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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
間章:忍び寄る魔物の影
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【王都での出来事。カバルたちの物語】

今回から、リーオの物語ではなくインテグラル王国での、ウェントやカバルたちの物語が進行していきます。リーオ達の旅も、これが終わった後に投稿します。



場所は変わり、インテグラル王国の中心に建つ城、インテグラル城の中庭で二人の戦士が剣を打ち合わせていた。剣がぶつかり合う度に散る火花が、二人の顔を赤く照らす。


大剣を振るう青年はリーオの親友『カバル=ミュオト』。彼は元々直剣を使っていたのだが、現在はリーオが旅立つ際に譲り受けた、彼の身の丈以上もある巨大な魔剣『大地(だいち)魔剣(まけん)ジ=オ』を主に使っている。


しかしカバルは元々魔力の量が少なく、大量に魔力を消費する魔剣を扱うには不安が大きかった。そこで、城の書庫にあった魔力の代わりにスタミナ、体力を消費する秘術を施すことで魔力の消費を抑えているのだ。


その魔剣ジ=オを思いっ切り振りかぶったカバルが目の前にいる女性目掛けて振り下ろす。



「『剛斬(ごうざん)』ッ!」

「『()(なが)し』…!『連撃(れんげき)』ッ!」



凄まじい勢いで振り下ろされるカバルの剛斬を、直剣と盾を携えた女性が受け流し、空いた男の胴に連撃を打ち込み、距離を取る。


女性の名はインテグラル王国の騎士団長『アリシア=ガブリエール』、彼女がその手に持つのは元々扱っていたミスリル製の武具ではなく、リーオから譲り受けた宝剣『水晶剣(すいしょうけん)エルロード』と宝盾『晶盾(しょうじゅん)ケイロン』という普通なら国宝級とまで言われる剣と盾だ。


水晶剣エルロードは彼女の得意な光属性の魔法ととても相性がよく、使い方の中には剣の中で光魔法を発動させ、その効力を増幅することが出来るなど、本当に相性が良い。晶盾ケイロンも同じような特性を持っている。


一撃を受け流し、数発攻撃を入れてもなおダメージの入った様子のないカバルに、盾を持つ右手に痺れを覚えるアリシアが口を開く。



「……全く堪えてないね…。」

「…『洗練(せんれん)された肉体(にくたい)』、ある程度までのダメージなら無効化できるスキルだ。」

「ズルいよね、そのスキル。」

「アリシア、お前の『心眼(しんがん)((けん))』よりはマシだ。なんだその先読みスキル!」

「これも修練の結果だよ。早くカバル君も『心眼』くらい覚えてよね?」

「……出来たらやってるっつう…のッ!」



スキル『集中(しゅうちゅう)』によりグンッと加速したカバルがジ=オを地面に引き摺りながら振り上げる。それに動じることのないアリシアはその攻撃を受け流し、今度は『連撃』ではなくアリシアの称号にもある攻撃スペル『閃咬(せんこう)』をカバルの身体に打ち込む。



「…!ハァッ!!」



この『閃咬』は、光魔法にある『閃光(フラッシュ)』ではなくアリシアの父親『ロイド=ガブリエール』が創り出したスキル『受け流し』を持つものだけが使える攻撃スペル。『閃咬』は相手の攻撃を受け流した直後に不意を突く、目にも止まらないほどの閃光にも似た一撃を撃ち込むスペルだ。


普通の人間ならこれを喰らった瞬間に決着がついてしまうほどだ。。

しかし、このカバルという男はそんなことにはならない。放たれたアリシアの眼にも止まらないほどの閃光を軽々とその身体で受け止め、ニヤッと口角を上げる



「……『閃咬』の使用は止めた方がいいって言ったよぉ…なぁッ!!?」



わざと身体を、剣を振り抜いたままの状態で保ち、何とか構えたアリシアの盾を弾き飛ばすようにジ=オを全力で振り下ろす。カバルの思惑に気付いたアリシアが盾を引き、その場から距離を取る。

その直後、目標を失った全力の一撃が地面に叩きつけられ、まるで天変地異が引き起ったかのような地鳴りと共にその地面を破壊される。


____閃咬を使用上で一番大切なのは『相手の不意を突く』ということ。

つまり、あらかじめ閃咬が来ることを予測し、攻撃が来る方向さえわかればただの威力の低いカウンターにしかならない。


閃咬の欠点とすればこの二つ。相手に予測されてしまえば使えない、速度を重視した技であるため威力が他の攻撃より低い、という二点が挙げられる。


その為方向、タイミングを把握したカバルが何の防御もなく喰らったとしてもあまりダメージは与えられなかったのだ。



「ッ!!…やっぱりカバル君は一筋縄ではいかないよね…ハァッ!!」



カバルの剛撃を避けたアリシアが、瞬時に身体を翻し、『剣術(柔)』の特性である柔軟さを最大限に使ったカウンターを仕掛けてくる。それに、瞬時に反応したカバルが地面にめり込んだジ=オを軸に身体を反転させ、繰り出されたカウンターを避ける。しかし、完全には避け切れず脇腹を少し掠める。



「つッ!その反撃は予想してなかったぞっ!」



そう叫びながらめり込んだジ=オを、地面を割くようにしながら上に振り上げる。それを避けたアリシアが無防備になった胴に全力の突きを撃ち込む。


しかし、カバルはそれにひるむことなく、振り上げたジ=オをそのまま振り下ろす。



「ッ!?」

「……俺を甘く見るんじゃねぇよ…!」

「……ほんと、一筋縄ではいかないなぁ…。」



…それから数時間、カバルとアリシアの一進一退の攻防は太陽が朱に染まるまで続いた。



一方、カバルたちと同じくリーオから譲り受けたものを使いこなす為に一人修練を積んでいるウェントは、自らの剣に悩んでいた。


城から少し離れた林の中、そこに置かれた自分の身の丈以上もある岩石に向かって、ウェントが鉄剣での連続攻撃を放つ。



「____ハァッ!セリャッ!!ハァァァーーーッ!!」



攻撃を受けた岩石は受けた斬撃の数に割れ、地面に転がった。


“才能の剣”とも呼ばれるウェントの『剣術(才)』はカバルの『剣術(剛)』やアリシアの『剣術(柔)』のように、誰もが知る技や剣の扱い方が伝わっているスキルではない。


ユニークスキル、スペルというのは単純に珍しいもの、というだけではなく詳細が判明していないことが多い。実を言えば、現在世界中に存在しているユニークスキル、スペル保有者はその使い方などを誰かから習うわけではなく、自ら答えを見つけているのが多いそうだ。


シェランの持つユニークスキル『創造魔法(そうぞうまほう)』の『言葉がそのまま魔法に変換される』という能力はシェランが自ら創り出したもので、文献などに載っている創造魔法は『自らが思い浮かべるものをそのまま魔法に変換する』という能力らしい。


そして、最も重要なことがもう一つ。ウェントの持つユニークスキル『剣術(才)』は世界中にあるどの文献にも『稀代の剣士が持っていたとされる自らの才能で剣を振るうユニークスキル。しかし、これを所有していても使いこなせるものはいないと言われている。』としか書かれていない。即ち、スキルの詳細が一切判明していないのだ。


だからこそ、ウェントは悩んでいた。自らの剣に、太刀筋に、力の使い方に。



「……駄目だ。こんなんじゃ、あの人から貰った『物』を使う資格はない…!」



苛立たし気に右手に持った鉄剣を地面に叩きつける。そのまま傷だらけの右手を握りしめ、近くに生えていた木の幹を殴りつける。拳に走る鈍い痛みを感じながら、熱くなりすぎた頭を冷やす。


偏っていた感情を解き、滞っていた思考を元に戻す。

せわしなく動く心臓を落ち着かせるために、大きく、一つ深呼吸…



「…いたた…ハァ、またやっちゃったなぁ…。」



木を殴りつけた右手を擦りながら、地面に叩きつけた鉄剣を拾い上げる。それをそのまま鞘に仕舞い、近くの切り株に立て掛けておいたリーオからの贈り物を手に取る。



「……リーオさんは、何を思って僕にこれを預けたんだろう…?」



ウェントは、両の手にそれぞれ握る色違いの二振りの剣を見つめ、小さく呟く。


右手に持つのは紅く幅の大きいブロードソードのような『シュナイド』という名の魔剣。伝承には『過去に魔剣士が使っていたとされる魔剣、その紅い刃は今まで斬ってきた数多の人間の血で染まった』ということらしい。詳細な能力は判明していない。

左手に握るのは金色に輝く聖剣『リッヒテン』だ。これは城の図書館にあった本にも載っていた。そこに書いてあった伝承は『過去に聖騎士が持っていたとされる聖剣、その金色の細刃には妖精からの祝福が込められている』、能力は『魔法切断(まほうせつだん)』、魔法を切り裂くことが出来る対魔法戦用の剣らしい。


しかしウェントはこの二本を実戦で一度も振るったこともないし、振るう機会も今後ないかもしれない。


そんなことを思いながら、左手に持った『リッヒテン』を背中の鞘に仕舞い、放り投げた鉄剣を拾い上げ、腰の鞘に仕舞う。右手に持った『シュナイド』を、そのまま眼前にある先ほど切り裂いた岩とは別の大岩に向けてしっかりと正面に構える。



「……フー…。」



初めて扱う剣に緊張で高鳴る胸を、息をゆっくりと吐きながら落ち着かせる。


……そして、この剣を持ってようやく、ウェントは気付いた。


……『重い』。まるで幾人もの死体が剣を持っている右腕に折り重なったような、そんな感覚すら覚える。これは、ただ単純に剣の重量のことではなく、流れ込んでくる魔力を表現するのに最適な言葉が重い、だったのだ。



「……なんて禍々しい魔力なんだ…?こんなのを野放しにしてたらこの辺り一帯が屍の跋扈する魔窟に変わってしまうような気すら覚える…こんなものをリーオさんは…あんな簡単に…。」



見た目は紅い少し変わった形のブロードソードという感じだが、鞘から抜いた瞬間の寒気というか悪寒に近い感覚。背中を冷たい針のようなものが突き抜けていくような、そんな感覚。


これだけのものをあんな簡単に扱えるなんて…



「……やっぱすごいなぁ、リーオさんは……さて、取り敢えず振ってみるか…ッ!!」



剣を下に構えて全身に力を収束させ、一歩で相手の懐に入り込むリーオさんに習った身体の使い方で大岩まで一瞬で移動する。そして、そのまま前に行こうとする慣性の力を下に構えた剣に伝え、威力を増加させた一撃を放つ。



「…ハァッ!!」



…大岩を切り裂いた瞬間、ボクの手を身の毛もよだつような感覚が襲った。全く何かに遮られた感覚がなかった。普通なら、何かを斬るときはその斬った物による抵抗があるはずだ。しかしそれがなんの抵抗もなく、まるで空気を斬るような滑らかさで目の前の大岩を両断した。



「……何だこれ…!?大岩を、まるで空気を斬るみたいに…!?」



…これは、ボクのような人間が使ってはいけないものだ。ボクでは、使いこなせるわけがない…!


右手に握りしめたシュナイドを背中の鞘に仕舞って、腰の鞘に差してある傷だらけの鉄剣を抜いて、天に掲げる。木々の間から差す夕陽が、掲げられた鉄剣の傷に影を作る。


この鉄剣は勇者候補として王国の端にあった故郷の村から見いだされ、王都に招かれた際に餞別として国王陛下から頂いたものだ。



「……まだだ…もっともっと、頑張らなくちゃ…ボクに出来ることは、これしかないんだ…!」



その言葉の後誰の目も届かないであろうこの場所で、ウェントは夜が更け、身体がガタガタになるまで修練に勤しんだ。


……疲れ切ったウェントが焚火の前で持ってきた外套に包まって寝ているその後ろでたった一人ウェントの姿を直ぐ上から見ていた人影があった。


少女の名は『リアナ=インテグラル』、国王であるマティス四世の一人娘で、この王国の姫だ。

リアナ姫はウェントと同い年で、偶に時間が合った時にはお茶を共にしたりと案外仲が良いらしい。


そんな彼女は、偶にこうやってウェントの修練の様子を自分の部屋から見下ろしている。



「……ウェント君、また無理を…あんなにボロボロになって、それでもまだ頑張ってる…。一体、あんなにウェント君を突き動かしているリーオさんって、何者なの?」



リアナは不思議だった。何故あの時見た普通の旅人の職業を見通せなかったのか。そして何故普通の旅人があんな魔剣を所持していたのか。リーオ=クシィ…いったい何者なんだろう?


リアナが一人窓の縁に腰を下ろして考え込んでいると、部屋のドアを開けて誰かが入ってきた。



「…姫様?もう御就寝なさらないと明日に障ってしまいますよ?」



聞きなれたその声に、リアナはぶっきら棒に返した。若干気が立っているようだ。



「何よ。私がいつ寝ようと、シエルには関係ないでしょ?」



ぶっきら棒に返されたシエルは、少し困ったように笑いリアナのすぐ横に腰を下ろした。そして、少し気が立っているリアナを落ち着かせるような声で、リアナに問いかけた。



「…どうしたんですか?リアナ様らしくありませんよ?」

「……少し、考え事してたの…。」

「…何かお悩みですか?」

「違うの…前にこの国に来たリーオっていう勇者候補のことを…少し…。」

「……リーオさん、ですか…。」



リーオ、その名を聞いた途端シエルの心臓が一際大きく鼓動した。自然と頬が緩んでしまうのを感じる。彼は、幼いころのシエルの命を救ってくれた恩人でもあり、今ではシエルの大切な人となっている。シエルは彼に貰った首飾りを小さく握りしめながら、リアナの言葉に耳を傾ける。



「……私は、彼のことが怖いの…。」

「…怖い、ですか?」

「…うん…。」

「それは…何故?」

「……リーオさんのことを初めて見たとき…私は…今まで感じたことのないような重圧感というか、その…圧し潰されるように感じたの…。」

「……。」



圧し潰されるような感覚。それは私も感じたことがあると、シエルは一人自分の記憶をたどる。


思い出された風景は、リーオと2年ぶりの再会を果たした時だった。何かとても大きなものに踏み潰されるような、そんな重圧感。でも、今ではそんなことを思い出すだけでも胸が温かくなる。そしてその度に、彼が自分の中でどれだけ大きな存在なのかを再確認する。



「…私も、感じたことありますよ。」

「そうなの?」

「はい…彼と、再会した時に…でも、その時はそれ以上に…。」

「えっ…ちょっと待って!」

「え、はい…?」

「アナタって以前にリーオさんと会ってたの!?」

「え…はい、リーオさんは私の命の恩人ですよ?」

「は…初耳だったんだけど…。」



こんなに驚くことだろうか?まぁ、確かに自分が告げられた側なら多少の混乱がないこともない…かな?



「…そうですね。誰かにこのことを言うのは、リアナ様が初めてです。」

「……ねぇ、シエル。」

「何ですか?」

「…私に、リーオさんのこと…教えてくれない?」

「!……いいですよ。でも、私も知っていることはあまり多くありませんよ?」

「いいのよ。今は少しでも、彼のことを知りたいから。」

「……分かりました。では、そうですね…私とリーオさんの馴れ初めから、お話ししましょうか。」




次回は出来れば9月中に...

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