【再び巡る旅路。まずはアイツのところだな】
ゴールデンウィーク連続投稿第二回
今回から、リーオ達の旅は新たな目標が増えます。
俺が暴走してから数日、ボロボロになった肉体も完全に回復し、そろそろ動き出そうかとなったのが昨日のこと。まずは迷惑をかけてしまったグラン・エータのところへ行くこととなった。
前と同じ道を通って行くのだが、恐らく俺の暴走が原因であろう穴や焼けた木々が見える。それが見える度に、とても申し訳ない気持ちになりながら先に進む。
「......なぁ、これって俺がやったんだよな...?」
「...まぁ、私3割リーオ7割くらい?」
「......7割...。」
”し、仕方ありませんよっ!あの時は全く意識がなかったわけで、やったのはリーオさんの中に居る竜なんですからっ!”
「......俺が、7割...。」
「そ、そうそう!私だって最初の時は暴走もしたし、こんなこと日常茶飯事だったよ!だから、そんなに思い詰めなくていいんだよ?」
「......俺が...なな...。」
励ましてくれる二人の声は全く聞こえない様子で「俺が...7割...。」と呟き続ける俺とそれを心配そうにしながらも励まし続ける二人のやり取りを続けながら、ボロボロになった森の中を進んでいく。
暫く進んでいき、周囲と比べそこだけ明らかに緑が生い茂っている場所に着く。そこでは待っていたと言わんばかりにこちらを凝視するグラン・エータの姿があった。
『......復活したか...お前なら大丈夫だろうと思っていたが、想定より随分と早かったな。』
「...すまないな、待たせてしまったようで。」
『...いや、むしろ時間を置いてもらえて感謝したいほどだ。』
「?どういうことだ?」
『...こういうことだ...フンッ!』
グランが竜力を放出すると同時に、俺の右の掌が熱くなる。何事かと思い急いで見てみると、いつの間にか橙色に光る結晶が填まった首飾りが握られていた。
「...これは?首飾りか...?」
『...それは『栄地の結晶』、私とお前の契約の証でもあり竜の暴走を抑える力を封じ込めてある。それを身に着けている限り、お前の身体が竜に乗っ取られることはない。』
「...へぇ、それは有り難い。そんなもの作れるって、やっぱり原初の7竜ってのは凄いな。」
よし、これで全ての属性が揃ったな。前と比べて全身に満ちる竜力が強くなった気がする。それに、一度竜化してから新しい力の使い方が分かった。少し修行すればシェランのように全身を竜化させることは出来なくても、一部なら竜化させることが出来るかもしれない。後で試してみるか。
『...さて、無限なる子よ。』
「...あぁ。」
居住まいを正し、再び圧し潰されそうなほどの威圧感を放ちだしたグランに応える。恐らく、これからことについてだろう。
『...これからお前は、この世界に生きる子たちの為に戦うつもりなのだろう?』
「......良く知ってるな?」
『...昔、お前のように自分ではない誰かのために戦い続けた者を、知っているからな。今のお前は、奴と同じ目をしている。』
「......へぇ?」
俺と同じ目的を持った奴、か...ちょっと気になるな。『昔』ってことは神々の戦争時代のことだろうし、どこかに記録でも残ってるかもしれないな。旅のついでに探してみるか。
『...お前は、また旅をするつもりだろう?その前に、我が大地の心得を教えてやろう。』
「...心得?」
『大地とは、この世全ての母でありもっとも偉大なものである。追い越したければ己の足元を見よ、そこに答えはある...分かったか?』
「分かるわけないだろ?」
何言ってんだこの老竜、意味わかんないこと言うなっての。みたいな感じで呟いた俺の言葉に、グランの目が鋭くなった。やはり老いたとしても原初の7竜と恐れられる竜だ。
普通の一般人だったら睨まれただけで失神するくらいの威圧が放たれてくる。
一触即発な雰囲気の俺たちのやり取りを見ていたシェランが慌てて止めに入る。
「ま、まぁまぁ...取り敢えず、次はどうするの、リーオ?」
「次?次は......修行の旅みたいなもんになるな。」
「修行って言うと、竜の力を制御するための?」
「あぁ、まずは火山を目指そう。『アイツ』に会いに行きたい。」
「火山...?何処の?」
「『イグニート火山』だ。急ぐぞ。」
「え、あ、ちょっと!?」
『...待て、無限なる子よ。』
「......なんだ?」
そう言って歩き出す俺をグランが引き止める。グランが口を開いた途端、圧倒されるような威圧感が放たれる。だが、それと同時に胸の紋様が熱くなるのを感じる。 しかし、暴走する感覚はない。先ほど貰った首飾りの御蔭だろう。グラン様様だな。
『...鍵は、そうか渡したのだな?』
「......『鍵』?何のことだ?」
『まぁ、いい。早く行け、お前たちの目指す場所へ。』
「......まぁ、いい...また来る。」
『...いずれ、な...』
......『鍵』?鍵って、いったい何のことだ?
最後にグランとのよくわからない会話を終え、森を突っ切っていく。
次の目的地『イグニート火山』があるのは、サバナの森から遥か北西に位置する大国『テルビューチェ公国』だ。今回はそこを目指して旅路を進んでいく。
ちなみに旅の準備はとっくに終わっている。グランのところへ行く前に荷物は纏めておいたからな。主にヴァールがやってくれたが...その辺はどうでもいい。
...そういえば、シェランの奴あの家はどうするつもりなんだ?一緒に旅に出るならあの家にはそうそう帰れないし、維持をするにも無駄な魔力をそっちに割けるのか?難しい気もするが...?
「...なぁ、シェラン?」
「ん?どうしたの?」
「あの家は、どうするつもりなんだ?旅に出るならどうするか考える必要があるだろう?」
「あぁ、あれね。...じゃあ、今見せてあげようか?」
「...はぁ?」
シェランが空間から一枚の古びた羊皮紙の巻物を取り出し、開いてから地面に置く。
「なんだそれ?羊皮紙?」
「スクロールっていうちょっとした魔術を書き込んだアイテムだよ。ちなみに私が作ったんだ。」
「......へぇ?」
「...まぁ、見ていれば分かるよ。」
そう言った後、シェランが何やら呪文のようなものを唱え始める。厳かな声が、ズシンと腹の奥に響き渡る。やはり魔術の詠唱は苦手みたいだな、俺は...。
暫く詠唱を続けている続けていると、スクロールに書き込まれた魔法陣が輝きだす。眩い光は何本もの柱となって空に舞い上がる。そして...
「____我等を包む光となれ...!『創造魔法』っ!『過ぎ去りし古巣』」
シェランがそう唱えると同時に、それぞれの光は繋がり合って大きな一つの形を成した。それは森の中にあったあの家と同じ形をしていた。
「......何だ?家の幻影か何かなのか?」
「違うよ。中に入ってみる?」
「?」
シェランに言われるがまま魔術で作られた家の中に入ってみる。中はあの家とまったく一緒で、家具の位置、種類、使い込んだ感じまで全て同じだった。
「......これは、どういうことだ?」
全く同一のものを再現したということなのか?いや、いくらシェランの魔法でもここまで完璧に、まさに昨日まで使っていたようなところまでの再現なんて出来るわけがない。
......待てよ...もし、もしもの話だが、今まで使っていた家が本当に実際にあの場所に存在した家なのか?もし、今まで住んでいた家が、本当に存在したものではないく元から魔力で形作られたものだとしたら...そう考えればそうだ。
シェラン自身に、あそこまでの家を作る才能もなければ力もない。たとえグランや妖精たちが造った家だとしても、あの家具を揃えるのは至難の業だ。
あれはインテグラル王国でも指折りの職人しか作れない最高級品だ。
それを一式揃えるなんて、そんな貯えシェランには...あったかもしれないが、森から抜け出せなかったアイツが買いに走れる距離にはない。
実際、不可能なのだ。それを一式揃えて、さらにはあそこまで仕立てのいい家を建てるなんて...無理だ。
なら、導き出せる答えはただ一つ...あの家は元から魔術で作られた全てが魔力で構築された家だったのだ。流石は絶界の令嬢と謳われるシェランだ。それくらいは朝飯前ということか...。
俺が様々な思考を脳内で巡らせている様子を見てシェランが、楽しそうに笑った。
「...ふふっ...」
「......んだよ...そんな面白い顔してたか俺?」
「...ううん、そうじゃないよ。またリーオと旅ができるのが、嬉しくてさ...。」
「...っ!」
「......あの時はね、ちょっと不安だったんだ。3年前、リーオが一人で旅に出た後にさ、実はもう帰ってこないんじゃないかって、思った時があるんだ...。」
俯くシェランの瞳に涙が浮かぶ。いつもは明るい性格の彼女だが、こんな弱い表情を見たのは初めてだ。
「......そんな」
「分かってるよ?リーオがそんなことする人じゃないってのは...でもさ、幾らあの戦争を生き抜いた私でも...信じてた人が目の前からいなくなるのは、怖いね...?」
無理して笑うシェランの瞳から一筋の涙がこぼれる。それが封を切ったように止めどなく涙が溢れ始める。まるでずっと塞き止めていた栓が抜けたように。
膝から崩れ落ちるシェランの身体を抱き留め、ぎゅっと抱きしめる。謝罪の言葉を口にしながら。
「...すまなかった。本当に、すまなかった。」
「......いいんだよ...?別に、私はリーオが帰ってくるって思ってたし...君が裏切るなんて、あるわけないって信じてたから......でも...でもさ...やっぱり怖かったんだよ...!」
シェランの感情が爆発する。これは、俺の責任だ。俺がもっと早く帰ってくることが出来たら...あんな力に負けることがなければ、こんなにもシェランを傷つけることはなかっただろう。これは、俺の未熟さが招いたことだ。
もっと、もっと強くならなければ...その為には、今ある竜の力を使いこなさないと...。
「......シェラン、俺はもっと、もっと強くなる。そして、いつかお前の不安を拭えるような人間になる。ここに、そう誓う。」
「......本当?...もう、怖がらなくて、いいの?」
「あぁ、契約だ。」
涙にぬれた瞳でこちらを見つめてくるシェランを真っ直ぐに見つめ、答える。ゆっくりを顔を近づける。シェランも気づいたように少し恥ずかしそうにしながら目を閉じる。
俺はそのまま顔を近づけ、シェランの額に優しく口付けをする。小さな子をあやす様な口づけに、シェランは驚いていたようだが。唇を離すと、少し不服そうに頬を膨らませたシェランの顔が見えた。良かった、元気が出たようだな。
「......口じゃないの?」
「...ふっ...。」
その姿に少し嬉しくなりながら、尖らせるシェランの唇に優しく人差し指を押し付ける。
「...また、今度な?」
「っ!......今回だけ、だよ?」
頬を仄かに赤く染めたシェランがそっぽを向きながら呟いた。まぁ、その今度がいつになるかは未定なんだが。何とか誤魔化せたみたいだ。
その後、暫く先ほどのようなやり取りをした後、ようやく旅を再開する。
目指すはここから遥か北西にあるこの大陸でインテグラル王国の次に大きいという『テルビューチェ公国』...の領地内に位置する世界最大の火山『イグニート火山』だ。
そこは、俺が最初に契約を交わした竜、俺に戦いの基礎を叩き込んでくれた師でもある『火竜ノヴァヴルム』の住処だ。一応、そこ近辺には空間で移動できるからある程度森を抜けたら空間で行くか。それなら、装備も変える必要があるか。
この旅が終わるまでは装備を『彼女』に変えておこう。そう思った俺は移動しながら空間に手を突っ込んであれこれ探し始める。
その様子を見ていたヴァールとシェランが問いかける。
「?何、探し物?」
「あぁ、ちょっとな。」
”...まさか、『彼女』ですか?”
「そうだ。」
何となくわかっているヴァールは複雑そうな声を出している。何もわからないシェランは頭の上に疑問符が数個浮かんでいた。
さて、ちょっと職業変更と行きましょうかね。
そう心の中で呟いた俺の手には、よく見慣れた黒く光る魔導銃が握られている。
「...次の職業は、『冒険者』かな?」
次回は明日に




