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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第二章:リーオ、器に至る
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【王国を発つ。次の行き先は森】

最近、この物語の行く先に悩んできたこの頃、気候も春になってきました。皆さんは如何お過ごしでしょうか?花粉症の方は死ぬ思いをしているらしいですね。まぁ、私は花粉症ではないのでよく分かりませんが。


そんな話はここまでにして、今回は物語が新たな章に突入します。ここからリーオ君たちの旅がさらに加速いたします。

緑豊かな庭園の中、少し開けた場所に休憩所のような場所があった。白を基調とした素材で作られたのどかなテラス。そこに同じく白を基調として作られたテーブルと椅子が設置してある。



流石は大陸最大の王国の城だよな。こんなものまであるとは...スゲェもんだ。



なんて内心凄く感心しながらアリシアの案内で椅子に腰を掛ける。すると、何処からともなくメイドがやってきて、これまた白を基調としたポットとティーカップを運んできた。




「ありがとう。貴女も一緒にどう?」


「...お誘いは有り難いのですが...まだ仕事が...。」


「そうなの...じゃあ、今夜一緒に、ね?」


「......お待ちしております。」




何だか、仲良さげだな。アリシアのお付きのメイドらしいが、おそらく子供のころから一緒にいた関係なのだろう。いまの貴族社会ならよくあることだ。



仲良くお喋りをしていたアリシアとメイドだったが、俺の存在を思い出したのかアリシアが目配せするとメイドが頷いて城のほうへ戻っていった。




「...随分仲がいいんだな。」


「えぇ、あの子とも長い付き合いだからね...。そんなことより、紅茶を淹れましょうか。」


「なんだ、アリシアが淹れるのか?」


「ご不満ですか?」


「いや...少し驚いただけだ。」


「趣味なんです。お茶とか、料理とか。変わってます、よね...?」




少し、不安げにこちらを見つめてきたアリシアの瞳は、揺れていた。彼女は貴族だ。それがこんなメイドのような、庶民のようなことをするなど、自分は良くても周りは許さなかったのだろう。貴族社会は、本当に嫌なことしかしないな。



しかし、お茶に料理...生きるためにはとても大切なことだ。それを『変わっている』なんて...どれだけ腐ってるんだ貴族共は...!




「...いや、生きるために重要なことだ。それを変わってる、なんて言えるほど、俺は余裕のある生き方はしてこなかったよ。」




生きるためには料理やお茶など、色々出来ないと積むしかない。貴族の処刑に平民に落とすものがあるが、それは貴族に生活能力がないからそういったものが存在する。それを知らず、豪遊の限りを尽くす貴族の中で、こういった人間がいるのは奇跡に近いだろう。




「......ありがとう、ございます...。じゃあ、お茶にしましょうか。」




少し俯き、顔を赤く染めたアリシアが紅茶を入れる準備を始める。高い茶葉ということだが、茶葉が入った缶には『ベルモンド』と書かれていた。このベルモンドは、茶葉の中でも最高級と言われるほど、うまい。そして高い。確か一缶60000Gくらいだったか?それを少し高い茶葉とは...流石貴族だな...。



アリシアがポットの茶葉を淹れ、お湯を注ぐと紅茶の素晴らしい香りが周囲に充満する。これがベルモンドの特徴で甘い、まるで完熟した果実のような香りがベルモンドを『紅茶の王様』と言われる所以だろう。



少し蒸らした後、ポットからティーカップに注がれる。白いカップに注がれる赤茶色の液体とそこから漂う甘い香りが心を躍らせる。




「......いい、匂いですよね。私、この香り、結構好きなんです。」


「...俺も好きだよ。ベルモンドなんて、結構高級な茶葉じゃないか。俺なんかと一緒でいいのか?さっきのメイドと一緒のほうが...。」


「...私は、リーオさんとお茶がしたいんです。ダメ...ですか...?」


「.........。」




おいおい、上目遣いでそれはダメだろ...。アリシアみたいな美人がこういうことをすると、こう、クるものがあるな...。



......ちょっと、反撃でもしてみるか?




「......いいや、こっちからお願いしたいくらいだ。アリシアみたいな美人とお茶が出来るなんて、俺は幸運だな...。」


「そ、そんな...冗談がお上手ですね...。」




これくらいで顔を真っ赤にして俯くとは...少し耐性が無さすぎるんじゃないか?心配になってくるぞ...?




「...さ、さぁ!どうぞ、早く飲まないと冷めてしまいますから...。」


「おっとそうだな。では、頂くとしようか。」




差し出されたカップを右手で持ち上げようとするが、先ほどの傷が癒えていないのか少し震えてしまう。


仕方がないな。少し難しいが左手でカップを持ち上げ、ゆっくりと香りを楽しむ。甘く上品な香りが、俺の心を躍らせる。そのまま少し冷まし、一口含む。口に入れた瞬間、流石は最高級の紅茶と言わんばかりの上品な味と香りが口と鼻を支配する。




「......旨い...。」


「でしょう?私のお気に入りなんですよ。」


「......あぁ、本当に、旨いな...。」




ヤバい、旨すぎて手が震えそうだ。あぁ、旨い...。




「...お茶菓子に、クッキーでも如何ですか?私が焼いたんです。紅茶の味を引き立てるために甘さも控えめにしてあるんですよ。よかったら、どうぞ。」


「...頂こう。」




アリシアの差し出したバケットの中から丸いクッキーを一枚貰い、一口齧る。サクッという歯触りの良い触感、噛むたびに控えめな甘さが舌を楽しませてくれる。俺の手は震えっぱなしだ。



クッキーのほうも恐らく最高級のものだろう。味もしかり、形、色、香りも全て一級品だ。文句のつけようもないほど、それこそ手の震えが止まらないほど旨い。



さらに紅茶を一口飲むと、クッキーの甘さと紅茶の香りがベストマッチして、さらに旨い。




「......旨い...旨すぎる...!」


「そう言っていただけると嬉しいです!私もクッキーを焼いた甲斐があります!」




少し照れながら喜ぶアリシアの姿を見て、平和もいいものだなと独り言ちる。こんな日々を守るために、俺は戦い続けなければ。誰かが犠牲になる世界なんて...俺が許せない...!



その後は、アリシアと他愛ない会話をし、俺は用事があるからと別れた。まぁ、特に何もすることはないんだが。ただ駄弁っているのも時間を無駄にしている気が拭えないのでな。



アリシアと別れ、庭園を出たところで身体に異変が起こる。




「ッ!?...なんだ?胸が...!?」


”どうしましたっ!?”




クソッ...心臓か?いきなり痛むなんて...一体どうしたんだ?今まで何もなかったってのに...!まさかさっきの紅茶とクッキーに...!?



......いや、ないな。アリシアが俺にそんなことする道理もないし、する意味もない。




「......いや、なんでもない。...そろそろ出ようか、ここを...。」


”え?と、唐突ですね...?まぁ、いいですけど...。”




ッ...痛いのは辛いが、ちょっと血ぃ吐きそうだけど...早めに王国を出よう。そしてアイツの...『絶界の令嬢』のところへ行こう。



そうとなれば、早く行動に移さなければな。部屋に戻って出立の準備を始めるとするか。




「...その前に、国王に出立の挨拶をしておかないとな。」


“彼女のところへ?”


「あぁ、そろそろ薬も切れてくる頃合いだ。丁度いいだろう。」


”...そう、ですか...。分かりました。こちらも準備を整えておきます。”


「あぁ、頼む。...俺は、早く国王に挨拶をしてこないと。」




ヴァールが色々準備を整えている内に、国王への挨拶を済ませておく。いきなりのことで王も驚いていたが、なんとなく察していたのだろう。前に言っていた『勇者候補の証』を寄こした後、少し残念そうにしていたが、俺の出立を祝ってくれた。




「......其方も色々あるのであろう。私も止めはしない。流石に私たちの我が儘で留めるわけにはいかないな......直ぐに準備をさせよう。では、大儀であった。」


「......短い間でしたが、ありがとうございました。王も、身体に気を付けて過ごしてください。...では...。」




王への挨拶も終わり、通行書代わりの勇者候補の証を受け取り、王の間を後にする。途中、昨夜世話になった執事を見かけ、お礼を言ってから部屋に戻る。

 


中に入ると、既にヴァールが準備を終えていたらしく、旅の支度がされてあった。




”準備をしておきました。これで大丈夫ですか?”


「ありがとう、ヴァール。これで出立できるな......っと、忘れてた。」


”何か不備がありましたか?”


「あぁ、いや...そうじゃない。ちょっと、忘れてたことがあってさ...。」




ヴァールが準備してくれた荷物を持って、部屋を出て、とある場所へ向かう。国を出るなら報告しなきゃならない奴等がいるからな。



丁度、そいつ等がいるであろう訓練場に到着すると、中から活気のある声が響いてくる。




「____フッ!...腕を上げましたね、カバルさんッ!」


「おぉっとッ!...アリシアも盾捌きからの連撃に磨きがかかってきたじゃん...ハァッ!」




...何やらすごく楽しそうな戦いをしている二人には悪いが、少しこっちに来てもらおう。渡すものがあるからな。




「...カバル!アリシア!ちょっとこっちに来てくれッ!」


「ッ!?...リーオ?どうかしたのか?」


「何か用事でも?」


「あぁ、俺、今日出立することになった。その挨拶にな。」


「へぇ、出立......今すぐかっ!?」


「あぁ。」


「そんな...まだ沢山お話ししたかったのに...。」


「悪いな。そのお詫びと言ってはなんだが...これを受け取ってくれないか?」




そう言って、空間の中から俺の身長以上ありそうな巨大な大剣と、水晶のように透明な剣と銀色の盾を取り出し、それぞれ大剣はカバルに、剣と盾はアリシアに差し出す。




「ほれ、カバル。こっちは重いからしっかり持てよ。」


「お、おぉ、おぉぉぉおもっ!?!?」


「アリシアはこっちな。丁重に扱えよ?それ、国宝級だぜ?」


「え?えぇっ!?」




おうおう、二人とも驚いてんな。二人に渡した武器は、俺が迷宮や洞窟、遺跡で手に入れた宝物だ。しかしまともに使ったこともなく、空間の中で眠っていた物だしいつか売り払おうかとも思っていたから、二人に譲渡するのはいい考えだと思ったんだ。



”......売り払わないだけよかったと思いますよ。国宝級の宝物なんて一般のお店じゃ値段がつけられないですからね...。”


そうだな。まぁ、金には困っていないし、売り払う意味もないだろうな。



受け取ってもらえるなら、あの武器たちも喜ぶだろう。




「リ、リーオ...これ、クッソ重くね!?よくこんなもん放り投げられたなお前!」


「あぁ、それ魔剣だからちゃんと魔力注げよ。」


「魔剣っ!?お前なんてもん寄こすんだよ!」


「リーオさん、これは...?」


「その剣はとある遺跡で手に入れた宝剣だ。多分、売れば国一つ買える。」


「......そんなものを...私に...?」




あまりの重さに苦情を述べるカバルと、貰った物の価値に震えるアリシア、対照的で面白いな。


”...あまりいい趣味とは言えませんよ。人の反応を楽しむだなんて...。”


面白いだろ?此奴らが強くなってくれれば、いつか俺がいなくなってもアイツらが世界を守ってくれるだろ?


”......リーオ、さん...。”


......よし、じゃあ最後は...。



カバルたちと別れ、一人魔力を辿って目的の人物のもとへ向かう。



人気のない場所で一人訓練に勤しむウェントのもとへたどり着いた。




「フッ!フッ!...あれ、リーオさん?どうかしたんですか?」


「あぁ、いや...俺、今すぐこの国を出立することになったから、その前の挨拶周りだよ。」


「え!?もう出ちゃうんですか!?そんなぁ...。」


「悪いがこっちにも色々あってな...そんなことよりこれを受け取ってくれないか?」




悲しそうなウェントに、空間の中から二振りの剣を取り出し、手渡す。



二振りの剣から放たれる威圧感を、ウェントも感じたらしい。剣を受け取りながら不安げな顔をしている。




「え、これ...?こんなもの、貰ってもいいんですか...?」


「あぁ、お前に使ってもらいたくてな。二刀流とお前の持つ才能の剣の相性は抜群だ。この二本の剣は、二本揃って初めて効力を発揮する能力を持っている。」


「に、二本ですか...?」


「あぁ、能力は...使ったら分かるだろう。しかし、両方ともユニーク武器だ。使うときは考えて使えよ。」


「は、はぁ...?」




よくわかっていない感じのウェントと別れ、王城を出るため、城門前まで移動したときだった。門番の兵士に挨拶し、さて出発するかと思ったとき後ろから呼び止められた。




「____リーオさん!待ってくださいっ!」




走ってきた様子のシエルが息を切らしながら俺を呼び止めた。肩で息をしながら綺麗なブロンドの髪を揺らしている。




「ん?シエル?何か用事か?」


「い、いえ...さっき姫様からリーオさんが、今日出立するって聞いて...居ても立っても居られなくて...。」


「?」


「...私、まだアナタにお礼も言えてなくて...。」


「お礼?あぁ、昔の。いいんだよ、あれは俺がやりたくてやったことだし、それに...。」




不安げに揺れるシエルの瞳を見つめながら、空間の中から取り出したあるものを差し出す。




それは今朝、師匠の夢を見たとき、いつの間にか手に持っていた首飾り。それを震えるシエルの首にかけてやる。




「...?これは?」


「...『竜の首飾り』、なんの竜の鱗かは分からないが、俺の師匠が持っていたユニークアイテムだ。」


「そ、そんな大切なもの、受け取るわけには...!」


「いいんだ。...またいつか、帰ってくる。それまで、預かっていてくれないか?」


「......リーオ、さん...。」




小さなシエルの身体を抱きしめ、言い聞かせるように耳元でそう告げる。抱きしめた身体から伝わる熱を感じながら、改めて自分の中で誓う。




『大切な人達が生きるこの世界を護る』




この世界にどんな危機が迫ろうとも、俺が、絶対に護る。それが、俺が旅を続ける本当の目的だ。その為なら、俺がどうなってもいい。たとえ神が世界を滅ぼすとしても、俺はそれを止めて見せる。その為の、『契約』だ。




「......分かりました。絶対に、帰ってきてくださいね?」


「...あぁ、『約束』だ。」


「はい...約束ですっ」




シエルと、『またここに帰ってくる』という約束を結び、城門を出る。振り向くと手を振っているシエルと、こういうのは別の所でやってくださいよ、という目をしている門番騎士に手を振り返しながら街の中へ入っていく。



次の行き先は、インテグラル王国から東にある大きな森林、『大地の竜』が住む『サナバの森』。そこに、俺の仲間が住んでいる。



その人の名前は『シェラン=ヒューレー』、あの神々の戦争を生き抜いたハイエルフの女性だ。



次回は4月25日までに投稿いたします。


次回もお楽しみに。

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