【目覚めたリーオ。蘇る四千年前の記憶】
前回から時間が空いてしまい申し訳ございません。
6月になって新しい場所での生活が始まり、いろいろ忙しくて原稿を進める時間が取れませんでした。
次回もこのように遅れてしまう可能性があるので、先に謝っておきます。
誠に申し訳ございませんッ!
...では、謝罪もしたところで今回のリーオ達の物語について話していきますか。
今回は物語の進行はあまりありません。というのも、今回からはシリアス展開というか、竜にあってどうこうという感じではなくなります。まぁ、次回当たり会うようにはするんですが、それでもこれからの水竜編は若干シリアスめいてきます。あ、でも次に書く予定の雷竜編(仮)の前に番外編として私の友人が考えたストーリーを書いていく予定でいます。新キャラなどまぁまぁ出てきますので、お楽しみに。
「______ん…あ……?」
久方ぶりに味わう心地よい程の眠気から目を覚ますと、まず目に入ったのは知らない天井だった。人の手で作られた木の天井。窓から差す眩しい程の朝日。
「……ここは、何処だ?」
先程まで寝転がっていたふかふかのベッドから立ち上がり、部屋の中を見渡す。
意匠の込められた木製の家具、朝の陽射しで輝くガラスの嵌められた窓…。
何処かの豪邸か何処かなのか?ここは。これ程の家具や高級品のガラスを嵌めた窓のある部屋なんてインテグラル王国の客間ぐらいだぞ?
部屋の中を見渡しながら、流れで自分の身体を見る。
…武器がない。
というか装備がない。いつも身に着けていたはずの防具、黒銃を収めたホルスターなど…まぁ、空間内にある装具品はあるようだが、それにしてもおかしい。
そもそも俺がいたのはフィスィ連合国の森だったはずだ。それが何故いきなりこんな豪勢な部屋の中で、それもベッドの上で眠りこけていたなんて…。
「……そういえばアゲハはどこ行った?」
アゲハは先程まで、というかここに来る直前まで一緒にいたはずだ。
…黒銃もないということは、どこかに持ち去られたのか?その場合はまずい。今の俺は竜力も魔力もほとんど尽きかけている。この状態で戦いを挑んでもまともな装備のない今、最悪自爆覚悟で特攻するか…どうか、だな…。
簡単なスキル、スペルすら発動できない今の状態でいったい何ができるのか。
徒手空拳……あれ?ある程度の奴なら拳で行けるよな?ていうか『賢竜の薬さじ』で薬作れば何とかなるんじゃないか?
……焦る必要はなかったな。
まず一つ大きく深呼吸し、心を落ち着ける。それを何度か繰り返した後、スキル『空間魔法』で空間を開くために最小限の魔力を指先に込め、いざ開こうと指をくいっと下へ動かした時だった。
バンッ!
と凄まじい音が後ろ側のドアからするのと同時に、聞きなれた声がそこから聞こえてきた。
「リーオッ!目が覚めたのね!?」
“リーオさんッ!”
≪ご主人ッ!よかったぁ…!≫
「…?ん?シェラン?ヴァール?なんでお前らがここにいるんだ?」
_____その後、目まぐるしい状況の変化に頭が付いていけていないリーオを落ち着かせたシェランとヴァールは紅茶を出して現状の説明をしようと室内のテーブルへ座るように促した。
「……落ち着いた?」
「…まぁ、ある程度はな…。」
シェランからの問いかけに、出された紅茶を飲み、少し心を落ち着かせたリーオが頭を押さえながら答える。
“…あれから眠りっぱなしだったんですよ?”
「…あれから?いつのことだ?」
「あれ?もしかして分かってない?」
「??何のことを言っているんだ?お前らは…。」
≪…ご主人、あの時森で起こったことって、覚えてる?≫
「…いや、凄まじい衝撃があったこと以外は何も…ていうかあれからどれだけ経ったんだ?」
≪二日くらいだよ。後気になってるみたいだから言うけど、ご主人が身に着けてた装備類はシェランさんの空間に入ってるから。≫
「うん、必要になったらいつでも言って。引っ張り出すから。」
「あ、あぁ、分かった。…それにしても、何処だ、ここ?フィスィ連合だってことは分かるが、何の建物かどうかは分からないな…。」
部屋の中を見渡し、頭を押さえながら「フゥ…。」と小さく息を吐くリーオに、シェランが申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
「……ゴメンッ!あの時減速が間に合わなくって…。」
「…な、何のことだ?」
“…えっと、リーオさん先程『凄まじい衝撃があった。』って言っていたじゃないですか…?”
「あぁ、それ以降の記憶が一切なくなるくらいのな。」
リーオのその言葉にシェランが胸を押さえながら「うぐッ!」と低く呻く。
「…?」
“えっと…あの時の衝撃はですね…その…。”
「…なんだ、歯切れが悪いぞ?」
“………あの時の衝撃は私とシェランさんが最高速のままぶつかってしまった時のものなのですッ!”
「……?…あぁ!そういえばあの時二人の魔力が急速に接近してた気がする!」
≪うん、ごめんねご主人。僕がもう少し早く二人の気配に気づいていたら、こんなことにはならなかったのに…。≫
「あぁ、いや、別段俺は気にしていないが…。」
俺がそこまで言うと、さらに言及されることを恐れたのか、シェランが突然大声を上げ、会話を遮ってくる。
「…そ!その話はもういいじゃん!」
“そ、そうですね!とりあえず……リーオさん、あの時何があったんですか?”
シェランに便乗したヴァールだったが、すぐに襟を正し、真剣な声でこちらへ問いかけてきた。
「『転移』が干渉を受けたことか?」
“えぇ、私の魔法に干渉できるなんて、相手は相当やり手の魔法使いか何かなんでしょうね…。”
「まぁ、やり手どころか神にすら匹敵する存在だったけどなぁ…。」
「え、誰それ!?ていうか何者!?」
≪私たちのお母さん、妖精女王ティターニアだよ。≫
「……!?」
“え…え!?あの妖精女王が!?どうして!?”
俺は二人と別れていた時に起こったことをすべて話した。
妖精が住む森≪リズヴェーン大森林≫が魔族の襲撃を受けていたこと、そこで待ち受けていた魔族が俺のことを知っていたこと、長年習得できずにいた剣術(技)の奥義『一ノ太刀』を習得できたことなど、全て。
「……そうだったんだ。あのリズヴェーン大森林に上位魔族が、ね…。」
“それほどまでに強大な上位魔族がこちら側…≪ウィンリック大陸≫にやって来ているなんて…。”
「確か≪ダークアルカディア≫からこっちに来るには海を渡って来るしかない。それはほぼ不可能に近いはずなんだ。」
「…うん。神々の戦争の時も海の上での戦いが主だったよ。」
俺達人族が暮らす大陸≪ウィンリック大陸≫と魔族が住む≪ダークアルカディア≫との間には大陸と大陸を分かつ広い海原≪コントレエウ海≫がある。しかし、その海は『海竜ゼーヴァルナー』、上空は『嵐竜アマツミネ』の縄張りとなっており、海を渡ろうにも海竜に、空を行こうにも嵐竜に襲われ、並みの魔族…上位魔族であろうと無事に済むわけはない。
“…悲惨な戦場でしたからね。4000年前の大戦は…。”
「…海はあの二竜の縄張りだからな。」
「…私も、アマツミネから聞いたよ。大戦のこと。私の戦った『落とし子達との戦争』よりも悲惨だったって。」
「死体とか崩壊した船の残骸とか散乱してたな…。」
“…えぇ、あの戦場はまさに地獄でした……?”
そこまで言ったヴァールの声が不意に止まる。少し考えこんだ後、何やら困惑のはらんだ声でリーオに問いかける。
“……リーオさん、さっきの事なのですけど…何故4000年前の戦場の様子を知っているんですか?私、リーオさんに話したことはない筈ですが…?”
「………ん?確かにそうだ…。」
何故自分は『あの戦場』を知っている?何かの文献で読んだのか?それにしてはやけに鮮明なイメージでその情景を描くことが出来る…?
“…それに、この世界にあるどの歴史書にも『あの戦場』の情景を描いたものはない筈。あったとしても神々が所有する≪星の書庫≫の中です。一般人が紛れ込むわけもない神々の領域にある筈の本の内容を、何故リーオさんは知っているのですか?”
「……確かに、何故だ?」
ドクンと、心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。考えれば考えるほど頭から血の気が引いていくのを強く感じる。何故?どうして?そんな疑問だけが頭の中一杯に広がっていく。
4000年前の戦場として頭に浮かんでくるイメージは流れる血で赤黒く染まったコントレエウ海、その血の海に浮かぶ無残に千切れ飛んだ人族や魔族たちの肉体、そして、その中心で膝を突いたヴァールに似た剣を携え、血塗れになった自分と全く同じ容姿の一人の少年だった。
「______ッ!?」
“リーオさん!?”
「リーオ!?」
《ご主人!?》
吐き気がした。頭に浮かんだ情景がそのまま自分の感覚へとフィードバックされたかのような、激しい拒絶感と虚脱感。その少年が感じたであろう感覚、感情の全てが自分の中にある『何か』を通して流れ込んでくるかのような感覚だった。
激しい立ち眩みのような症状に堪らず膝を突く。あまりの吐き気に口元を右手で押さえ、眩暈で倒れそうになる身体を床に突いた左手で支える。
「…グッ…ウッ…!」
“どうしたのですか?リーオさん!?”
「リーオ!?大丈夫?気持ち悪いの?」
《…ご主人…?》
心配する3人の声が耳に届くが、まるで何かのフィルターを通しているかのような籠った音で聞こえてくる。頭がボーっとする。例えるなら熱病にかかったときのような、空気が足りていない時のような、そんな感覚。そうしていると、段々と視界が曇っていく。焦点が合わない。
呼吸が苦しい。空気が足りない。口を一杯に開き、少しでも多く空気を吸おうと必死に浅い呼吸を繰り返す。
嫌な汗が止まらない。背中を伝う汗がいつも以上に冷たく感じる。
「カッ…ハァ!ハァ!ハァ!」
「リーオ!?」
“リーオさん!?”
《…ご、主人…?》
三人の声が遠くに聞こえる。意識が、遠のいていく。底のない沼に溺れていくような感覚、考えが段々と纏まらなくなってくる。手足の感覚が溶けてなくなっていくような、不確かな感覚。
……あぁ、俺はこの感覚を知っている。いや、慣れ親しんでいるといった方が正しいだろう。この、自分の『中』に沈んでいく、果てしない孤独感と幸福感。
「助けてくれ。」と叫びたくても、喉からは声にならない吐息しか出ていかない。
途切れる意識の最中、聞こえてきたのは自分の名を呼ぶ少女たちの声ではなく、上位魔族との戦いで頭の中に響いてきた『声』だった。
『_____…よう。また会ったなぁ、我が器よ。』
次回は7月中には何とか上げます!(焼き土下座)




