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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第三章:無限の器、竜を廻る。
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【久々の復帰。リィムの町の危機】

ゴールデンウィーク連続投稿第第三回


今回から、リーオの職業が変わります。

サバナの森を抜け、空間での瞬間移動をした俺たちは日が暮れないうちに何とかテルビューチェ公国の領地内にある街に到着することが出来た。




たどり着いた町の名は『マクノの街』という、様々な物を扱う貿易の街だ。ここは昔来たことがあるから、店などの位置は把握している。




今回は早めに宿を取らないといけないな。これからの旅は、俺だけの旅ではないし、な。




「今日の宿は何処にするの?」


「ん?そうだな...その前に、何か被っておけ。『人間』の街でエルフは目立ちすぎる。




周囲から寄せられる視線に気付き、シェランに忠告しておく。ここだからというわけではない。このテルビューチェ公国自体が、他種族に対して敏感なのだ。中には、人間以外の種族を迫害する町や村まであるという。それに比べれば、ここは比較的マシと言えるだろう。




「...そうだね。フードでも被っておくよ。」




フード付きのマントを羽織ったシェランの手を掴んで、なるべく人目につかない場所へ移動する。やはり、この国は居心地が悪い。他種族を迫害するなんて、一体何を考えているのか...。




「...で?宿は何処にするの?


「...そうだな、今日はあそこにするか。」


「あそこ?」




そうと決まれば、行動あるのみだ。さっさとあの『宿』に向かうか。




俺達が今から向かうのは、普通の宿屋じゃない。荒事から失せもの探しまで様々な依頼を取り扱う世界でも代表的な職業『冒険者』、その冒険者が寝泊まりや食事、さらにはそこで仕事を受ける宿屋『冒険者の宿』だ。




裏路地を通って出来るだけ人目に付かないような店を選んで中に入る。見た目は随分新し目だが、こんなところに宿を建てるような変わった奴もいるもんだなぁ...。




真新しい木製のドアを開けると、思った通り綺麗に整頓された真新しい内装をした店内が目の前に広がった。ドアを開けて入ってきた俺たちに、カウンターに座っていた男が話しかけてくる。恐らくここの店主だろう。




「お、いらっしゃい。お客?それとも、冒険者登録かな?」


「取り敢えず宿泊だ。一泊できる部屋はあるか?」


「あるよ。お二人さん?名前は?」


「... シオー=リィクとレーシェ=ヒューランだ。」


「はいはいっと...これ、部屋の鍵ね。」


「あぁ...。」


「じゃ、良い夢を~。」




店主から鍵を受け取り、鍵に書かれた番号の部屋の前までいく。中に入ると、結構広めの部屋だった。これなら二人で寝ても問題ないな。


と、心の中で考えながら荷物を空間から出す。一応日用品の部類は買い揃えておいたが、足りなかったらこの街で補充するのもいいな。店の位置も把握しているから楽だし。




俺が色々試案していると、ベッドに腰かけたシェランがボーっとした様子で問いかけてきた。




「...ねぇ、リーオ...。」


「ん?なんだ?」


「さっきの偽名を使うのは良いとして、なんでこんな人目につかないようなところの宿を取ったの?もっと大通りのでも良かったと思うんだけど...?」


「あぁ、それか。まぁ、簡単に言ってしまえば、大通に面した宿はそこに所属した冒険者が多いだろ?そこで仕事すんのは気が引ける。それに...」


「それに?」


「...『龍』等級の冒険者がこんなところにいるなんて知れたらマズいだろ?それは古くからある宿ほど情報網が広い。逆に新しくできた宿は情報網が狭い。さっき、俺の名前を聞いても反応がなかったってのは、俺達のことを知らないってことさ。凄く有り難いがな。」


「...まぁ龍等級の、それも両方が珍しい神々の戦争時代に作られた魔導兵器を使っているなんて、目立ちすぎるからね...いい意味でも、悪い意味でも...。」


「...そうだな...。」




少し、解説を入れよう。




冒険者のグレード、ランクには6段階の等級がある。


まず、冒険者になって最初に与えられる等級は『石英』、この等級のうちは簡単な依頼、基本的には失せもの探しや、薬草の採集などが任される。与えられる称号は『無名の冒険者』




二番目の等級は『銅』、この等級になれば簡単な討伐依頼が任されるようになる。代表的なものではソロはゴブリン、パーティはボガードなどの討伐だ。称号は『銅等級の冒険者』




三番目の等級は『銀』、この等級になれば一人前の冒険者になったと認められる。所属している宿にも信頼されるようになる。称号は『一人前の冒険者』や『銀等級の冒険者』




四番目の等級は『金』、この等級になれば重要な依頼を任されるようになる。所属している宿だけではなく、他の宿でも依頼を受けられるようにもなる。称号は『金等級の冒険者』




五番目の等級は『白金』、この等級は今現在で最高の等級である。この等級になれば、宿に所属していなくても何処の宿からも依頼が受けられるようになる。しかし、白金等級の冒険者は全世界でも二桁の数しかいない。称号は『白金等級の冒険者』『世界の冒険者』




最後の6番目、この等級を持つものは世界でもたった5人しかいない。その等級は『龍』、この世界上で最強の生物である竜種に匹敵する力を備えていると言われる等級。世界に現存する龍等級の冒険者は五人、種族で言えば人間が二人、エルフが一人、ドワーフが二人の計5人。




実力的には竜に匹敵するほどの力を持ったものしかこの等級は与えられない。基本的には竜と契約を交わしているのが最低条件に挙げられる。龍等級の中でも俺は割と最近なったからか、この等級がどんな意味を持っているのか分からない。




しかし、この等級は持っているだけでこの世界にあるどこの宿でも依頼を受けることができるから、割と重宝している。しかし、流石に神剣を携えたまま冒険者になるのは色々無理があるので、俺は冒険者用装備と、旅人用の装備と分けている。




旅人用の装備にはヴァール、そして冒険者用の装備にはこの『黒揚羽』を使うようにしている。


まぁ、ヴァールはどんな装備の時でも外す事はしないがな。神剣の特性でヴァールを小さく、短剣サイズまで縮小して腰に差している。


一応、あらゆる武器の使い方は粗方習っている。使うのに苦労する、なんてのはないだろう。




「...さて、明日の為に装備を整えて、寝るか。」


「......そうだね...私も、久しぶりに沢山歩いたから...ねむい...。」




ベッドの上でフラフラしながら話していたシェランが、言い終えると同時に導かれるようにベッドへ倒れ落ちた。疲れていたのであろう、直ぐに静かな寝息を立て始めた。




「...すぅ...すぅ...すぅ...」


「......此奴にとっては久々の旅だ。それは疲れるだろうな。」


”そうですね...リーオさんも早く寝て下さいね?明日も早いんですから。”


「いや、どんな状況でも武具の手入れを絶やすことは出来ない。」




そう言って空間の中から様々な武具を取り出し、手入れを始める。特に今回から使う黒揚羽はしっかり手入れしとかないと、肝心な時にジャムったら目も当てられなくなってしまう。




少しでも殺せる確立を上げるために、小まめな武具の手入れは欠かせないのだ。




この日は、武具の手入れをしながらシェランの寝顔を眺めたりして、夜が更けていった...。






次に朝、日が昇ると同時に行動を始めた俺は、シェランが起きる前に朝食の準備を終え、装備を変えておいた。久しぶりの冒険者用の装備、右太腿のホルスターに収まった黒揚羽の重量を感じて、改めて自分が冒険者に復帰したのだと強く感じた。




「......どうだ、ヴァール...ちゃんと冒険者に見えるか?」


”はい、大丈夫です。カッコイイですよ。”


「...そうか。よし、今日も頑張るか。」




その後、起きてきたシェランに無理やり朝食を食べさせ、色々準備をさせてから宿を出る。


早い時間だったのもあってか、町は未だ人々の喧騒もなく、静かな、ゆっくりとした時間が流れていた。




「...いい朝だね...。」


「そうだな、出発にはいい朝だ。」


”これから何処に向かうんですか?”


「あぁ、ちょっとな。馴染みの宿に顔を出しておこうかと思って...。」


「馴染みの?前に所属してたとこ?」


「あぁ、ここから少し先の町にあるんだ。」




歩き出しながら会話を続ける。街を抜け、中枢の『都市ルータム』まで通ずる道を進んでいくうちに、太陽も上がり始めてきたようだ。賑やかな鳥達の声や動物たちの会話を聞きながら、青々と晴れた空の下を、ゆっくり進んでいく。




これから向かう町の名前は『リィムの町』、俺が初めて冒険者登録をした町だ。戦闘しかできなかったあの頃の俺を、今の俺に至るまで教育してくれた町だ。




「なんだか、嬉しそうだね?」


「...まぁ、そうだな...。」




俺にしては珍しく、結構思い入れのある場所だ。そこに久々に行くというのもあって、柄にもなく少しワクワクしてしまっているかもしれない。




「...ちょっと、珍しいね。リーオがそんな風にそわそわしてるのって。」


「...そう、かもなぁ...。」




昔の、あの頃の幼い自分を思い出しながらしみじみと呟く。あの時の店主には、随分世話になったな。ちょっと、懐かしいぜ...。なんて考えていると、向かいから来る二人の通行人の会話が耳に入ってきた。




「...なぁ、あの噂本当か?」


「あぁ、あの盗賊ギルドの奴らが、町一個丸々占拠してるって話だろ?本当らしいぜ。なんでもリィムの町ってトコらしいけど、確実性もないから国も対処してないらしいってさ。」


「物騒だなぁ...。」


「なぁ。」




トコトコと歩いていく二人の姿を目の端で追いながら、少し混乱した頭を整理する。リィムの町が占拠?盗賊ギルド?国が対処していない?




「......。」


「...リ、リーオ?」


”リ、リーオさん?」


「____急ぐぞ。」


「はぁ!?ちょっとっ!」


”ま、待ってくださいっ!”




二人の制止する声を無視し縮地で道を一気に駆け抜ける。こんなところでノコノコ歩いている場合じゃない。もしもほんの寸でのところで間に合わなかったら目も当てられない。




ここからリィムの町までは縮地を使えば半日もかからずに到着できる。




早く、早くしないと...っ!




ガシッ




「____待ってってッ!」




もう一段、スピードを上げようと身体に力を込めたとき、追いついてきたシェランに肩を掴まれる。あそこから追いついてきたのか、流石と言えるな。




「...離せ、早くしないと...。」


「幾ら君が急いだとしても、状況は好転しないよ!今は落ち着いて。」


「......分かった...。」




俺としたことが、頭に血が上り過ぎた。少し落ち着こう。苦しいほど締め付けられる心臓を落ち着かせる。圧迫されたような胸の痛み、息苦しさに耐えながら、努めて平静を装う。




この胸の違和感は、恐らく前の暴走が原因だろう。今の俺はまともに竜力を使うことが出来ない。幾ら回路を治したとしても、中に何かが詰まっているかのように竜力が巡っていかない。




まぁ、今そんなことは重要なことじゃない。今は、情報が必要だ。少しでも詳しい状況が知りたい。中枢都市に行けば、多少の情報は手に入るだろう。




都市を迂回する道は止めだ。進路変更、目指すはテルビューチェ公国の中枢、『都市ルータム』、急ぐぞ。



次回は5月15日までに

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