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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
間章:忍び寄る魔物の影
28/54

【護衛の任務。迷うウェント】

何とか9月中に投稿することが出来ました。最近色々忙しく、執筆作業が出来ませんでした。

少し即席な部分もあるので読みにくいかとは思いますが、これから見直していきたいです。


今回は第二の主人公であるウェントの葛藤です。この辺は自分でも書きにくかったので少々読みにくいかとは思いますが、勘弁してください...。

「_____来たか、アリシア。」

「只今到着いたしました。…して、何かございましたか?」



王国騎士団長であるアリシアの元に国王であるマティス四世からの招集がかかったのはカバルとの訓練が終わった夜のことだった。


悩み詰めた様子のマティス四世が、少し考え込んだ後、その重たい口を開いた。



「…あぁ、例年行っている隣国≪フローリア王国≫との会談の件で、少しな…。」



このインテグラル王国は、隣国で古来より親睦のあるフローリア王国と毎年王族同士で会談を行っているのだ。場所は毎年交互に変えているが今年はフローリア王国に決まっている。その為、フローリア王国が会場の場合は王国騎士総出で道中の護衛を行っているのだ。



「そういえば、今年の会場はフローリア王国でしたね。ということは、護衛任務のことですか?」

「…あぁ、近頃フローリア王国へ通じる道に魔物が出現しているという報告があってな。」

「魔物が…?確かに、王国の騎士たちからも同じような報告が上がっていましたね…。」



ここ最近、この国とフローリア王国を繋ぐ≪ブルクォ街道≫を警備する騎士から、多量の魔物の痕跡とそれを残したであろう魔物と対峙したという報告が多数上がっている。


ここからブルクォ街道を通らずにフローリア王国まで行くとなると、最短でも1週間はかかる。その間護衛する騎士たちの疲弊も必至だろう。さらに今回は昨年の会談とはわけが違う。



「さらに今年は…。」

「……はい、王族全員で挨拶に行くのでしたね?」



今年の会談は、フローリア王国の第一王女『レイナ=フローリア』の成人を祝うパーティも開催されるため、インテグラル王国の王族全員で参加する予定なのだ



「…そうなのだ。それが一番の問題だ…。」

「……私の方でも考えてはいますが…どうにも…。」

「…少し、時間が必要だな…。」

「……はい…。」



暗雲が立ち込み始めたフローリア王国との会談、アリシアとマティス四世の予想に反して、事態は既に動き始めていた。その頃ウェントは、一人いつもの森の中で剣を振っていた。



「……ッ!クソッ!ぐぅ…!ハァッ!」



ウェントはあれからあの二本を主武装に移すため、修練を続けていた。

しかし、使いこなすどころか二本の剣に振り回されるばかりだった。



「……クソッ!…何で…くそぉ…。」



操れない自分に憤り、剣を握りしめたままの拳で目の前の大岩を思い切り殴りつける。鈍い痛みが拳から伝わり、一言小さく呟く。



「……痛い…ハァ…。」



一回憤りを放出したからか、頭が少しクリアになった。何とか考える余裕が出来そうだ。

落ち着かせるために、深呼吸をしながら修練の合間に作った切り株の椅子に腰を下ろす。



「…フゥー…。」



左に持っていたリッヒテンを背中の鞘に仕舞い、シュナイドを握っている右腕に空になった左手を添える。先程の拳の痛みと、シュナイドを無理に操ろうとした代償なのかびりびりと右腕に走る痛みを何とか抑えようと左手を添える。



「……やっぱり重い…。」



感覚の薄くなってきた右手に握るシュナイドから伝わってくる、底冷えするような冷たい重みに右腕だけでなく身体すらもカタカタと震えてくる。



「…どうすればいいんだ?」



震える右腕を抑え付けながら、この現象を止める策を練るが、痛みと恐怖ですっかり縮こまってしまった頭ではまともな回答を出すことが出来ない。


どうすればいい?そんな幼稚な疑問だけが頭の中でグルグルと繰り返される。


そんな時、後ろからいつも聞きなれた声が響いてきた。



「そんなとこで何やってんだ?こんな時間まで修練か?」

「っ!カバルさんっ!?」



驚き振り返ると、そこに居たのはこの王国騎士団第二部隊の隊長でリーオさんの親友であるカバル=ミュオトさんだった。つい先ほどまで王国騎士団団長のアリシア=ガブリエールさんと共に修練をしていたのだろう、身の丈ほどある巨大な大剣ジ=オを背負った身体には所々に切り傷や擦り傷が伺える。



「お、その手に持ってる剣がリーオから貰ったやつか?」

「え…はい。でも、全然使いこなせないんです…。」

「……そうか…。」



カバルは肩に構えたジ=オをゆっくりと振り下ろし、周囲のウェントの剣による傷まみれになった岩や木を見渡しながら口を開いた。



「…動かない的での修練では勘が鈍るだろう、俺と一戦やらないか?」

「…いいんですか!?」

「あぁ。俺もいい修練になるしな。」

「ぜ、是非ッ!お願いしますッ!」



右手に握りしめたシュナイドを正眼に構え、ジ=オをゆっくりと振り上げるカバルを睨み付ける。



「………。」

「……。」



長い沈黙の後、先に動いたのはウェントであった。



「……『魔力撃(まりょくげき)』ッ!!」



魔力撃で強化したシュナイドを頭の上に振り上げ、大きく飛び上がりながらカバルより上を取り、なおかつ確実に距離を詰める。それを見ていたカバルが、振り上げたジ=オを下ろし、それを腰もとに構えなおし、『集中(しゅうちゅう)』を使い全身に力を巡らせ、迎撃の準備を整える。



「ハァァァァァッ!『剛斬(ごうざん)』ッ!」

「……フンッ!」



飛び上がりながら魔力撃と全体重を乗せたウェントの剛斬と、カバルの集中と回転が加えられた斬撃がぶつかり合い、発生した衝撃波が周囲の木々や岩を吹き飛ばす。



「…ぐぅ…!」

「………デァッ!

「ッ!?」

「…剛斬ッ!」



ただの斬撃でウェントの一撃を弾き飛ばし、さらに回転を利用して剛斬の威力を底上げする。



「…!『()(なが)し』ッ!」



吹き飛ばされたウェントは迫るカバルの剛斬を辛うじて受け流し、斬撃で身体が吹き飛ぶ勢いを何とか抑えて大きく後退しながら地面に着地する。



「____ッハァ!ハァ!ハァ!…フゥ……ッ!」



衝撃で震える身体を呼吸で無理やり叱咤し、再びカバルとの距離を詰める。そして低い姿勢のままスキル『連撃』でカバルに攻撃を仕掛ける。



「ハァッ!!」

「……。」



低い姿勢から放たれる連撃を、カバルは一撃一撃冷静に淡々と対処していく。降り注ぐ雨の如き剣戟をジ=オ切っ先を地面につけたままカバルは淡々と受け流していく。



何故?何故だ?俊敏も高くて、さらに剣術(柔)の技まで使っている俺の方が圧倒的有利のはずなのに、どうしてこの人は着いて来れる?カバルさんの俊敏は確かC…着いて来られるはずがない。なら、どうしてこの人に一撃も入れられないんだ!?



「クッ!」



自分の攻撃が効いていないと察したウェントは距離を取り、今度は突進する勢いも乗せた剛斬でカバルを攻撃する。



「……フンッ!」



しかし、カバルはこれも軽々と受け止め、さらにカウンターで放った一撃で地面と共にウェントの身体を後方へ大きく吹き飛ばす。


何とか空中で受け身を取ったウェントだったが、勢いを殺しきれず着地に失敗し、地面を数メートル転がってようやく止まる。



「ぐぅぅ…!」

「………フッ…。」



何とか起き上がったウェントは、強い意志の籠った瞳でカバルを睨み付ける。それに感心した様子のカバルが、今度は自分からウェントとの距離を詰める。



「ッ!」

「……『巨人(きょじん)一撃(いちげき)』…!」



ジ=オを上段に構えたカバルの全身から目で捉えられるほどの密度を持ったオーラが放たれる。圧し潰されそうになるほどのプレッシャー、まるで巨人が目の前にいるような、そう錯覚してしまうくらいの重圧の中、ウェントは両手で持ったシュナイドを腰の下まで下げ、今にも放たれようとしている一撃を迎え撃とうと今身体に残っている全魔力をシュナイドに込める。


カバルは魔力を注がれ、怪しく紅色に輝くシュナイドを見るや否や同じように全身に纏った溢れるほどのオーラを構えた大剣に全て注ぎ込む。


少しの空白の後、ほぼ同時に両者の身体が動いた。



「「ッ!」」



ヴァギャンッ!!


紅い軌跡を描きながら振り上げられるウェントのシュナイドと、白い軌跡を描きながら振り下ろさせるカバルのジ=オが両者の間でぶつかり合い、二人の顔を赤く照らす。その衝撃は周囲の地面が捲り上がり、辺り一帯の木や岩が吹き飛ばされるほどだった。



「ウォォォォォッ!」

「…ッ……ツェアッ!」

「ぐぉっ!?」



暫くの鍔迫り合いの後、競り勝ったのはカバルだった。腕力で無理やり弾き飛ばしたウェントに集中のスピードで追いつき、追い打ちを仕掛けようと剣を振り下ろす。



「フンッ!」

「ッ……!」



ギャンッ


空中で身体を回転させ、回転させた勢いをシュナイドに乗せて向かってくるカバルの一撃を弾き飛ばす。



「何ッ!?」

「…剛斬ッ!」



剣を弾かれ、バランスを崩したカバルに叩きつけるようなウェントの剛斬が迫る。それに何とか反応したカバルの肩口に剛斬による一撃が掠り、着ていた革鎧を紙屑同然に引き裂き裂けた皮膚から紅い鮮血が舞う。



「ぐっ!?」

「ハァァァァァァッ!!」



カバルは雄々しい雄叫びを上げながら仕掛けられるウェントの追い打ちをスキル『直感(ちょっかん)』で避け、自分の手に持ったジ=オを地面に突き立て、それを利用して飛び上がりウェントから距離を取る。



「ッ…『ジオ=ブレイク』ッ!」



そして突き立てたままのジ=オに魔力と気力を流し込み、地面を大きく抉るように全力でジ=オを振り抜く。渾身の力が込められたジ=オの斬撃が明らかな質量を持ち、地面を大きく抉りながらウェントに迫る。



「ぐっ……っ!」



あれを喰らったら確実に死ぬ、そう相手に悟らせるに足るだけの畏怖を持った大地の魔剣ジ=オが持つ固有攻撃スペル『ジオ=ブレイク』を前に、ウェントは無意識のうちに背中へ伸ばしていた左腕の動きを制止し、両手で握り直したシュナイドに魔力撃と剛斬を載せて迎え撃つ。



「ッ…ハァァァァァァッ!!」



二つがぶつかり合った瞬間、凄まじい衝撃波が周囲のものを薙ぎ倒し、吹き飛ばす。その衝撃はその場だけでなく王国中に響き渡った。二つの魔力がぶつかり合い、混ざり合い、弾き合い、発生した莫大なほどのエネルギーが王国中に広まり、散った。



「___ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

「……まだ、迷っているのか?」

「…ッ…!」



全力を使い果たし満身創痍のウェントにカバルの言葉が重く圧し掛かる。

自分の迷い、それを自覚したウェントにその言葉は心の奥に深く突き刺さった。


先程の左手の迷い。恐らく背中に背負っているリッヒテンだ。リッヒテンの能力は『魔力切断(まりょくせつだん)』、あれだったらあの一撃を完全に防御できた。しかし、それが出来なかった。


あったのは恐怖、それも抗うことが出来ないほど強い、底冷えするような。

初めてシュナイドを握った時と同じ…。



「……分かりますか…?」

「見ていればな。太刀筋が鈍い。」

「…そう、でしたか…。」



自分でもそれは分かっていた。いつもより剣が重く、動きが鈍かった。それは自分の心の問題だということも理解していた。



「……どうすれば、いいですかね…。」

「…そうだなぁ…それは…」

「___それは自分で気づいてこそ、意味があるものだよ?ウェント君。」

「っ!アリシアさんっ!?」



カバルさんの回答を遮って登場したのは、このインテグラル王国騎士団の団長であり、近衛兵長でもあるアリシア=ガブリエールさんだった。



「…アリシア…。」

「ダメだよ、カバル君。そういうことは自分で気づいてこそ、意味があるものなんだから。」

「…分かった…そういえば、なんでこんなとこにお前が来んだよ?」

「それはウェント君…っとカバル君にも関わることなんだけれど…。」

「…僕?」

「……あぁ、そういえばもうアレの時期か。」

「…アレ?」

「…そうだったね、ウェント君は今年が初めてだものね。」

「…初めて?何かあるんですか?」

「あぁ、それは俺達王国騎士団において最も重要な任務と過言ではない。」

「…国王の護衛任務だ。」

「…護衛、任務?」



___その時、ウェントはまだ知る由もなかった。この護衛任務が今後の自分の人生を左右するものになるとは……。




10月中には3話くらい、投稿できればいいなと、思っています。


...思ってはいます...。


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