第一章 夏の暑さに誘われて
「おはよ、悪霊さん」
「どこかに出かけるのか?全く、精が出るな」
「私以外こんなことをしたがる人いなくてね。
なんなら貴方がやる?」
「・・・・・・俺ではその鎌を振る事ができな
いだろ!!」
「それもそうね。んじゃ私出かけてくるから〜」
「呑気な奴・・・」
現世までの道のり、以前に出会った悪霊と軽い
会話を交わすと、鎌を振る。
すると、古びた井戸のようなものが見えてくると、目に見えていた場所へとワープする。
私はこれを、霊界と現世の境界と呼んでいる。
例えばオアシスに行きたいと思いながら鎌を
振る、帰りは鎌ではなく石を投げることで霊界へとワープができる。
なお石によってワープできる場所が変わるので注意が必要だったり。
「さてと、今日は何人送ればいいのかな・・・・・・」
井戸から出るとそこは、神社の境内だった。
蝉があちこちで鳴いては落ちる、
どうやら現世の季節は夏らしい。
そんな夏の神社に死神がひとり、石段を降りていく・・・・・・
「まさか神社の石段を降りるなんて思ってなか
ったから結構足が・・・・・・」
・・・・・・前から巫女衣装の人達が急ぎ足で石段を
上がっていく。
「珍しいね、巫女さんが石段を駆け上がっていくなんて」
そんな光景に少し疑問を抱きつつ、また一段ずつゆっくりと降りていく。
そして前からきた巫女さんとすれ違う。
何の変哲もないただの巫女さんだが私には見えていた、すれ違った彼女の寿命が・・・・・・
「まさかこんな早くに見つかるなんてね」
こういうのはあまり"見つけたくない“と思ってしまう私は死神失格だろうか。
もしかしたら寿命が見える私にしかできないことがあるかもしれない、そんな偶然を期待してすれ違った巫女さんを追いかける。
「ちょっと・・・待って・・・」
流石に鎌を持ちながら石段を駆け上がるのはキツい。
しかし、霊体では人に姿を見せる事はできない・・・
私は鎌を振った、石段に向かって大きく振りかぶった。
すると、石段が崩れ巫女さんが私の方へと倒れてくる、ここまでは想定内、どうやって巫女さんを受け止めるかは考えていなかった。
「痛った・・・・・・・」
「すいません・・・大丈夫ですか?」
申し訳なさそうに謝ってくる巫女さんの顔を見ると顔に大きなヤケド跡のようなものがあった。
「大丈夫ですよ・・・あなたが一段踏み外して私にぶつかってきただけですから・・・」
笑顔でウソをつく私。
本当に申し訳なさそうにする巫女さん。
とても悪い事をした気分になってきた・・・・・・
「突然で悪いのですが・・・あなた身体に異変など はありませんか?」
「へ?」
当然のリアクション、私でもそんな顔をする。
「え、えと・・・身体に異変は特にないですけど一体あなは、何者なんですか?」
今、巫女さんがほんの一瞬だけ、動きが止まった
動揺しているか、何かを隠している・・・・・!?
「私が死神と言ったらあなたはどう思いますか?」
「とりあえず境内でお話を・・・」
この巫女さんは何かを抱えているのは間違いない
ヤケド跡にさっきの行動・・・まるで私を待っていたかのような・・・
「私があなたをここに呼んだんですよ!!」
「え・・・・・・っ」
その瞬間、ワープの時のできごとが脳をよぎる。
基本、何も考えずに鎌を振ると街や森に出る、しかし今回はピンポイントに神社の近くの井戸だった。
今回は、偶然じゃなく、必然の仕事だったのかもしれない。
「私を呼んだ・・・何か困ってるの?」
「困ってますよ!!」
急にこの巫女さん、私の両手を押さえてきたんですけどぉぉぉ!?
・・・・・・まぁ呼ばれたのは初めてだから戸惑ってるけど、押さえされるのが一番動揺するんですけどぉぉぉぉ!!!
「さあ、行きましょう!!」
意気軒昂とした彼女に手を引かれるまま私は、境内へと連れていかれそうになるのをグッと堪える。
「ちょ、ちょっと待って!」
「どうしたんです・・・・・・?」
このままの流れで連れていかれたら、どうなるか私にはわからなかった。
けれど、今のこの急展開の流れ・・・・・・ビッグウェーブに乗ってはいけないそんな気がした。
「せめて私の両手を解放して、話はそれから」
しかし彼女は、石段を上る足を止めないどころか少しずつ早くなってる気がしてならない。
「離すのは狛犬様の所で離しますからそれまでは我慢して下さいよぉぉ〜!!」
私は二本の足に自分の全体重を乗せる。
こうすることで上がるスピードと巫女さんの体力を削る。まさに一石二鳥・・・・・・
これこそが、私ができる一番の抵抗。
石段万歳。
※ ※ ※
結局・・・・・・
死神の体はあくまで霊体なので体重は存在せず、
抵抗虚しく巫女さんの巫女パワーによって狛犬像の前まで連れていかれてしまった。
一石二鳥とか言った数秒前の私をぶん殴ってやりたい。
「・・・・・・死神さん?」
石段での、白熱した『戦い』のせいか精神的に疲れた。
死神にまさる力(筋肉)があるなんて、現世めっちゃ怖い。
「いや、生きてるよ、厳密には霊体としては機能できるよ」
「よかったです〜」
謎のか弱い巫女さんアピール・・・・・・
それからしばらく、巫女さんが飲み物や食べ物を持ってきてくれたのを頂いていた。
その間、お互いに名乗ったり、話題提供などは行われなかった。
でも、それでいい。
私はこの時間で彼女の寿命をもう一度確認する。
すると、彼女の寿命が数十分だけだが増えていた。もしかして巫女さんは・・・・
「あのー、巫女さん」
「なんでふか?」
彼女は月のようなどら焼きに似たものを食べながら私に返事をした、正直女性としてどうかと思うけどそんな与太話をしてる時間はない。
「・・・・・・巫女さん、あなたこの現世の人じゃないよね」
彼女がお菓子に向かって伸びた手が止まる。
「・・・・・どうして分かったんですか?」
今回なぜ呼ばれたか︰
私が死神で、望みを叶えて、成仏させる。
そんな利用しやすいものを利用しないはずがない
※)私の勘。間違っている可能性もある。
「死神はそもそも・・・・・・一部の人以外見えないし触れられない。あなたを石段で受け止めることができたのはあなたが死んでいるからよ」
・・・・・・私は思わず言葉を飲み込んだ、さっきまで笑っていた巫女さんの顔に活気がなくなったからだ。
まるで、死んだ人のような目。
そして、冷たい体。
彼女は既に死んでいる・・・
頭では理解できていても情報が追いつかない。
さっきまであんなに私を神社の中に連れていこうと必死だった彼女。
その姿を見てしまったから、私は思わず彼女を抱きしめた。
「あなたは狛犬像の前で・・・」
私が抱きしめている手を解こうとするも手に力が入っていない、まるで私の手をさすっているような力しか残ってない。
「・・・・・・どうしても死神さんの力が必要なの」
「私にできることなら・・・・・・」
狛犬像の前で死神と未練を残す霊が座りながら話をする光景はどんなに儚いのだろうか。
うわの空な状態で、彼女の話を聞いた。
1つ目の願い︰
名前も顔ももう覚えていない、誰かに貰った桜の簪のお礼を言いたい。
そして、簪のお礼に何か贈り物を送りたい。
そんな優しいお願いだった。
「男性か女性か分かる?」
「男性だったと思う・・・」
男性から桜の簪・・・
もしかしたらその男性はもう・・・・・
皆さん初めまして、黒帽子です。
このたびちょっとした思いつきで死神を主人公にした儚くてちょっと心が温まるストーリーを考えたので新しく執筆してみました。
お気づきの方もいるかもしれませんが私、結構誤字脱字が多いんです。確認はしてるつもり何ですが行き届いてないようで・・・本当に申し訳ありません。
本編の話をしますとラノベ版夏目友〇帳って言われるような作品にしたいと思ってます。
更新をできる限り早くしたりして頑張りますので応援よろしくお願いします!




