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歩みは止まることなく  作者: いし
4/4

4.クラス分け

4月20日土曜日 am8:00


「あ〜!ダメだダメだ、ぜんっぜんわからん!」


今日は塾で、クラス分けテストがある。

5月からは習熟度別でクラスを分けて、夏期講習開講直前まではそのクラスで授業を受けることになっているのだ。


そして俺は、一夜漬けをした。

得意の数学はなんとかなる、物理も化学も大丈夫。

問題は、国語と地理と英語だ。

こいつらばっかりはどう勉強してもいい結果を出せたことがない。


「くそー、このままじゃ三枝さんと違うクラスになっちまうよ〜!西高だしな、絶対頭いいんだろうなあ。」


佳奈と階段で話したあの日から、見かけたことはあるがずっと話しかけないままだった。

きっと俺がうまくフォローしなかったから、気にしてるんだろうなって思っていた。

話したいなら俺から話しかけるべきなのに、それがわかっていて話しかけられないでいた。



「あーー!!もういい、支度しよう。」



ーーー


am9:30


俺は学力テストの説明を聞きながら、マークシートの必要事項欄を塗り潰していた。


教室には100人くらいいるだろうか。俺はこの大きな教室のちょうど真ん中付近に座っていた。

左隣だけまだ人が来ていなかったので、遅刻かなと軽く考えていた時、教室の後ろのドアが開いた。


パッとそのドアの方を見ると、そこには息を切らしながら入ってくる佳奈の姿があった。

急いで俺の隣の席に座ったのを見て、普通に俺は佳奈に話しかけていた。


「隣、三枝さんだったんだ。遅刻だよ〜?」


そう聞くと佳奈は、一旦唾を飲み込むように落ち着き、苦笑いしながら俺に応えてくれた。


「昨日遅くまで勉強しててね、途中で寝ちゃったみたい。気付いたら8時50分だったから急いで支度して来たよ。」


「そうだったんだ、俺も今日一夜漬けなんだよね。あ、そのマークシート今書かないと50分に回収するって言ってたよ!」


それを聞いた佳奈は、ありがとうと言ってすぐにマークシートを塗り始めた。

正直、こんな普通に会話できるだなんて思ってなかった。

俺は考え過ぎていたようだ。

とにかく普通に話せたことが、その時は嬉しかった。



「では、10時から120分間で数学のテストを始めます。机の上には受験票、鉛筆、消しゴム以外は置かないこと。

時計は黒板の上にあるのを基準に時間を図るので、腕時計もしまってください。

携帯は電源を切ってカバンの中にしまっておくように。万が一、カバンの中にしまってあっても音が鳴ったりしたら全教科0点とします。

また不正行為も全教科0点となりますので、絶対にしないように。

途中退室は認めないものとします。

質問は手を挙げて試験監督に聞くように。

では………始め!」



ーーー



わからない。

なんだこの問題、整数と数列が組み合わさってるのか…?

ダメだ、飛ばそう。

微積は得意分野だ、これから解こう。



…あと20分か…。

正直どの問題も満足に解けていない。

数学は校内でも割と上の方だったのに、この塾じゃ通用しないってことなのか…?

ダメだ、考えても解けない。


俺は最後まで頭の中で考えてはいたが、手が全く動かなかった。



「時間です、鉛筆を置いてください。

これより鉛筆を持っている方は不正行為とみなします。

解答用紙と問題用紙を回収します。

部数を確認するまでそのまま待機していてください。

…………では、数学のテストを終わりにします。

これからお昼休憩となりますが、13時半より英語のテストを開始するので10分前には着席しているように。

お疲れ様でした。」



終わった…。

数学のテストで全ての希望が消えたと言っても過言ではなかった。

得意科目であの状態じゃ、英語や国語、地理なんて相当ズタボロになるだろう。

そう落ち込んでいると、佳奈が話しかけて来た。



「佐藤君、大丈夫?顔色悪いよ。」


「あ、ああ、大丈夫だよ。さっきのテストどうだった?」


「うーん、難しかった。佐藤君は?」


「ダメダメだ、一夜漬けしたのになんの成果もないよ〜」



そう言うと、佳奈は自分のカバンを漁り始めた。

小さな手提げバッグのようなものを取り出し、それを俺の机の上に置いて中から何かを取り出した。



「なんか今日お母さんがテストだからってお弁当の量多いの。私が作ったわけじゃないけど、お母さんは料理上手だからきっと美味しいよ!よかったら、これくらい食べてくれる?」


そう言って佳奈は、箸で弁当の蓋の裏におかずとご飯を綺麗に盛り付けして俺に渡して来た。


「え、ありがとう。すごく嬉しい!」


俺は夢中になって食べた。

すごく美味しかった。

きっと数分くらいで食べ終わってしまったと思う、佳奈はそれを見てよかったと笑っていた。



「三枝さん、ほんとありがとう。美味しかった!よーーし、午後のテスト頑張るぞ〜!!」


「いえいえ。私も頑張らなくちゃ!一緒のクラスになれるといいね!」



!!!

俺はびっくりしてしまった。

佳奈も同じことを考えていたとは思わなかった。

その言葉が嬉しくて、咄嗟に俺は口を開いていた。



「うん!三枝さんと授業受けたいし、頑張るよ!」



俺はすぐに自分が言った言葉が恥ずかしく思えてきて、目を逸らしてしまった。

気付けばもう13時。

次の英語の勉強をしようと、気持ちを切り替えることにした。




ーーーー



「終了。では解答用紙と問題用紙を回収します。確認が終わるまで待機していてください。

………はい、ではこれで本日のテストは全て終了となります。

結果は明日、一階の掲示板に貼り出すので確認をお願いします。

ではお疲れ様でした、気をつけてお帰りください。」



長かった。

もう19時になっていた。

俺は明日、何時に佳奈が掲示板を見に来るのか聞こうと思って話しかけてみた。



「三枝さん!あ、明日掲示ば…」


佳奈は暗い顔をして、こちらに反応もせず帰ってしまった。

声が小さかったかなって思ったけど、明らかに落ち込んでいた雰囲気だった。

俺はしょうがないと思い、疲れていたので早く帰ることにした。



ーーー



4月21日 日曜日 pm12:00



俺は凄く緊張しながら掲示板の前へと足を進めていた。

そこに佳奈の姿は無かった。

佳奈の受験番号も分からなかったので、俺はとりあえず自分がどのクラスかを確認した。



「俺の番号俺の番号…あ、あった。E!?1番下のクラスじゃん…。」



俺はその日、自習室によって週末課題を終わらそうと思っていたが、あまりにショックで帰ることにしたのであった。


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