第十二章 知りたがりな幽霊・一
「なあ…この盃を使って酒を飲んでみないか」
智也は買った盃を月に照らしながら私に言う
「智也から言うなんて珍しいはね…でもその話乗った!」
「そうと決まれば朝まで飲むか!」
「おーー!」
私は自分の盃に注がれていくお酒を前に興奮を隠しきれず懐から現世のおつまみを智也に渡した
「なんだこれ…野菜か?」
「枝豆とかいうらしいよ」
「へー…」
智也は不思議そうに枝豆を見たり、匂いをかいだりしたり枝豆に興味津々だった
『私も混ぜてもらっていいかな?』
「智也ぃ…誰か呼んでるよぉ〜?」
「あぁ〜?お前…名前は?」
『私はこの地に縛られている地縛霊ですよ』
その言葉を聞いて私は酔いが一瞬にして覚めてしまった…
「どうしてこんなところに?」
『最近、この辺によく人の子らが“きもだめし”などという遊びをしているらしくそれを何人かの霊友達と一緒に見に来たところ…なぜか私だけが縛られてしまって…』
霊友達って…ナニ?
初耳なんだけど…そもそも霊ってそんなにお互い仲良かった?
分からないことがまたひとつ増えたなぁ…
「で、あなたは人の子に何をするつもりだったのですか?」
「おっ…仕事モードか」
智也の小声はあえて無視することにした
今は真面目にこの霊と話さないといけない
あと…霊友達について詳しく聞かないとな〜
『私たちはただ見れればよかったのです。楽しむ人の子らの顔や様子を』
「本当に…それだけ?」
『私たちは悪霊ではなく霊なのですから妖力もなければ受肉して人をおどかすこともできない…しかし我々、霊達も元は人。自分たちの過去や思い出を思い出すチャンスなのです』
「まあ…自分の過去とか思い出を思い出したい気持ちもよぉーく分かるけどさ…私に直接言ってくれれば力になったのに」
私はこの霊と話しているとひとつ疑問が出てきた
“なぜ様子だけでよかったのか?”
私だったら人の子と同じように遊びに混ざりたい
けどこの霊が言うには見れればいい…
何かあるな…と私の中の誰かが言っている!
「じゃあ、少し場所を変えましょうか」
『私は地縛霊ですので動けませんよ?』
「私…こう見えても死神なんだけど」
『あなたがあの死神様なのですか!?てっきりもっといかつい漢と想像しておりましたがここまで華奢な方とは…』
「それは…どういう意味だ詳しく聞かせてもらおう」
酔って潰れていたはずの(思い込んでいた)智也が起き上がり霊の胸ぐらを掴んでいる…
掴む理由が全くわからない…
「ごめんね…アイツ酔うと変なヤツになるのよ」
『お気になさらず…私のどこかが気にくわなかったのでしょう』
智也が胸ぐらを掴んだ時、犬神様がどこからともなく現れて智也に酔いやすいお酒を瓶ごと飲ませ脇に抱えれるくらいの大きさになるのを待ってからキザなセリフを残して連れて帰っていった…
「この借りは大きいですよ、死・神・様ぁ〜」
最後の言い方がカンに障ったのは置いといて…どうして、“ここに居る”というのが分かったのかが怖くて夜も眠れなさそうだ…
『さっきの話なんですが…私はここから動くことはできませんよね?』
「この鎌を使えば問題ないわ」
大きな鎌が描かれた紙を地面に置くとそこから描かれてあった大きな鎌が手の中に収まった
「ね、すごいでしょ〜」
霊の方を見ると驚きすぎて昇天しかかっていた
「ちょっとちょっと!今逝かれるとあなたの話聞けないじゃない!」
間一髪のところで昇天しかかっていた霊の意識を取り戻すことに成功した…
あと一秒遅かったら逝かれてた…
『すみません…鎌を見たときに死ぬって思ってしまって…』
「やっぱり急に鎌なんか見せられたら死んじゃうよね〜」
『はい…』
顔色が明らかに悪くなってるなぁ…
このままの状態で地縛から解いてもいいのかなぁ
「今から地縛から解くけど…大丈夫?」
『大丈夫です、多分』
「はい、行っきまーーす!!」
大きく鎌を振り上げると霊の足と地を繋ぐ鎖に向かって振り下ろす。
鎖は大きな金属音をたてて切れた…
「これでよし、じゃあ…場所変えよっか」
「で、何があったの?」
『実は…きもだめしをしにきた人の子らの中に知っている顔があったものですから近づこうとしたらさっきの鎖に捕まってしまって…』
「だからあんな下手な嘘までついたってこと?」
『嘘が八割、真実が二割です。でも霊友達が居るのは本当ですよ』
「え!?そこが一番胡散臭いと思ってたのに…」
私の読みが…ハズレた…だと…
霊友達…この言葉が気になって集中できない!
『あのー…そろそろ話を進めても?』
「どうぞどうぞ!」
死神…いい?クールダウンよクールダウン
できる女は冷静でなくっちゃ…ね?
『知っている人の子がいたのですが霊になってしまったので思い出すことができずにいるのです』
「だから私に助けてほしいってこと?」
『はい。私はどうしてもあの人の子が気になって仕方がないのです』
「うーん…」
霊の気持ちだけで決めるのは危なすぎるしなぁ…
かといって、私はその人の子を見ていないから探すのにも時間がかかるし…
「どうしようかなぁ…」
『やっぱり難しいですか?』
「かなり難しいかな〜」
霊さんの顔が強ばっていく…
自分のことを知るきっかけが目の前にあるのにそれをやめろって私が言ってるようなものだし…
いや…言ってるな、これ
「ちょっと答えを出すのは時間貰っていいかな?捜し物ができちゃったしね」
『もちろんです。私には時間だけはありますからいくらでも探してきてください!』
「そこもで言われるとなぁ、、」
申し訳ないなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
明けましておめでとうございます。
今年もガンガン更新していこうと思いますので何卒よろしくお願いします。
今までのを読み直してちょっと思ったのがネタとかギャグが少ないなぁと感じて今回は入れてみましたがどうでした?
個人的にはなかなかギャグを入れれたなぁと思うところもあれば…もしかしたらいらない?
というのがありました。
そのため一月一日に投稿予定だったのですが書き直したりしたりして今日に至ったわけであります。
次はできるだけ早めに更新しますので許してください…
では、次の話を待って頂いている読者様のためにも頑張っていきます!