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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第三章:無限の器、竜を廻る。
38/54

【邂逅と再会。失われる意識】

今回は少し短いですが、何とかまとめることが出来ました。


前回で上位魔族との戦闘が終わったので、今回はシェラン達観光組との合流回です。

なのでちょっと短めです。満足いただけるかは分かりませんが、次回までもう少し待っていただけるとありがたいです。


静寂が満ちる早朝のフィスィ連合国エルフ領、その森の中に突如虹色の光を放つ門のようなものが開き、中から黒く艶やかな蝶のような羽根を羽ばたかせた美しい妖精が飛び出してくる。



《ご主人!早く早く!》

「分かってる、急かすなアゲハ。」



少女の元気な声に応えるように疲れた様子の男の声が虹の穴の向こう側から聞こえてくる。穴からゆっくりと出てきた男は、朝日の眩しさに一瞬目を細め、振り向いてから次第に小さくなっていく虹の門へと一礼する。



「……『妖精(ようせい)たちの(とお)(みち)』ってすげぇな。俺やシェランの『転移』とは全く違ぇ…。」

《だってお母さんの使う妖精魔法だよ?あんなに大きいのボクや他の妖精でも使えないよ。》

「…そういうもんか…。」



アゲハの説明に納得したのか、口元に手を当てたリーオが思い出したかのように周囲を見渡す。先ほどまで自分たちがいたのと全く同じ風景だが、吹く風、流れる魔力の質が違うことに小さく安堵する。



「……何とか、帰ってきたな。」

《ボクとしてはもうちょっとあっちに居たかったけどね。》

「別に俺は置いて行ってもよかったんだぞ?」

《ご主人酷いっ!!》

「冗談だ。…さて、ここに留まっていてもしょうがない。シェラン達と合流しようか。」



拗ねたように頬を膨らませたアゲハを肩に乗せながら『魔力感知(まりょくかんち)』と『直感(ちょっかん)』で人がいる場所を探しながら、静かな朝の森を少し覚束ない足取りで歩みだす。



先の戦いで負った傷は癒えていない。しかし、その回復を待っている余裕も時間もない。少しでも早く、竜の元へ。少しでも多くの人を救いたい、助けたい。


その一心で、今にも崩れ落ちそうな身体を無理やり支えて先へ、前へ進んでいる。



「……もっと、もっと強くならねぇと…。」



そんな小さなリーオの呟きを聞くアゲハは、悲しそうな瞳でリーオを見上げ、聞こえないような小さな声で問いかけた。



《……ご主人は、何のために強くなるの?強くなった先に一体何があるの?誰かを、何かを救って、助けて、守って…いったい何から?ご主人は一体何と戦うっていうの?ボクには、分からないよ…。》



アゲハの小さな呟きは、早朝の爽やかな森の風に攫われて、どこにも届くことのない彼方へと消えていった。



______同時刻、フィスィ連合国エルフ領にある宿へ宿泊していたシェランとヴァールは突如現れた感じ慣れた少年の魔力に飛び起き、急ぎ朝の支度をしているところだった。



「ヴァールさんっ!リーオの魔力が感じられたのはどの辺!?」

“フィスィ連合国エルフ領の森の中です。おそらく一般人が入り込むことのない深い森の方かと!”

「了解!パパッと準備を終わらせちゃうからヴェールさんはここでリーオの魔力がどこに向かって移動しているかを察知してて。」

“分かりました。”



バタバタと朝の準備をしているシェランを横目にヴァールは神剣の能力でリーオがどこへ向かって進行しているのかを感知していた。リーオの魔力、気配が現れたのは早朝、ようやく太陽が昇り始め、照らされた街や森から人々の鼓動が感じられるようになったころだった。


最初にリーオの気配を察知したのはヴァールだった。横で寝ていたシェランを叩き起こし、寝ぼけたままのシェランに改めて『領域』魔法でこの国一帯の魔力感知をさせて、リーオの魔力を感知させたところで今のような慌ただしい様子となった。



「とりあえず、こっちの準備は終わったよ。リーオは?下手に動いたりしてない?」

“……えぇ、今のところは。おそらくリーオさんも『魔力感知』を使って、人のいるところへ行こうとしているようです。真っ直ぐとは言えませんが、市街地の方向へ進んでいます。”

「了解。案内頼める?」

“えぇ、さっそくお出迎えと行きましょうか。”

「…我らがヒーローの、ね?」

“…はい!”



準備を終えたシェランは自らとヴァールに『隠蔽』『消音』『不可視』の三つをかけ、宿泊した部屋のベランダから飛び降りながら、纏う白の外套に竜力を流し込む。



「…また借りるよ、アマツミネッ!」



そう叫ぶシェランの身体から桜色の竜巻が舞い上がり、彼女の身体を包み込む。周囲を巻き込みながら舞い上がる竜巻の中で、その身体は竜に変わる。



“…何度見ても美しい竜化ですね。”

「ありがとう。女神様に褒められるなんて、光栄の至りだよ。」



竜へと変わった身体でふわりと空へ舞い上がりながら、リーオの魔力を感じた森まで急行する。スキル『(りゅう)()』で見えるリーオの魔力の筋を逆さから辿るように空の上から彼の姿を探す。



「ヴァールさん、私の『竜の眼』()じゃある程度までしか見えないから、道案内任せたよ。」

“はい、行く方向はこちらで指示します。”



羽衣のような薄い皮膜を羽ばたかせ、空の上を泳ぐように滑らかに進んでいくシェランに冷静に指示を飛ばしながら心の中でヴァールは焦っていた。



______もしも彼を失ってしまったら、あの時のように届かなかったら、私はまた一人になってしまう。世界樹の頂上で一人泣くことも笑うこともできず、吹きすさぶ激しい風にさらされながら、私はまた、繋がりをなくしてしまうのでは…?



不安に押しつぶされそうになる心を必死に抑えて、ヴァールは懸命にリーオの魔力を、たった一人の契約者の魔力を辿る。



「……ッ!見つけた!『領域』に引っかかった!」

“!急ぎましょう!少しでも早く、彼の元へ…!”

「…?う、うん!ちょっと飛ばすよっ!」



身体をくの字に曲げ、少し力を溜めたシェランは「ビュンッ!」という鋭い音と共に撃ち出された弾丸のような速度で一気に目的の場所へ飛んでいく。



______リーオさん…待っていてください。どんなに離れたとしても、アナタがこの世界にいる限り、私は絶対にアナタのことを探し出して見せます。



そう自らの心に誓ったヴァールの身体は、仄かな金色の光を放っていることを本人や差しているヴァールですらその時認識していなかった。そして、この光の意味をリーオも含めた3人が理解するのはもう少し先の話である。



一方、シェラン達が自分のことを探しているなんてつゆ知らず、微かに感じる人々の魔力に向かって歩いているリーオとアゲハ。意識が朦朧とし始めているリーオの展開したスキル『魔力感知』に覚えのある人物の魔力が引っかかった。



「………?魔力…いや、竜力か?」

≪?ご主人どうかしたの?≫

「…お前も何か感じないか?ここに凄まじい速度で向かってくる魔力か竜力がある気がするんだが…。」

≪え?……あ!これシェランさんの竜力だよ!≫

「?何故シェランが凄まじい速度でここに向かっているんだ?」

≪さぁ……って!ご主人避けてッ!≫



アゲハの声の直後に聞こえた凄まじい風切り音に振り返ったリーオを凄まじい衝撃が襲うと同時に突然視界が一面の白に埋め尽くされる。吹き飛ぶ身体を支えることも出来ず、前から掛けられる何かが衝突した感覚と若干感じる柔らかい感触を楽しむ間もなく背中から地面へ強く打ち付けられる。



「ゴハッ!!?」



遠のいていく意識の端で、聞き覚えのある声が聞こえた気がしたが、まともに動かない思考を放棄し、リーオは久方ぶりとなる夢の世界へ半ば強制的に旅立たされていった。




次回は【登場人物のステータス及びスキル、スペルの解説。本作品の世界観の説明:其の五】と一緒にあげたいです。では、それまでお楽しみに

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