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【無限の器の冒険譚】  作者: 荒木刑
第一章:リーオ、王都へ赴く
11/54

【薬さじの力。技の剣、その奥義】

気温も高くなってきて、小春日和が増えてきた今日この頃、皆さんはどうお過ごしですか?


私の周りでは花粉症で死にかけている人が沢山です。私自身、花粉症ではないのでどういったものかはわかりませんが、花粉症の人、強く生きてください。


さて、今回の物語で過去編は終了します。そして新しい物語への導入のような回です。

多少御見苦しい所もありますが、楽しんでいただければ幸いです。


では、本編をお楽しみください。

「______こんなもんか?」




刃に付いた血を払い、ゆっくりとヴァールを鞘に納めながら後ろのマークスへ問いかける。




「...あ、あぁ...。」




驚いた様子のマークスは無視し、庭先の木の下で倒れているボロボロの勇者候補に問いかける。




「おーい、大丈夫か?」


「......ぐふっ...何故、止めを、刺さない...?」




血を吐きながら逆に質問を返してくる勇者候補に、質問を質問で返すなと思いながら答えてやる。




「殺す価値がないから、だ。俺はただ単純にお前たち勇者候補に俺の力が通用するか試したかっただけだし、何より死体の処理が面倒だろ?」


「がふっ...貴様...王国へ反旗を翻す気か...?」


「あぁ?何バカげたこと言ってんだ。まぁ、いい。マークスさん。」




完全に見当違いな思考をしている勇者候補を無視し、マークスさんに声をかける。




「な、なんだ?」


「娘さんの、シエルのところに案内してくれ。」






_____マークスさんに案内され、シエルのところに来た俺の目に、はっきりと死相が浮かんだシエルと、それを涙を流しながら必死な看病をするレイアの姿が映る。




「......これは酷いな。」




目に映った状況にそう呟きながら、空間の中から賢竜に授けられたユニークアイテム『賢竜の薬さじ』と水竜のビンを取り出し、その中に薬さじを突っ込む。




「ひっく...アナタ?すん、どうしてリーオ君を?」


「リーオ君がそう望んだからだ。」


「レイアさん、コップかなんかありますか?」


「え?...すん...コップなら、ここに...?」


「少しお借りします。」




レイアさんからコップを受け取り、ビンから出た水を注ぎ、その中に薬さじを突っ込み暫くかき回す。水全体を薬さじで回し終えると、コップの中の水を吸い飲みに移し、レイアさんに渡す。




「これを少しずつ飲ませてあげてください。」


「え?これ...?」




一見ただの薬さじでかき回した水の入った吸い飲みを渡され、少し不安げな顔をしていたが、俺の真剣な目とマークスさんの頷きで決心したようだ。




「...分かったわ。」




水で満たされた吸い飲みの飲み口をシエルの口に添え、ゆっくりと傾ける。重力に従って中に満たされた水が自然と、ゆっくりとシエルの口に注がれていく。




ここで言っておくが、俺がさっき水をかき混ぜるのに使用した賢竜の薬さじは『触れた液体を万病に効く薬に変える』という能力を持っている。これに触れた液体は全ての病、傷、さらには精神的な傷などにも効く万能の薬に変えることができる。




この薬なら死病にかかったシエルを救うことができるだろう。流石は賢竜だ。こんなもんを寄こしてくれるなんて『光の竜』はいいやつだな。火竜とは大違いだ。




「......飲ませたけど...?」


「...少し見せて下さい。」




レイアさんに承諾を貰い、シエルの様子を確認する。薬を飲ませる前に比べ、呼吸も安定し、死相が浮かんでいた顔は安らかな少女の寝顔に変わっていた。




「......良かった...。」


「シエルは...大丈夫なの?」


「...大丈夫です。薬のおかげで落ち着いたみたいです。」


「......よかった...!」




レイアさんはよほど嬉しかったのか地面に座り込んで泣き出してしまった。それをなだめるマークスさんに先ほど飲ませた薬の詳細を聞かせ、より濃度の濃い薬の原液を渡して家を出ようと、玄関のところまで出る。




「待ってくれっ!」




が、マークスさんに止められる。




「...何ですか?」


「......君は、君は一体何者なんだ?」




...何者、と問われても答えになるようなものはないなぁ...強いて言うなら、そうだな...。勇者でもなく、一般人でもない...俺は...




「......ただの、旅人ですよ。」








_____なんてことも、あったなぁ...。そういえば、あの村にいた勇者候補っていったいどうなったんだ?早々に旅立っちまったからよく知らないが、まぁ、重要なことじゃないな。




「...そうか、もう二年にもなるのか...。」


「思い出して頂けましたか?」


「あぁ、割と鮮明に。そうだ、マークスさんは元気か?」


「えぇ、今でも毎朝の薪割は欠かさずにやってます。」


「...そうか、元気ならよかった。」




心底嬉しそうなシエルだが、随分成長したよなぁ...あの時はまだ幼女って感じだったのに、今では立派になって...なんか嬉しいな。




二年か...二年で15年...少し使いすぎたか?改めて考えると、考えなしに使いすぎたかもな、寿命。少し気を付けないと。




「...そろそろ、上がるよ。」


「分かりました。私はもう少し入っています。」


「そうか、じゃ、お休み。」


「はい、お休みなさい。」




風呂でシエルと別れ、着替え、部屋に戻る。部屋への道順は一応頭に入っているから迷わずに部屋まで着くことができた。




ドアを開けると、少し待ちくたびれた様子のヴァールが声を上げた。




”遅いですよぉ~!何時間入ってるんですかぁ?”


「一時間も入ってねぇよ。ほら、さっさと寝るぞ。」


”ぶ~...まぁ、いいですけどぉ...。”




若干ぶすくれた感じのヴァールとともに寝る準備を済ませ、これまた豪勢なベッドに入る。




「ふぁ...寝るぞぉ...。」


”...はぁい...。”




今日も疲れた。今日は一日が異様に濃い日だったな。明日に響かないうちに寝よう。昨日は野宿だっからか寝た気がしない。それもあってか、目を瞑った瞬間に夢の世界へ旅立つことになった。




_____その日の夢は、少し特別だった。いつもは夢なんか見ない俺が夢を見たのは、実に数か月ぶりくらいになるな。内容は過去、師匠のところで修行をしていた時のもの。


師匠が見せてくれた剣術(技)の『最終奥義』の夢だった。




師匠が腰の刀を抜くと同時に、目の前にあった巨大な岩が一刀のもとに両断される。


抜き身を鞘にしまった師匠が振り向き後ろで見ていた俺に、その技をこう呼んだ。




「...奥義『一ノ太刀』、技の剣における最終奥義だよ。」


「.........す、すげぇ...!」




眼前に倒れる巨岩を見ながら興奮する。こんなすごい技があったのか、一閃とか縮地よりもっと凄い技が存在したのかと。震える手で腰に差した木剣の柄を握る。




いつか、自分もこんな風になれるのかと不安半分期待半分な目で、俺に微笑みかける師匠を見ている。そんな、懐かしい夢だった。




目を覚ました時、ふと手に違和感を感じた。いつの間に空間から出したのか、師匠に貰った首飾りが握られていた。一人で旅に出る俺に、お守りとして師匠が身につけていたこの首飾りを渡されたのだ。




それにしても、なんで今これが俺の手の中に?師匠の夢を見たせいか?う~む...




「......分からん。」


”...ぅん?どうかしたんですかぁ...?”




思わず漏らした言葉に、隣で寝ていたヴァールが起きてしまったようだ。まず、剣って寝る意味あんのか?よく分からん...。




「あ、起こしちまったか?」


”...ん~、いいえ...どうかしたんですか?”


「あぁ、これなんだが...。」


”?これって、アナタのお師匠さんから貰ったって言う...?”


「あぁ...だが、なんでこれを握ってたんだ?」


”...どうでもいいですけど...早く起きないと修練する時間が無くなりますよ?”


「......そうだな。」




首飾りを空間に放り込み、代わりに水ビンと厚手の布を引っ張り出し、部屋に併設された洗面所で顔を洗う。冷たい水が、未だに少し眠っていた頭を起こしてくれる。布で顔を拭きながらいつもの服に着替える。前に着ていた服も洗濯しないとな。修練が終わったらにするか。




「...よし、行くか。」


”えぇ、行きましょうか。”




そう答えるヴァールを腰に差し、部屋を出る。豪勢過ぎて見慣れない廊下を修練を目指して進む。途中、昨夜風呂へ案内してもらった老執事がいたので挨拶をする。




「おはよう、執事殿。」


「あぁ、リーオ様。おはようございます。こちらには慣れましたか?」


「...やっぱ高すぎるとこってのは落ち着かないもんだな。」


「はっはっは、分かりますぞ。かく言う私も貧しい出でして、この城に住み込みで働き始めたときは慣れなかったものですよ。」


「だなぁ...フカフカのベッドで寝るのももう数か月ぶりで、少し寝すぎたくらいだ。」


「あぁ...分かりますぞ、その気持ち...。」




老執事とちょっとした会話などをした後、修練場の前で別れ、中に入る。中では既に修練を始めている人間がいた。随分早いな。




「あ、おはようございますリーオさん!」




こちらに気づき駆け寄ってきたのはなんと村出の勇者候補ウェントだった。元気に挨拶するウェントに挨拶を返す。




「あぁ、おはよう。お前、朝早いんだな。」


「え、えぇ、僕は自分が強くないことは分かっていますから。昨日だって、リーオさんやカバルさんがいなかったら今ここに居られませんでしたし...。」




......やはり、村出の勇者候補の奴は出来ている奴が多いな。決して慢心せず、自分を磨くことを止めない。その謙虚な姿勢が兵士たちから慕われているのだ。




「......そうか、まぁ、いい。取り敢えず、お前も修練しに来たんだろ?だったら付き合ってくれるか?」


「え?いいんですか!?」


「うぉっ!?お、おう...。」




いきなり詰め寄んな。こいつちょっと押しが強いな。まぁ、どうでもいいが。修練場に置いてあった木剣を二本取り、内一本をウェントのほうへ投げる。




「おっと、これでやるんですか?」


「あぁ、実剣でやったらケガするかもしんないだろ?」


「それもそうですね。では、やりましょうか...!」




ウェントが、木剣を中段に構える。その瞬間、ウェントの纏っていた雰囲気がガラリと変わる。内に秘める闘志が前面に出てきたような、そんな感じだった。




「...面白そうだ...!」




俺も気を抜けないな。姿勢を低くしながら木剣を腰下にゆっくりと構える。柄に手を置きながらウェントに問いかける。




「...なぁ、ウェント...。」


「...何ですか?」


「お前昨日、俺に剣を習いたいって言ってたよな?」


「はい。」


「なら、俺は全力で行く。だからお前はこの戦いで俺の剣を覚えろ...!」


「......!分かりました...僕も、本気で行きます...!」




二人の間に、一触即発の雰囲気が流れる。呼吸がゆっくりと同調していき、二人の呼吸が完全に同化した瞬間、弾かれたように二人が地面を蹴り出す。




「ハァァァァァァッ!!」


「ッ!セイッ!!」




ウェントが繰り出した上段切りに合わせて木剣を振りぬく。ウェントの木剣の腹に当てるように横一文字に切り、続けざまに二撃三撃叩き込む。それをウェントがかろうじて受け止める。




木同士がぶつかり合う甲高い音が響き渡り、木剣が軋む感覚が分かる。暫く鍔迫り合いを続けるが、一旦距離を取って再度腰下に剣を構えなおす。ウェントも、俺が距離を取ると自分もゆっくりと剣を構えなおす。




ウェントの構えは、はっきり言って中途半端だ。構えは自分が使っている剣術の型によって変わってくる。例を挙げればカバルが使う剣術(剛)は上段構え、俺の剣術(技)は腰下に構えると、大体が技を出しやすい位置に構えるのが普通だ。だがウェントは剛でも柔でも技でもないまったく別種の剣を使っている。こいつが持っている剣術スキルは『剣の才能』という自らの才能で剣を振るうユニークスキル。




所有しているものが少なく、何よりユニークスキルという点から幻とまで言われている超激レアスキルでもある。まぁ、いくら持っていてもまともに使いこなせる人間がいないことでも有名だがな。




しかし、このウェントは使いこなし始めている。自ら他の型の剣を習い、それを吸収することによって新たなもの(型)を創り出そうとしている。




「ハァァァッ!!」


「ッ!」




俺の懐に飛び込んできたウェントは、木剣をあたかも自分の身体の一部のように巧みに操り、連続的な攻撃を放ってくる。この技は、剣術(柔)における技の一つ『連撃』だ。自らの器用さを最大限に使い、連続攻撃を放つ技。




ウェントから放たれる攻撃をすべて受け流し、居合の要領で木剣の柄頭でウェントの鳩尾を突く。




「かはッ!?」


「...セァッ!」


「ごはぁッ!?」




そのままの勢いで崩れ落ちかけたウェントの身体に一閃を叩き込む。ウェントの身体は大きく吹き飛び、修練場の壁まで行き、背中を思いっきり叩きつける。




「かぁッ!?ぐぅ...ッ!」


「......どうした?そんなんじゃ俺に一発たりとも当てられないぜ?」


「ぐっ...くそぉ...!」




フラフラの状態で何とか立ち上がったウェントだったが、木剣を杖にしないと立ち上がれないほどボロボロだった。しかし、奴の目から闘志が消えることはない。むしろ攻撃を食らえば食らうほど熱く、大きくなっているようにも感じる。...これは強敵だな。




「...まだ、いけます...!」


「...フッ、怪我が増えても知らんぞ?...ッ!!」




木剣を腰下に構え、縮地でウェントの懐に入る。そのまま体を回転させる勢いのまま剣を振りぬく。それをギリギリのことろで持ちこたえたウェントは、俺の剣を弾き、上段に構えた剣を俺に向けて思いっきり振り下ろす。足を大きく踏み込み、袈裟気味に放たれるこの一撃は、カバルが得意とする剣術(剛)の技『剛斬』だ。自分の全体重を剣に乗せ放たれるこの一撃は、たとえ得物が木の棒であっても巨大な岩をたたき割ることもできるとても強力なものだ。




「...これが、今の僕の全力ですっ!ハァァァァァッ!!」


「......そうか、ならこちらも...フゥッ!!」




これをまともに食らっては俺も危ないな。弾かれた剣を滑らせるように下から振り上げ、そこに身体の回転と遠心力を加えて放つ剣術(技)の技の一つ、『昇流』で迎え撃つ。




この『昇流』は剣術(技)の中でも威力に重きを置いた技の一つで、その威力は剣術(剛)の『剛斬』に匹敵するほどの威力がある。




俺の『昇流』とウェントの『剛斬』がぶつかり合う。威力が同じ技同士がぶつかれば普通ならその場で鍔迫り合いでも始まり沿うものだが、俺の木剣はウェントの木剣を真っ二つに折り、勢い止まらず奴の鼻をかすめて止まった。




「ハッ!!......ぼ、僕の、負けです...。」


「......いい戦いだった。強いな、お前。」


「い、いえ!自分なんて、まだまだで...。」


「いや、強い。それは俺が保証するよ。」




実際言って、ウェントは強い。他の兵士や勇者候補と比べれば、だいぶ強い部類だ。剛や柔の型を吸収して自分のものにする、それを続けていればもっと強くなるだろう。




...俺も、少しくらい教えてやってもいいかもしれんな。




「...いいだろう。昨日の申し出、受けてやろう。」


「......えっ、いいんですか!?!?」


「あ、あぁ...ただし、俺が教えるのはただ一つだ。お前に、最強の防御を授けよう。」






「_____ありがとう、ございました!これからもっともっと修練を積んで、いつかリーオさんに一太刀入れられるよう、精進していきますっ!」


「...あぁ、期待してる。」




あれから数時間ほど、ウェントに俺が持つ最強の防御を教えていた。最初は全くできず、頭に打撃を食らいまくっていたが、最後のほうは数本に一本くらいはできるようになっていた。




アイツは強くなる。俺以上になる可能性がある位にな。今のところ最強の勇者候補になる『才能』がある。さて、そろそろ他の兵士も来る頃だろうし、早めに出るか。




修練場を出て、俺が次に向かったのは誰もいない開けた場所だ。魔力感知や直感などで絶対に人が来ない場所を見つけ、そこでヴァールを抜く。




”...ここに、するんですか?”


「あぁ、ここなら滅多に人が来ることはない。これからすることを人に見られては集中できないからな。」




俺がこんな人が絶対に来ない場所で何をするのかというと、今朝夢で見た剣術(技)の最終奥義の一つ『一ノ太刀』の訓練をしようと思ったからだ。...アイツの才能に触発されたのが大きいな。




ただ訓練をするだけなら別に人が来る場所でも問題はないのだが、『一ノ太刀』の訓練となれば話は別だ。この技は、誰にも見せられない。誰か一人でも近くに居たら危険だからな。




もし間違って剣が暴れでもすれば怪我どころか殺してしまう可能性まである。それほど『一ノ太刀』は危険度の高い技なのだ。




「......行くぞ、ヴァール...!」


”...はい、行きましょう...!」




ヴァールの形を刀に変えてから柄を持って、利き足を前にして、姿勢を低くしていく。全身に魔力と普通ならここで『気力』と呼ばれる剣術(技)の使い手だけが持つ力を籠めるのだが、俺は気力の制御があまり得意ではない。だから俺は気力の代わりに竜力を魔力と一緒に籠める。




これでできるかどうかは知らないが、一回やってみることも大切だ。これで使えなかったら諦めて気力の修練を積むしかないな...。




「...スー...。」


”...スー...。”




まず集中、意識を剣を握る手だけに集中させる。そして頭の中でイメージ、自分の振るった剣が目の前の敵を粉微塵にする様を、それだけで頭を満たす。




「...ハー...。」


”...ハー...。”




次にヴァールと心を通わせる。自分の扱う武器なら当然だ。これが敵を切り裂くのだから武器と心を通わせなければ扱うことなどできやしない。




二人の呼吸が重なり、心が完全に重なり合い全身に力が満たされ切った時、




「......ッ!!」


”......ッ!!”




空間を切り裂くような一撃、居合と一閃、魔力撃(龍)と自分が使える全ての技を超える、様々な型の技を超える相手を殺すことだけを追求した技の剣における究極奥義の一つ『一ノ太刀』。




一撃で相手を粉微塵にする最強の技、鞘からヴァールを引き抜いた瞬間、目の前の空間が真っ二つに裂ける。威力はこれで申し分ない。しかし、引き抜いた時の力が強すぎて剣を制御することができない。コントロール仕切れないほどの勢い、それを何とか抑えようとするが、力を込めていくごとに、腕の筋肉がぶちぶちと千切れていく感覚が分かった。




痛みに耐え、何とか剣を止める。激痛が腕に走る中、何とか頭の中を整理する。




威力だけを見れば申し分ない。むしろ良いと言えるかもしれない。しかし、それをコントロール仕切る力が今の俺にはない。まだ俺は、最終奥義のスタートラインにすら立っていない...。




「ッ...やはりまだ無理だったか...。」


”だ。大丈夫ですか?腕の筋繊維がぶちぶちって...?」


「...気にするな。俺の力が足りなかっただけだ。こんなんで振り回されるとは、俺も鍛錬が足りていないな。もっと頑張らないと...。」


”...リーオさん...。”




少し、悔しい気持ちになりながら左手でヴァールを鞘に納め、開けた場所を後にする。裂けた筋繊維を治すため右手をヴァールの柄に乗せながら特に行く当てもなく城の敷地を彷徨う。




”...本当に腕大丈夫ですか?”


「気にすんな。俺が弱かっただけだ。お前が気にする必要はない。」


”......そう、ですか...。”




なんとなく気まずい空気になりながら、当てもなく彷徨う。途中、見覚えのある後姿が見えた気がした。綺麗な金髪に、煌めく鎧を纏った少女。




「アリシア!」


「...?リーオさん?どうしてこんなところに?」


「特に何も。ただ暇だったから散歩してただけだ。」


「あぁ、そういう...じゃあ、今暇ですか?」


「特に何もないよ。」


「では、これからお茶にしませんか?丁度、いい茶葉が手に入ったんですよ。」


「...ご相伴に与ろう。」




......紅茶の誘惑には、勝てないようだ...。

次回は4月15日までに投稿いたします。


次回もお楽しみに!

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