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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
番外編:刹那の狩人
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【直感と感覚。リーオさんの流音】

皆様、如何お過ごしでしょうか。

10月も後半になり、すっかり肌寒い季節になってまいりました。

季節の変わり目ですから、体調などにお気をつけてお過ごしください。


今回の内容は、スキル『直感』についてが主になります。

よりスキルの設定に踏み込んだ話になりますので、あまり興味の無い方は...まぁ、読まなくても大丈夫ですかね?


リーオさんが言うには、自分の使っているスキルスペルの原理、詳細な効果などを知っておけば、色々応用が利く、とのことで、突発だがリーオ先生によるスキルスペルの授業が始まった。



「まぁ、授業と言っても一番知っていてほしいスキルについてしか説明はしないんだが。」

「その一番知っていてほしいスキルって、何ですか?」

「『直感(ちょっかん)』だ。」

「『直感?』」

「あぁ、まぁ、ちょっとばかし長くなってしまうんだが、イチカはこの『直感』というスキルが本当はどのようなスキルなのか知っているか?」

「…『直感』…?」



スキル『直感』。五感を強化し、情報把握能力を上昇させるスキル。と、公国では教わったが、これではないらしい。



「では、五感を強化する、というが、実際にどこが強化されるのか分かるか?」

「えぇっと、聴覚とか視覚…ですかね?」

「それもある。だがしかし、それ以外にも強化される部分がある。思考力だ。」

「思考力…考える力、ですか?」

「あぁ、『直感』は主に、二つの種類に分けることが出来る。まずはあらゆる五感、更には第六感と呼ばれるものを強化する『感覚型(かんかくがた)』と、周囲の情報をいち早く察知し、それらから得られたものを総合的に判断、思考し、最適な行動を導き出す『思考型(しこうがた)』の二種類だ。一般的に『直感』と言ったら前者の方だな。全身の感覚を活性化、状況を把握して適切な行動を身体に取らせる。これが感覚型だ。さっきも言ったみたいに一般的に『直感』と言ったらこれになる。大体の人間なら訓練すればある程度は使えるようにはなるが、何の気配もないものを察知できるようになるまでは行かない。相当実戦を経験しないとその領域まで行くのは難しいだろうな。んで、次は思考型だな。思考型は現状を自分の力、他のスキルなどを組み合わせて把握し、思考内のパターン、例えばAの状況ならB、Cの状況ならD、のようにパターン付けられたものに該当するところを探し、それに該当する部分があればそのパターン道理に思考、そして行動に移す。といった感じに周囲の状況をいち早く把握する状況把握能力と、それを判断する状況判断能力、そしてそこから適切な行動を導き出す思考力と、それを瞬時に肉体へフィードバックさせる肉体操作能力が必要になる。これが思考型だ。」

「は、はぁ…?」

「いきなり捲し立て過ぎたな。だが、これから一人で冒険者として生きていくには絶対に必要になってくる知識だ。」

「…一人で生きていくには、必要…あれ、何でそのことを知ってるんですか?私があのパーティを抜けることを…まだ誰にも言ってないのに…?」

「誰にもって…ギルドの受付嬢さんには話したんだろ?」

「あ、確かに…でも…!?」

「あんまり知られていないことだが、金等級以上の冒険者に渡される登録証にはギルド本部から出来る通信機能があるんだよ。それでお前を保護してることをお前のパーティメンバーに伝えてもらおうと思ったんだ。その時に聞かされたんだよ。」

「…そういうことですか。」

「安心しな。受付嬢さんもアイツ等には伝えないって言ってたから。お前はちゃんと身体を治して、修練も積んで、あの魔族と闘えばいい。」

「……ありがとう、ございます。優しいんですね、リーオさん。」

「これで優しいってんなら全世界の貴族以外の人間は優しいことになっちまうよ。」

「あとあのクズ男共を除いて、ですね。」

「アハハッ!それは違いねぇっ!」

「ふふふっ!」



ホント、優しいな、リーオさんは。こんなんじゃ、勘違いしちゃうよ…?



アイツ等の悪口や、リーオさんが今まで出会ってきたクズな貴族たちの話を聞いて一頻り笑い合って、そこからちゃんとした授業の体を成して先程の『直感』の種類について議論が始まった。



「んじゃ、さっきの『直感』についての話題に戻るんだが、お前の『直感』はどっちだと思う?ってか、自分ではどっちだと思ってる?」

「えぇ…?感覚型か思考型かってことですよね?う~ん……。」



あんまり考えるって感覚はなかったから…感覚型?いやでもパターン化して判断してるっていう点では思考型なのかなぁ?意識したことないから分かんないかも…。


口元に手を当てて考え込む私の姿に、リーオさんがフッと小さく笑った。



「え、何ですか?」

「いや、そんなに真剣に考えるとは思ってなかったから、思わず笑っちまった。」

「だってどっちだと思うって聞いてきたのはリーオさんじゃないですか!だからちゃんと答えなきゃって…えぇ…?」

「いやぁ、すまんすまん。でもまぁ、そうやって考えることが大事なんだ。多分イチカの『直感』は感覚型だろう。お前は思考型に必要な他のスキルが足りてないから、思考型になろうとしても現状では難しいだろうな。」

「…質問なんですが先生。」

「何だねイチカ君。」

「詰まる所、『直感』は感覚型と思考型のどちらが強いんですか?」

「うーん…それは難しい質問だ。まぁ、俺の経験上、思考型の方が応用も効くから使いやすいとは思う。必要なスキルさえ揃っていれば未来予測に近いことが出来たりするからな。」

「へぇ…それは凄いですね。あれ…んじゃあ、リーオさんはどっちなんですか?感覚型?それとも思考型?」

「俺は半々…いや、思考型の方が比率高いか?危険回避は感覚型だと思うが戦闘中はほとんど思考型だ。」

「え、戦闘中に!?頭の中ごちゃごちゃなったりしないですか?」

「だから経験だよ経験。何度か死に掛けたりしたが、そういう瀕死の状態の方が頭ん中が変に冷静になって思考が纏まりやすくなるんだ。」

「ほ、ほう…?」



リーオさんも死に掛けることあったんだ。こんなに強そうな人でもそういう経験はあるものなんだなぁ…いや、違うな。そういう経験があるからこそ強い人になれるんだ。


死にそうになるほどの窮地に立たないと、そういう土壇場の物の考え方、切り抜け方は学べない。



____冒険者は経験が全て。



私が冒険者になるときに、冒険者ギルド本部の綺麗なエルフの女の人に教えてもらった言葉。今ようやく、あの言葉の意味が分かった気がする。


より多く死線を潜ってより多くの経験を積むことが、冒険者として生きていくために一番大切なことなんだ。


危険なことを避けてばかりじゃ、楽しててばかりじゃ、身体や小手先の技術は成長するだろうけど、本当の意味での、人間としての成長は出来ない。弱い魔物や簡単な依頼で多少のお金や戦い方、武器の使い方は学べるけど、心の、精神の成長は見込めない。困難な状況を打開する力もつかない。


冒険者は危険な依頼を受ける時もある。自分の命を賭けに出すような依頼を受ける事だってある。簡単な依頼中にだってどこに命の危険が潜んでいるなんて分らない。

そんな時に怖がって、足が竦んで、何にも出来ないような弱い人間にはなりたくない。



「……何となくですけど、リーオさんの言いたいこと、分かりました。」

「そうか。それならいい。ところで、お前はどっちだと思う?自分の『直感』は。」

「……バリバリの感覚型ですね。多少の思考は挟みますが、ほぼ9割は感覚で決めてます。」

「そうか。ならそれでいい。」

「?え、教えてくれないんですか?思考型の『直感』。」

「教える必要性がないだろ?お前はお前の『直感』が感覚型だって分かってんなら、それを究めればいい。俺が教えるのはそれの補助的な役割を果たしてくれるスキルスペルだ。こっちの方が優秀だからと言って自分のスタイルを無理に曲げる必要はない。感覚型があっている人間は無理に思考型の方を覚える必要はない。それこそ、さっきお前が自分で言っていたごちゃごちゃになるっていう言葉通りになってしまう。必要なことは、自分とは何なのかをしっかりと見極め、理解することだ。」



リーオさんはそこまで言うと、どこからか取り出してきた木剣をこちらへ投げ渡して、構えるように言う。そして、自分も取り出した木剣をゆったりと構え、ふっと息を吐く。



「……取り敢えず、頭ん中で考えたってこの場合はどうしようもない。身体で覚える方が楽だろう。」

「は、はい!」



いつものように足を開き、両手で持った木剣を腰元に構える。少し大きく開いた両足に力を込め、いつでも飛び出せるように姿勢を低く保つ。


それを見ていたリーオさんが、ゆったりとした構えは変えずに視線で、「来い。」といった気がした。その合図を受け取ってすぐに、バネのように縮めていた身体を思い切り使い、グンッと一気に加速する。



「…フッ!」



飛び出した勢いそのままに振り抜いた木剣が軽く受け止められ、木剣がぶつかり合った「カンッ」、という乾いた音が周囲に響く。


おかしい。いや、受け止められることは分かり切ってたけど、衝撃が、想定していた衝撃が来ない。まるで、こちらの攻撃の威力がそのまま全部『受け流された』みたいな。気味の悪い感触。


更に、もう一撃加えようとした足が、利かない。着いていたはずの足が地面を離れ、いつの間にか宙を舞っている自分の身体に驚きを隠せない。



「うぇ!?」



思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。それくらいに不可思議な感覚だった。転がるようにして着地した自分に、リーオさんが少し考える仕草を見せると、何やら納得した様子で口を開く。



「……うん。もう一度、おいで。」



木剣をゆったりと構えなおし、少し首を傾けるリーオさんの視線に、何ていえばいいのか分からないけど、ちょっと背筋がゾクッとするような鋭さ?のようなものを感じた。



「は、はい……フー…。」



口では返事をするが、先程の視線に縮み上がってしまった身体を何とか、深呼吸や体の小さな動きでまともに動けるようになるまで間を稼ぐ。



「フー……____ッ!!」



そして、一呼吸の内に先程と同じ位置、同じ踏み込みで威力を上げた一撃を叩き込む。全身のバネを生かし、全ての動きを連続で、連鎖させるように。回転と重心移動、遠心力と関節のバネを総動員して、振り抜いた木剣にその全てを乗せる。



「_____ズェアッ!!」



ガンッ!!



と、先程よりは重くなった木剣同士がぶつかり合う音が響く。手応えも、先程に比べれば多少はあると言える。しかし、やはりおかしい。


いつもの…自主練などで木剣を扱うときに、打ち込む木製のマネキンから伝わってくる衝撃と比べて、今競り合っている彼の木剣から伝わってくる衝撃があまりにも小さ過ぎる。


それはまるで、一番力の掛かる部分を意図的にズラされているような感覚だった。



「……その顔は、分かったっていう顔だな?イチカ。」

「…え?」

「今、感じただろ?力の支点がズレてるって。」



彼はそこまで言うと、打ち込みを止めるように言ってきた。


私は言われた通りに剣を払って、少し距離を取る。すると彼は、先程まで自分が鍔ぜり合っていたと感じた木剣の部分を見てみろと言ってきた。それに従って見た私は、少しの間言葉を失ってしまった。


違う。全くズレていた。自分が感じていた力の支点…つまり競り合っていた部分が、部位が、自分の感覚とかけ離れていた。


私の驚愕の表情を見て、リーオさんはフッと一つ笑いを零し、私の欲しがっていた答えをくれた。



「分かったか?それが、力の支点をズラすってことだ。」

「……。」

「自分の思ってたとこより大分、ズレてただろ?」

「……はい。」

「何で、それだけのズレが生じたか分かる…訳ないか。分からないからそんな顔してんだろう?」

「…はい。私今まで、自分はそういう力の…何て言うんですかね…力の感覚?どこにどれだけ力が掛かってるとか、さっきの鍔迫り合いみたいな、互いの力…大きさ?みたいなものを感じやすい質だと思ってたんです。でも…。」

「自分の感覚よりも大分ズレていた、と。」

「…はい。」



正直に言えば、私はそういう感覚に鋭い…というか敏感な方だと勝手に思い込んでいた。それが、その自信が今ので完璧に打ち砕かれた感覚だった。

人より優れた部分があると勝手に自惚れていた自分の頬を思いっきり引っ叩かれたような衝撃…とどのつまりショックを受けたのだ。


自分に対して抱いていた自信、自負が砕かれた感覚…高校受験で落ちた時の様な感覚を、私は久方ぶりに味わっていた。



「…………。」

「…さてと、落ち込んでるとこ悪いが、ここからが本題なんだよな。」

「……え?」



彼はそこまで言うと、先程まで使っていた木剣を何やら不思議な軌道で振り回し始めた。最初は落ち込んでいる私を元気付けようとふざけてくれているのだと思っていたが、次第にそれが間違いだったと、私は理解した。



何か、纏っている。



リーオさんが不思議な軌道で振り回している木剣に、何やら透明な、しかし不思議とそこに何があるのかを目で見ることが出来るオーラ?の様なものが纏わり付いていた。



「……リーオさん、それは…?」

「見えるだろ?木剣に纏わり付かせている透明な靄…というかオーラみたいな奴。コイツは『流音(るおん)』…で纏わせている自然の力だ。」

「…『流音』?」

「水竜ウォーバイトって知ってるか?現七竜の一体何だが。そいつから貰ったユニークスキルだ。」



次は11月中に


次回もお楽しみに。

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