第四章 幼馴染ってなんだろね
気がつくと私は智也の背に乗せられていた。
さすが大男なだけあって私を乗せながら歩いていても疲れている素振りは見えない。
本当に智也は優しい。
「目が覚めたか?」
「うん。今起きたとこ」
「もう少しで酒場に着くからなもう少し俺におぶられてろ」
「悪いね〜」
「お前…絶対悪く思ってないだろ」
「なんのことかな?」
智也は大きくため息をつきながらも私を酒場まで運んでいってくれた。
「いや〜ありがとね〜」
「領収書後で送るから覚悟しとけよ」
「え・・・?」
「冗談だ、多分」
「領収書は勘弁してくださいお願いします」
「どーしようかなぁ…」
コイツ・・・こういう時だけイジワルをしやがって・・・
もしこいつが何かやらかしても絶対助けてやらないからな・・・
「じゃあ、飲むか」
「飲もう飲もう〜」
「この酒なら飲んでも問題ないか・・・」
「何そのお酒?」
「これはな現世でもらったんだ。梅酒?とかいうお酒らしいぞ」
「ふーん、とりあえず飲もう!!」
「おぉぅ・・・」
智也が慣れた手つきでジョッキに現世でもらったお酒を注いでいく。
そのお酒がジョッキを満たしていく。
そして私のお酒への意欲も満たされていく。
智也が注ぎ終えるとつまみに現世でもらったジャーキー?と呼ばれる食べ物を皿に乗せて渡してくれた。
「なんか現世のお酒って不思議だね〜」
「そうだな、お酒の中に梅を入れるって誰が考えたんだろうな・・・」
「その顔は今度試す気だな〜」
「これをうちの酒場で作ったら儲かるだろうなって思ったけどやっぱり現世で作るからいいんだろうな」
「智也って以外に現世とか興味あったんだね」
「最近、現世に行くことが多くてな」
「現世で好きな人でもできたの?」
「いやまさか。できても俺たちは人じゃないからそういうのは無理だろ?」
「そうなんだけどさ・・・」
でもそういうのっていいじゃない。
そういうのは妖とか人とか関係ないじゃない。
本当に智也は“妖らしく”ないな・・・
「ねえ智也」
「どうしたんだ?」
「私ね、智也が好きになった人見てみたい」
「やめとけやめとけ。お前が好きな恋とかいうやつじゃないからな」
「じゃあ何?」
「笑わないか?」
「うん」
「絶対にか?」
「うん」
あ、これ絶対私笑わないやつだ。
こんなこと言う時の智也は基本スベるかどうでもいいことを気にしてる時の言い方だ。
「俺が好きなのはこの女の子だ」
「智也、それを恋と言わずしてなんて言うか教えてくれる?」
智也が見せてくれた写真には綺麗な制服とかいうものを着た女性だった。
少し栄養が足りないのか体つきが細い。
「恋じゃない。よく聞いてくれよ?」
「うん」
「この子と出会ったのはな────」
「待って、それって話長くなるやつ?」
「話してみないと分からないけど多分長いやつ」
「酒が足らん」
「わかったよ。酒を持ってきてやるからそこで待ってろよ」
智也は呆れながら席を立ちカウンターの奥の方へと消えていった。
私はそれを見てホッとしながら写真に写っていた女の子を思い出す。
あれが智也の好きな子かと思うと少し胸がこそばゆい。
けど、幼馴染として応援しないとね?
※ ※ ※
「こんだけあれば長話しても大丈夫だろ」
「うんうん。こんだけあれば私は満足じゃ」
「なんだよその言い方は」
智也は笑いながら話を始める。
私はそれをどういう気持ちで聞けばいいのかそれを考えながら聞いた。
