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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第二章:リーオ、器に至る
16/54

【自分の実力。新しい旅の始まり】

ゴールデンウィーク連続投稿第一回。


今回はちょっとした説明会というか、特に動きはありません。


______痛ぇ。




全身が、頭が、心臓が、まるでズタズタにされたような痛みが走り続ける。苦しい。息が、苦しい。誰か...誰か......俺と変わってくれ...!








____パチッ!




「ハァッ!ハァッ!ハァッ!...なんだったんだ、今の...?」




...嫌な夢で目を覚ましたな...一体何だったんだ、さっきの夢は...?






...ん?さっきの、夢?......俺は何を見ていたんだ?




........まぁ、いいや。取り敢えず、身体は動かせないな。少し体に力を入れた途端、電撃が走ったような痛みが全身を襲う感じだ。




まぁ、何とか目は動かせたから周りを見渡してみる。ここは、家の中みたいだな。雰囲気や、部屋の中を見る限り恐らくシェランの家の、それも客室だろう。




前に見た談話室と同じように白を基調とした家具が置かれている。シェランは白が好きだからな、前の下着も白だったし。まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。




周囲を魔力感知で探ってみるが、ヴァールの魔力が近くにない。これでは身体を治すことができないな。まぁ、自分で治癒魔法を使えばいいんだが。




全身に魔力を巡らせて、ボロボロになった身体を治していく。癒しの魔力が巡っていく感覚が全身に走r......?




「......おかしいな、全然治らない...?」




おかしいな?結構魔力を使って治癒をしているのに全く治癒されない...?なんか身体が治癒を拒絶しているような...?




まぁ、仕方ない。無理なものは無理、諦めるか...。




「......どうしようもないな...。」




......することもないし、出来ることすら絞られてくるな...ハァ...。




...さて、本当にどうしようか...?








「.....リーオ、大丈夫かなぁ...?」




昼食用のスープの鍋を火にかけながら、そんなことをぽつりとつぶやいた。



リーオの暴走からもう一週間が経とうとしている。あの時の戦いの余波で森はボロボロ、結構距離のあった私の家にも所々にひびが入っていた。



流石のグランも、あそこまでリーオの中に居る竜が強いとは考えていなかったらしい。凄く驚いていた。ヴァールさんの方も、何となくは分かっていたらしいけど実際あの惨状を見るまでは重く見てはいなかったらしい。流石は竜、それも6属性が備わった竜だもの、強くて当たり前だね。私の力だけであれ程の竜力を抑え込めたのが不思議なくらいだ。




”......心配、ですよね...。リーオさん...。”




...ヴァールさんも心配そうだよ...そういえば、グランもこんなことを言っていたなぁ。




『竜が暴走した後は、身体にある力の回路がごちゃごちゃになることが多い。『回路』というのは自分の中にある魔力や竜力を流す管のようなものだ。これがごちゃごちゃになってしまうと、魔力や竜力のコントロールができず力が出せなくなってしまうらしい。一応、気を付けてくれ。』



...って、どういうことかは分からないけど、何となくわかる。あれからリーオを連れ帰って診てみたけど、魔力や竜力の流れがなかった。これは人間としても、生物としても致命的と言ってもいいほど、重傷の中の重症だ。



幾ら腕のいい医者でも、これは治すことが出来ない。病気でもなければ傷でもない。目にも映らないこの症状を治せるのは、神でも難しいだろう。



...唯一、出来る者がいるというなら、この世界の全てを見通していると言われている『賢竜シャオロン』くらいだろうか...?でも、ここから賢竜の住む『仙界の山』と言われる山まで行くのに、どれほどかかるのか?考えれば考えるほど、現実的な方法でないことが分かる。




「......ねぇ、ヴァールさん?」


”...何ですか?”


「ここから仙界の山まで行くとしたらどれくらいかかる?」


”......簡単に見積もって半年くらいでしょうか?”


「......だよねぇ...。」




うん、無理だった。ここから仙界の山まで半年...どうやっても無理だろう。幾ら空間魔法で飛んでも、私は仙界の山の場所を知らないし、何処の方角にあるのすら把握していない。



......うん、現実的な方法ではないなぁ...。




「......さてぇ...どうしたもんかなぁ...?」


”.........ッ!!?”


「え?どうかした?」


”リーオさんが目を覚ましましたっ!”


「本当に!?行こうっ!」




やっと目を覚ましたか!というか目を覚ましてくれて凄く嬉しいっ!もう目を覚まさないことも覚悟してたから、素直にうれしい!



目覚めた時用に作っていたスープをお椀によそい、お盆に乗せて持っていく。



リーオ、待っててね!








_____あれから暫く考えていたがようやく俺の身体が治らないわけが把握できた。



恐らく俺の中にあった魔力などを巡らせる回路のようなものがぶっ壊れたらしい。そのせいで、自分の身体に魔力を巡らせることが出来ず、治癒することが出来なかったようだ。




「...しかし、回路を治すとなると...賢竜のところに行くしかないか?」




...だが、遠いな。空間魔法が使えれば一番楽なんだが、今の俺には使うことが出来ない。徒歩で行くとなると、ここからではかかって半年以上はかかるな。ということは、この方法は現実的ではない。...どうするかぁ...?




「......あっ、あった、いい方法が...!」




でも、出来るか?今の俺は身体をまともに動かすことが出来ない。だが、さっきみたいに話せるということは、舌は動かせるということだ。あとは、魔力操作が使えれば...!




「......物は試しだ。やってみるしかない。」




まずは、舌で空間を開くところからだ。これが何よりも重要なことだ。




「...うぅ...ふぅっ...くっそ...!っ!...おっ!ひあえあ(開けた)っ!」




何とかすごく小さいが、空間を開くことが出来た。次は魔力操作だ。全身に残っている僅かな魔力を総動員して一本の細い魔力の糸を創り出し、それを魔力操作で空間の中へ誘導する。



これで、あれが持ってこれればこの状況を打開できるかもしれない。




「...っ...さっ、すがに、難しいな...糸で手繰り寄せるなんて...こういう時の為に、日ごろから空間の中は整理しておかないと...少し、不便だな...。」




なんて、心にもないことを零しながら魔力の糸を操作することに集中する。本当なら魔力の腕ぐらい作りたかったのだが、今の俺にはか細い糸を創り出すのがやっとのようだ。



それにあの色々なものがごちゃごちゃしている空間の中を整理するなんて土台無理な話だ。今だって、空間魔法で作られる空間がどういうものかは解明できていないし、解明しようにも空間魔法を行使できる人間自体が少ないのだ。これはどうしようもない。



だが、今はそんな議論を頭の中でしている余裕はない。早くあれを見つけないと、魔力の糸を操るのも辛くなってきた。ただでさえか細かった糸がさらに細く薄くなって来ている。



早くしないと、間に合わない...!




「...何処だ...?俺前使ってどこに置いたっけか...?おっかしいなぁ...?」




ただでさえ魔力を扱うのが難しい状態だってのに、こんな風に魔力を使っているからか、段々と意識が遠くなってきている。このままでは本当に気を失ってしまう可能性が高い。



さっさとしないと、本当に間に合わない...!早く...早く見つかってくれ...!



半分、気を失いかけながら必死に捜索を続ける。元から感覚が薄かった身体が、さらに薄くなって、自分が本当に存在しているのかすら分からなくなってくる。



自分のことを見失わないように、唇を噛み締めながら必死に手繰り寄せる。途中、覚えのある形のものを触った気がした。




「これだっ!」




やっと見つけたぞ!嬉しくて気が遠くなるのを必死にこらえながら糸を操って手繰る寄せる。



数分後、ようやく目的のものが目に見えるほど近くになってきた。



これがあれば、この状況を打開できる...筈だ。




「......でも、どうやって使うかが問題だなぁ...。」




今の俺は身体をまともに動かすことが出来ない。指の一本でも動かすことが出来れば、何とかできる気がしないでもないが、今はそんな気も起きない。悲しいことだ。



......まぁ、今は取り出した此奴と一緒に寝てるしかないな。



なんて考え、うとうとと目を閉じようとした時だった。




バンッ!




「___リーオっ!目を覚ましたの!?」


”リーオさんっ!良かったぁ...!”


「うぉお!?お、おぉ...?」




凄まじい音を立てながらドアを蹴破るようにして、シェランとヴァールが入ってきた。



正直いって、超ビックリした。心臓が止まるかと思ったくらいだ。


まぁ、止まることはないんだが。シェランが持つ盆に置かれたお椀から少しスープが飛び散った。どんだけ急いでたんだこいつら...。




「...取り敢えず落ち着けお前ら。」


「あ、そ、そうだね...ごめん...。」


”...でも、目を覚ましてくれて、良かったです...本当に...。”




今すぐに泣き出しそうになるヴァールに謝りながら、今の状況を打開できる最後の一ピースを持ってきてくれシェランに感謝を伝える。




「...ごめんな、ヴァール...んで、ありがとうシェラン。御蔭で完全復活できそうだ。」


「...え?一体どういう...?」


「こういうことだ。」




先ほど少し休んだからか、多少回復した魔力でもう一度糸を作り枕元に落としておいた物を引っ掛け、置いてもらったスープのところまで持っていく。




「これが、この状況を打開する最善のアイテムだ。」


「...これって...匙?」


「あぁ、それも賢竜から貰った薬さじだ。」


「え...賢竜から貰った薬さじって...『賢竜の薬さじ』!?君賢竜と契約してたの!?なんで先に言わないのさっ!」




身体を乗り出して問い質してくるシェランに魔力で作った指でデコピンする。流石に近いぞ。




「先に言っとけって...今の状況からどうやってそれを前もってお前に伝えておけるってんだ?」


「...そ、それもそうだったね...。」




おでこを抑えながら離れてくれるシェランに、ちょっとしたお願いをする。本当なら引っかけた糸で出来ればよかったんだが、無理だった。流石に細糸一本じゃ無理なことだったな。




「...シェラン、ちょっとお願いがあるんだが...。」


「ん?何?」


「...その薬さじで、俺にスープを飲ませてくれないか?できれば一回かき混ぜてくれれば有難いんだが...?」


「...別にいいけど、それが打開策?」


「...まぁ、やってみれば分かるさ。」


「...うん、まぁ......はい、あーん...。」




俺が言った通りにしてくれるシェランに感謝半分気恥ずかしさ半分な気持ちになりながら出されたスープを掬った薬さじに口をつける...。




「...あ、あん...うん、うまい。」


「そう?良かったぁ...。」




続けてもう一口とスープを飲んでいくと、段々身体が熱くなってくるのを感じる。良かった、俺の考えた通り薬さじの効果は出たみたいだ。



賢竜の薬さじの触れた液体は全てに効く万能薬になる。この万能薬は身体的な病気、傷、さらには精神的なものにまで効くと言っていた。



回路がどこの範囲になるのか、精神的なものなのか、肉体的なものなのかは分からなかったが、効いてきたみたいで安心した。身体全体にじんわりと伝わっていく熱を感じながらそんなことを思っていた。




「...そういえば、リーオ。」


「んむ?んぐ...なんだ?」


「...この怪我が治ったらもう一回グランのところに行くの?」


「あぁ、そのつもりだ。」


「...そっか...。」




凄く心配そうに呟いたシェランの姿に、少し心が痛くなるのを感じる。まぁ、はたから見たら大丈夫か此奴ってなるよな。俺が暴走してからほんの数日しかたってない、そんな状態でまたグランに会いに行ったら、また暴走する危険性があることは明白だ。



そこに自分から突っ込んで行こうなんて、心配にもなるわな。



だが、そんなことで立ち止まっていられるほど、俺には余裕も時間もない。こんなことをしている間にもこの世界のどこかで苦しんでいる人々がいるかもしれない。その人達を救うため、俺はもっと強くなる必要があるんだ。




”......リーオさん...。”


「...どうした?ヴァール...。」


”.........私には、アナタを止める勇気も力もありません。”


「ヴァールさん!?何を言って...!?」


”でもっ!......出来ることなら、もっと自分のことを労わってください...お願いです...!”


「......ヴァール...。」



俺を心配しすぎてとうとう泣き出してしまうヴァールを、何とか動かせるようになった腕で抱きしめる。ここまでヴァールを追い詰めてしまうとは...俺は、本当に馬鹿だ...。



「ごめんな...だが、俺はこれからも自分を労わってはやれない。俺はこの先もずっと戦っていくつもりだ。それは先に、謝っておく...。」


”......っ...。”


「......でもさ、ヴァール。」


”......?”


「俺は、もっと強くなりたい。もうこれ以上俺のような苦しみを、誰かに味わってもらいたくないんだ。だから、これからも、俺と一緒に戦ってくれないか?」


”.........。”


「...リーオ...。」




これは、俺の本心だ。俺は、誰かのために戦う。それは、勇者候補だからとか、誰かに感謝されたいとかではなく、『自分のような苦しみを、誰かに味わって欲しくはない』という子供のような願いからだ。その為なら、俺はもっと強くなる。たとえ、身体がボロボロになったとしても、それで死にかけたとしても、俺は戦い続けるよ。



それが、俺がこれからも戦い続ける理由だ。




”......分かり、ました...。”


「...ヴァール?」


”...私は、アナタについていきます。でも...また今回のように死にかけることがあったら、今度こそ止めます。それこそ、神の魔法を使っても。”



...ヴァールの奴、本気で言ってるな。神の魔法なんてもん、そうやって解けばいいんだ?拘束魔法の最上位は何とかなるが、神の魔法では不可能に近いな。そうならないように、俺も気を付けないといけないな。これ以上、無理はできない。




「......リーオ、私も付いて行って良いよね?」


「...あぁ、むしろこっちからお願いしたいくらいだ。」




泣き出しそうになる二人を、ようやく動くようになった腕で抱きしめる。こいつ等だって、俺の大事なものに入っている。泣かせるのは、嫌だ。



だが、またいつか、今回のようなことになるのは分かり切っている。でも、俺は止まらない。俺の中に居る竜に飲まれても、強大な魔族や魔神に殺されることになっても、俺は進み続ける。



俺が、生きている限り、絶対に...!





次回は明日に

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