いんだ。そんな贅沢言ってらんない。
「...リーオ様?いかがしたのですか?」
「ぇあ?いや、なんでもない。」
「そうですか?では、夕食はどうしますか?メイドに用意させますが?」
「夕食?パン...あー...そうだな、肉があると有難い。」
「かしこまりました。また何か御申しつけがありましたら、いつでも呼んでくださいね?」
そう言って頭を下げて、アリシアは部屋を出て行った。
少し息を鎮めて足音を聞き、聞こえないくらいになってから思いっきり深呼吸する。
「スー、ハー...やっと落ち着ける...。」
”お疲れさまでした。凄い所ですね、ここは。”
「そうだよなぁ...俺には勿体無さすぎる...。」
”そうですか?そんなに自分を卑下する必要はない気もしますが...?”
「卑下している気はないんだが...まぁ、いい。取り敢えず手入れを始めるぞ。」
”待ってましたっ!”
何だか嬉しそうなヴァールは放っておき、空間魔法から戦闘用装備を取り出し整備を始める。
直感だが、なんだか明日は誰かと戦う気がする。主にあの貴族出と...。
”えぇー?また私からではないんですかぁ?”
「まずは面倒なものから片付けないと、お前を落ち着いて清められないだろ?」
”それもそうですね。わかりました!”
それから、ヴァールと適当な会話をしながら淡々と装備を整備していき、静かに夜は更けていった。...これが終わったら風呂でも入ってくるか...。
次回は2月5日までに投稿します。
次回もお楽しみに




