【黒揚羽の力。勇者候補の腐敗】
最近、ようやくofficeソフトを入れられたので、更新も早くなるかもしれません。
まだまだ文章力もない若輩者ですが、これからも見ていただけると嬉しいです。
今回は、黒揚羽を使った戦いというか、それがメインになります。それと、これから物語がややこしいというか、めんどくさくなるので、その辺はご了承ください。
野営の準備も終え、夜も深まり新月の暗闇が周囲を満たした時、リィムの町を襲撃する用意が完了した。
突入する前に、遠方支援のシェラン達に魔法を掛けておく。掛けた魔法は『共感』と『通信』の二つ。『共感』は一方が見たもの、まぁ、簡単に言えば視界や聴覚を共通できるというもの。もう一つ『通信』は近くに居なくても会話ができる便利魔法だ。
この二つを掛け、シェラン達と別れる。今回俺は単独での特攻となる。事前に敵の数と位置は把握している。敵の配置は町の周囲を囲むように2人組の敵が4、これで計八人。
次が町の中央付近で陣取っている敵が6人、これで計十四人。
最後が町のシンボルともなっている冒険者の宿『片翼の鳳凰亭』の周囲に4人と中に5人。
この計二十三人が今回の殺戮対象だ。鳳凰亭の中には俺の見知った魔力の反応が数個ある。恐らくこれが人質になっている町人だろう。早く助けないと。
突入する前に自分の身体には『隠蔽』と『影』、『遮断』と『加速』という四つの魔法を、黒揚羽には『必殺』と『消音』の二つを掛けておく。
よし、これで襲撃の準備は整った。よし、行こう。
夜闇に紛れて、行動を開始する。まずは見張りの8人を早々に片付けないとな。
この町に来て数日、新月になったのは初めてだ。月のない暗闇が周囲を満たす静けさとともに、少し心細くさせてくれる。あまり好きではない。
「...なぁ、知ってるか?」
「なんだよ...。」
いつも組んでいる仲間が、薄ら笑いを浮かべながら、こんなことを言ってきた。
「...この辺りの伝承なんだが、こういう夜にはさ、赤い目の怪物が出るって話よ。」
「......やめてくれよ...ただでさえ怖い夜なんだ。そこへさらに背筋が寒くなるような話をするんじゃねぇよ...。」
なんだよ...さっきの話のせいで本当に寒くなってきたじゃねぇか...うわぁ...コワァ...。
「....なぁ、そろそろ時間だろ?帰ろうぜ...?」
「なんだぁ?怖くなったのかぁ?なさけないy」
キンッという音が耳に届くと同時に、目の前に居た仲間の頭が弾け飛ぶ。顎の下から頭のてっぺんまでまるで何かが突き抜けたかのように、仲間だったものの鮮血が噴水のように舞い上がり、俺の体を真っ赤に染める。
「......なんだ、これ?ははは...夢でも見てるのか...?...くくっ...あはははははははははっ!」
目の前に広がる地獄のような光景に、自分の中の何かが壊れたのが分かった。目に映るものが愉快で愉快で仕方がない。今目の前で起きている鮮血の噴水も、見ているだけで笑いが止まらない。
「あはははははははははははははははははははははは!!」
......大丈夫か此奴。さっきから笑いすぎだぞ?頭狂ったか、まぁ、しょうがないな。この状況で狂わないほうが頭おかしいぜ。
だが、此奴の笑い声もそろそろ不愉快だな。イライラしてきた。さっさと始末するか。
笑い続ける男に銃口を向け眉間にゆっくりと照準を合わせる。そのまま引き金を引き、男の頭をぶち抜く。虚空が開いた額から湧き水のように血が溢れ出る。
男は、未だに『あははは』と笑いながら静かに息を引き取った。
「......さて、残りの敵もさっさと処理するか。」
再び夜闇に紛れ、町の外周に居る敵を静かに排除していく。絶対に中に居る奴らに気付かれてはいけない。余計な殺生はしたくない。まぁ、中に居る奴らも例外なく全員一人残らず殺すがな。
最後の一人を撃ち殺し、建物や街灯の影に紛れて町の中へ入る。町の中を見渡すと、装備を着た人間の死体がまるでモズの早贄のように、地面に突き立った棒に突き刺さっていた。
「......あれは、門番だった町の人、か...。」
激しい憤りと、苛立ちを感じながら敵の位置を改めて探る。町の中を警戒するように歩く敵の頭をぶち抜きながら、片翼の鳳凰亭へ向かっていく。
敵から見えない場所に位置取り、『影』と『不可視』を自分に掛け、物陰から覗き見る。鳳凰亭の前には門番の役割であろう敵が数人いた。
まずはあそこにいる門番を撃つとするか。
「...『加速』『不可視』『必殺』『貫通』『消音』...行けるかアゲハ?」
《大丈夫、気にせず撃ち込んで。》
5つの魔法を弾丸に込め、少し遠くにいる門番的な奴に照準を合わせる。あそこにいるのは3...いや4人か。まぁ、射程範囲内だな。左腕に銃身を乗せた精密な射撃で4人が一直線上に重なった瞬間、引き金を引く。撃ち出された弾丸は直線を描きながら飛んでいき、綺麗に並んだ敵の脳天を撃ち抜く。
頭を撃ち抜かれた4人はまるでドミノ倒しのように前から順序良く倒れていく。
「......ふぅ...さて、あと何人だ?」
《今は外の八人と、さっきの四人を殺したから...。》
「あと11人か。もうすぐだな。」
アゲハと他愛ない会話をしながら静かに引き金を引いていく。撃ち抜いた敵の頭がまるでスイカを銃弾でぶち抜いたようにはじけ飛ぶ様を視界の端で捉えながら、片翼の鳳凰亭目指して進んでいく。
ここら辺で魔力感知を使って周囲の敵の数を把握する。今この町にいる敵は八人。鳳凰邸内に5人、周囲に3人、あっと今一人死んだな。
シェランの援護射撃で今俺の斜め上に居た敵の頭と心臓が魔力の矢で撃ち抜かれた。しかし、よく当てられるな、月も出てないってのに...あぁ、そういえばアイツ『鷹の目』持ちだったな。それと鷹の眼も持ってたっけか。そりゃあ、あれくらいの距離当てられるに決まってる。
「...助かった。」
『もう、油断しないでね?』
耳元に展開してある小さな魔法陣からシェランの声が聞こえる。やはり、『通信』の魔法は便利だな。消費魔力も少ないし、何より楽だ。こんな魔法を開発したシェランには頭が上がらないな。
さて、ちょっと考え事をしている内に外の敵も全員片付いた。とうとう、宿の中に居る敵を殺す時が来たな。魔力感知で見た感じ、中の奴らは結構上手らしい。ユニークスキル持ちも3人か。内一人は弱いが加護持ちだな。すなわち勇者候補ってわけだ。
......此奴は殺さずに手足を切り落として森ン中に捨ててくるか。殺すなんて、そんな生易しいことしてやるわけにはいかない。徹底的に壊してやらないと。
「...アゲハ、『必殺』『消音』『不可視』...殺しに行くぞ。」
《...了解ご主人、ボクも全力でサポートするよ。》
三つの魔法陣を展開しながら宿に突入する。扉を蹴破った瞬間、目の前に居た数人の頭を撃ち抜き、横に居た奴の首を振り向き様に抜いた短剣で切断する。
「な、なんだ貴様は!?」
「お前等っ!何してる、早く殺せっ!」
周りに居た奴らが、声を上げながらそれぞれ行動を起こす。あるものは武器を振り上げ、あるものは魔法の詠唱を唱え始める。中には宿の中に居た人間を人質に取ろうとする者までいた。
先ほど切り落とした奴の頭を、迫ってくる敵に向かってボールのように蹴り飛ばし、人質を取ろうとする奴に身体が塵になるくらいの魔弾を叩き込みながら、出来る限りの大声で叫ぶ。
「_____リーンッ!助けに来たぞぉッ!!」
俺の声に、カウンターの向こう側で小さな少女『リン=ユードリック』の声が答える。
「____リ、リーオ君っ!!」
...聞こえたっ!聞こえた声を頼りに、周囲の敵を撃ち倒しながら向かう。その最中、敵の中で一番まともな装備を着ている少女が、犬のように吠えてくる。
「キサマァッ!勇者候補である私の邪魔をするなど...万死に値するッ!!」
勇者候補...?あぁ、あの噂は本当だったのか...まぁ、大体は分かっていたが...改めて、今の勇者候補が腐りきったものだと理解した。もう、容赦もしてられないな。
「...勇者候補...そうか、分かった。」
周囲から飛んでくる魔法を躱しながら、吠える勇者候補の丁度頬を掠めるように何も込めない魔弾を撃つ。真っ直ぐ直線を描きながら飛んでいく魔弾が狙い通り、勇者候補の頬を掠めて消える。
いきなりの攻撃で反応できず、頬から血を流す少女が怒りを露わにする。
「_____ッ!!ウァァァァァァァァァァッ!!」
吠えると同時に展開された極大の魔法陣。それに続いて少女が詠唱を開始する。
「天に輝く無限の星々、空を割く青い彗星、雲から降り注ぐ無数の雨に濡れる……」
あの詠唱と、魔法陣…確か、ちょっと前に読んだ『魔法大辞典』に書いてあった気が……あぁ、そうだ。確かあれは『降り注ぐ光槍』、雨の如き勢いで無数の光の槍が降り注ぐ攻撃魔法の奥義だ。
発動されればこの町自体がなくなる可能性があるほど強力なものだ。アレを発動されるのは非常にマズい。まぁ、それは俺がいなかったらの話だがな。
「……千の槍、光と共に我が敵を打ちのめせッ!!」
「………。」」
銃身を展開されていく魔法陣に向け、こちらも小さな魔法陣を一つ展開し、段々と大きくなっていく的に向けて静かに引き金を引く。
展開した魔法陣は、『破滅』。この魔法は普通の人間や生物に向けて撃っても特にこれといった効果はない。しかし、魔法を使っている者や、発動される魔法に向けて撃てば、その魔法を『破滅』させることが出来る。所謂『魔殺しの魔弾』なのだ。
勇者候補が展開する今にも発動寸前と言えるほど、大きく、脈動し始める魔法陣の中心に俺が放った黒い光を放つ魔弾がぶち当たる。その瞬間、展開された魔法陣全てに亀裂が入り、粉々に砕け散った。
綺麗な光の粒子となった魔法陣の欠片が、鳳凰亭内に降り注ぐ。その様子を、全ての魔力を使い果たしその場に座り込むしかできない勇者候補が、虚ろな目で見つめる。
勇者候補以外の敵は全て頭が無いか、胸に大きな風穴が空いている。即ち、生きている者は誰もない。
「......。」
絶望したように宙を見つめている勇者候補に、黒揚羽の銃口を突き付ける。すると、弱弱しい声で命乞いの言葉を吐いてきた。
「...お、ねがいします...ころさないで、ください...!」
「......。」
......なんだ此奴?町の中に、まるで見せしめみたいに死体を飾ったりしていたくせに......
自分の命が危なくなれば命乞い...?町の中に飾られてた死体もみんな、みんな今の此奴みたいに命乞いをしたはずだ。なのに、此奴らはそれを無視した...。
引き金に掛ける指に力が入る。何でこんな奴がのうのうと生きていて、普通に暮らしていた人たちが辛い思いをしなきゃならないんだ...!?
段々と、心の中がどす黒い『憎しみ』の感情で染まっていく。心の中が、憎しみの黒で染まり切った時、頭の中にこんな言葉が思い浮かんだ。
『...鳴呼、やはり勇者候補など、いないほうがいい』
その考えに至った瞬間、頭の中がある一つ衝動に塗りつぶされる。それは、目の前のもの全てを壊したいという強い『破壊衝動』。
その衝動に突き動かされるまま、目の前で座り込む勇者候補に突き付けている黒揚羽の銃口に紅い『破壊』の魔法陣を幾重にも展開させる。
真紅に輝く魔法陣で照らされた勇者候補の大きく見開かれた目から大粒の涙が溢れ出す。そして、壊れたラジオのように『助けて』という言葉を、失禁しながら何度もリピートし続ける。
耳元で『やめろ』と叫ぶシェランの声がするが、全く聞こえていない。というか、声がしていることすら認識していない。今のリーオを支配しているのは、黒一色の強い『破壊衝動』だけ。それ以外の感情は一切存在していない。
リーオの指が、黒揚羽の引き金に掛かる。勇者候補の顔がさらに恐怖の色に染まり、『助けて』『ごめんなさい』という言葉のリピートが早く、そして大きくなる。
リーオはそんなこと全く気にしていない。というか、何も感じていない。今の彼はただの殺戮マシーンでしかなく、『破壊』というもの以外の他一切の感情が存在していない。
ゆっくりと、まるで死刑執行のカウントダウンのようにゆっくりとトリガーが引かれていく。指が後数ミリのところまで来た時、精霊石の中から伸びた小さく白い手が、リーオの指を止めた。
《...ご主人、これ以上はダメだ...戻れなく、なっちゃうよ...?》
その小さな瞳から大粒の涙を流しながら指を掴む少女の小さな願いが、リーオの心を支配していた強い『破壊衝動』を引き留めた。
ハッとした様子で『破壊衝動』から目覚めたリーオは、展開していた魔法陣を消して、目の前で『助けて』というだけの機械になっている勇者候補の少女に『睡眠』の魔法を掛け、眠ったところを、周囲の人に託す。
そして、自分を取り戻させてくれたアゲハに礼を言った。
「......悪かった、アゲハ。止めてくれて、ありがとな...。」
《...別に、当然のことをしたまでだよ...でも、戻ってきてくれて、良かった...。」
二人が安堵していると、突然耳元に爆音が響き渡る。それは、先ほどから無視され続けたシェランの怒鳴り声だった。
『リーーーーーオーーーーーーッ!!!』
「ッ!!?シェ、シェラン!?ど、どうした!?」
いきなりの爆音で耳がキーンとなる中、シェランから先ほど自分がどうなっていたかを聞かされるリーオの顔が白く染まっていく。
自分が暴走していたこと、そして目の前で寝ている少女を殺そうと...いや『破壊』しようとしていたこと。
そこで改めて、自分が自分で無くなってきていると再確認した。
......『破壊衝動』...確か、前に竜化した時も同じように強い何かに囚われていたとグランから聞いた。まさか今度も、その何かに囚われていたのか?...これは、本格的に急ぐ必要があるな。
.....俺が、俺でいられる内に...。
次回は6月5日までに投稿します。
次回もお楽しみに。




