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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第三章:無限の器、竜を廻る。
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【シェランとヴァールのフィスィ二人旅。消えた水竜の行方】

まず一言、遅れて申し訳ございませんッ!引っ越しや仕事の転属やてんやわんややっている内にこんなに遅くなってしまいました。

未だバタバタしている最中でして、次回は恐らく4月中に投稿できないかもしれません。申し訳ございませんがもし投稿できなかった場合は5月の連休にまとめて投稿したいと考えておりますので、しばしお待ちください。



唐突な挨拶は終わりまして、今回はシェラン編です。短いです。次回はもう少し内容を濃くしたいと考えておりますので、許してください。


前回、フィスィ連合のエルフ領代表ミラス=ミスティルと数年ぶりの再会を喜び合ったシェランはヴァールを連れて久方ぶりに訪れた故郷の都市を観光していた。


慣れ親しんだ街の風景を眺めながら、シェランはぽつりと「変わらないな。」と呟いた。



“綺麗な風ですよね。透き通っているというか、純粋っていうか。”

「これもウォー…水竜の御蔭かな?あの子がここにいる御蔭でこの国全域に『浄化の水域』が常時発動してる状態なんだ。だからこの国の風も水も魔力も何もかもが清められた状態なんだよ。」

“『浄化(じょうか)水域(すいいき)』……水竜ウォーバイトの持つユニークスキルでしたね。”



スキル『浄化の水域』。水竜ウォーバイトだけが持つユニークスキル。効果は範囲内に存在するもの全てを浄化するというもの。

その為、魔族や魔物と言った『(けが)れ』を持つものに対しては強力な結界としても機能する特殊なスキルである。また、属性が光ではなく水単体である為、水属性を極めれば光に適性のないものでも簡易的ではあるがこれに準ずるものは使うことが出来る。



「そうだよ。あの子だけが持っていたユニークスキルだったからね。」

“…あの子?”

「あっ…っと、まぁ、早く水竜のところへ行こうよ!一応顔を合わせておかないと失礼だしね!」

“?はい…?”



何かを所々誤魔化しているように思えるシェランを少し怪しく思いながらも何も行動を起こせないヴァールはシェランの腰に下げられるまま何処かへ連れられて行く。


様々な種族で賑わう大通りを抜け、一度森の中へ。大きな湖を超え、静かな洞窟を進んでいく。天井に伸びる鍾乳石からぽたぽたと零れ落ちる水滴が、静寂の洞窟に小気味いい音楽を奏でている。



“…ここが、水竜ウォーバイトの住処…清水の洞窟ですか?”

「うん…その筈、なんだけどぉ……あれぇ?」

“どうしました?”

「……気配がしないんだよねぇ…?」



洞窟内の気配を探ったシェランが首を捻る。普通なら洞窟に入った時点でそれ相応の威圧感というか水竜のオーラを感じ取れ、奥に進んで行く毎にそれが強くなっていく。そういう構造になっているはずだが、今回はそれがなかった。



「…まさか街に出ているとか…?」

“……竜ってそんな簡単に人里へ降りてはいけないのでは?”

「…いや、あの子ならやりかねない。ちょっと行ってみよっか。」

“…分かりました、行きましょう。”



洞窟を出て、大きな湖を迂回し、森を抜けて街へ戻ったシェランは様々な種族で賑わう大通りをくぐり抜けながら、『領域(ゾーン)』と『隠蔽(ハイド)』を発動し、周囲の魔力反応を探り始める。



“…どうです?見つかりました?”

「……ううん、反応がない。もうちょっと範囲広げてみる。」



二つの魔法を発動しながら、シェランとヴァールは人々で賑わう街を進んで行く。

途中、出店の美味しそうな料理に誘われそうになるシェランとそれを咎めるヴァールがいたり、久々に会う友人との会話に花を咲かせるシェランとその会話を聞きながら物思いにふけるヴァールがいたりと、様々な出来事を乗り越える二人。

しかし、段々と日も傾き、茜色に染められた街角で目に付いた喫茶店で一息をつくのだった。



「……見つからなぁ~いっ!!」

“…一体何処へ行ったのでしょう?この国を出るなんてことは、なさそうですし…”

「…うん、何処に行ったんだろう?」



テーブルへ突っ伏し、注文した紅茶の注がれたカップを指で弄んでいると、後ろから声を掛けられた。



「_____何かお困りでしょうか?」

「?」

“?”



振り返った先に居たのは、黒いフードを目深にかぶった青年風の男性だった。少し中性的なその声は聞いていると引き込まれてしまうような感覚を覚えた。



「何か、お悩みのご様子でしたから、少し気になってしまって。」

「あぁ、いえ。ちょっとりゅっ…人探しをしているのですが、見つからなくって…。」

“………。”

「そうだったのですか。…お節介かもしれませんが、容姿などを教えていただければお手伝いできるかもしれません。」



容姿…?竜の姿を伝えて果たしてこの人は見つけることが出来るのか?いやまず水竜がいなくなったなんて伝えたら大騒ぎになってしまうかもしれない…?


頭の中に大きなはてなマークが幾つも浮かんだシェランだったが、「だ、大丈夫です。」と男性の誘いを断り、店を後にするのだった。その間、ヴァールは終始無言であった。


喫茶店を後にした二人は、夜の訪れにより先ほどより静かになった街の中をあてもなくただただ彷徨っていた。



「……やっぱり何処にも感じない。一体どこにいんのよあの子はっ!?」

“………。”



人気のはけた裏路地に見つからない水竜への悪態を叫ぶシェランの声が虚しく響く。

その声に驚いたのか路地の角にたむろしていた動物が蜘蛛の子を散らすように逃げていった。



「……ヴァールさん、さっきから静かだけど何かあったの?」

“………あっ!な、なんでもないです。すみません、ちょっと考え事を…。”

「?そうなの、まぁ、いいや。取り敢えず、今日のところはミスティルに教えてもらった宿に泊まろうか。」

“…あ、あぁ、はい。そうしますか。”



生返事を返すヴァールを少し怪しく思うシェランだったが、一日中街を走り続けた疲れからか深く考える頭の余裕もなく、重い足取りでミスティルから紹介された宿へ向かうのだった。


その夜、早々に眠りについたシェランの横で、神剣ヴァールは物思いにふけっていた。



“……リーオさん、一体何処にいるのでしょう?神剣の感知を使っても現在地すら分からないなんて、今までなかったのに…。”



シェランにも聞こえない声で小さく呟くヴァールは剣の姿でありながら、酷く悲しんでいるように見えた。剣となり鞘に納められたヴァールは自分の足で契約者であるリーオを探しに行くこともできない。そんな自分の無力さにヴァールは今、打ちのめされているのだ。



“……また、あの時のように…私は…私は、何もできない…っ”



思い出されるのは、大切な人との別れ。世界樹の頂上で別れを告げた、あの時。

夜空に浮かぶ月が照らす部屋の中、カタカタと小さな剣の身体を揺らし、ヴァールは深い悲しみに暮れていた。



“……リーオさん…早く…早く帰ってきてください…っ”



そんなヴァールの小さな呟きは、透き通った夜風に攫われて静かなフィスィの街へ消えていった。




次回は4月...?できなければ5月に連投します。


次回もお楽しみに。

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